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2025年4月23日 (水)

「カトリック14億人の頂点が世を去った。2000年のカトリックの歴史、その光と陰。産院の取違いの悲劇」

◇巨星天に昇る。カトリック信徒14億人の上に立つローマ教皇フランシスコがこの世を去った。私にとっても特別な存在だった。フランスのノートルダム寺院では教皇の年に合わせ88回の鐘が鳴らされた。年米アルゼンチンでイタリア系移民の家庭で生まれた。アルゼンチンは私も訪れ群馬県人会の人たちとも会ったが貧富の格差が激しい国である。生い立ちは人間の原点となる。教皇に選ばれてから中南米、中東、アジアを次々に訪れ、貧しい人弱い人に寄り添った。その行動力は「空飛ぶ聖座」をほうふつさせた。表面がきれいに輝く飾り物ではなく、世界の道徳的・精神的支柱であった。長崎市爆心地公園の演説では「焼き場に立つ少年」のパネルを傍らに置いた。アルゼンチン時代はバスや地下鉄でスラム街に通った人。少年の姿は教皇の胸に突き刺さったに違いない。広島・長崎を訪れた教皇は、「現代の人々は至る所で断片的な第三次世界大戦の中にある。人類は広島と長崎から何も学んでいない」、こう言って強い懸念を示した。2000年のカトリックの歴史には大きな矛盾も存在する。女性の司祭を認めないのもその一つ。教会がタブーとする離婚や同性愛にも柔軟な見解を示した。聖職者による未成年者への性的虐待は深刻。責任追及を徹底する方針を示し、被害者に「許しを求めたい」と直接謝罪した。キリスト教の本質には人間尊重がある。それを脅かすものが現在黒い雲のように広がっている。黒い雲を煽っている一つはトランプのアメリカ第一主義である。教皇フランシスコのあとを継ぐ人は誰になるのか。選出の手続き「コンクラーベ」の行方に注目が集まる。

◇都立産院の新生児取違い事件は酷い。被害者の江蔵さんは67歳になった。東京地裁は出自を知る法的権利は失われないとして実親の調査を命じた。江蔵さんは「神に願うような気持ち、一日も早く会いたい」と訴えていた。憲法は定める。「すべて国民は個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は最大の尊重を要する」と。

 江蔵さんはこの事件で既に都に対する損害賠償を求める訴訟で勝っている。東京高裁は「重大な過失で人生を狂わされた」として都に二千万円の支払いを命じたのだ。今回の東京地裁判決はこれを踏まえ実親の調査を命じたもの。

 分娩に関わる者は人の一生の原点に関わるという重大な責任を負うことを自覚しなければならない。慣れによって重大な過失を招き、人の人生を狂わせる責任の大きさをかみ締めねばならない。(読者に感謝)

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