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2025年4月30日 (水)

「大型連休と逆走の恐怖。県議会で暴力団排除条例を作った思い出。トランプ支持急落の意味」

◇大型連休が始まった。観光ブームと車社会が重なって高速道路は民族大移動の感。避けられないのは事故。逆走が各地で発生している。連休初日の26日、栃木の東北道で逆走事故で3人が死亡した。私も高速をよく走る。他人事ではない。高速道の逆走は全国で毎年200件前後と言われる。2023年には224件。高速道出口への誤侵入、インターチェンジやジャンクションの分岐点での誤判断などが最多と言われる。「瞬時」に的確な判断が求められる。世は挙げて高齢社会であり、認知症が止まらない時代である。大型連休は高速道の恐怖を浮き彫りにする。

◇中村後援会のかつての大幹部小林清六さんが96歳でこの世を去り、弔辞を読んだ。棺に見る表情は全く別人で、人間の人生の最期の深刻さを語っていた。県議会にいた頃、この人に心配をかけたある出来事を語りかけた。暴力団と関わる渦中の私に「大丈夫かい」と声をかけた表情が甦った。2007年の6月議会に私は暴力団対策の条例案を出した。この頃、県内各地で暴力団に関する事件が多発していた。前橋市三俣町のスナックで暴力団による殺人事件で一般人ら4人が殺されたのは2003年のことであった。私が中心になって提出した議案は県営住宅に暴力団員を入れないことを目的とした。当時暴力団員(家族を含めて)にも憲法上の生存権があるとして、条例作りには反対意見があった。私の決意は固かった。条例案は県議会で可決された。広島県、福岡県に次ぐ三番目であるが議員提案としては全国初ということで注目された。議員の質の低下が言われる中、条例作成に関わって大きな成果を上げたことを誇りに思った。前記小林清六さんが「大丈夫かい」と心配してくれたのは東警察署が万一のことを考えて私の自宅の巡回を始めたからである。

 県議会のこの動きに全県の自治体がならうことになった。各自治体が公営住宅に関し同様な条例を作りうまく運用されるようになったのである。

◇ワシントンポストはトランプの支持率は歴代大統領で最低の39%と報じた。同紙は世界経済秩序の破壊、不法移民の取締、大学への圧力など国民の不満を生む政策を進めていると指摘した。私には4月5日の全米規模の抗議デモの続きに思える。トランプの終わりの始まりと指摘する声も大きくなっている。中間選挙も近づきトランプは世論を恐れている。支持率の急落はアメリカの民主主義が未だ見込みがあることを示している。(読者に感謝)

 

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2025年4月29日 (火)

死の川を越えて 第107回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

  • 神との出会い

 

 山田屋の出来事は、人々に感銘を与え、それは一人一人の心に根を下ろしていった。新たな出会いと発見を人々がそれぞれの立場で受け止めた。人間とは何か、国家とは何か、これらを今まで人々は深く考えたことがなかった。これらはにわかに消化し難い難問であったが、人々は今、理屈を超えた力を感じて真摯に向き合おうとしていた。

 ある日、正助はさやに言った。

「カールさんやリーさんの偉さと大きさが分かったな。あの人たちは、国境も人種も越えて人間を救うために命を懸けているんだね。俺は目の前が大きく開けた気持ちだよ。さや、お前はどう思っているの」

「私も同じ思いなの。リー先生の偉さが初めて分かりました。イギリスの偉い生まれで大変な財産をお持ちで、それを湯の川のことにすべてつぎ込んでいると聞きました。その意味が山田屋で初めて分かった気がするの。神様の命令と思っていらっしゃるのね。異国の神様って分からないけど何かすごい力なのね」

「俺もそう思うんだ」俺はシベリアで大変な体験をした。撃たれて土に埋まって、もう駄目だと諦めた時に救われた。今思い出しても身の毛がよだつのは海底洞窟だ。今振り返ると神様に救われたと思えてならない。さや、俺は、あの日から心にかかっていたのだが、リーさんに近づいて神様のことをもっと知ろうと思うのだがどうだろう」

「まあ、あなた」

 さやはそう言って、大きく見開いた目で正助を正視した。

「実は私も同じことを考えていたの。あなたのいない時、おなかの正太郎を産かどうか大変迷って聖ルカ病院のクリスチャンの女医先生に相談しました。先生は京都大学の小河原先生を紹介して下さいました。私は、こずえさんと京都大学へ行き小河原先生を訪ねてその教えを聞いて産む決意をしました。今振り返ると神様の力が働いたような気がしますわ」

「2人とも不思議な体験をしたのだね」

 さやは頷きながら袂に手を入れた。拳に何かが握られている。

「実はあなたに言い出せないことがありました」

「一体何だい」

 正助は不思議そうな顔をしてさやの目を見た。

つづく

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2025年4月28日 (月)

「ふるさと塾はトランプへの怒りで燃えた。大聖堂でゼレンスキーとトランプは何を語ったのか。内憂外患の首相の決意は」

◇26日のふるさと塾はかつてない程盛会だった。トランプに振り回される世界と日本。それに対する人々の怒りがいかに大きいかを改めて痛感した。宗教には関心が薄いと言われる日本人であるが、フランシスコ教皇の死に人々は熱心に耳を傾けた。私はその出身地アルゼンチンについて、またカトリックが抱える深刻な課題についても触れた。現代日本の最大の問題である少子化については高齢者が頑張ること及び若い世代のハングリー精神が必要だと訴えた。

◇26日教皇フランシスコの葬儀がバチカンのサンピエトロ広場で営まれた。埋葬先の大聖堂までの沿道には推計40万人以上が集まった。教皇は核兵器廃絶を訴え、トランプ政権の不法移民強制送還も批判した。弱者に寄り添う姿勢を貫いたのだ。

 ゼレンスキー大統領はサンピエトロ大聖堂でトランプ大統領と会談した。通訳を入れず二人だけの会談。両首脳の会談はワシントンで口論し決裂して以来である。大聖堂の荘厳な雰囲気は二人の胸にどのように影響したか大いに興味が湧く。ゼレンスキー氏は「国民の生命を守ること、無条件の完全停戦、信頼可能かつ永続的な平和」を議論したと表明。そして「歴史的なものになる可能性を持つ非常に象徴的な会談だった」と語った。ホワイトハウスも「非常に生産的な議論だった」と報じた。平和の実現を強く望んでいた天国の教皇への良いプレゼントになることを期待したい。

◇石破首相は27日ベトナムを訪問。トランプの高関税政策に対し自由貿易体制を強化する重要性を確認した。また、貿易・投資といった経済協力を拡大し東南アジアの成長に貢献する姿勢を示した。東南アジアには先に習主席が訪問し、アメリカに対抗する関係を強めようとした。東南アジアの国々は中国にもアメリカにも近づき過ぎたくないという本音がある。その点、日本に対しては強い信頼感を持っていると言われる。日本にとって絶好のチャンスである。真の信頼関係を築くためにはアメリカ一辺倒にならず途上国に真に寄り添う姿勢が必要である。日本にはそのための多くの蓄積がある。今こそそれを役立てるべきである。多くの発展途上国と厚い信頼関係を育むことは安全保障の観点からも非常に重要である。

◇夏の参院選が迫り、物価高で国民は悲鳴。トランプの関税政策への対応は厳しい。内憂外患状態を乗り切るには首相の強い指導力が必要だが、首相の党内支持基盤は弱いからそれも難しい。首相は不退転の決意で正面突破を貫くべきだ。(読者に感謝)

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2025年4月27日 (日)

死の川を越えて 第106回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

 リー女史の話しぶりは、顔に表れている強い信念と比べあくまで謙虚であった。静かな拍手が起きた。

 この時、正助が遠慮がちにそっと尋ねた。

「俺は国のために一人一人の人間があると教えられ、当然のことと思ってきました。だからお国のために戦わねばならないと考えてきました。お国のために一人一人があるというのは間違っているのですか」

「おぉ」

と言ってカールが進み出た。

「それ、極めて重要なことね。そして極めて難しいけど理解してください。私、一生懸命説明します。聞いてくれますか」

 カールは開いた両方の手のひらを前に出して重大さをジェスチャーで示した。正助が頷いた。

「それは恐ろしい思想の基礎となっているファシズム、日本では全体主義と言いますね。人間の権利や自由を否定し国家を最高目的にし、一人一人の人間は国家に従属し奉仕しなければならないとする思想です。国家が間違った方向に進む時も、一人一人の人間はお国のために従属し奉仕しなければならない。国の目的が第一。一人一人はそのためにあるから犠牲になってもいいとなります。先ほど、ご老人がおっしゃいました。人間は一人一人が大切、国の役割はそれを守ること、国は弱者を守るためにあると。その通りです。ファシズム、全体主義はこの逆です。今のイタリア、ドイツがそうなのです。だから国が大変な時に、生きるに値しない命などという思想が出てきます。どうか分かってほしいです」

 ここでまた万場老人が手を挙げた。

「わしの先の発言が取り上げられた。うれしく思う。そこでまた、一言いわせてもらうぞ。国が間違った道に入って、にっちもさっちもいかなくなって引き返せなくなったら、われわれは国のために命を懸けなければならなくなる。そうならぬようにすることが重要なのじゃ。軍国主義の独裁政治では、国民が関わらぬところで、政治の方向が決められていく。現在の日本を見て、わしはこのことを痛切に心配しとるのじゃ」

 万場老人が沈痛な表情で言った。正助は老人の話が理解できたので、老人を直視して大きく頷いた。

つづく

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2025年4月26日 (土)

死の川を越えて 第105回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

「カールさん、実にいい勉強会ですな。ドイツ、イギリス、韓国、日本が一堂に集まって人間の命、国の役割といった重大なこと、そして、われわれの運命に関わることを論じることになった。あなたのおかげですぞ」

 この言葉にカールは大きく動かされたようだ。破顔一笑、それまでの緊張と怒りの表情は消えて、叫んだ。

「ダンケ、ダンケ。ありがとう、ありがとう」

 人々はこの異人の感情がまっすぐに自分たちの心に届くことを不思議に思い感動した。

 その光景を眺めながら万場老人は続ける。

「少し難しい理屈じゃが言わせてもらう。人間は一人一人が大切なのじゃ。国の役割はそれを守ることにある。国は何のためにあるか。わしは、国は弱者を守るためにあると信ずる。だから、生きるに値しない命などという発想がそもそも間違いなのじゃ。こんな考えが日本に広がらぬようわれわれは頑張らねばならぬ」

「そうだ」

「そうだ」

 あちこちで声が上がり、同時に拍手が起きた。その時、後ろの席にいたマーガレット・リー女史がそっと立ち上がる姿が見えた。リー女史は微笑みを浮かべながら前に進み出て言った。

「私にもう一言お話しさせてください」

 意外な展開に人々は驚いた。普段遠くから見る異国の女性が、今こんなに身近にいて共通の問題で心を通わせていることが不思議であった。人々には白いドレスをまとったリー女史が神々しく見えた。

「皆さま、私、今日はとても感動です。大変に感謝しています。今、皆さまが話されたことは神様のご意志にかなったことです。神様のご意志のことが自然に語られました。水が流れるように神にかなったお話がされたことにとても感動しております。繰り返しますが、人間、一人一人が同じように大切というのが神のご意志です。国は、そのような人々を守るためにあります。国のために一人一人の人間があるのではありません。みんな、生きるために神様から与えられた命なのに、生きるに値しないなんておかしいではありませんか」

つづく

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2025年4月25日 (金)

「明日のふるさと塾はやるぞ!!日本は世界の尊敬を集めている。トランプは墓穴を掘っている。自転車」

◇明日26日の「ふるさと未来塾」は日本が国難にあることを意識して語るつもりだ。外からはトランプ、プーチン、習近平など世界の巨人が起こす大波に翻弄される日本、内的には弱小政権がかつてない難題を抱え累卵の危機にある。正に内憂外患の時なのだ。羅針盤を失って漂う船に似る。

 内憂と外患は密接不可分である。歴史を振り返れば私たちは多くの国難を乗り越えてきた。日本人は現在勇気と自信を持つべきである。こんな状況下、日本を高く評価する見解に接しホッとした。元米国防次官補ランドル・シュライバ氏である。同氏は世界情勢を憂う中で次のように発言した。「日本は、世界の課題に平和的かつ建設的に関与してきた。開発援助やリベラルな国際秩序の推進など日本だけでやれることはある。世界の尊敬を集める日本が今後も建設的な役割を果たすと信じている」。「世界の尊敬を集める日本」という評価が私の心を揺する。「世界の尊敬を集める」理由はかつて侵略国であった日本が広島・長崎を乗り越えた点にある。先日亡くなったローマ教皇は世界が広島・長崎を活かしていないと嘆いた。世界の平和と安定のために、アジアとインド太平洋は極めて重要で、この地域に於ける日本の役割と使命は測り知れない程だ。

 ふるさと塾で取上げる課題は多いがその中で力を入れたいのはトランプ政権が有名大学の学問の自由を侵害しようとしている点だ。大学の教育方針を助成金を武器にして締めつけようとしている。ハーバード大は「いかなる私立大も連邦政府に乗っ取られてならない」と訴える。

 科学の発展はアメリカにとって、更には世界にとって極めて重要な基盤である。このような流れを背景に科学者がアメリカから海外に流れ出ている。研究論文の数は中国が追い抜いている。トランプ政権は自ら墓穴を掘っているに違いない。

◇自転車の反則金制度が来年4月1日から始まる。自転車の悪質な違反が相次ぎ、事故が急増している。青切符を切るのは自転車は対象外だった。対象となる主な違反と反則金は次の通りだ。

 スマートホンや携帯電話の使用(1万2,000円)、遮断踏切立ち入り(7,000円)、信号無視(6,000円)、逆走・歩道通行(6,000円)、無灯火(5,000円)、横に2台以上並んで走る(3,000円)、2人乗り(3,000円)などである。最も身近な交通手段で違反の意識も薄く行動している。社会が大きく変化しているのだ。高校生等のながら運転が日常化しているのは恐い。(読者に感謝)

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2025年4月24日 (木)

「壮大なサンピエトロ聖堂と清貧を貫いた教皇の葬儀。全米の反トランプの渦に驚く。中国はチャンスとばかりに躍起」

◇教皇フランシスコの葬儀がサンピエトロ大聖堂で行われた。この寺院はカトリック教の総本山である。ミケランジェロが設計したこの寺院の荘厳さとカトリックの2千年の歴史の深さに改めて打たれた。イエス・キリストの使徒である聖ペトロの墓所の上に建てられた教会である。寺院を包む雰囲気はカトリックの歴史と途方もない権力を映している。教皇は「清貧」を信条とした生涯を貫いた人。教皇の魂は安らかに眠れるのかと案じていたがお別れは質素に行われほっとした。過去の教皇と異なり金色の布は使われず、質素な木製の棺が使われた。教皇は昨年自ら規制を変え、死から葬儀までの多くの儀式を廃止し質素にした。生前多くの改革に心を砕いた教皇は自らの葬儀にもそれを貫こうとしたに違いない。葬儀担当の大司教はこの葬儀について語った。「権力者ではなく、キリストの弟子としての葬儀であることを強調するものだ」と。

 葬儀にはトランプ大統領、ゼレンスキー大統領など各国の首脳が出席を表明。教皇はトランプの政治姿勢を厳しく批判した。神聖な儀式もトランプにとっては単なるディール(取引)の場なのかも知れない。台湾からは頼総統の特使が参列。バチカンは台湾と外交関係をもつ唯一の存在である。日本からは岩屋外相が参列する。教皇は亡くなる前日も復活祭の行事に姿を見せ、集まった信者に声をかけた。教皇の最期を見守った人たちは「教皇は苦しまなかった」と伝えた。14億人の信者に対してばかりでなく全世界の人々に健康長寿の手本を示した幸せな人生だった。

◇トランプ政権は欧州との対立を深め自国内でも反トランプの声に直面している。トランプの表情が最近輝きを失って見えるのは気のせいばかりではなさそうだ。26日のふるさと塾では5日全米で吹き荒れた反トランプデモも取上げる。国内の反トランプの動きは加速していると思われる。トランプが闘志を燃やす最大の相手国中国は存在感を示す絶好のチャンスとみて行動を活発化させている。先にベトナム、マレーシア、カンボジアなど東南アジア諸国を訪れ結束を高めようと躍起となった中国は今度は欧州接近に向けて動き出した。大毅外相は、英国・オーストリアの各外相と相次いで電話協議し米国への対抗と結束を呼びかけた。「中国は責任ある国として国際秩序を断固として守る」、「中国とEUは開かれた世界経済を構築すべきだ」と訴えた。この重大で新しい局面で日本の役割と使命は大きい。(読者に感謝)

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2025年4月23日 (水)

「カトリック14億人の頂点が世を去った。2000年のカトリックの歴史、その光と陰。産院の取違いの悲劇」

◇巨星天に昇る。カトリック信徒14億人の上に立つローマ教皇フランシスコがこの世を去った。私にとっても特別な存在だった。フランスのノートルダム寺院では教皇の年に合わせ88回の鐘が鳴らされた。年米アルゼンチンでイタリア系移民の家庭で生まれた。アルゼンチンは私も訪れ群馬県人会の人たちとも会ったが貧富の格差が激しい国である。生い立ちは人間の原点となる。教皇に選ばれてから中南米、中東、アジアを次々に訪れ、貧しい人弱い人に寄り添った。その行動力は「空飛ぶ聖座」をほうふつさせた。表面がきれいに輝く飾り物ではなく、世界の道徳的・精神的支柱であった。長崎市爆心地公園の演説では「焼き場に立つ少年」のパネルを傍らに置いた。アルゼンチン時代はバスや地下鉄でスラム街に通った人。少年の姿は教皇の胸に突き刺さったに違いない。広島・長崎を訪れた教皇は、「現代の人々は至る所で断片的な第三次世界大戦の中にある。人類は広島と長崎から何も学んでいない」、こう言って強い懸念を示した。2000年のカトリックの歴史には大きな矛盾も存在する。女性の司祭を認めないのもその一つ。教会がタブーとする離婚や同性愛にも柔軟な見解を示した。聖職者による未成年者への性的虐待は深刻。責任追及を徹底する方針を示し、被害者に「許しを求めたい」と直接謝罪した。キリスト教の本質には人間尊重がある。それを脅かすものが現在黒い雲のように広がっている。黒い雲を煽っている一つはトランプのアメリカ第一主義である。教皇フランシスコのあとを継ぐ人は誰になるのか。選出の手続き「コンクラーベ」の行方に注目が集まる。

◇都立産院の新生児取違い事件は酷い。被害者の江蔵さんは67歳になった。東京地裁は出自を知る法的権利は失われないとして実親の調査を命じた。江蔵さんは「神に願うような気持ち、一日も早く会いたい」と訴えていた。憲法は定める。「すべて国民は個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は最大の尊重を要する」と。

 江蔵さんはこの事件で既に都に対する損害賠償を求める訴訟で勝っている。東京高裁は「重大な過失で人生を狂わされた」として都に二千万円の支払いを命じたのだ。今回の東京地裁判決はこれを踏まえ実親の調査を命じたもの。

 分娩に関わる者は人の一生の原点に関わるという重大な責任を負うことを自覚しなければならない。慣れによって重大な過失を招き、人の人生を狂わせる責任の大きさをかみ締めねばならない。(読者に感謝)

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2025年4月22日 (火)

「2040年問題は日本の危機。毒親と介護の義務。古本屋の存在は文化度を示す」

◇高齢社会の大波が身近に深刻に迫る。4歳下の妻の物忘れが進んでいる。先日、自室から台所まで動き立止まってしまった。「何だっけ」と、何で台所に来たのか分からないという。笑い話で済ませたがこの先どうなるのかと思うと憂鬱である。

 目前に迫る2040年、団塊ジュニアが65歳以上に。認知症は高齢者の15%と推計される。その数全国で584万2千人に達する。今後一人暮らしの認知症は確実に増える。家族の支援が限られる中、地域でどう支えるかが大きな問題だ。高齢化が加速する中での認知症の広がりは、想像を超えた恐ろしさである。日本はかつての活力を失って底無し沼に沈んでいくのか。

 2040年問題で最大の課題は高齢者の介護である。地域社会で支えるといっても介護職員の減少が深刻なのだ。少ない職員数で多様な介護サービスが続けられるよう、国と自治体は知恵を絞らねばならない。

 現在各種の施設ごとに一定数の職員や有資格者の配置を全国一律の基準で行っているが地域の実情に応じるべきだ。一律のルールは無駄が多い。高齢者の人権を守らねばならない。

◇殺伐とした社会で「毒親」という表現が無気味である。これは自身のことを優先させ子どもの幸せを軽んじる親のことで、アメリカの専門家が提唱した。今、親子を結ぶ倫理や道徳が硬直した日本社会の一面を切り取って示すようにこの言葉が問題となっている。親の介護や葬儀を拒む人が増えているのだ。親子の人間関係がよくなく、親の介護をしたくない、関係を絶ちたいという人の声が聞えてくる。世論は分かれている。親の勝手は許さないとして子どもに味方する立場と社会の伝統と秩序を守ろうとする立場だ。民法は厳として定める。「直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養をする義務がある」と。この義務は個人の立場や感情より優先されねばならない。毒親であっても社会の秩序のために無視することは許されない。

◇久しぶりに馴染みの古書店をのぞき映画に関する本を買った。「ある映画監督の生涯」、「実録日本映画の誕生」、「映画が幸福だった頃」。少年時代から古書店まわりが好きだった。昔は小さな古書店が多くあった。古書店は街の文化度を表わす。どういう訳か左の思想の店主が多かったようだ。古書店だけでなく本屋そのものが少なくなった。本を読む人が少なくなっているのだ。日本の文化が人の心と共に沈んでいく。(読者に感謝)

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2025年4月21日 (月)

「二足歩行人型ロボットの脅威。習主席と東南アジア3カ国。日本は歴史的チャンス」

◇二足歩行の人型ロボットのハーフマラソンに度肝を抜かれた。「世界初開催」と銘打たれ19日北京市で行われた。北京の新興企業開発の「天工」が優勝。ロボットといえば少年の頃、手塚治虫のアトムが夢の存在だった。天工は凹凸や起伏のある道路もスムーズに走った。人型ロボットとAIとの融合の成果だ。少子高齢化が進む中国ではロボットへの期待は高い。2025年は人型ロボットの「量産元年」と言われ普及が急スピードで進む。中国では将来の急速な人手不足が懸念されている。

 中国は、安価で豊富な労働力で「世界の工場」としての地位を築いたが少子高齢化によりその地位に危機を感じている。ロボットにかける期待は大きい。中国は国を挙げてAIと融合したロボット開発を進めようとしている。

 中国の電気自動車工場では人型ロボット同士がお互いに協力して物を運び精密な組み立て作業を始めている。

 人口減少、少子化は日本も同じである。人型ロボットはいずれ日本でも重要な役割を担うことになるだろう。人間の劣化が指摘される状況において、ロボットの進化とあわせて人間の仕事がロボットに奪われる懸念が大きくなるかも知れない。認知症が増大するなかで介護の分野でもロボットが不可欠の存在になるだろう。そこで人型ロボットが大きな役割を果たすに違いない。ロボット搭載のAIの進化により優しい心をもった人型ロボットが登場することを期待したい。

◇習主席は東南アジア3カ国の外遊を終えた。訪れたベトナム、マレーシア、カンボジアはいずれも「トランプ関税」の対象国であり自由貿易を守るべきだとして共闘を呼びかけた。一定の成果を得たようだが3カ国には全面的に中国と手を結ぶことにはためらいがあるようだ。習氏はカンボジアのフン・マネット首相との会談で「両国の鉄壁の友情には固い政治的基盤がある。あらゆる一方的ないじめ行為に反対する」と米国を牽制した。また、ベトナムのトー・ラム共産党書記長の会談でも「一方的いじめに共に反対しよう」と結束を呼びかけた。

 東南アジアの国々は米中両大国の間でバランスを取らねばならない難しい事情を抱える。日本か東南アジアと協力関係を築く歴史的チャンスである。日本はこれらの国に信頼されている。アメリカとの橋渡しを築こうなどと考えず東南アジアの真の発展と友好を築くことに尽くすべきだ。アジアの多くの留学生と接する立場からも日本の使命を痛感するのだ。(読者に感謝)

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2025年4月20日 (日)

死の川を越えて 第104回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

 金髪で青い目の異人がなぜ大きな声で怒るのか、その深い意味が人々にはよく分からない。ただ朝鮮人を差別すること、自分たちハンセン病の患者に災いが及ぶことを心配してくれていることは分かる気がした。そして、白い肌の異人が真っ赤になって怒るというめったに見られない光景を人々は固唾をのんで見守った。

 この時、万場老人が手を挙げて発言を求めた。

「リーさんの言うこと、カールさんが怒る意味、わしはよく分かりますぞ。皆さんは神の前の平等ということを申された。神のいうことは正しいに違いないが、神を知らぬ者、また、違う神を信じる者も人間は平等でなければならぬ。この点が大切じゃ。生きるに値しない命と名札を貼られるのは人ごとではない。わしは、中国に力を広げようとしている日本の将来を心配しておる。アメリカとの関係が悪化して戦うことになれば、日本はドイツと同じような状況に立たされる。困難な社会状況の中で多くの弱い人たちは、国にとって無用のもの、お荷物とされ、生きるに値しない命とされてしまうに違いない。そうなれば、真っ先に名札を貼られるのはわれわれハンセン病の仲間であろう。大変なことじゃ」

 この時、それまで黙って聞いていた一人の若者が突然声を上げた。正男だった。

「カールさんが怒っている意味が分かったぞ。俺たち患者は世の中のお荷物だから殺されることになる。カールさんは、おれたちのために怒ってくれているんだ。感謝しなくちゃなんねえぞ」

 これを聞いてカールが言った。

「ありがとう。ありがとう。君の今の言葉、聞いて、私が日本に来た目的、達せられた思いです。この声を日本中に広げること、大切です。皆さんの心が分かって、私本当に幸せです」

 この時、そっと手を挙げた若者がいた。皆の視線が集まる。権太であった。

「俺は難しいことは分からねえが、体の腐った部分を切り捨てるというのは納得がいかねえ。人間を腐った部分と見るなんて最低の考えでねえか。聞いたことがねえ。西洋の文明国の偉い先生もこんなものかと思いますだ」

「そうだ、権太の言う通りだ」

 誰かが叫ぶと一斉に拍手が起きた。権太は自分の発言が思わぬ反響を巻き起こしたことに驚き、しきりに恐縮の様子である。

「わしにもう一言いわせてくれんか」

 万場軍兵衛であった。

つづく

 

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2025年4月19日 (土)

死の川を越えて 第103回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

「それでは、この集落のハンセン病の患者もそれに当たるということになるのですか」

 正助が言った。

「そういう風にどんどん広がる恐れがありますね。生産に参加できない高齢者にまで広がるかも知れません。論文は、そういう命を生きるに値しないものとし、それをこの世から消し去ることは、恵みの死を与えることだというのです。精神科医のホッヘは、国家を一つの人体にたとえて、その一部に腐った部分ができたらそれを切り取ること、それが全体の身体を生かすためだと主張しています。腐った部分とは、生きるに値しない命なんです。皆さん、どう思いますか」

 カールはテーブルをどんと叩いて言った。

 その時、別の声が上がった。

「おお、何と恐ろしいこと。神を畏れぬ仕業です。神は絶対にそのようなことをお許しになりません」

 リー女史の声であった。

「全体のために腐った部分を捨てる。それこそ全体主義の悪い点じゃ」

 万場老人が言った。これに頷きながら、リー女史は続けた。

「私の国はイギリスです。イギリスはドイツと戦いました。ですから敗れたドイツの苦しみはよく分かります。私たち戦勝国が与えた罰が厳し過ぎたことも承知しています。この恐ろしい論文はそういうドイツの事情と関係あるのかもしれません。しかしです。生きるに値しない命などあるはずがありません。人間は神様がつくりました。人間は神の前に平等です。一人一人の人間が尊いのです。一人一人の人間が平等にこの世で生きることを許されているのです。病める人も、傷ついた人も平等な人間なのです」

 静かな貴婦人の激しい舌鋒に人々は圧倒され、会場は水を打ったように静かになった。カールは、女史の方を向いて頭を下げ、敬意を表する態度を示して言った。

「マーガレット・リーさん。あなたのこと、かねて聞いていました。ここで大変なお仕事されていますね。お訪ねしようと思っていました。お会いできて大変うれしいです。今、私の気持ち、全部言ってくれました。私のドイツはあなたのイギリスと戦って負けましたが、このような思想がドイツ人の学者から出ること、私、恥ずかしい。ドイツの教会本部からこの考えが広がることを阻止しなさいと強い指示、ありました。私の担当は韓国ですが、韓国のこと、日本に来ないとだめね。裏の世界のこと、鄭さん何でも分かる。いろいろ教えられて、私、助かりました。そして、私の心大変燃えています」

つづく

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2025年4月18日 (金)

「15万匹のヘビの群れの恐怖。老いていくサンタ。天才類人猿の能力。細胞治療とパーキンソン病」

◇蛇蝎(だかつ)のごとくと言う。蝎とはサソリである。嫌いなものの象徴として使われる表現。私はヘビは想像するだけでぞっとする。しかし興味ある不思議な存在である。神話の世界にもあるようにヘビは人類にとって特別の生き物である。最近15万匹と言われる大群の写真に驚愕した。この世のものとは思えない光景だ。カナダのマニトバ州で毎年春に発生。地球上で最大のヘビの集会。道路を横切る時数万匹がベチャベチャと車に轢かれるという。人々は道路の下に穴を作って移動を助けようとしている。アカハラガーターヘビでカナダの自然保護区内の出来事。求愛活動の形態とも。地球は人類だけのものではない。ヘビは共生を考える良い材料である。私たちのまわりにヘビを見かけなくなった。農薬のためネズミやモグラがいなくなったためか。生き物の連鎖が失われようとしている。

◇最近、動物に心があることを身近に感じる。我家の柴犬サンタが12歳になった。「お前も年をとったな」と時々話しかける。私の癒しにもなっているしサンタにとっても力になっているらしい。昨日動物病院の検査で寄生虫フィラリアがいないことが分かりホッとした。注射針に絶叫する声は生の証であった。サンタも老いや行く手の死を体で受け止めているに違いない。

◇49歳の類人猿の天才が最近亡くなった。300以上の文字を理解し人の言葉を聞き分ける。ライターでたき火をおこしテレビゲームを楽しむという。信じ難い。心を持つ生き物は人間だけでないことを痛感する。人類は社会生活の中で心を進化させてきた。その歴史を遡れば原点に於いて我々は類人猿と大差ない存在に違いない。

◇私はかつてパーキンソン病の会に関わっていた。手足が震え、よく歩けなくなり、寝たきりになる難病で日本には20万人の患者が苦しんでいる。この脳の病に大きな朗報が現れた。ips細胞から作った神経細胞を患者の脳に移植する治験で効果が見られたという。ここまで進んだ細胞治療の原点は京都大の山中伸弥教授。皮膚や血液の細胞から様々な細胞になるips細胞をつくることに成功。受精卵を利用する場合の倫理的課題がクリアされた。京大チームはips細胞を使った細胞治療のトップランナー。治験効果は実用化に向けた大きな前進だ。細胞、特に脳細胞は人類の進化の蓄積を宿す神秘の世界である。現在その扉が開けられ冒険と探検の旅が始まろうとしている。知の砦である京大がいかなる力を発揮するか見守りたい。(読者に感謝)

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2025年4月17日 (木)

「入学式で大学トップの決意は。AIの被害はどこまで。トランプに反対する名門大学の影響は」

◇4月は入学式の季節。光るランドセルを背に親に手を引かれる小学一年生から大学の門を叩く若者まで、皆新しい人生に挑戦する姿である。各大学トップのメッセージに注目する。法政大学では「SNS上で事実に基づいた情報と事実無根の情報が交差している。正しい判断ができる力を磨いて」と呼びかけた。科学技術の進歩は驚くばかりで、情報洪水の中で私たちはあっぷあっぷである。これを泳ぐ人間の力は低下し劣化しているから我々は危機の中である。

 生成AIでわいせつ画像を作り販売したとして4人の容疑者が逮捕された。女性の下半身が詳細に描かれたポスターが簡単に作られ、あっという間に拡散される恐怖から人と社会を守らねばならない。鳥取県では今年4月、ディープフェイクポルノの製作や提供を禁止する全国初の改正県青少年健全育成条例を施行した。警視庁は誰でも使える生成AI悪用犯罪が広がりつつあることに警戒を強めている。

◇故八代亜紀さんの「フルヌード写真」付のCDが発売される状況に抗議の声が高まっている。販売企画の企業は「八代さんの公私の写真を買取った。文句があるなら権利を買取ればいい」と開き直っている。深く大きい反倫理の問題である。“権利を買ったから”で何でも出来る訳がない。死者の尊厳を踏みにじることにもなる。リベンジポルノ法に反する可能性が指摘されている。社会の一角が大きく崩れていく恐怖を感じる。

◇小さな政府を掲げ大規模な人員削減に進むトランプ政権は自らの墓穴を広げているようだ。トランプ政権は名門大学に対し補助金凍結を脅しに使って学問の自由を圧迫しようとしている。保守主義のトランプはイスラエルに抗議する大学の姿勢を激しく弾圧する構えである。ハーバード大はトランプに公然と反対し助成金を凍結された。ハーバード大は「いかなる私立大も連邦政府に乗っ取られることがあってはならない」と猛反発。イーロンマスクのいかにも軽薄そうな表情が人類の学問の自由、科学の進歩を妨げようとしている。科学大国アメリカから優れた人材が流出している。流れはどこに向うのか。科学のリーダーは多くが中国に向っているとも。

 アメリカは科学の中心たる地位を近い将来中国に引き渡すだろうと言われる。科学論文の数は既に中国が上回っている。ノーベル賞の数が少ないのが中国であるが、近く変化が現れるかも。トランプの偏狭な姿勢はアメリカを真に支える科学の分野をも崩そうとしている。(読者に感謝)

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2025年4月16日 (水)

「止まらない人口減社会。太田市長選の熱戦の意味」

◇日本が限りなく萎んでいく。人口減少が止まらない。総務省は2024年時点の人口推計を発表。減少は14年続いている。社会の影響を考える場合その中味が重要である。生産年齢人口が減り、75歳以上が増えている。第一次ベビーブームで生まれた人がすべて75歳以上となったからだ。

 日本人の減少幅は13年連続で拡大。外国人は過去最多となった。外国人との共生の時代が加速している。84年生きて来て子ども時代と比べ隔世の感がある。昔は外国人を見かけると注目したものだ。今では至る所外国人だらけと言っても過言ではない。そして外国人は元気である。日本人は高齢者が目立ち、若い人は覇気がない。かつてのサムライ文化を取り戻さねばならない。困った時は原点に立つのが原則である。戦後のハングリー精神を取り戻すべきだ。

 最近の高齢者は近くの公園や保育園などの元気のいい子どもの声を迷惑がっている。情けないと思う。子どもの声は明日を開くエネルギーの現れである。

◇人口減の影響はいたる所で顕著になってきた。一例は郵便局の窓口を半日休止する動きだ。本県中之条町の六合と入山の郵便局で5月から始まる。私は白根開善学校に深く関わっているので六合(くに)、入山には特別の思いがある。六合の名は古事記に由来する。開善学校は故本吉氏の執念が実現させた。百キロ競歩に挑戦した体験があの時の足の痛みと共に甦る。人口減社会の人手不足対策として六合及び入山の郵便局が全国に先駆けて報じられることに驚いている。

◇万博で14日「ナショナルデー」が始まった。各国が文化や歴史を発信するもので、各国の特色を知る機会である。万博を機に世界一周を楽しむことが出来る。トップバッターは中央アジアのトルクメニスタン。万博でもなければ行けない国だ。人権無視の最悪の独裁国家。メタンなどのガスが燃え続ける直系70mの「地獄の門」は有名である。民族舞踊「クシュトデブディ」を躍る姿を見て独裁国家に於ける女性の人権に思いを馳せた。

◇太田市長選については民主政治の関係で考えさせられる点が多い。清水さんは有能な人で市長として実績を上げた。稀に見る接戦は清水さんの評価が高かったことを物語る。前例がない程変化の激しい時代である。有権者はそれに応じた変化を求める。有権者の選択可能性は民主主義の本質である。政治家にとって引き際の大切さは民主主義の本質に繋がる本質なことだと自身の体験を振り返って痛感する。(読者に感謝)

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2025年4月15日 (火)

「万博に火星の石、宇宙時代を考える時。赤沢氏の交渉に期待。穂積氏激戦を制す」

◇万博が13日開幕した。前日、開会式の天皇のあいさつに心を打たれたので、初日の状況に期待。あいにくの雨。傘の長蛇の列。今回は並ばない万博を掲げていた。会場のシンボル大屋根リングは「世界最大の木造建築物」としてギネス世界記録に認定された。1周約2キロ、高砂最大20メートルである。このリングの内側には各国が個性を競うパビリオンがひしめく。文明の祭典。日本館では世界最大級の火星の石だ。万博の目的はいのち輝く未来社会の創造である。人類の未来は宇宙時代にある。火星の石は世界の人々が宇宙時代の人類の幸せを考える上で大きな意義がある。この点からすれば私は小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った微粒子をはやぶさの資料と共に展示して欲しかった。万博のリアルな情景を見るにつけ期間中に一度行ってみたくなってきた。日本での万博は私の生涯ではこれが最後に違いない。最終日は10月13日。184日間が無事に過ぎることを祈るばかり。なぜなら大災害の足音が近づく状況で日本は累卵の危機にあるからだ。

◇赤沢経済再生相が16日から訪米する。石破首相は関税措置事態を「国難」といい、全閣僚が加わった総合対策本部を設け赤沢氏と林官房長官を共同議長とする体制を固めた。こういう状況での赤沢氏訪米は日米交渉の先陣であり切り込み隊長の感すらある。日本は重要な同盟国なので他の多くの国に先駆けて関税問題の交渉に当たる。トランプの決意は固いと言われるがアメリカは現在窮地にある。トランプの関税政策で困っているのはアメリカ国民である。先日の反トランプデモは凄まじかった。アメリカ第一主義を掲げるトランプは選挙第一主義者でもある。中国選挙に勝つために日本は重要だ。最大の敵対国中国に対する上でも日本は最も重要な国。赤沢氏は冷静に分析して良いカードを準備しているに違いない。内閣の支持率が低迷している中、交渉の成果は首相の政治生命にも深く関わっている。

◇14日の地方紙は両手を大きく上げて満面の笑顔を見せる穂積氏を報じた。35,091票対32,989票という激戦。市民の関心も高かった。清水氏を支援する組織体制はすごかった。100を超える企業や団体の支援を受け市議30人のうち22人が清水さんを支援した。かつての萩原前橋市長が敗れた時とよく似ている。清水さんは最後の戦いと決意し小さな集いにも顔を出していた。県議として私と一緒の時もあった。有権者は新しい風を求めたのだ。(読者に感謝)

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2025年4月14日 (月)

「万博始まる。天皇の挨拶に注目。各地の大学の入学式で見るトップの姿勢と学生の姿」

◇13日、大阪万博が開幕。前日の開会式を見た。世界160を超える国、地域、国際機関の参加者が展示や催事を繰り広げる。この地球規模のイベントの目的は何かを考えた。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。抽象的な表現だが目的はいのち輝く未来社会を創ることにあると考える。開会式における天皇の挨拶にこのことが込められていた。天皇はテーマに触れ次にように述べた。「世界の人々が自分自身だけでなく周りの人々のいのちを尊重して持続する未来を共に創り上げていくことを希望します」。私たちはこの言葉に込められた深い意味を考えるべきである。自分自身だけでなく周りの人々のいのちを尊重し未来を共に創り上げる。これに最も反する考えが自分第一、そして自国第一、つまりトランプの下で世界に広がる自国第一主義である。周りの人々のいのちを尊重すべきなのにトランプは自分の国の利益を優先させ、そのためには地球環境が破壊されることもかまわない。ロシアのウクライナ侵攻も容認する姿勢である。欧州との対立も激化させている。温暖化により異常気象が常態化し、大洪水が襲い、南極の氷が溶け出し海面は上昇し続ける。世界中の人々が大阪に集まるのは、これらの問題を考える絶好のチャンスである。天皇のあいさつは平和国家日本を代表して世界に発信する表現にふさわしい。トランプに「恥を知れ、恥を」と叫びたい。

 万博にはあっと驚く最先端の技術や工夫が登場するが、その一つ一つに目を奪われたのでは、木を見て森を見ないことになる。

◇各地の大学で入学式が行われている。入学する若者にはそれぞれの思いがある。それは新しい人生の原点と成り得る。これら若者に呼びかける大学トップの決意は重要である。稀に見る大変化、「国難」の時、若者を迎える大学の姿勢が大きく問われる時である。

 各大学のトップのメッセージには、恐れずに挑戦すること、ともすれば安定を求めて内向きになりがちな若者に冒険の大切さを訴えた。

 私は多くの途上国の留学生の姿勢と比べ日本の若者には進取の精神がないと痛感する。私は日本アカデミーの理事として留学生にかつてのサムライの精神を感ずる。日本の若者は便利さと豊かさに溺れ、AIに代表される機械文明の便利さに流され魂を抜かれたような状況である。これでは目前の大きな危機を乗り越えられない。大学トップにはこの危機感があるに違いない。(読者に感謝)

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2025年4月13日 (日)

死の川を越えて 第102回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

「日本の皆さん、草津の皆さん、ありがとう。カールです。多くの韓国の人、大震災の時殺されました。とても悲しいこと。日本人に朝鮮人のこと差別する心、あります。私、鄭東順からいろいろ聞きました。この差別の心が朝鮮人を虐待する大きな原因になったと思います。この差別、朝鮮人以外にきっと広がります。ハンセン病の患者にも。そして、国が大変な時、ドイツと同じように、弱い人たちを犠牲にする危険な思想が広がることを恐れます。人を差別する心、人間を大切にしない心は、生産に参加できない人の価値を認めません。これ、今日話すことと関係します。草津の湯の川地区のこと、鄭さんから聞いた。この集落のこと、もっとよく知りたい。私、皆さんと力を合わせたい。これ、イエス様の導きです」

 この時、万場軍兵衛が発言を求めた。

「鄭さんとつながる皆さんとここで会えるとは実に不思議な気持ちですぞ。明霞さんとこずえがここで、こうして会えるのは、神の導きであろう。カールさんの話を聞けるのも神の力かも知れぬ。ところで、そのドイツで懸念されているという恐ろしい考えとやらをぜひ聞きたいものじゃ」

 カールは大きく頷いて言った。

「ご老人、よく言ってくれました。この山奥に来たのには大きな意味あります。ビンディングとホッヘという2人の有名な学者が『生きるに値しない命』という論文を書きました。今ドイツでは大きな話題になりつつあります」

「えっ、生きるに値しない命ですって、そんな命があるのですか。誰が決めるのですか」

 正助がドイツ人の言葉をさえぎって言った。この時、端に座っていたマーガレット・リー女史の身を乗り出すようなしぐさが見えた。

「1920年の初めに出た論文ね。ここ3、4年ドイツでは賛否の激しい議論、沸いています。生まれつきの知的障害者、精神病患者、治る見込みのない病人など生産活動に参加できない人を挙げています。こういう人たちのため、国は毎年莫大な負担をしている。それ、誤った政策を求められ国が滅びようとしている。国民が心を一つにして頑張らなければならない時なのにそういう政策、全く無駄なことだというのです」

つづく

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2025年4月12日 (土)

死の川を越えて 第101回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

 正助が進み出て言った。

「皆さん、この方々はドイツ人のカールさんと韓国人の明霞さん、そして通訳の田中さんです。明霞さんは朝鮮で差別に苦しむ私たちの仲間です。シベリアで死ぬところを私は多くの人に助けられました。今回の大震災で多くの朝鮮人が殺されたことに、向こうでは大きな衝撃を受けています。カールさんは、私たちに特別話したいことがあるそうです」

 大きく頷くカールの目に何か強い決意が表れている。その時、通訳の田中が発言を求めた。

「その前にドイツについて日本人の私から少し説明したいことがありますがよろしいでしょうか」

 正助が笑顔で承諾を示すのを見て、田中は話し始めた。

「ドイツは西洋の大国ですが、世界の強国を相手に戦って敗れ非常に大変な状況です。日本はドイツの敵でした。日本がたたきのめしたドイツのカールさんと仲良しになったのが不思議に思えます。話しはそれましたが、そういう大変な状況で大変恐ろしい思想が広がり始めています。それは、人間とは何かということに関わる考え方です。カールさんは、韓国に来て、韓国でも同じ考えが広がることを恐れました。カールさんは韓国の差別の実情を見ました。朝鮮人が日本人によって差別されている。そして、ハンセン病の人が人間扱いされていない。韓国と日本は一体で日本が支配しているから、差別の原因の一つは日本にある。そこで、日本に行きたいと思っていたら、大震災が起き思いもよらないことで多くの朝鮮人が殺されました」

「キリスト教徒の使命を持って日本に来たカールさんの話をぜひ聞いてください」

 田中は一気に語ってカールを促した。田中の通訳を交えながら、カールは語り出した。

つづく

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2025年4月11日 (金)

「トランプ関税全面発動。中小企業の危機。政界は選挙で頭は真っ白か。危機はチャンス。トランプの墓穴に期待」

◇トランプ関税が9日全面発動した。政府、企業、人々、みんなあたふたしている。そんな中で分からないのは国民一律の現金給付。適切な税金の使い方といえるのか。政府は現状を「国難」と叫んでいる。真の国難は何かを考える時だ。政治家たちは目前の選挙に勝つことで頭がいっぱいだから正しい目を持てないでいる。給付金の是非はともかく大波に呑み込まれそうな中小企業の深刻さは厳しい。7割以上の県内製造業が大きな不安を抱いている。県当局は金融支援の検討に着手している。地元の金融機関も取引先の支援に向け個別の相談に取り組んでいる。

 自民の小野寺政調会長は9日太田市のスバルの工場を視察した。本県に国内唯一の製造拠点を持つスバルである。大崎会長は「米国はスバルにとって大変重要なマーケットであり今回の関税で甚大な影響を受けると予測している」と危機感を述べた。

 視察後小野寺氏は裾野が広い自動車産業での影響は大きいから党として必要な政策をまとめると考えを示した。私たちは稀に見る危機に直面している。乗り越える道を賢明にかつ冷静に求めねばならない。

 トランプ氏はあっと言う間に政策を変更させる。これは先が予見できないことを意味する。羅針盤のない船のようだ。時代は大きな転換点にある。日本はアメリカにべったり過ぎた。重要な同盟国だから重要な世界政策での同一歩調は当然とも言えるが敗戦の歴史を背景に余りにアメリカ色が濃かった。大きな歴史的な転機を生かす時。危機はチャンスでもある。

 米中の対立が激化する中、両陣営とも発展途上国の取組みに躍起である。途上国に対して日本は野心を疑われないから連携を深める可能性は大きい。対アメリカの貿易が行き詰まる状況で打開の道である。

◇トランプ氏のご都合主義がまたあらわになった。9日に発動した相互関税の一部をその日のうちに手のひらを返すように一時停止した。株価がジェットコースターのように急落したその責任追及を恐れた保身に違いない。トランプのメッキが剥がれつつある。一時停止で株価は当然反騰する。事前に知っていれば途方もない利益を得られる。トランプ氏は停止発表の4時間前「買い時だ」とSNSに投稿していた。株式相場をゆがめる発言である。「相場操作」の恐れが指摘されている。こういう軽薄な男が世界最高権力を握る。墓穴に期待。(読者に感謝)

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2025年4月10日 (木)

「県民会館の行方に思う。4月のふるさと塾はトランプの乱。群馬マラソンの受付が」

◇山本知事は8日、県民会館を公式視察した。視察後「建物の機能や特徴が分かってよかった」と発言。存続する場合バリアフリー化や駐車場問題の解決が不可欠とした。私が主催する地域政策研究集団ミライズクラブでも深い関心をもち、専門家を招いたりして検討を重ねてきた。私たちは県民文化の重要な発信の場と思う。隣接する県立図書館との関係も重要な要素だろう。駐車場も工夫の余地は大いにあると思うが、長い間県は行動を起こさなかった。知事の考えは廃止に傾いているようだ。前橋市に存在する文化的建物だけに市と市民の考えは重要である。小川市長は知事と意見交換を重ねているようだが市議会や市議会議員の注目する動きが見えない。地方の議会議員の劣化が指摘されている。今回の市議選は稀に見る激戦であった。この動きが市政の活性化と結び付かねば情けない。我がふるさと未来塾出身者にも頑張って欲しいところ。

◇4月のふるさと未来塾は26日(土)。今回の主要な論点は「トランプの乱」である。世界中に相互関税の激震が走りトランプ氏の一挙手一投足に振り回されている。各地の大規模な反トランプの動きも取上げる。案内では稀にみる歴史的出来事、そして目の前で展開する世界劇場の傍観者であることは許されないと訴えた。ふるさと塾は私が毎回講師を果たす。私の元気に触発されて参加する同年高齢者もおられるようだ。会場には緊張感がある。手を抜かず中味の充実を心掛けている。私の戦場であるし社会との大切な接点だ。このブログを読む方々にも一度参加して欲しい。

◇今日10時から群馬マラソンの一部受付が始まる。私の中に緊張が走る。昨日は暖かいこともあり半ズボンで走った。マラソンを意識すると大地を踏む足の感覚も違う。今年の11月、私は満85歳である。84年の人生がマラソンであった。様々な地獄を見てきた。深夜暗い空に光る微かな星を見つけるとホッとし、その光が心に呼びかけていることを感じる。そして「お星さま、102歳まで走りますよ。見ていて下さい」と心に呟く。102歳の2042年は団塊ジュニアが全て高齢者となり高齢人口は4千万人のピークに達する。おそらくそれまでに南海トラフも富士山の爆発も現実となっているのではないか。壮大な日本劇場に向けて走る私の姿が目に浮かぶ。一夜明ければアメリカの株式が爆騰した。関税措置延期の一言である。ジェットコースターはこれからも続く。世界情勢を冷静に見なければならない。(読者に感謝)

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2025年4月 9日 (水)

「ジェットコースターのような株価の今後は。日本製鉄とUSスチールの今後は。保護主義と日本の行方」

◇まるで全世界がジェットコースターに化したようである。株価のことだ。東京株式市場で、前日は史上3番目の下落幅だった。この衝撃度は南海トラフ以上かと想像させるもの。ところが翌日は何と過去4番目に上げた。一体世の中はどうなるのだろう。この大波はトランプ氏が引き起こしたもの。ジェットコースター的変化の波は今後も続くのか。中国以外の主要国にはトランプ政権との取引(ディール)に応じる動きが見られる。中国は断固として対決するとして一歩も引かない姿勢を示し、トランプ氏はそれならば更に50%の追加関税を課すと吼えている。政治と経済は連動して動いている。大波に翻弄されて消えていく企業や人々の姿が想像される。

 私が株主として関係する日本製鉄にも大きな変化が見られた。アメリカの鉄工業を象徴するUSスチールを日本製鉄が買収しようとしている。バイデン前政権と同様、トランプ政権も反対を表明していたがトランプ氏は再検討を命じ、日本製鉄は感謝の意を発信した。このトランプ発言により日本製鉄株は急上昇した。

◇国会も慌ただしく動いている。支持率急落の石破政権も懸命である。石破首相も頑張っていると、私は思う。トランプ氏との電話会談では一定の手応えを得たようだ。渡米して面談することを調整している。日本の迅速周到な動きをトランプ政権も評価しているらしく、早朝の面談が実現しそうである。トランプ氏は強気であるが窮地にあるのも事実だから日本にとって交渉の好機であると思う。反トランプの嵐が全米で起きている。5日の反トランプデモは凄まじかった。中間選挙をにらむトランプ氏にとって脅威に違いない。こういう状況で彼は信頼できる友を求めているだろう。日本流のディール(取引)のチャンスである。

 アメリカのナンバーワン、つまりアメリカの保護主義により世界は危機にある。歴史は繰り返す。1929年に始まった世界恐慌に学ばねばならない。世界を覆った保護主義、自国本位が領土の拡張と侵略戦争に、そして世界大戦に繋がった。日本は中国大陸に進み傀儡国家満州国をつくり国際的な孤立を招き遂には太平洋戦争という墓穴を掘った。現在の日本は過去の反省の上に立っている。新たな状況の中で日本の役割は極めて大きい。日本はアメリカと同盟関係にあるがアジアの一員たる意義は大。発展途上国の信頼を得て世界の保護主義から救うのだ。人道主義の世界貢献が試される時。(読者に感謝)

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2025年4月 8日 (火)

「トランプ政権、相互関税の衝撃。AIが東大理3に合格。AIの危険性はどこまで」

◇トランプ政権は5日、全ての国・地域に対する相互関税を発動した。世界の轟々たる非難にかかわらず「私の政策は決して変わらない」と決意を示している。トランプ氏は民主主義や法の支配を無視し力による支配を進めようとしている。戦後長い間アメリカを頂上にした価値観が世界をリードしてきた。それがなくなって弱肉強食の世界に変わろうとしている。欧州とアメリカの分断も深刻になりつつある。同盟国である欧州の頭越しに仮想的たるロシアに近づいている。欧州から見れば裏切りである。仏のマクロン大統領は国民に向け「欧州の未来をワシントンやモスクワに決めさせてはならない」と表明した。

 トランプ氏は相互関税の対象国としてアジアの途上国の多くを上位に位置づけている。専門家は中国への牽制と見ている。その中国はアメリカとの対決を一層強めている。これまで相互関税の対象を抑制していたのが全項目に広げ徹底して戦う姿勢を打ち出した。ウクライナ戦で中国の協力を得るため中国に一定の配慮をしていると見られていたアメリカが大きく変化した。トランプ氏のギャンブルと見る専門家もいる。「血を見ることになるだろう」と表現する米メディアもある。血を見るとは最悪では戦争である。アジアの人々の心はアメリカより中国に傾きつつあると見るべきだ。これはアメリカが国際的孤立を深めていることを意味する。アメリカの市民や企業の中にも不満が広がっていると言われる。トランプ氏がゆとりを失い焦っているように見える。

◇AIが東大理3に合格したと報じられた。理3は医学部進学コースで東大入試でも最難関とされている。AIの力がここまで来たかと驚く。英語が高得点で、論証力を問う数学で苦戦とか。世界史では人間ならあまり間違わないミスをし、国語では小説に関する設問の得点が低かった。AIはどこまで進化するのか無気味である。AIの危険性も指摘されている。余りに便利であるためあらゆることに利用しがちである。きちんと規制しなければならない。悪用の恐れがあり、人間の考える力の低下も考えられる。

◇イタリアでは新聞の記事をAIが担う「世界初の試み」がなされた。専門家は規制を設けずAIに任せるには「リスクが大きい」と指摘している。読者の質問にAIが答える記事も。EUの再軍備の危険性の問いには「欧州が自立し平和を守るには武力が必要」と答えた。心を持たぬAIに影響を受けることが心配だ。(読者に感謝)

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2025年4月 7日 (月)

「トランプ氏の相互関税は世界への宣戦布告か。中国の徹底した対決姿勢の意味。アメリカの墓穴」

◇全世界に激震が走っている。想定される南海トラフよりはるかに大きい。トランプ大統領は2日、全世界を対象にした相互関税を発表した。怒りの渦が時と共に大きくなっている。身内の筈の共和党の議員の中にも反対の声が上がり始めた。すべての国、地域に一律10%の関税を設定し、相手国、地域によって税率を上乗せする。結果、中国は34%、EUは20%、日本は24%となる。トランプ氏は演説で強調した。「4月2日は米国産業が再生し、再び豊かになり始めた日として永遠に記憶されるだろう。我々の経済的な独立宣言だ」。世界への宣戦布告のように聞こえる。

 日本の生き残る道は何か。一番重要なことは代替の利かない、つまり日本独自の製品、サービスを工夫することである。いくら関税の壁を高くしても、世間はそういうものを求めなくてはならないからだ。世界の供給の繋がりは技術とノウハウで密接に依存し合っている。また、アメリカへの依存度を低めなければならない。このことは新興国にとってはより深刻である。アメリカの保護主義からこれらの国を守らねばならない。日本はアジアの自由貿易体制の旗手であり続けるべきだ。これは日本の貿易を救う道でもある。関税引き上げによるインフレ再燃はアメリカの首を絞めることになるだろう。トランプ氏が再選出来たのは民主党の政策がインフレ対策に失敗したからである。

 トランプ大統領がアメリカナンバーワンを掲げ目先の利益だけを求めることはアメリカの利益も犠牲にしてしまうのだ。アメリカは自滅に向かっている。相互関税に対する報復関税が始まり、貿易戦争が止まらなければ世界経済は市場暴落や同時不況となりすべてが敗者になる。4日の米株式市場は下げ幅2200ドル超、史上3位の下げ。中国は対決姿勢を強め、貿易戦争の状況は加速している。中国ではアメリカへの反発の声が広がっている状況をチャンスとみているに違いない。中国の対決姿勢はこれまで品目限定など、抑制的であったが今回は即座に全品目を対象とし徹底した対決の姿勢を示した。中国は3日、次のように主張した。「一方的ないじめ行為に反対する国が増えていることは誰の目にも明らかだ」。アメリカは四面楚歌の状況に入りつつある。トランプ氏は振り上げた拳をどう下ろすのか。その拳に大義名分はないから下ろすことも出来ない無様な格好である。トランプ氏には過信と誤算があった。壮大な世界劇場がどう幕を閉じるか世界は息を呑んで見詰めている。(読者に感謝)

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2025年4月 6日 (日)

死の川を越えて 第100回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

 一行は草津に着いた後、明霞の希望で万場老人と会うことになった。明霞は、父の鄭東順から老人に会ってよろしく伝えよと言われていたのだ。

 正助が働く山田屋の一室で老人は待っていた。老人は、カールとあいさつを交わした後、申し訳ないが明霞、こずえ、正助と特に話したいことがあると言った。別の一室に入ると、老人は明霞の顔をしげしげと見て涙を流した。

「鄭東順殿は元気ですか。こんな顔でお許しくだされ。正助が大変お世話になったそうな、ありがとう」

「お父さんは、朝鮮人を助けてくれたこと、万場さんに大変感謝していました。よろしくよろしく、言ってました」

「わしは今日、重大なことを話す決意じゃ。この時を待っていた」

 万場老人はそう言って、こずえを見た。一同は何事かと老人の口元を見詰めた。重い沈黙があたりを覆った。老人は意を決したように口を開いた。

「正助が海底洞窟のことを話してくれた。明霞さんの母が日本兵を助けるためにあそこにのまれたな。あの日本兵は、実はこずえの父なのだ」

「えー」

 こずえと明霞が同時に叫び、正助は息をのんで老人の顔を見据えた。

「こずえの父は満州の関東軍にいたが、何かの任務でウラジオストクに入ったらしい。いずれ話さねばと思っていたが、こずの心を思うと機会がなかった」

 こずえは両手で顔を覆い、肩を小刻みに震わせていた。

 遠来の客を迎える場所には正助が働く山田屋が用意されていた。万場老人、さや、こずえ、いつもの正助の仲間たちの他に、集落の役員や正助の呼び掛けに応じた仲間も加わり、会場はにぎやかだった。そして、人々は、聖ルカ病院のマーガレット女史と岡本トヨが参加していることにも驚いた。また、人々は、美しい韓国人の娘に好奇の視線を注いだ。

つづく

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2025年4月 5日 (土)

死の川を越えて 第99回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

 それからしばらくして、いよいよ韓国の人々と会う日がやってきた。

 嬬恋駅では正助とこずえが電車の到着を待っていた。こずえは胸の高鳴りを抑えることができない。正助はよく似ていると言っていたがどんな人だろう。こずえの心をのぞくように正助は言った。

「あの時は、朝鮮の服を着ていたから、こずえさんのことなど頭になかった。それでも誰かに似ていると思った。後で、あの顔はこずえさんの顔だと気付いたんだ。けどね、他人の空似と思っていたよ。まったく世の中は不思議だね」

「ご隠居様の話では、私と同じ年だそうなの。私の母とその方の母は双子で、他人様には見分けがつかないほど似ていたといいますから、その方と私が似ているのは無理ないわね」

 やがて電車が近づき、止まった。中から3人の男女が現れた。

「あっ、あの人だ」

 正助が叫んだ。赤ではなく地味なチョゴリの明霞の姿が近づく。

「しばらくです」

「まあ、正助さん、お久しぶりです」

 たどたどしい日本語であった。正装した姿は見違える様で、にっこり笑った顔はこずえに劣らず美しい。

「こんにちは。ようこそ遠い所へ」

 こずえがおずおずと声をかける。

「まあ、この方が」

 明霞が驚いた声で応えた。2人は手を握り合った。

「日本語がお上手ね」

「いえ、ほんの少し、母から教わったの」

 数奇な運命を目の当たりにして、こずえは何を話してよいか分からない。2人の男は1人は外国人でもう一人は日本人であった。

「私は田中と申します。通訳です。この人はドイツ人宣教師のカールさんです。日本語はかなりよくできます」

「カールと申します。よろしくね」

 背の高い男は丁寧に腰を低く折って挨拶した。

 つづく

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2025年4月 4日 (金)

「能登地震が教えること。カスハラ防止条例の意義。ミャンマー地震死者は3千人に。日本の医療チーム」

◇地震は大地を揺するのみでなく心を揺する。心と身体は結び付いているから力が衰えた人々を窮地に追い込んでいく。要介護・支援が増えるのは当然だろう。今回の奥能登地域で介護や支援を要する高齢者が急増していると言われる。震災直後の珠洲市、輪島市で急増している。要介護認定率が珠洲市では地震前と比べ7.9倍に達したことは異常という他ない。被災市の高齢者福祉担当課は避難先の環境激変に耐え難かったことを原因にあげている。認知症の症状が進行したことも言われている。能登半島の状況は自然が行った大きな実験ともいえる。高齢化が急速に進む中で大災害の時代に突入している現在、私たちは能登を教訓としなければならない。群馬は災害が少ないといって油断することは禁物である。心身機能が低下した人々には微妙な変化も深刻な影響を及ぼすことを覚悟しなければならない。行政の課題である。

◇世はあげてハラスメントの時代である。ハラスメントとは困らせる、悩ませること。社会の進歩につれ人間関係も複雑になるから様々なトラブルも生じる。県は4月からカスハラ防止条例を施行する。カスタマーは客を意味する。県が問題にする行為は客の迷惑行為。ここでの客は行政サービスの利用者である。行政の窓口で職員に対し罵声や暴言を浴びせ過度な説教をするなどである。県は、東京・北海道に続き条例を成立させた。職員に対する暴行・脅迫・正当な理由のない過度な要求等々である。悪質な場合は警察への通報、弁護士に相談するなどを条例に盛り込んだ。

 忘れられない思い出がある。私が議長の時の出来事。議場や議会事務局に激しい行動を行う男がいた。出入り禁止の措置をとると横暴で違法だと主張。私の自宅にも押しかけ遂には裁判所にも持ち込んだ。カスハラ条例があればそれによって対処したであろう。

◇県内金融機関は自主的にカスハラ対策を進めている。北群馬信用金庫は昨年11月県内金融機関に先駆けて対処方針を打ち出した。この動きは県内の他の金融機関に広がっている。金銭を扱うという職業上金融機関に対するカスハラは多いと言われる。

◇ミャンマー地震で死者は3千人に迫り更に増える可能性が高い状況だ。日本政府の医療チームが2日最大都市ヤンゴンに到着。目を覆う惨状である。瓦礫の下には多くの命があるに違いない。人道主義に国境はない。災害大国日本には貢献できる多くのノウハウがある。(読者に感謝)

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2025年4月 3日 (木)

「長寿社会京丹後市の衝撃。蘭医杉田玄白に感動。沈みゆく地方私立短大を救え」

◇栃木県の箱石シツイさんは「世界最高齢女性現役理容師」としてギネスに認定された。百寿者(センテナリアン)の中でも110歳まで到達する人をスーパーセンテナリアンと呼ぶ。箱石さんはあと一歩である。いろいろな条件が揃わなければ百寿は果たせない。信長は人間五十年と謳った。現在百寿者は9万5,119人。老人福祉法が出来た昭和38年には153人だった。どこまで伸びるか。百寿者の6~7割は認知症の時代。箱石さんは全ての人の目標である。

◇京丹後市は日本有数の百寿の町である。昨年の時点で100歳以上は114人、全国平均の約3倍。要因は何か。全国を京丹後市化出来れば素晴らしい。研究によればまず食習慣が重要。京丹後市の高齢者は根菜、イモ類、豆、海藻など食物繊維の摂取量が多いと言われる。よく言われる「まごはやさしいよ」も重要だ。まめ、ごま、わかめ、やさい、さかな、しいたけ、いも、ヨーグルトなどである。

 更に糖尿病にならないことが健康寿命に大きく関わる。これは上記の食習慣と繋がる問題だ。共通に指摘されることは運動である。

 84歳の私はこれらのことを自分の身に於いて考える。大方は合格点に近いようだ。過信せず謙虚な気持ちでスーパーセンテナリアンを目指す決意だ。和蘭事始(オランダことはじめ)を書いた杉田玄白は虚弱な体質にもかかわらず84歳まで生きた。それは毎日、かなりの距離を歩いて往診に行ったためと言われる。玄白は「養生七不可」を書き、その中で「飲と食とは度を過すべからず」と自らを戒めたように摂生生活に勤めた。この点も長命実現の要素であったに違いない。

◇石破首相が地方創生を強く主張する中、地方の人材養成機関である私立短大が次々に閉校に追い込まれている。少なくとも45校の私立短大が2025~27年度に募集停止を行う。少子化による学生減は深刻である。ある地方私立短大の学長は嘆く。「定員の半数にも届かない」。この短大の定員充足率は今春5割に達しない見通しだという。学生募集停止を公表した私立短大に共愛学園前橋国際大の短期大学部が含まれていることに驚いた。「このままでは地域や地方を支える保育や社会福祉などの専門的職業人材の輩出が難しくなる」という危機感があがっている。人口減少の衝撃がいろいろなかたちで地方社会を襲っている。このままでは日本は地方から沈没してしまう。我々地方の主権者が政治を動かす時である。(読者に感謝)

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2025年4月 2日 (水)

「南海トラフは明日かも知れない。大災害の足音が。女性アナ性暴力とマスコミの責任。台湾有事」

◇ミャンマー大地震で3月31日現在、死者は2,000人を超え更に増える恐れがある。地球規模で大災害の状況が迫っているらしい。そんな折、南海トラフ巨大地震の被害想定が発表された。超巨大地震は30年以内におよそ80%の確立とされる。それは明日かも知れない。最悪の場合、死者は約29万8千人。全国最高と想定される津波は高知県黒潮町で34m。この世のものとは思えない。同町は海を臨む所に垂直に逃げ得る巨大な避難タワーを建てた。高齢者や障害ある者はこのタワーに近づくのも難しいだろう。今回、市町村別の被害想定も発表された。群馬は死者数、全壊、焼失建物数ともに「わずか」となっている。しかし油断大敵。南海トラフだけではない。浅間山も富士山もマグマの蓄積は限界だろう。日本のポンペイと言われる鎌原観音堂の石碑「天明の生死を分けた十五段」をしっと考える。あれから240年以上が過ぎた。

◇フジテレビの女性アナウンサーに対する性暴力は業務の延長線上で行われたと第三者委員会が報告した。報告書は全社的なハラスメントの蔓延も指摘。若い女性であることとその容姿などを理由に呼ばれる会合で性暴力やハラスメントにあう例が多数あったと言われる。奇抜で壮大なフジテレビ本社ビルが若い女性を食い物にする悪魔の巣窟にも見える。人権を踏みにじる邪悪の砦だ。フジテレビ本社ビルは丹下健三が自ら直接建設に関わった最後の作品。マスコミの力は巨大な権力である。中心人物中居正広氏の出来事は他のマスコミにもあると考えるべきだ。マスコミの影響力は測り知れない。業界全体に人権意識の欠如があるに違いない。旧ジャニーズの性加害が大騒ぎになったが、今回のフジテレビの関係者を初めてマスコミ全体が衝撃を受けた筈である。それにもかかわらず今回起きた。第三者委員会が指摘する中味からは全然教訓に活かしていないように見える。民放は憲法が保障する表現の自由により守られている。マスコミの自覚と自主規制が強く求められる。

◇台湾有事は私にとって直接関わる重大事。日本の最西端から肉眼で見える。有事のときに12万人もの邦人を移動させねばならない。台湾有事については先日のふるさと塾でも話した。1日中国軍が台湾周辺で大きく動き出した。台湾の頼清徳総統が中国を「敵対勢力」と指摘したことへの対抗措置。数十機の戦闘機や爆撃機が台湾周辺に展開。台湾は中国の軍事的挑発は国際秩序に公然と挑戦するものと強調した。中国は台湾を激しく処罰すると主張。林官房長官は中国側に懸念を伝えた。台湾周辺波高しである。(読者に感謝)

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2025年4月 1日 (火)

「ミャンマー地震を最大の教訓に。日本も近い。マグマは限界に。銅線窃盗を許すな」

◇日本列島の動きが激しくなっているようだ。地震の状況は慣れっこになっているがそれでも無気味さを感じる。地球規模で見れば火山の大爆発などが増えており日本も連動しているようで不安を覚える。そんなおり、目を疑うような地震の光景が飛び込んで来た。

 震源はミャンマー中部、マグニチュード7.7。天を突く高層ビルが押し潰され、最上階から大量の水が流れ下っている。ミャンマー軍部は死者1,644人と発表した。内戦が続く国である。権力を握る軍部はいち早く国際社会に支援を要請した。人権などを重視しない軍部は外部の批判を気にするから情報を外に出さない。外に援助を求めない。17年前、巨大なサイクロンが襲った時、国際社会の支援を3週間も拒み死者行方不明者は14万人にも及び国際的な非難を浴びた。今回のいち早い支援要請には被害の大きさと共に、過去を反省する事情があるに違いない。まさかの時、人権、人命に対する国の姿勢がいかに重要かを思わせる。

 今回の大地震は震源から1000キロも離れたタイにも大きな被害を及ぼした。地震の特徴として長周期地震であることが言われている。これは遠く離れた所にも大きな力を及ぼす。東日本大震災のとき大阪にも大きな揺れと被害が生じたことが報じられた。今回のミャンマー地震で注目すべきは200年近く地震が起きていなかった点。大自然の力は恐るべきで測り難い。人間は小さな存在で束の間の平穏の中で生きている。ミャンマーは日本から遠く離れているが教訓として生かさねばならない。我が浅間山も天明の惨状から240年以上が過ぎた。富士山も最後の大噴火から300年以上である。いずれもマグマはこぼれる寸前に来ている筈だ。首都直下、南海トラフと大災害の足音は目白押しである。古来災いは伴ってやってくる。そして不思議なことに政治の乱れと天変地異も重なることが多い。今日の状況は正にそれではないか。

◇一歩郊外に出ると太陽発電施設が海のように広がっている。現在施設の銅線が狙われている。銅の価格は高い。法規制の穴を突いて稼ぐ行為を許してはならない。銅線窃盗で約1億円を得たタイ人グループがある。政府は今国会に対策法案を提出する。外国人犯罪が多発しているが銅線窃盗は制度と日本人業者がそれを助けている。太陽光発電は環境保護問題である。健全な発展を支えねばならない。(読者に感謝)

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