「緑のトンネルは心の力の原点だ。霊園の墓を見てまわった衝撃」
◇先日小坂子町の林道を走った。燃える緑に心も躍る。初夏である。よく「夏も近づく八十八夜」と歌ったものだ。八十八夜とは五月の初めであろう。昔の季節感は、今はない。世の中が変わったことを痛感する。頭上の小鳥のさえずりが胸に染み入る。命の洗濯を実感する。皆さっていく。今日は旧宮城村を目指そうと思う。どこかの家に寄りたいものだ。意外な出会いが楽しみである。昔の自分を見つけるドライブである。大崎つりぼりへ行こう。はっちゃん家にも寄ろう。どこかの林道にも入りたい。ホワイトハウスの肉も食べたいな。時々、車を止め緑の中で筆を走らせるのが良い。山の友達が出てきて挨拶を交わすかも知れない。熊も怖くない。蛇も平気だ。周りの木々はすべての生き物を包んで友達にしてしまう不思議な力を持っている。
◇5月31日(日)午前9時45分。嶺霊園の一角に車を止めた。ひらめくことがあった。「中村紀雄は甚五郎」である。魂のノミで中村紀雄の姿を彫るのだ。宮本武蔵は仏像を彫った。心のノミは鋭いものだ。周りの森が力を与えてくれるからだ。私の心の奥の力を引き出してくれる。それを謙虚に感謝せねばならない。それから少し緑のトンネルを走った。森の精気が伝わってくる。何かいるだろうか。木の板が表示している。危険動物に対する注意である。熊、イノシシ、蛇などが描かれている。彼らはみんな友達だと素直に思える。森の友達との共存と共生は人間にとって大切な課題である。人間はかつて森の住人であった。森から出て大切な魂を失いつつある。森は魂の棲家なのだ。森は呼んでいる。「帰ってこいようー」、「早くこーい」と。地球が壊れつつある。地球が壊れることは人間の心が壊れることに繋がる。それを防がねばならない。一人一人が左甚五郎になって本来の正しい心を心のノミで彫り進むのだ。
◇5月31日(日)、霊園の墓を見てまわった。墓石にそれぞれの一族の様々な思いが込められていることを感じた。墓じまいなどという言葉が流れている時世であるが人々の思いはそんなに単純でないことを痛感した。
10時55分、例の食事処ホワイトハウスに入った。ステーキを頼む。目の前に私の著書が何冊か並ぶ。奥さんらしい人が訊いた。「何か書くお仕事ですか」と。「はいそうです」と応える。小学生の頃、この近辺は私の活動領域であった。夢のように時が流れた。これからの天から与えられた時間を活かすために原点を見詰め直さねば。
(読者に感謝)
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