「近づくコンクラーベの実態。部品の国際的分業を無視するトランプ政権。ウクライナ女性記者の遺体は拷問を物語る」
◇約14億人のカトリック信者の頂点に立つローマ教皇が先日亡くなり、その後後継者選びの儀式「コンクラーベ」が始まった。宗教に淡白と言われる日本人であるが教皇フランシスコの死には多くの注目が集まった。私は一信者として2000年に及ぶカトリックの歴史を振り返りザビエル以来の日本のカトリックを考えた。コンクラーベは5月7日、ミケランジェロが「最後の審判」を描いたシスティーナ礼拝堂で行われる。投票権を持つ枢機卿は135人。その中には2人の日本人司教、菊地功氏と前田万葉氏がいる。コンクラーベの間、会議の人々は一歩も外に出られない。「根比べ(こんくらべ)ですね」と誰かが笑った。4月28日の5回目の会議では協会内の性虐待(フランシスコはこの件につき反省の意を現し詫びた)や、教皇に必要な資質が議論された。1人の枢機卿が3分の2以上の票を得て当選。会場から煙が上げられる不思議な習慣がある。白煙なら決定、黒煙なら再投票である。その日が目前である。
◇トランプ政権の関税政策がもたらす混迷は深まるばかりである。トランプ政権は米国内で自動車を製産すればコストが下がり雇用も増すと計算するが国際分業の実態を無視していると言わざるを得ない。自動車に限らず世界の産業界は分業のネットワークが驚く程進んでいる。例えばある部品は労働力の安い中国や東南アジアで作られる。その部品と結びつく他の部品は技術力の高い他の国で作られるという風に。このような国際的な分業のネットワークは確固として確立しているから、アメリカの工場ですべてを生産するというのは現実を無視することだ。トランプの場当たり的な修正ではとても追いつくことは出来ない。
日本は優れた技術力で他国の追随を許さないものを生産して生き残りを計る。これはアメリカの工場も日本製に頼らざるを得ないことを意味する。米の関税政策の行き詰まりは明白なのだ。
◇ロシアのウクライナ侵略の凄さは想像を超えるものらしい。ウクライナの女性記者の遺体は激しい拷問を物語る。ビクトリア・ロシチナさんはロシア占領地を取材中に拘束され、ロシア南部の刑務所で勾留されていた。遺体には骨折や感電の痕跡が。映画の拷問シーンを想像する。ウクライナ外務省は「ロシチナさんの勇気と報道姿勢は並外れていた」と述べた。「ペンは剣より強し」という諺を身をもって実現しようとしたに違いない。拙著「シベリア強制抑留」で描いたロシアの恐怖を思い出す。(読者に感謝)
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