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2025年2月28日 (金)

「外国人留学生の日本語弁論大会で講評。トランプの傲岸不遜はどこまで。止まらぬ人口減」

◇外国人留学生の日本語弁論大会で講評をした。27日、日本アカデミー。満堂留学生であふれ弁論者は14人。持ち時間は3分である。論者の緊張した表情。資料に見るテーマから彼らの日常が窺える。「ありがとう」、「笑顔」、「あきらめない」、何と「石の上にも三年」などもある。それぞれ何を語るのか。最前列で期待と好奇心で耳を傾ける。驚いたのは彼らの多くがコンビニの体験を語ったことだ。コンビニは彼らにとって活きた日本語教室であり闘いの場であった。私は自分が外国でコンビニで働く姿を想像した。大変な困難に違いない。客に品物を訊かれ途方に暮れた時「笑顔」で切り抜けたと振り返り、インドネシアの女性は笑顔にはすごい力があると語った。「石の上にも三年」をテーマにしたのはモンゴルの学生であった。最優秀賞を得たのは「ありがとう」をテーマにしたバングラデシュの学生だった。私は講評で語った。「コンビニで皆さんの働く姿を見て感心しています。日本人より立派ですよ。皆さんの笑顔、ありがとうの表現に大変な努力が込められていたことを知りました」。これからはコンビニで外国人アルバイトを見るとき一段と違った思いが湧くに違いない。

◇トランプ大統領の傍若無人振りがまかり通っている。ゼレンスキー大統領は訪米し希少資源提供の協定に署名するという。ウクライナには膨大な希少資源がある。トランプ政権はアメリカが提供する支援の見返りとしてその利権を要求。ウクライナは拒否し関係悪化が伝えられていた。ウクライナの安全保障はどうなるのだろう。ゼレンスキー大統領は譲歩の姿勢を示すが、それに対するトランプ氏の言動は傲岸不遜に映る。トランプ氏はロシアとの戦争終結後「ウクライナの安全を保証するつもりはほとんどない。欧州に担ってもらう」と述べた。28日、ゼレンスキー、トランプ両大統領の対面会談が行われる。ゼレンスキー氏にとっては国の運命をかけた正念場。どんな展開となり何が飛び出すか世界の注目が集まる。

◇人口減少が止まらない。2024年に県内で生まれた赤ちゃん出生数は過去最少を更新した。これは全国でも同様。消滅の危機が叫ばれる自治体が各地で増えている。背景には未婚・晩婚傾向の増加などにもあるが若者の人生観・価値観の変化もあるだろう。家族で暮らすことの意義や幸せ感を社会全体で醸成することが必要ではないか。目の色を変えて異性を追ったかつてのパワーが失われているのは淋しい。(読者に感謝)

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2025年2月27日 (木)

「豪雪の里藤原の秘話。トランプとプーチンに天の鉄槌が下る日は来るか」

◇みなかみ町藤原地区の豪雪は有名である。県議時代雪の状況を視察したことがある。この地区に大きな変化が訪れている。高齢少子化である。高齢者が除雪に苦しむ様子が報じられている。藤原小の全校児童数は5人である。各地の消滅自治体のことが報じられるが、藤原の里も風前の灯火の感がある。この雪の中、野生動物たちはどうしているかと思う。猿たちは団子になって耐えるという。彼らにとって春の訪れはさぞ待ち遠しいに違いない。

 雪と闘う人と動物たちを想像しながら長い付き合いになる吉野仍次さんの「豪雪の足あと」を読み返した。猿たちのことや興味ある実話が描かれている。

 その中に「大盗賊事件」がある。有名な大臣の一家4人が殺され、6歳の男の子が助かった。助かったのは寝小便のお陰であった。毎夜おねしょするので別の部屋で藁の中に寝かされていて難を免れた。少年は県の師範学校を卒業し藤原中学の校長となり、後に水上町助役も勤めた。吉野さんは中学時代教えを受けたという。子孫は高崎市に在住とか。おねしょから始まる一筋の運命である。大盗賊が奪った金銭はカマスで数十個あったと言われる。賊たちの子孫もどこかに生きているのか。

◇ロシアのウクライナ侵攻から24日で3年。県内には22人の避難民が暮らす。最も多いのは前橋市の8人。市は市営住宅を無償で提供し水道料金も負担している。理不尽な侵略が身近に繋がっていることを肌で感じる。

 米ロの交渉がウクライナ抜きで始まった。トランプ氏の言動は常軌を逸している。交渉ごとは先をあせれば足元を見られる。現状は正にこれだ。イーロンマスクが息子を天車して記者会見した姿は深刻な状況と対比してふざけているとしか見えない。耳を射貫かれて奇跡的に助かったトランプ氏を神の御業とアメリカ国民は狂喜した。今、神は間違った、神は存在しない、このような声がしきりに聞こえる。トランプ氏は「ウクライナは戦争を始めるべきではなかった」と発言した。これはロシアの侵略を事実上認めることに通じる。トランプ氏の暴走を止められないアメリカには大きなつけが回ってくるに違いない。トランプ氏が結果を急ぐのは中間選挙で勝利したいからだ。現在アメリカは三権分立が機能しなくなっている。中間選挙で示される民意が救いの綱の一つとなっている。神よ、民主主義の真の神よ、ウクライナを救い給え、そしてトランプとプーチンに鉄槌を下し給え。混乱の世界で日本の役割を果たす時が来た。日本の試練である。(読者に感謝)

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2025年2月25日 (火)

「松井かずの波乱の人生。野獣のソ連兵を逃れて中国人と結婚し5人の子を育てる。やがて帰国の時が」

◇22日は体力気力の限界に近かった。早朝1時の起床は恒例であるが、3つの重大事があった。「満州移民の悲劇」と「狂乱トランプ劇場」の話には力を入れたので疲れた。満州移民を語る大胡町公民館は早くも満席で椅子を増やす盛況ぶり。まず、ホワイトボードに満州の大雑把な地図を描いた。松井かずが辿った運命の足跡である。上部に大河黒竜江を示しその下に黒竜江省、吉林省、遼寧省を置く。松井かずの悲劇の舞台は黒竜江省のハルピンだった。地獄の逃避行はハルピンから遼寧省の撫順まで続く。私の目的は単に女性たちの悲劇を描くことではない。背景となった日本の侵略の歴史との関係を示さねばならない。そこで日本が作った傀儡国家満州国を取り上げた。満州は清朝の祖先の地である。日本はこれを利用して清の最後の皇帝を満州国の皇帝に据えた。日本の傀儡国家満州国はかくして誕生した。1932年のことである。直前の1929年には世界恐慌が起こりその波は日本に押し寄せ失業者は巷にあふれた。日本は満州の地に救いを求めた。満州国に日本人を送り込み支配を確実にすることと不況対策は重なって、満州は日本の生命線と考えられた。一方太平洋戦争では日本の敗色は濃くなり満州の日本軍の多くは南方の戦線に回され満州は無防備の状態となっていた。

 松井かずは前橋市の製紙工業で働いていたが敗戦間近の昭和20年5月勤労奉仕隊に参加して満州に向かった。黒竜江省のハルピンであった。松井かずが農業に従事して間もなく8月8日ソ連は日本に宣戦し、数千の戦車は国境を越えて開拓部落に押し寄せた。残っていた関東軍は逃げ去り女と子供年寄りだけの開拓村は大混乱に陥った。ソ連兵は野獣に等しかった。女は胸のふくらみを隠し顔に泥を塗ったが多くの女性が犠牲者になった。各地の惨状は目を覆う程である。開拓団では井戸の死体は膨れ上がった。松井かずは遼寧省の撫順炭坑に逃れ炭坑夫の中国人男性と結婚した。男性は自分の名も書けない人であったが家族をしっかり守った。松井かずは5人の子を設け教育に力を入れしっかり育てた。日本人の名誉にかけ、いつか日本に帰れる日を夢みていたのである。やがてその日は来た。日中の国交が回復したのである。家族全員で前橋市広瀬町の市営住宅に落ち着いたのだ。松井かずは老いた病床の母に中国のことを語った。「お前も苦労したね」かずの話に涙を流した母は84歳で世を去った。かずは波乱の人生を生きて静かに死んだ。

(読者に感謝)

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2025年2月24日 (月)

死の川を越えて 第89回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

 狂気の集団を抑えることはもはや出できなかった。民衆が狂気の集団と化して、朝鮮人の虐待に動いた背景には、政治体制擁護のために政府が意図的に大衆をあおった事実を否定することはできない。警察の及び腰も政府の動きと連動していた。実は、県議会の見識ある一部の者は、これを見抜いていたのである。

 正助が万場軍兵衛とこのような言葉を交わした直後、一人の朝鮮人がおびえた表情で、早朝に正助を訪ねた。麓の村に住んでいるが、家に石を投げられたり、殺してやると書いた紙が貼られたという。男は、麓の鉱山で仲間の朝鮮人たちと働いていた。昔、仲間がこの集落の万場軍兵衛という人に助けられたこと、また、正助が韓国から帰った人で朝鮮人を差別しない人と知ってやって来たと話した。

「あちこちで朝鮮人が殺されているので不安です」

「この集落はあなたたちの味方です。万場老人と相談して、草津の警察に話します。一度、警察に見回ってもらえば変なことは起きないでしょう」

 正助がこう話すと、男は警察は守ってくれるかと不安そうにつぶやきながら帰って行った。

 正助は、警察が本当にやってきれるか心配になった。その時、はっとひらめくことがあった。

〈そうだ、この人をおいて他にない〉。大門親分が頭に浮かんだ。

「おう、そういうことなら任せてくれ。俺も立場の弱え朝鮮人にひでえ事をするのは許せねえ」

 大門太平は、早速動いた。麓の村の朝鮮人が住む辺りを見回ることにしたのだ。一人の子分を連れて朝鮮人が動く鉄山の近くにさしかかった時である。数人の男が朝鮮人を囲んで争っている。振り上げる棒の下で朝鮮人が悲鳴を上げているではないか。大門は、ぐっと踏み出して言った。

「やいやい、てめえたちは一体何をやってやがる。俺は朝鮮人に味方する日本人だ。湯の川地区のもんよ。朝鮮人も湯の川のもんも、てめえたちにも同じ赤え血が流れていることを一つ見せてやろうじゃねえか。それが分からねえようなら分からしてやる。根性据えてかかってきやがれ」

つづく

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2025年2月23日 (日)

死の川を越えて 第88回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

 万場老人は、正助を見据えて言った。

「差別と偏見は弱い所に向かう。今回の朝鮮人虐待には権力がその弱い人間の弱点を利用している向きがある。これも全体主義の現れと見なければならぬ。個人よりも、国家社会が大切という考えじゃ。国家は何のためにあるかがこういう時にこそ問われる。国家は弱者のためにあることを今こそ見詰めねばならぬ。だからハンセン病患者は朝鮮人虐待と無関係と思ってはならぬぞ」

 万場老人はここで話すのを止め、しばらく考えていたがやがて毅然として口を開いた。

「傍観して朝鮮人を守れなかった警察官の使命を忘れた者として言わねばならぬ。そして、人道の一片も解さぬ人々だ。朝鮮人を守れない警察は日本人も守れないのだ」

「この草津にも朝鮮人はいます。この湯の川地区にもいます。俺は韓国で朝鮮人に助けられた。その恩返しのためにも、俺は仲間に呼びかけて朝鮮人を守ります」

 正助はきっぱりと決意を示した。

「それがいい。この問題はお前個人の恩返しということを越えて、人道上の問題なのじゃ。このことを行動で示すことが、われわれハンセン病の解放にもつながることになる。藤岡の朝鮮人虐殺の問題は、県会議員に良識があれば県議会でも大きく取り上げられるに違いない」

 万場老人の頭には、この時森山抱月の姿があった。

 帝都を見舞った未曾有の大災害を前に、政府は治安の乱れを極度に恐れた。それは体制の動揺につながると考えたからであった。全国から多くの警察官が動員され、地方は手薄になっていた。問題の藤岡署であるがここも23名中14名が東京に出ていた。隣接する埼玉県神保原町などでは9月3日ごろ、朝鮮人166人が殺された。騒然とした空気が藤岡に伝わってきた。

 各地は自警団を組織したが、それは狂気の集団と化していた。藤岡署には自警団が朝鮮人の引き渡しを求め、それに青年団が加わり、留置場の破壊を始めた。

つづく

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2025年2月22日 (土)

死の川を越えて 第87回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

  • 関東大震災

 

 大正12年は大変な年であった。9月1日、未曾有の大地震が発生。午前11時58分、東京を中心に起きた巨大地震は関東一円を激しく揺すった。

 しかし揺さぶられたのは大地だけではない。人々の心であった。騒然として社会で、ただでさえ人々の心には不安があった。大地の鳴動は人々の心を一層の不安に陥れた。人々は恐怖におののき巷には流言飛語が飛び交った。昼時と重なって木造家屋が密集する帝都は一瞬にして火の海と化した。全壊・消失家屋約70万戸、死者行方不明は14万人余に達した。

 このような中で多くの朝鮮人が虐殺されるという異常事態が始まった。夜は群馬からも東京の空が赤く見えた。この状況は湯の川の人々を言い知れぬ不安に陥れた。

 朝鮮人が暴動を起こし、それに対抗する民衆により多くの朝鮮人が殺されたという噂を知った時、正助は韓国の抗日運動を思い出した。日本に支配された韓国の民衆は独立を強く求めている。そして、韓国の抗日運動は、国境を越えて中国の動きと連動して激しい炎となっていることを正助は朝鮮半島で肌で感じたのだ。だから、朝鮮人の暴動というのは、もしかするとあの抗日の一環かと思った。

 万場軍兵衛は動揺する人々に対して毅然として言った。

「軽挙妄動は巌に慎まねばならぬ。藤岡でも17人の朝鮮人が殺された。恐らく罪のない人たちじゃ」

「藤岡でそんなに多くの朝鮮人が」

 正助は驚いて叫んだ。万場老人は怒りを表し続けた。

「各地で朝鮮人の被害が出ているので、藤岡の警察署は留置所場保護したのじゃが、猟銃や日本刀を持った暴徒は留置場を破って乱入し、手を合わせて命乞いする朝鮮人を殺したという。朝鮮人に対する軽蔑がそのようなことを可能にした。われわれハンセン病も同じ立場に立たされることがあり得る。差別と偏見にさらされる点では同じなのだ」

つづく

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2025年2月21日 (金)

「トランプが生む政治経済の衝撃波。明日は大胡町公民館で満州移民の悲劇を語る。野獣のソ連兵に女たちは」

◇トランプ大統領が起こした政治と経済に対する衝撃が世界中に波及している。政治の波はウクライナ戦をめぐり、ウクライナを会議に招かずプーチン大統領と直接の取引を始めたこと。早く成果を求めようするトランプ氏は前のめりだ。交渉は前のめりの方が足元を見られる。足元を見られ譲歩している姿が伝わってくる。舞い上がっているトランプ氏は意外な失敗をするかも知れない。

 経済については18日、自動車関税を25%程度にすると表明した。現行の10倍である。本県のスバルも大きな衝撃を受けるのは必至。スバルは本県に国内唯一の生産拠点を置き、アメリカ新車市場が好調なのだ。トランプ氏の考えは、アメリカ国内で生産しろというものだ。スバルなどは今、必死で社運をかけて対応を検討しているに違いない。県税収入にも大きく関わることだから現在のこの動きは私たち一人一人に深く関わることである。

◇今、21日午前2時。1時に起床して作業している。明日の準備で大変である。明日はミライズクラブ、ふるさと塾、講演会と集中している。講演は大胡町公民館で満州移民の歴史と悲劇を語る。1月2月3月と月一回の連続である。先月は「シベリア強制抑留」だった。今回語る故松井かずさんは動乱の満州で女性として地獄を体験した人である。帰国者協会の関係で親しく付き合ったこの人は吾妻郡原町生まれで戦時中前橋の製糸工場で働いていた。戦局は悪化し敗色濃い時、20歳の彼女は勤労奉仕隊に参加して中国奥地に渡った。黒竜江省の奥地はソ連に近く、夜はロシアの灯火が見え、「蛇の目のように感じた」。その蛇が現実の姿で襲いかかる時が来た。1945年8月8火ソ連は日本に宣戦布告した。なだれ込む戦車を前に開拓地は無防備だった。ほとんどの戦力は南方などに回され、形だけの関東軍はいち早く逃げ出す始末であった。

 ソ連兵は野獣であった。女たちは顔に墨を塗って山河を越えて逃げた。かずさんは遼寧省の撫順の炭坑に辿り着く。生きる力も尽きていた。次々と売られていく女たちがいた。かずさんはある坑夫と結婚した。男は自分の名も書けなかったが真っ直ぐな人で家族を守った。かずさんは5人の子をもうけ日本人の誇りをかけ教育した。いつか日本に帰ることを夢みて。日中国交回復が成り悲願が叶う時が来た。日本は信じられない程変わっていた。「かずちゃん」「かず」出迎える友や親族。人々は前橋で立派に頑張っている。私は「炎の山河」を書いた。(読者に感謝)

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2025年2月20日 (木)

「ウクライナ抜きの停戦交渉の行方。試される欧州、マクロン大統領の決意。ミャンマー特殊詐欺の奇怪な謎」

◇トランプ氏は就任したら24時間でウクライナ停戦を実現すると豪語していた。その後トーンダウンしたようだが米ロの停戦に向けた高官協議が始まった。戦争当事国のウクライナが参加しないことにウクライナからは大きな不満があがっている。しかし、米ロが停戦交渉を進めることに合意したことには大きな前進の可能性がある。

 ウクライナでは、「戦場になった国が会議に招かれないのはおかしい」、「米国に見捨てられた」と怒りの声があがる。前戦で命をかけて戦った兵士たちの気持ちが想像できる。「ロシアが時間を稼いで軍備を増強してしまう」「トランプ大統領は自分の損得しか考えておらず信用できない。とても不安だ」こんな声が上がっている。

 トランプ大統領の腹にあるのはウクライナ東部のロシアが占領している事実を認める案に違いない。ロシアは恐ろしい国だ。日本の北方領土も返さない。第二次世界大戦後、戦勝国には日本を分割統治する計画があった。それによれば北海道と東北をロシアが統治することになっていた。もしそれが現実になっていたら、想像するとぞっとする。

◇停戦交渉の行方は全世界の問題であり特に我々自由主義陣営にとっては死活問題だ。そこでこの停戦交渉を巡り欧州8カ国が緊急の会議を開いた。会場は、マクロン仏大統領の叫びかけでパリのエリゼ宮。会議はロシアの再侵略を防ぐために停戦実現後に欧州が主体的な役割を果たすことで一致。また、欧州有志国が平和維持のための部隊を派遣する構想が主要議題になった。この会議は欧州抜きの停戦交渉に強い警戒心を示した。マクロン大統領は強い決意を示して言った。「我々は強固で持続的なウクライナの和平を望み、それには強力な安全の保障が必要」、「欧州は自身の安全と防衛にもっと投資しなければならない」と。欧州各国のイライラした状態が伝わってくる。欧州では極右勢力が台頭し民主主義の危機が叫ばれている。これらはウクライナの情勢とどう関わっていくのか。日本の役割は大きい。石破首相のブレない外交手腕が求められる。

◇一昨年ミャンマーでネットの特殊詐欺を強いられた人は12万人にのぼるという。どんな大きな組織が暗躍しているのか。保護された日本人少年は他にも8人くらいの日本人がいたと話す。頭を丸刈りにされ、スタンガンで痛め付けられたと証言。一昨年来中国に引き渡された特殊詐欺容疑者は5万人超に。ぞっとする。(読者に感謝)

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2025年2月19日 (水)

「トランプに振り回される世界と上機嫌の習主席。高校授業料無償化の行方」

◇世界中がトランプの暴走に振り回されている。2月4日、トランプ氏はネタニエフイスラエル首相との共同記者会見で、またもや世界をあっと言わせる爆弾発言を放った。「ガザ地区をアメリカの所有にする」というのだ。アメリカの矛先は中国に向けられている。これに対して中国は特別の部隊を作って情報を集め対応を練っていると言われる。彼らは「特信班」と呼ばれ数十人規模で24時間トランプの発言やXの投稿をチェックしている。北京の官僚たちはトランプ氏にかき回され疲弊しているが習主席は意外に上機嫌と言われる。ある日本の専門家が言っていた。トランプ氏の傍若無人ぶりは中国を大きく利することになると。習主席の上機嫌はこのことと関係しているに違いない。習主席からはトランプ政権は世界でますます孤立していくと見える。ガザ所有宣言で中東全体を敵に回した。アメリカは自壊し中国の仲間は増えていくと。

 このような状況の中、黒竜江省ハルピンで2月7日アジア最大のスポーツの祭典、冬季アジア大会開会式が行われた。各国のVIPを前に主席は高らかに宣言した。「この大会はアジアの人々の平和・発展・友誼という共同の願望と追及を背負っている。我々は安寧と和睦という共同の夢想を固く守っていこうではないか」

 この宣言と会わせるように中国の報復関税が実施され米中貿易戦争が激しくなっている。中国政府内部ではトランプ氏のことを「瘋子」と表現していると言われる。頭がおかしいやつを意味する。トランプ大統領の破天荒ぶりはこう言われても仕方がない面を持つ。問題はトランプ大統領の行動がある程度その通りに実現されていることだ。正に振り回されているのだ。

 ところでトランプ政権の最大の課題はウクライナ戦争とガザ紛争を終結に導くことだ。そのためには中国の協力が不可欠である。ロシアや中東に対する中国の影響力は極めて大きい。いや、面白いと言っては非難されようが極めて深刻な状況なのだ。

◇高校教育に大きな変化が起きている。授業料無償化である。教育改革の一環としてどのような効果を生むか注目したい。17日首相は私立高の就学支援金を引き上げ授業料無償化の検討を表明した。少数与党として維新と予算を通すための駆け引きがあった。公立高の無償は実質的に実現しているから高校全体の無償化実現である。(読者に感謝)

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2025年2月18日 (火)

「グリ下の少女の実態。タイの犯罪組織に巻き込まれる日本の少年。空き家は萎む日本の象徴か」

◇混沌として沸き返る社会で翻弄される少年少女たちは憐れだ。国内では「グリ下の少女」、タイでは特殊詐欺に巻き込まれる日本の少年。状況は国際的なのだ。「グリ下」とは道頓堀のグリコの看板のこと。犠牲となったのはこのあたりで売春させられた少女たちである。少女は「10日間で100回以上売春させられていた」と警察に話している。普通の真面目な女の子とは思えないが社会全体の道徳感倫理感がおかしくなっていて女性の貞操感も地に落ちていることが背景にあるに違いない。その意味で「グリ下の少女」も時代の犠牲者なのかも知れない。それにしても「グリ下の少女」は日本が崩壊していくことの一つの象徴であろう。

◇タイで16歳の日本人少年が保護された。タイ当局によれば、少年はミャンマーに連れ去られ犯罪組織の拠点で特殊詐欺に従事させられていたとみて調査している。少年は日本人として初めての「人身売買被害者」とされる。タイの隣国ミャンマーは内戦状態が続いている。このミャンマーの国境地帯では中国の犯罪組織が暗躍していると言われる。これが外国人を拉致して特殊詐欺を行わせている。少年の保護は日本人も巻き込まれていることを物語る。報道では別の日本人高校生も保護された。実態はどうなっているのか謎である。未成年の日本人を欺して連れ去った日本人が複数拘束されている。ますます謎は深まる。タイ当局は推計7千人が犯罪組織に捕らわれているとみている。そして2月に外国人300人超を保護したという。このような状況から日本人の被害者は表に現れているのは一部かもしれない。日本政府は本格的な対策を立てるべきだと思う。

◇日本全体が風船が萎むように力を失っていく。それを象徴する一つの光景が空き家の増加。総務省によれば全国・群馬県ともに空き家が過去最高になっている。放置空き家の存在は深刻である。潜在的な利用希望者は多い筈。だから所有者側と利用者のマッチングをいかに実現するかが非常に重要である。県の担当課は「外国人が安全安心に暮らせるよう、市町村と連携して取組みを進める」としている。行政の役割は非常に重要であるが民間の役割も劣らず大きい。私が関わる日本語学校では積極的にアルバイトの世話をしている。コンビニなどで働く姿は胸を打つ。彼らにとって真剣勝負の場であり生きた語学学習の舞台なのだ。言葉が通じなければ彼らは生きられない。社会は最良の教室。彼らの評判は良い。机上で英語を学んでも話せない自分の姿と重なる。(読者に感謝)

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2025年2月17日 (月)

「重監房で差別と偏見の闇を思い人権教育を考える。蘇る死の川」

◇14日久しぶりに草津へ向う。重監房ハンセン病資料館である。雪の道路が心配されたが日差しは強く道端の雪も車に支障はなかった。「人権の碑が待っている」この思いで車を走らせる。私は人権の碑建設委員長として建設に関わった。碑文の「私たちは人間の空を取り戻しました」は、ハンセン病の闇の深さを物語る。重監房の存在はこの闇と不可分である。

 患者たちは差別と偏見に苦しんだ。それは政府の誤った政策によって増幅された。差別と偏見は永遠の課題である。ハンセン病の過去の事実はその象徴であった。今日の運営委員会のテーマもこの差別と偏見にどう対応するかにある。こう思いながら栗生楽泉園に向った。

◇議事では事業報告・事業予定・入館者数・活動状況等が議論された。国の役人等はオンラインで参加していた。楽泉園出席者が少ない中、私は使命感に押されるように積極的に発言した。私が先ず質問したのは入場者数について。来館者統計によれば、県内に限っても来館者ゼロの自治体が非常に多い。重監房資料館の存在目的の一つが「啓蒙」にある以上ゼロの自治体が県内にアンケート回答分だけでも14もあることは異常だと思って質問した。

◇次は人権に関してである。人権の碑の存在が示すように重監房問題の中心には人権がある。そして人権の問題を学校教育の中できちんと教えるべきだ、差別と偏見、ハンセン病の問題を人権と結びつけて教えるべきだと強調した。現在、学校教育で生きた人権教育が十分に行われていない。学校教育の危機と言われる状況が進む中で人権教育は深刻となっていると思われるのだ。文明の利器が異常に発達する中で人間が機械に使われるかと危惧される状態なのである。これは人権教育の危機をも意味するといえる。人権の碑は多くの人々の努力の結晶であるが、建設に当たり子どもの目にも触れやすいことを意識して低い位置に置いたのである。

 私はハンセン病に関する連載小説を一年余に渡り上毛新聞に書いた。ハンセン病は難しい社会問題である。新聞で連載することには新聞社としても勇気と決断を要した筈だ。反響を呼びつつ無事完結出来たことに胸を撫で下ろした。小説後半はハンセン病違憲国賠訴訟を書いた。訴訟の舞台では差別に立ち向う人々が躍動した。この小説の出発点は楽泉園の北を流れ、六合村に至る湯川

である。世界一の強酸性故に鉄を溶かし人の骨まで溶かした死の川は人権の原点として蘇っている。(読者に感謝)

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2025年2月16日 (日)

死の川を越えて 第86回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

 正助の発言に不思議そうに耳首を傾げる議員たちの姿があった。

 森山抱月は、この議会でハンセン病についてしっかりとした質問をしようとしていた。12月の議会で、森山は質問席に立った。

「ハンセン病患者の療養だが、草津の湯の川地区にいる400人は本県にとり大問題です。その生活問題をいかにするかは誠に重大です。療養に関してはキリスト教徒の婦人が資金を負担し、この人の下で医師はただ一人、これまたキリスト教徒の婦人が当たっているに過ぎぬ。私は日本人として、本県人として恥ずかしい。しかし、県の独力では困難です。社会問題としても人道問題としても国と県が協力して解決すべきであります。2つの歯車がかみ合わねば効果は上がりません。ところで県当局はこの点、国に対して交渉しておりますか」

 ここで、外国人の一婦人とはマーガレット・リー女史のことであり、医師とは岡本トヨを指すことはもちろんである。森山は本来、国や県が金を出すべきところを外国人が命懸けで私財をなげうっている姿を見て、政治家として恥ずべきことと痛感したのだ。これに対して県当局は次のように答弁した。

「湯の川地区の問題は同感です。これは県および国の多年の懸案でありまして、内務省から2―3回、また伝染病研究所も度々見えて調査しています。県当局としても何とか解決したいと痛感していますので、内務省に対し県の意見を具申しておる次第であります」

「やる気があるのか」

 議員から野次が飛んだ。野次に呼応するように傍聴席でざわめきが起きた。

 日本は文明国でありながらハンセン病の対策が遅れていると批判されていた。政府はこれに対してハンセン病患者を調査した。1920年の調査では、全国の推定数は2万6,343人。これを踏まえて、既存の5か所の府県立連合療養所を拡張する計画を立てていた。森山が言うように国と県の歯車がかみ合う必要は迫られていたが、群馬の意識と動きはまだ低調だった。

つづく

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2025年2月15日 (土)

死の川を越えて 第85回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

「名は何と言ったかな」

 小さな声でささやくと、

「正太郎です」

 正太郎は大きな声で答えた。母から言われていて、何回も練習した成果であった。部屋に議員たちの笑い声が上がった。

「は、は。今のは練習じゃ。今度は本番。よいかな正太郎君」

「はい。下村正太郎です」

 パチパチと拍手が起きた。正太郎は褒められたとあって。瞳を輝かせて得意そうに母を見た。部屋の緊張は一気にゆるんで、和やかな空気が流れた。

「よいか正太郎君、ここにいるおじさんたちは怖そうだが本当は皆優しいから安心せよ。それにな、シベリアで戦ったお父さんほど勇気のある人は誰もおらん」

 森山の声にまた、どっと笑いが湧いた。正太郎は頷き、そうだねという顔を父に向けた。

 ある議員が質問した。

「湯の川地区に医者はおるのか」

 これには、さやが答えた。

「聖ルカ病院にただ一人、女のお医者様がおられます。キリスト教徒の方で夜も出向いてくださいますが、お一人で大変です」

「湯の川は、豊かな患者が多いと聞くが事実でありますか」

 別の議員が聞いた。これには正助が答えた。

「はい。お金を持った患者もおりますが、多くは貧しく、食べ物をもらい歩く人もいます」

 さらにもう一人の議員が聞いた。

「大変失礼な質問ですが許されたい。あなたたちは見たところ普通と変わらない。レプラつまり、ハンセン病は恐ろしい伝染病と聞くが実際はどうなのか」

「はい、世間ではそう思われていますが、私たちの受け止めは違うのです。マーガレット先生始め、キリスト教徒の人々は、あそこで日常生活をして平気です。また、草津の共同浴場では、以前一般の人との混浴もありました。私たちは、めったにうつらない病気だと信じております」

つづく

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2025年2月14日 (金)

「増える外国人、萎む日本の現実。我が日本語学校では。ハングリー精神をもう一度」

◇外国人との共生の時代が進んでいる。これは日本人の人口減少と深く関わることである。ちょうど風船が萎むように力を失い小さくなっていくようだ。各地の自治体も活力を失い消滅の危機が叫ばれている。日本は現在開闢以来の危機を迎えているというべきである。人口だけを見ればずっと少ない時代があった。しかし人口の中味である。かつては若い人の比率が多く強い精神の持ち主が多かった。今やハングリー精神は影を潜め認知症が急増している。現在65歳以上では約16%が認知症と推計され、80代後半では男性の35%・女性の44%と推計される。私は今年の10月85歳を迎える。私の同級生などではいくらかおかしくなっている人が至る所に増えている。他人事ではないと痛感する。

 私が理事を勤める日本語学校では外国人留学生が1,600人以上存在する。ネパール、インドネシア、ベトナムなどの出身者が多いが、アフリカや中米のホンジュラスの人もいる。私は理事として入学式等で挨拶するが海を越えて困難を抱えて集まる若者の姿は壮観である。彼らの姿から、かつて私たちが身に付けていたハングリー精神を懐かしく感じることができる。

◇県の調査によると県内外国人住民は、昨年12月末時点で前年比12.6%増となった。ベトナムが最多と言われる。留学生の増加もあると言われるから、これらの数の中には我が日本語学校の存在もあると思われる。これら外国人をいかにサポートするかは我々の重要な課題である。私たちの学校は卒業後の就職支援にも力を入れている。日本の文化を身に付けた彼らの評判はいい。日本語と日本文化は多くアルバイトの実戦で身に付けている。コンビニなどで働く若者に時々声をかけるが、日本の若者より礼儀正しい。日本人が避けたがる厳しい職種で謙虚に働く姿には頭が下がる。日本はかつてアジアの国々に迷惑をかけた。そして今でもアジアの発展途上国の人々を下に見る傾向がある。歴史に学んで謙虚にならなければならない。先日前橋高校と我が日本語学校との交流が前高で行われた。国際感覚を身に付け日本の現実を知る上で成果があったと思われる。今度は前高生を日本語学校に呼んで交流を深めたいと考えている。

◇今日14日朝、草津に向う。重監房資料館運営委員会である。行く度に身がすくむ思いの資料館。差別と偏見はなくならない。人権の碑建設に取り組んだことが思い出される。雪の草津の厳しさは苦しんだ人々を考えるにふさわしい。(読者に感謝)

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2025年2月13日 (木)

「育英サッカー全国制覇の快挙に酔う。定数割れの自治体、消滅の危機が。異常気象と農村の危機」

◇前橋育英男子サッカーの祝勝会に出た。第103回全国高校サッカー選手権。流通経大柏を制し7年ぶり二度目の優勝である。延長を終えても決着がつかずPK戦を9対8で制した。私は育英の名誉理事。長いこと育英に関わってきたがこの日改めて伝統の力を感じた。会場の熱気の中で全国優勝の凄さを思った。この日、3つの賞が贈呈されたが、これは育英サッカーの偉業を物語るものだった。それは国民栄誉賞特別賞、市民栄誉賞、県スポーツ賞である。小川市長は挨拶の中でPK戦に触れ、藤原君に全国民が惚れたと語った。PK戦で2本を止め優勝の立役者となった守護神藤原君が紹介された時会場が沸いた。

 山田監督は育英はPKに弱くてと語っていたが藤原は違っていた。「PKは得意。自分が止めてヒーローになることしか考えていなかった」と発言していた。自分に暗示をかけテンションを高めていたことが窺える。大きな身体が横っ飛びに舞って玉を突く姿は真剣勝負に臨むサムライを想像させた。

◇定数38に5人が立候補という前橋市議選が終わったばかりで、神無町の町議選が報じられた。定数8に対して立候補者は7人。定数割れで全員の当選が決まった。選挙がないことは民主主義と町の活性化の点から重大な問題である。町議会は条例を改正して議員報酬を約2割引き上げたが効果は現れなかったといえる。

 町村議選の定数割れは全国的な傾向である。群馬県の状況でこの問題が身近なことを痛感する。18年の昭和村議選は定数12に対し立候補は9人、23年の甘楽町議選も定数12に対し出馬は10人であった。石破首相は地方創生を声高に叫んでいる。地方こそ社会を支える基盤である。「地方は民主主義の学校」という諺がある。その通りだと思う。現在、消滅が叫ばれている多くの自治体が存在する。右にあげた定数割れの実態はこの危機を物語っている。議員報酬を上げることも必要であるが若者の郷土愛を育み公共心を育てることに行政は知恵をしぼり心血を注ぐべきだ。今立ち上がらねば日本は高齢少子化と認知症の増大で本当に沈没してしまう。

◇異常気象の影響で野菜に異変が起きている。かつてない低温のため白菜が正常に育たない。異常な高値が台所を直撃している。これまでイノシシなどの野生動物対策として鉄線をめぐらし電流を流してきたが、今や天が相手ではいかんともし難い。政府は早急に対策を立てるべきだ。低温対策の研究と同時に現在の危機に対する農家への助成など出来ることを急がねばならない。(読者に感謝)

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2025年2月12日 (水)

「石破首相は全てをかけた。共同声明のポイント。市議選と選挙の原点を」

◇石破首相の目は時に無気味に見える。7日の首脳会談では二人の怪人はなぜか釣り合っているように映った。首相の表情がオオサンショウウオに似て怪しげな重みを表わしていた。成功と報じられたが日本は総力で準備したと言われる。成功は安全保障と経済分野で日米の結束が揺るぎないことを示せた点であった。

 ホワイトハウスの大統領執務室で首相はトヨタ自動車の豊田章男会長の名を挙げ「米国に更に多くの投資をし、雇用を作りたい」と伝えた。首相は豊田会長とは高校、大学の同級生の間柄。ひそかに面会し打ち合わせを行っていた。自国の経済的利益を重視するトランプ氏への「土産」を演出したのだ。首相提示の大型対米投資計画は1兆ドルに及ぶものだった。

 中国の軍事力の増強ぶりには驚くべきものがある。これに対抗するアメリカの力は衰えている。日本の支えが不可欠なのだ。日本の責任は、それだけに重大である。

 共同記者会見で、両首脳は互いの印象を次のように語った。首相「テレビで見ると声高で、かなり個性強性で恐ろしい方だという印象がなかったわけではないが、実際にお目にかかると、誠実な強い使命感を持ったお方と感じた」。大統領「石破氏は偉大な首相になるだろう。安倍元首相は石破氏を高く評価していた。石破氏は非常に強い男で、私は敬意を持っている。首相として素晴らしい仕事をすると思う」。

 共同声明は日米同盟、対米投資等につき次にように展開した。私は身をかがめテレビの画面に顔を近づけて両首脳の表情を見詰めた。

それはこうである『日米同盟』

 トランプ大統領(要旨)「日米の軍事協力は世界で最も緊密な協力関係の一つだ。友人であり同盟国である日本の防衛のために米国の抑止力、防衛力を100%供与する」。中国、ロシア北朝鮮等が注目することはここだと感じた。

 石破首相(要旨)「両国の国益を相乗的に高めるためにすべきことは自由で開かれたインド太平洋の実現に向け同盟をさらに強化することだと確信している」。インド太平洋の国々でアメリカを警戒する国は多いが日本は信頼されているから存在感を大いに発揮できるのだ。

◇市議選は大変だった。この冬最低の気温の中、投票率は最低だった。「ふるさと塾」出身者は岸川君は快勝、木部君は辛うじて滑り込み、児玉君は惨敗だった。「敗軍の将は兵を語らず」という。児玉君は深々と頭を下げ礼を述べ再起を誓った。一票の重みを痛感した。(読者に感謝)

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2025年2月11日 (火)

死の川を越えて 第84回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

  • 県議会の正太郎

 

大正11年の議会が始まる少し前、衛生問題の委員会で湯の川地区をしてほしいという県議会の正式な要請が、正助の下に届いた。ここに至るまでには、聖ルカ医院の女医と県の担当医の間で交渉があった。

議員の間には感染についての不安があったのだ。女医の岡トヨは、下村夫婦は患者とはいえごく軽微で、最近の検査では菌の反応が認められないと説明した。そして女医は、私見だがと断って、充実した精神状態の故に免疫力が高まったことも一因かと述べた。親子を県会に招くに当たっては慎重を期して、県の医師が立ち会うことになった。

「まさかと思っていたら本当になったのね。どうしましょう。あたし、そんな偉い人の所でお話しなどできません。以前、県議会へ傍聴に行ったけど、大変な所なのよ」

さやはいかにも困った表情であった。

「この集落のためじゃないか。そればかりではない。広く同病の患者のためと思って覚悟を決めよう。正太郎も、あの時、森山先生にはっきりと返事をしたのだから」

 正助は既に腹を決めていたので動揺しなかった。

 県議会が始まったある日、議会の一室に正助一家の姿があった。

 天井の高い部屋と医師が座るテーブルと椅子が用意されている。議員たちは、立派なひげをつけた人が多く、皆威厳があった。

 正助には、この部屋に重い空気が張りつめているように感じられた。さやは、緊張の極にあるようで、肩が小さく震えているのが分かった。小さな正太郎だけが明るく元気だった。正太郎はきれいなシャンデリアに目を見張っている。草津の山奥からおとぎの国に来たような気持ちになっているのだ。

 森山抱月が前に出て発言した。

「皆さん、今日は珍客を迎えました。既にお話しした草津湯の川地区の下村さん一家です。今やハンセン病のことは本県の重大課題であり、人道上の問題です。病気で苦しむ人々の実態を知らずして、地に足をつけた議論ができましょうや。それは不可能なのであります。その時、この坊やがおりましてな、県議会という所へ来てくれますかと言ったら、大きな声でハイと答えてくれました。その勇気に私は驚きましたぞ。まず、坊やから紹介しましょう」

 森山抱月はこう言って、正太郎の耳に顔を近づけた。

つづく

 

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2025年2月10日 (月)

「首脳会談成功の中味。USスチールの合意。ふるさと塾で市議選を語るつもり」

◇日米首脳会談はどうやら成功だったようだ。野党からも評価する声が上がっている。うまくいった最大の理由は中国との対抗上、日本を重視したからに違いない。対面での会談はイスラエルのネタニヤフ首相に次ぐ。

 石破首相は自身の政治信条の主張は避け、トランプ氏称賛を展開した。銃撃の奇跡については「閣下はあの時自分は神から選ばれたと確信されたに違いありません」と称えた。

 トランプ大統領は日米間の軍事協力は世界のどこよりも緊密だと語った。また、インド太平洋地域につき、今後石破首相とは緊密に協力していくと強調した。大統領は記者団に日本へのメッセージを問われると「日本が大好きだ」と答えた。

◇首脳会談の最大の成果はUSスチールに関する問題で合意に達したことである。バイデン前大統領と共に日鉄の買収に反対していた。首相は計画の修正案を示しトランプ氏は了承した。米政府は計画の再検討に入った。トランプ氏は「買収」でなく多額な「投資」を行うことで合意したと語った。「買収」か「投資」かは言葉の問題で中味は同じことであるらしい。アメリカは面子を気にしていると思われる。首相は局面転換に成功したといえる。各紙の論調は買収が実質的に成功したような扱いである。このところ、このような気配を察知して日本製鉄の株価が大きく上がっている。首脳会談後初の取引10日(月)の株価は更に上昇するのではないかと予想する。

◇2月の「ふるさと塾」は22日(土)である。ここでは世界が注目する7日の首脳会談の中味を語ろうと思う。現在、9日午後6時半である。間もなく市議選が締め切られる。投票率が非常に悪いようだ。稀に見る激戦で、民主主義の点からも意義の大きい選挙戦なのに何ということか。ふるさと塾で市議選を取り上げる。塾から4人が立候補した。岸川君と木部君は何とか行けそうだ。中でも岸川君の勢いは凄い。あと二時間もすれば当確が出るかもしれない。児玉君は薄氷を踏む思いで時の経過に緊張している。昔、県議選の初陣で結果が出るのを車の中で息を殺して過ごしていたことが懐かしく甦る。候補者の心中を考えると戦国時代の戦いと共通するものがある。生涯を掛けている。斬首されることはないが同じような心境なのだ。暗いなかに時が過ぎていく。今回、最下位は僅差で勝敗が分かれるに違いない。一票の重要さが身に染みる。群テレに県民の目が注がれる時が来た。

(読者に感謝)

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2025年2月 9日 (日)

死の川を越えて 第83回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

 正助は、これはえらいことだと思いながら万場軍兵衛を見ると、大きく頷いている。

「私に務まるでしょうか」

 正助の顔には不安の色があった。

「大丈夫です。私に任せてください。ハンセン病の光を議会に届けることになるかも知れません。その時は坊やもお父さん、お母さんと一緒に来てくださいね」

「はい」

 正太郎は母の目を見ながら答えた。県会議員を囲む家の中は重い緊張感に満ちていたが、正太郎の声でほっとした空気が生まれた。

 森山抱月は満足の表情で湯の川地区を去って行った。

「どうじゃな。正太郎が立派な役割を果たしたであろうが。は、は、は」

 万場老人の声が明るく響いた。

「大変なことですよ。正太郎が県議会に行くなんで、ないことだと思いますが」

 さやは本気で不安に思っている。

「いや、そうでないぞ。小さな命が周りに支えられて、両親の下ですくすく育っている。それを集落が支えている。そういうことがハンセン病患者の社会で可能だということを議会人に教えたい。これが森山さんの目的なのだよ。わしはあの人の人道主義と強い信念を知っておるから、正太郎が前橋の県議会に行く日が来ると思うのじゃ」

「正ちゃん、頑張ってね」

 こずえが笑顔を向ける。

 皆が去って二人だけになった時、こずえは万場老人に尋ねた。

「ご隠居様、森山様は私の顔を見て大変驚いていたご様子でしたが、何か」

「うむ。実はな、森山さんはお前の母親をよく知っておる。改めてゆっくり話すことがあろう」

 老人の目は、今はそれ以上話したくないということを語っているようであった。こずえは一瞬不思議そうな表情をしたが、それ以上聞こうとしなかった。

つづく

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2025年2月 8日 (土)

「児玉はるふさの人間像」

前橋市議選も最後の最後を迎えた。時代の大きな転換点である。その影響もあり候補者の顔ぶれも選挙活動も大きく変化しているようだ。我が「ふるさと塾」から数人が出るのも時代の反映である。東京都知事選で革命児の印象を与えた石丸伸二氏を塾のテーマにしたこともあった。この人は安芸高田市長の時議会の堕落に憤慨し「恥を知れ、恥を」と叫んだ。この声は安芸高田に限らず堕落した全ての政治家に当てはまるものである。

 選挙を離れて児玉はるふさを紹介したい。県立前橋高校から神奈川大学法学部を卒業し、その後渋川市役所に26年勤務した。定年前に退職し政治の道を目指すことになった。謹厳実直を絵に描いたような男である。政治は信なくば立たずという。おとなしい風貌ながらサムライの精神を秘めている。政治の舞台に立つことになれば異色の政治家として新風を起こすに違いない。ふるさと塾も背を押し手を振っている。

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2025年2月 7日 (金)

「児玉陣営は燃えた。地の利、人の和、時の運というが」

◇午後4時半、児玉陣営の野外決起集会は寒風の中で燃えた。私が関わるもう一つの木部陣営決起集会とは対照的だった。こちらはマーキュリーホテルが会場で、地域あげてと言える堂々たるもの。来賓も壇上狭しと並ぶ。何とか行けるのではと秘かに思った。児玉は無い無い尽くしの陣営なのだ。足下は8期のベテラン議員の勢力圏である。必勝祈願祭などの神事はしなかった。風と夕暮れが迫る中でおろおろげな候補者の老母の姿が胸に迫った。私はかつての自分の初陣の光景を思い出していた。妨害の故か選挙事務所を建てる場所が見つからない。小坂子町の外れ、第一建工(株)の資材置場にやっとプレハブ小屋を建てた。強風でガタガタ鳴る音が人々の心細さを募らせた。市内から駆けつける車があった。赤城の方向へ行けども行けども事務所が見つからないとこぼす人があった。

 戦いは「地の利、人の和、時の運」という。私の場合、人の和と時の運が味方した。児玉陣営の場合、地の利はある。時の運も信じられる。問題は人の和の拡大である。私と前市長の龍さんは吠えた。身を寄せ合うような人々の胸に私たちの声は届いたようだ。手応えを感ずることが出来た。「おやおや」と感じることがあった。上細井町の人々がかなりいたことである。児玉君は母親と共に何千件と回った。その影響と効果は芽を出し始めているに違いない。「人の和」が広がりつつあることを感じる。

 今回の選挙には時代の節目を反映して様々な人と方法が登場している。選挙カーを使わない人もいる。それがいかなる結果を生むか非常に興味がもたれる。38議席に50人。稀に見る激戦の意味を

私は熱く訴えた。「狭き門より入れということわざがあります」。こういう切り出しで候補者がいなくて選挙が出来ない地域もあるのにこの激戦、その意味を考えましょうと叫んだ。この前橋を良くしたいと願う人が多いことを意味します。児玉君は単なる新人ではなく新しいタイプの人、政治の信頼が地に落ちた中で人間性を信じられる人です。時代が求めている人ですと声を大にすると「そうだ」の声が上がった。午前1時から動き消耗している筈の私の心身にアドレナリンが湧いて、疲れが飛び去るのを感じた。「勝利の姿勢を貫け、勝敗は天に任せて」。これは私の人生を支えてきた信念であるが、今児玉戦線で甦る。児玉君の挨拶に声が飛んだ。「そうだ、

頑張れ」。渋川市の職員を26年間勤めた理性の男は泣いた。残された時間は今日と明日。さて明日に。

つづく

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2025年2月 6日 (木)

「関税劇場の怪。本格的な取引の開始。ガザを所有とは。木部・児玉の戦いは」

◇世界がトランプ大統領に振り回されている。そのあからさまな手の内が見えてきた。世界最大の経済力を背景に関税という武器で脅して譲歩を迫る。現状は「関税劇場」である。トランプ氏の意図通りに進んでいる。外野から見ていて驚きなのだから劇場内は興奮の渦に違いない。メキシコとカナダは国境を接するから劇場の登場人物に当たる。アメリカ国民の多くはトランプ大統領を常勝将軍として英雄視しているのかも知れない。押さえる者がない状況は非常に危険である。紛争の中心地ガザにつき、アメリカの「所有」とし、必要なら兵をおくると発言した。記者たちの驚きの表情、呆れたような眼差しが報じられた。

 就任から2週間、取引全開、成果に向って着々と言うべきか。メキシコとカナダの譲歩に対して「見返り」を与えた。メキシコの大統領はメキシコ兵1万人をアメリカ国境に展開し合成麻薬の取締を即座に実行すると提案したのである。見返りは税関発動の1ヶ月猶予。アメとムチの使い分け。このような破天荒ともいえる政策はトランプ氏のキャラクターが可能にしているに違いない。

 このモンスターに対し我が石破氏はどう向き合うのか。対決の日は迫った。千両役者と大根役者の舞台にしてはならない。

◇トランプ氏の「所有」発言が世界に衝撃を与えている。単なる思いつきではなく何ヶ月も検討を重ねてきたと語る。死と破壊を終わらせガザを地中海のリゾート地のようにするとも。ガザの人々を他に移す計画だ。人々は「我々はどこにも行かない、トランプの発言は狂気じみている」と訴えている。ガザを統治しているハマスは最も強い言葉で非難し拒否する。地域の安定につながらず火に油を注ぐだけだ」と猛反発した。約70万人のパレスチナの人々は1948年のイスラエル建国により故郷を追われた。人々はその悪夢の再来かと恐怖に駆られている。ネタニヤフ氏の顔が悪魔に見えてきた。ナチスに追われホロコースを生き抜いたユダヤ人はナチスと同じことをやろうとしているのか。

◇今日6日は木部ひでと君及び児玉はるふさ君の決起大会だ。木部君はマーキュリーホテルで1時30分より、児玉君は事務所で4時30分である。木部陣営は組織を整え地域をあげての堂々たる戦いである。一方児玉陣営は手作りの家内工業的存在である。草の根のゲリラ戦がどこまで成果を上げるか世間は注目しているに違いない。果たしてサプライズは起こるのか。天才軍師孔明はいない。(読者に感謝)

 

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2025年2月 5日 (水)

「中盤情勢は。元総社は燃えている。拉致問題に政府は全力を尽くせ。県道陥没を考える」

◇前橋市議選は中盤に入り激しく展開している。「ふるさと塾」から出ている新人のうち岸川君と木部君の陣営は快調に走っているように見える。4日、元総社、石倉地区で拠点遊説を行った。それぞれの地区で私はマイクを握った。新人が短期間でよくここまでと思わせる程組織が整っていることを窺わせた。私は、ある地域で「この公民館で何十回も皆さんにお世話になりました」、また鳥羽の公民館では「団子屋の兄貴です」などと発言した。元総社一区の集会では懐かしさが込み上げた。「この牛池川のほとりで貧しい生活を送りました。私の政治生活の原点です。木部候補は私の心を受け継ぐ人で新しい時代の扉を開く人です」。こう発言すると頷く顔があちこちに見られた。元総社中学に向う一面田んぼの光景を思い出す。通学路に茅葺きの掘立小屋の我家があった。緑の田と我家はのどかな光景で、図画の時間格好な題材となった。私の心は大変傷ついていたのである。時の経過はこの光景を一変させた。田はほとんど姿を消し新しい住宅が密集している。「元総社は急激に変化しつつあり新しい地域のリーダーを求めています。今、政治家に求められるものは信頼です。木部君は・・・」。私はこう訴えた。

 拠点遊説を通じて元総社が新しい歴史を開こうとしている空気を肌で感じた。形骸化が指摘される地方議会に新風が流れることを期待した。

◇石破首相はトランプ氏との会談で拉致問題への協力を求める。日米同盟を進化させる上でも重要である。米政権の高官は北朝鮮をならず者と非難したが他国の多くの国民を拉致することはならず者国家であることの証拠である。拉致被害者めぐみさんの母横田早紀江さんが4日89歳を迎えた。「よく生きてこられたと思う。ひどい人生だが帰ってくるまでは頑張る」と語った。「今が一番寂しい。筋肉が弱って転んでばかりいるけど、ここまで生かして下さったのだから信じて祈るしかない」とも語る。家族は訴える。「残された時間は限られている。政府は結果を出して頂きたい」と。小泉元首相の勇気と行動力を改めて思う。

◇埼玉の県道陥没は一週間が経過。正に驚天道地。大都会の平穏な日常の足元が崩れた。幅約40mの大穴である。呑み込まれた運転手の捜査が続くが悲惨だ。地下の老朽埋設施設を抱える地域はさぞ不安だろう。地震が重なったらと想像する。杞憂は天が落ちることだが、地が落ちるとは。(読者に感謝)

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2025年2月 4日 (火)

「動き出した関税政策の行方。合成麻薬フェンタニル。石破・トランプ両氏の対決。清流のサンショウウオはいかに戦う」

◇トランプ政権の関税が政策が動き出した。メキシコとカナダに25%、中国に10%の追加関税を課すという。これらの国に大きな衝撃波が及ぼうとしている。影響は全世界に及ぶだろう。世界はどうなるのだろう。トランプ氏の目的はアメリカナンバーワンである。インフレを抑えると叫んで支持を得てきたのに関税を課せば米国内の物価高となりインフレの再燃ではないか。トランプは取引の手段として脅しているだけなのか。

 フェンタニルという薬物(合成麻薬)が登場した。体験者は語る。「一度使ったら戻れない」。トランプ氏は次のことを主張する。「多くの犯罪者が国境を越えてくる。中国はフェンタニルを製造しメキシコやカナダに流している」。また、「メキシコ、カナダ、中国は不法移民やフェンタニルの米国流入問題に対処しなかった」。関税発動の理由である。カナダにとって最大の貿易相手国はアメリカである。25%の関税がいかに大変かよく分かる。トルドー首相は「もし実行されれば力強い即時の対応策を用意している」と報復関税実行を発言した。リバウンドの衝撃は甚大となるだろう。トランプ政権内にもインフレ再燃を懸念する慎重論が根強いという。トランプ氏は舞い上がっているがアメリカ国民が苦しむ姿は無視出来ない筈。私は、完全は脅しの手段、取引の材料として使っていると考える。

◇石破首相は7日、トランプ氏と会談することに。共同声明を発表するという。トランプ氏は乱暴な政治家に見えるが非常に現実主義である。実務レベルで綿密な調整が行われているらしい。トランプ氏は「会談を楽しみにしている、日本が好きだ」と発言した。中国を意識していることが窺える。そういう姿勢が実務レベルに影響を与えるのだろう。共同声明明記で日本が強く求めていることは尖閣諸島の件。日本安保条約5条の同島への適用である。5条は米国による防衛義務を定める。適用明記は中国に対する強い牽制になる。拉致問題へ協力を求め化石燃料の増産を踏まえエネルギー輸入拡大も提起するという。トランプ氏は化石燃料について「掘って掘って掘りまくれ」と叫んでいた。いかなる成果を上げられるのか。世紀の役者と渡り合って日本の独自性をどこまで発揮できるか見守りたい。首相は米国出発に備えて外務省、防衛相幹部等を公邸に招き勉強会を開いた。受験シーズンであるが首相も受験生の心境かも知れない。清流に棲むサンショウウオの風貌を持つ首相。真剣勝負の軍配は。(読者に感謝)

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2025年2月 3日 (月)

「38議席を50人が競う。孤軍奮闘の児玉君にサプライズの手応え。元総社は燃えている」

◇いよいよ前橋市議選のスタートである。定数38に50人出馬という空前の状況は何を意味するのか。選挙は民主主義の基盤をつくる。現在一般には立候補者が少なく民主主義の危機が叫ばれている。前橋市の現象は喜ぶべきことに違いない。私の「ふるさと塾」から4名が出馬するのも驚きである。政治家はいかにあるべきかを歴史の観点から激しく論じてきた。塾のテーマとして都議選で注目された石丸伸二氏を取り上げたこともあった。「恥を知れ、恥を」。石丸氏の心中をなりかわって語った。このような私の姿勢が幾分影響を与えているだろう。前橋市では私をかつて支援した人々との絆はほとんどが健在である。これらを活かして岸川、木部、児玉の三君を全力で応援した。これら若い人たちは自分の特色を発揮させて戦っている。一番心配なのは児玉はるふさ君。渋川市の職員を26年勤めた。途中下車で政治の道を決意した人。行政の経験を役立てようとしている。外からは徒手空拳に見える。老いた両親と3人だけでやっているように映るからだ。しかし、私は案外意外な結果が生まれることを秘かに期待している。母との3千軒にも及ぶ挨拶回り、寒風の中での毎朝の辻立ちなどから確かな手応えを私は感じている。「呼べばこたえるこだまです」。やまびこのこだまと、児玉をかけたこのキャッチフレーズは考えに考えた秘策なのだ。この人と前橋北部を歩いていたら「毎朝辻立ちしている人ですね」と言う人に会った。私は辻立ちに付き合ったが「呼べばこたえるこだまです」と誰かに聞こえようか否かお構いなしに訴える姿に感動した。一見弱そうだが強靱な精神を持ち頭も緻密なこの男、市議会に登壇すれば新風を起こすと思う。

◇今日は総社神社で行動開始である。木部ひでと陣営の戦いが始まる。朝8時半、必勝祈願祭、9時出陣式である。長いこと私はここで戦国時代を思わせる儀式を繰り返しきた。私の故郷元総社は木部ひでとでまとまってきた。初め出馬しないと宣言した現職新井みか氏が急きょ出馬することになったのは誤算になっている。古来戦いには大義名分が要る。先日木部君はふるさと塾でその大義を掲げしっかりとした決意を述べていた。元金融機関にいた人でしっかりとした経済感覚を市政の上で活かせるに違いない。元総社は面白い。中学時代に名の知れた番長が木部を頼むと叫んでいる。未だ影響力があるのだ。(読者に感謝)

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2025年2月 2日 (日)

死の川を越えて 第82回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

「おやかわいい坊やがなぜここに」

「おお、わしが紹介しますぞ」

 万場老人は待っていたとばかりに声を上げた。

「その二人が両親でな、聖ルカ病院のキリスト教徒の医師も支えています。父親の正助は、シベリアから帰りました。この集落では、このように同病が助け合っております」

「何と言われた、シベリア出兵の機関兵とは驚きですな。聖ルカ病院のマーガレット女史は同宗の者として存じております。同病の方が立派に結婚して、こんなかわいい子を産んで育てておられるとは。シベリアは地獄だと聞きました。ご主人の留守を奥さんは立派に守り、子どもを育てたのですね」

「皆さんが助けて下さったおかげでございます」

 さやが言った。そして正助が続けた。

「この湯の川は、ハンセン病患者の手で仲間を助ける仕組みができています。妻が私の留守に子どもを育てられたのもそのおかげです。会長を決め、ハンセン病の人が仲間のために旅館を経営し税金も納めます。私は、シベリアでも韓国でもハンセン病の集落を見ましたが、この湯の川のようなところはありません。万場先生が、ここのことをハンセン病の光と申しますが、私はこのことを身をもって体験し、納得いたしました。韓国、シベリアと外国へ行き、外から見て、この集落の素晴らしさが分かったのでございます」

「うーむ。ハンセン病患者の組織によって仲間を助ける。ハンセン病の光ですか。よい話ですな。今まで、ハンセン病の悲惨なことばかり想像してきましたが、認識を改めなくてはなりません。議会の中だけでは良い政策は生まれません。昔の廃娼運動の頃を思い出しました。大切なことは、生の人間を見詰めることですな」

 森山抱月はしきりに感激し、何度も正太郎の頭をなでた。正助は求められるままに、シベリアと韓国の体験を話した。他の仲間が追い詰められて全滅したこと、ハンセン病患者の集落で助けられたこと、海底洞窟の恐怖にも触れた。聞き終わって森山抱月は言った。

「いや、感動の物語ですな。私だけで聞く話ではない。今日のことは議会で、皆に報告することに致します。それから一つ頼みがあります。議会の委員会で、正助君の話を聞きたいということになったら来てもらえますか」

つづく

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2025年2月 1日 (土)

死の川を越えて 第81回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

 その日が来た。森山抱月は、従者を温泉街に待機させ、単身で湯の川地区に足を踏み入れた。目立たぬ様子をしているため、一見普通人に見えた。

「ごめん」

 声をかけると、中から戸が開く。そこに立つ予想外の美しい女の姿に森山は戸惑っている。女の顔を見て、森山の目に一瞬はっとしたものが流れた。

「どうぞお入り下さい。森山様ですね。お待ちしておりました」

 こずえがにっこりして迎え入れる。

「やあ、万場軍兵衛さん、お久しぶりです」

 そして、森山はこずえを見やりながら小声で言った。

「あれが、もしやお品さんの・・・」

 万場老人は黙って頷く。そして小声で言った。

「先年、木檜泰山先生の傍聴に県議会へ行ったのも彼女たち。その折はお世話になりました」

 森山抱月は、ほうという表情で改めてこずえを見た。

「偉い先生がこんな所に来られるのは開闢以来のこと、名誉なことじゃが皆緊張しております」

「なんのなんの。皆さん若くてよいですな。昔うぃ思い出しますよ。廃娼運動というのがありましてな、草鞋に腰弁当で田舎の家まで乗り込んだものです。若い情熱があった。懐かしい限りじゃ」

「そのことです。先日、先生の業績を説明する中で、廃娼運動を話しましたぞ。初代県令、楫取素彦のことも併せてな。人間の尊重という点で、この集落の抱える問題と同一だと皆に話したところです」

「そうですか、その点は私も十分承知ですぞ。今日の目的は、理屈でなく、実態を肌で受け止めることです。この音が死の川、湯川ですか」

 森山はこう言って、外に耳を傾けるしぐさをした。ごうごうと流れの音が響いている。そして、傍らの正太郎に目を留めた。

つづく

 

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