「汚染水問題と中国の変化。水産物の輸入。中ロの共同声明を修正」
◇日中を囲む国際状況が大きく動き出した。中国政府の日本への接近姿勢が強く感じられるようになったのだ。二つの大きな出来事が報じられた。対中水産物輸出再会及び対日けん制の文言削除である。背景に米中対立激化と日本の役割がある。日本の重要性が世界に認められ明るい方向に事態が動き出したことを嬉しく思う。
中国が実施していた日本産水産物の輸入禁止が解除される。福島第一原発事故後の2011年に中国は日本産水産物の輸入を禁止した。それは原発の処理水を日本が海洋放出したからである。海は隣国中国に繋がっている。原発汚染水の中で育った水産物に中国がむきになったことは分かる。科学的に問題ないことが立証されても中国の主張は変わらなかった。中国がこの問題を政治利用していることは明らかだった。政治状況の中心は米中の対立だ。
振り返れば中国の反対姿勢は激しかった。人民の健康を大きく掲げ「太平洋は日本が汚染水を捨てる下水溝ではない」との強調を続けた。大きな変化のきっかけはトランプの登場だから皮肉である。トランプは中国を最大のライバルとして対決姿勢を強めた。これは中国にとっても当然ながら重大事である。中国はアメリカに対抗するため周辺国との関係改善を急いだ。そこで最重要なのは日本との関係である。処理水問題が関係改善の重要なカードに使われたのだ。
◇もう一つの中国の大きな変化はモスクワで、8日行われた中ロ首脳会談の共同声明に現れた。声明文の時前調整で、中国側の要請により、日本を軍事・経済面でけん制する文言を削除したのだ。習指導部はトランプ政権に対抗するため日本との関係を重視し日本を過度に刺激しないよう腐心していることの現れといえる。本来の案では合同軍事演習の規模拡大を表明しようとしていたが、日本が周辺地域での中ロ軍事協力拡大に懸念を強めていることに配慮したのだ。
習指導部は昨年10月の石破政権発足を機に日本との関係改善に急速にかじを切った。中国は不動産不況など深刻な経済の低迷をかかえている。その上で激化するトランプ政権との対抗問題がある。この状況に対応するには日本との協力強化が不可欠なのだ。このところ中国側は矢継ぎ早に従来の態度変更を表明している。中国軍機の日本領空初侵犯につき再発防止の意向を示した。また領海内のブイ撤去実現も嬉しい。隣国との関係改善にほっとする。2千年の日中の歴史が微笑んでいる。(読者に感謝)
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