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2024年10月31日 (木)

人生意気に感ず「国民民主はキャスチングボードを得た。暴言ほど喜ぶアメリカ人。ガールズバー殺人事件」

◇天下大乱の炎は静まるどころではない。緊急の世論調査が炎の実態を炙り出している。また各メディアは悲喜こもごもの役者の表情を報じる。大衆の受け止めは様々で他人の不幸は密の味とばかりに面白がっている者も少なくない。世論調査の数字にはそんな要素も含まれているに違いない。

 内閣の支持率は内閣発足直後からなんと18.6ポイント落ちて32.1%。それでも多くは石破首相の存続を認めている。首相辞任不要が65.7%なのだ。勝ち組負け組色々な顔の中で最も輝いて見えるのは国民民主党の玉木雄一郎氏だろう。公示前と比べ4倍の28議席を得たのだから当然に違いない。それに比べ石破首相の顔は憂いに沈み泣き出さんばかり。こういう岩の塊のような顔が自信を秘めている時は深さと貫禄を窺わせるがそれがない時は醜怪さが目立ち哀れである。

 自民党は国民民主党と政策の協議に入った。目指すのは「部分連合」。つまり、自民公明、そして玉木代表の国民民主党3党による政策協議がスタートする。玉木雄一郎代表率いる国民民主党はぐちゃぐちゃになった政局でキャスチングボードを手に入れたのだ。

◇日本の政治の混乱の中でアメリカの政治の混乱を考える。アメリカの重大さは日本の比ではない。トランプの傍若無人ぶりを面白がり、あるいは拍手するアメリカ人が多いのは始末が悪い。トランプが暴言をやめないのは過激な発言ほど喜ぶ人が多いからだと言われる。世論調査ではトランプの支持率は上がっていると言われるが、私は最終的にはハリス勝利を信じる。7つの接戦州ではトランプが誤差の範囲ながら勝っているが世論調査で把握しきれない無党派層のうねりは注目すべきである。アメリカは現在白人人口が減少し民主党支持の黒人層やヒスパニック系が増えている。ジャマイカ出身の父とインド出身の母を持つ史上初の女性大統領の誕生にはわくわくさせるものがある。

◇新橋のガールズバーで女子高生を殺した千明という人物は渋川市の住人である。古くからの農家で、母親とイモやネギを栽培し道の駅で売っていた。この人物は49歳のバツイチで被害者は定時制高校の4年生である。渋川市ということでこの事件を身近に感じる。母親の話では月に何度か東京に出かけていたという。馬乗りになって上半身を10数カ所メッタ刺しにした。2人の間に何があったのか。何が男を狂わせたのか。静かな渋川の農村が享楽の東京と結びついていることに驚く。(読者に感謝)

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2024年10月30日 (水)

「今日は誕生日。人生で出会った人々。11月3日が迫る。」

◇10月30日を迎えた。〈誕生日死屍累々の道を行く〉。84年の人生を振り返れば多くの知人や関係者がこの世を去った。私は昭和15年10月30日に生を受けた。硝煙が立ち込める激動の時代が甦る。誕生とほぼ時を同じくして日独伊三国同盟が結ばれ、翌年太平洋戦争突入である。狂ったような戦局は幼い身にも次第に分かるようになった。先日特攻隊員の遺書を改めて読んだ。多くは母に対する思いを綴っている。生まれた年が少し早かったら私の運命もと思うとぞっとする。前橋空襲の炎の中を逃げた。「国破れて山河あり」の惨状が生々しく甦る。戦いに敗れた国民を待ち受ける運命がいかに悲惨かは歴史が教えていた。流言飛語に追われるように我が家は赤城の山奥の開墾生活に入った。小川の水がきれいで夜空の星は美しかった。旧宮城村鼻毛石の小学校時代は懐かしい。ハングリーの中に活気があった。前の席の女の子の頭にうごめくのはシラミである。授業中お尻がむずむずしてトイレに走ると太い回虫が垂れ下がっていた。母は学問のない百姓の娘であったが最良の私の教師であった。豆ランプの下で「アイバンホー物語」を声を出して代わる代わる読み夜を明かしたことが思い出される。

 84年を振り返れば大切な人との遭遇がある。荒んだ中学時代「君は何か書くことを続けたほうがいいよ」と言ってくれた大館光子先生の一言はその後の人生の支えとなった。また前高定時制の時、東大受験を支えてくれた故妙見猛先生の存在は暗夜の光明であった。東大との出会いは人生を一変

させた。何人かの高名な教授に評価されたことは劣等感で苦しむ身に自信を与えた。人生の転機に徒手空虚で臨んだ県議選に、ゼミの恩師林健太郎先生は元東大総長として手弁当で駆けつけて下さった。

 人生の転機と決断の時は容赦なくやってくる。私は余力を十分残し人生の新たな地平線を求めて30年に及ぶ県議会を後にした。一生は一度限りと言うがいくつかの世界を生きるのは一つの理想。政界は本来の「水」ではなかっただけに現在水を得た魚の感がある。そして目前に11月3日が迫った。走ることは生きる証。原稿用紙のマス目を埋めるように私は走る。

◇マラソンの2日後、世界を震撼させる出来事が始まる。米大統領選である。稀に見る接戦で、勝敗を分ける接戦州はトランプが優勢とも伝えられる。私は、カマラ・ハリスの勝利を信じる。民主主義や法の支配など戦いの大義はハリスにあるからだ。アメリカ人の良識と見識を信じたい。(読者に感謝)

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2024年10月29日 (火)

「笹川氏は214票差で首が。真の反省がないことに国民の怒りは更に。トランプは嘘のかたまり」

◇国民の鉄槌は下された。自民・公明に対する過半数割れという形で。公明は何と石井代表がまさかの落選である。公明は母体の創価学会が高齢化等でエネルギーが落ちている等指摘されていた。石井代表の落選はそれを象徴するものだろう。本県では福重氏が比例で一議席を守った。

 首相は「納得と共感」を掲げたがそれは得られなかった。県内5小選挙区は自民が独占したが薄氷を踏む選挙区もあった。3区である。ここは唯一与野党一騎打ちとなり笹川氏は辛うじて勝ったが214票差であった。笹川博義74,930、長谷川嘉一74,716。笹川さんは結果が出るまで生きた心地がなかったであろう。長谷川氏は比例で復活し議席を得た。笹川氏も長谷川氏も私の県議時代と重なる関係であった。長谷川氏は立憲民主党の元職であった。

 改めて大変動の結果を見ると凄まじい。自民は大きく減らし246から191に。立憲は逆に98から148に議席を増やした。その他野党では国民民主党の躍進7から28に驚く。また裏金議員は46人中28人が落選。女性の当選者が過去最多の70人というのも今回の注目点。そして大物の落選で「へえー」と思うのは東京11区の下村博文元文科相と福井2区の高木元国対委員長の落選である。

 石破首相は選挙戦が進む中で批判の声におされて態度を一変させ裏金議員に厳しく対応したが国民は許さなかったのだ。終盤、非公認支部に2,000万円を給付したことは不信を増幅させることになった。現在の国内外の状況を考えるとき政府与党の責任は極めて重大。雨後の竹の子のような乱立の状態に政治を任せることは出来ない。政治の主権者はあくまで我々国民である。国民が真に危機感をもって政治に鉄槌を下さねばならない。

◇本県は自民小選挙で全員当選となったので東京など負けが込んだ選挙区の有権者と比べ反省が軽くなる恐れがある。日本全体のことを考えて真の反省が迫られる。旧統一教会の問題も主権が侵害されるような重大さにもかかわらず軽く通り過ぎてきた。このままでは国民の怒りは更に激しくなるに違いない。

◇アメリカの大統領選が刻一刻と迫る。トランプの嘘に翻弄されるアメリカ国民の姿は滑稽である。先日はアルバイトをして愛嬌を振りまくトランプの姿が報じられた。何でもありは追い詰められた状況を物語るのだろう。11月は内外とも様々なサプライズがありそうだ。(読者に感謝)

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2024年10月28日 (月)

「石破政権の危機は想像以上であることが間もなく分かる。兵庫の乱は意外な展開に」

◇26日(土)のふるさと塾は格別だった。なぜか。テーマ故である。「石破政権の危機・及び前兵庫県知事の行方」で、石破政権の運命を左右する国民の審判は正に翌日に迫っていた。そして国民の目は極めて厳しく与党の過半数割れは濃厚であった。一方全国民に袋叩きにされ天下の極悪人のように扱われてきた前知事齋藤元彦氏を囲む状況が大きく変化してきた。再選も有り得る状況なのだ。こちらは10月31日告示11月17日投開票である。

 石破政権に関しては岸田前総理の判断によって石破が決戦投票で勝利した経緯を解説。

 石破政権の閣僚中、注目すべき何人かにつきコメントした。その中に総務大臣の村上誠一郎氏がいる。祖先は海賊である。故安倍首相を国賊と糾弾した。戦国時代瀬戸内海で活躍した村上海水軍は有名である。歴史小説「村上海賊の娘」がある。党内きってのリベラル派の一言居士。東大卒の文武両道の人で自民党は本当のことが言えない政党になってしまったと憂えていた。「国賊」発言も本人は感情で言っているのではないと述べている。国破れて群雄割拠すと言う。かつてない国難に当たりこの人物がどんな動きをするか見守りたい。

 官房長官の林芳正氏も異彩を放つ。外相や文部科学相など六つの閣僚を経験。実務能力が高い。特に英語が堪能で流暢な英語で演説する姿を見た。国際化時代に欠かせない政治家の一人である。欠員が出来た時の緊急対応で登場することも多い。誕生日が1月19日であることから「政界の119番」の異名もある。

 今回のふるさと塾で前兵庫県知事に注目したのには訳がある。端正な姿のこの男はマスコミの非難の嵐に屈することがなかった。何かがあるに違いないと思った。メンタル面につき「鋼」と評する向きもあったがあの強風を支える信念があるのだろうと秘かに期待した。再出馬を決心する要素の一つにある高校生の手紙があったという。「信じているので頑張って下さい」。あの高校生は今どうしているだろう。5期続いた井戸知事のどろどろしたものを齋藤氏は大胆に改革しようとした。井戸知事と県議会の癒着もあったと思われる。齋藤氏とすれば「恥を知れ」と叫びたかったのだ。人民局長の自殺につき道義的責任が盛んに言われたがそれも新しい事実が分かってきた。局長が百条委に提出を拒む資料があった。早く幕引きを望んでもいた。11月17日に向け都知事選の時の石丸伸二と似た状況が生じているとも。(読者に感謝)

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2024年10月27日 (日)

死の川を越えて 第51回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

「二人の宿命のことがありますね。私は、耐えられないほど悩みました。正さんに相談したいとどんなに思ったことでしょう。でも、正さんはいない。私はじっと耐えました。神様から頂いた命を大切にしなければなりません。そして正さんとの絆です。どうしても産みたい。顔を見たい。聖ルカ病院の岡本先生に思い切って相談しました。赤ちゃんのことを話す決心はなかったのですが、この女医先生、私と同郷の出と聞いて親しみを覚えたので話すことができました」

〈さやちゃん、おなかのことは知らなかったけど俺も岡本先生に相談した。そのことを話したよね〉。正助は紙面に浮かぶさやの面影に語りかけた。

「先生は、遺伝病ではない。感染力は弱いと申しました。昔、草津では、患者と一般の人が混浴していたのは、その証拠で草津の人は経験から知っていたに違いないとも言いました。それを聞いた時、私はまだ信じられない思いでした。先生は、産め、産むなは言えないと言い、京都大学の偉い学者先生に会うように勧めてくださいました。小河原泉という方です。万場老人が費用を出してくれることになり、こずえさんが同行してくれることになりました」

〈うーむ。京大の先生は何と言ったのだ〉。正助はもどかしい思いで目を先に走らす。

「京都害学はすごい大学です。私もこずえさんも一歩踏み入れて、そう感じました。小河原先生は、きっぱりと申されたのです。遺伝はしない。感染力は極めて弱い。治らない病気ではない、と」

 正助は、岡本トヨからハンセンという学者がらい菌を発見したことで遺伝病でないことが分かったと教えられたことを振り返っていた。

〈さやちゃんと、大切なことを共有することができた〉。正助はこう思うと、離れていてもさやと共に生きる力が体の底から湧き上がってくるのを感じた。

つづく

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2024年10月26日 (土)

死の川を越えて 第50回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

  • 便り

 

 日本は、ロシア革命の影響を恐れた。日本の北隣に社会主義の国が出現したのだ。その思想は、天皇制を否定し、日本の国家秩序の根本を突き落とす恐れがある。その思想が強大な国会の形となって現れたのだ。

 日本は、明治維新によって四民平等を実現し近代国家を創ったが、現実の社会は矛盾に満ち多くの国民は貧富の差に苦しんでいる。社会主義の思想は、資本主義の矛盾を指摘し、すべての人の平等な社会を目指すことをうたい文句にしている。人類の美しい理想が目前に姿を現したかに見えた。為政者は多くの国民が影響を受けて国内でも反政府の運動が起きることを恐れた。これは、イギリス、フランス、アメリカなどでも同様である。そのために、ロシアに広がる社会主義を抑えようとした。

 日本には、さらに別の目的があった。それは、この機会に東シベリアに日本の支配を確立することであった。だから人道主義を掲げるアメリカは日本の野心に疑いを抱いた。そして、アメリカとの協調は日本にとって死活問題であった。

 京城にいる正助にも、深刻な事態がひしひしと伝わり、シベリアに行くらしいということが次第に明らかになってきた。

 そんなある日のこと、正助の下に一通の手紙が届けられた。それがさやからのものであることを知った時の驚きとときめきは大変なものであった。

「正助様、お元気ですか。お国のためにご苦労様でございます。今日は、とっても、とっても大切なことをお知らせするために筆をとりました。さやは、正さんがどのように受け止めてくれるか心配でございます」

〈何だろう〉。正助は紙面から目をそらし、高鳴る胸を抑えるように息を吸った。先を読むことに期待と不安が交差する。

「正さんが草津を離れる直前、私のおなかに小さな命が宿っていることを知りました」

「えっ、何だって」

 正助は思わず声を出して叫んでいた。

つづく

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2024年10月25日 (金)

人生意気に感ず「自民、反省の気持ちはないのか。ビルゲイツ寄付の意味。英公務員がハリス支援を。前立腺の治療」

◇衆院選レースのゴールが見える。自民のもがき、焦りが肌で伝わり断末魔の叫びが聞こえるようだ。森山幹事長は非公認の支部に党勢拡大のためとして2千万円を支給したことが明らかになった。裏金事件で汚い金の嵐が渦巻く中である。当然ながら野党からは激しい非難の声が。「事実上公認と同じ、国民を欺いている」、「選挙期間中の党勢拡大は選挙そのもので国民を馬鹿にしている。原資が政党交付金であることは税金が裏金議員の選挙に使われていることだ」等々。

 与党の過半数割れはますます濃厚になってきた。首相は街頭演説で「極めて厳しい情勢だ」と叫んでいる。追い風の立憲は「猛追して抜き去る可能性が十分に出てきた」と強調。息を呑む瞬間である。

 不思議というべきがアメリカも近い。11月5日である。激しい動きが太平洋を越えて伝わってくるようだ。日本では自民が悪者に、アメリカではトランプが悪の権化のように言われている。しかしどちらも結果は予断を許さない状況なのだ。

 アメリカでは注目の事実が報じられている。ビルゲイツがハリス側に約75億を寄付したのだ。言わずと知れるマイクロソフトの創業者である。額よりもその意味するところが重大である。ゲイツは強調した。「米国や世界中の医療の改善や貧困の消滅、気候変動対策に明確な意思を示す候補を支援する。今回の選挙はこれまでと異なり、最も弱い立場にある人にとって重要な意味をもつ」と。ハリス陣営には既に多くの額が寄せられていると言われるが、ゲイツのメッセージはこの流れに影響を及ぼすだろう。

◇英労働党の現・元職員約100人がハリスの選挙をボランティアで支援するとして波紋を広げている。「違法」の主張もあるが、意思決定に関与がなければ許されるとのこと。ハリス支援の輪が国際的広がりを示すことに注目したい。

◇先日泌尿科の中沢クリニックで受診した。2~3ヶ月に一度の尿道を広げる治療である。さして痛い思いもせずに84年を生きてきたのだから仕方ない。若い看護婦さんが「失礼します」と言って愚息を消毒し医師が細い金属を差し込む。勿論麻酔はない。ぐいぐいっと情け容赦なげな行動がかえって安心感を与え勇気を生む。生きている証なのだ。西部劇の名優ゲーリー・クーパーは60歳で前立腺がんで死んだ。幸いにも私には癌細胞はない。この日の尿検査でもその兆候はなかった。(読者に感謝)

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2024年10月24日 (木)

「千載一遇のチャンスを活かせない野党。候補者一覧敗軍の将は何を語る。四面楚歌を破るか兵庫の乱」

◇選挙戦は終盤である。テレビの各党政見放送は正に雨後の竹の子。選挙戦突入が早かったため野党は協力体制を作れなかった。千載一遇のチャンスを活かせなかったのだ。情報は乱れ飛ぶが与党の過半数割れの可能性が高い。その時政権を動かすためどこと手を組むのか。内閣不信任案を突きつけ終始裏金裏金と絶叫している状況だ。政治の根本は信なくば立たずである。日本の混乱を喜んでいる周辺国は多い。内憂外患の国難の時、プロレスの場外乱闘を面白がってはいられない。つい先頃まで存在すら知らなかった政党の集会に驚く程の人が押しかけている。

 投票日が刻々と近づく。27日である。総務省は全ての開票作業終了見通しは28日午前8時と発表した。開票が最も早く終わる小選挙区は鳥取県。東京都は小選挙区比例とも最も遅くなる。人口密集地帯の戦いは大海を泳ぐようだろう。候補者のエネルギーも終盤に近いに違いない。

◇ふるさと塾が迫った。明後日26日で、今回は「石破首相は本物か」、「前兵庫県知事の行方」などを柱にする。翌日が開票という珍しいタイミングで総選挙を語ることになった。折しも、自民党本部から「自由民主」が送られてきた。一面にマイクを握る首相の姿と「勇気と真心で真実を語る」の文字が躍る。ページをめくれば公認、推薦候補一覧がずらり。敗軍の将兵を語らずという。様々な光景が展開されるだろう。

 前兵庫県知事齋藤氏は四面楚歌にしぶとく耐えてきた。そして今、面白い現象が現れている。

 兵庫県知事選は10月31日告示、11月17日投開票。次の知事選に出ると決意を語る記者会見は衝撃的であった。「信じています。頑張って下さい」と綴った一高校生の手紙が一つのインパクトになったとされる。今、齋藤氏に有利な状況が生まれようとしている時、あの高校生はどうしているだろうか。ただの「パワハラ、おねだり」政治家ならとっくに辞めていたはず、という声が出ているのだ。背景には県政の深い闇があったとも。都知事選で天下を沸かせた石丸氏と似た現象が起きつつあるのは事実か。内部告発に動き自殺した職員の事件もこの闇と繋がっているらしい。前知事への轟々たる非難は民主主義が醜態を晒す光景かも知れない。真実を知るのは全会一致で不信任を突きつけた県会議員たちかも知れない。石丸伸二氏の「恥を知れ」の声が甦るようだ。衆院選の自民大敗に続く兵庫の乱が見物である。マスコミも目を覚ましつつあるか。(読者に感謝)

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2024年10月23日 (水)

人生意気に感ず「元検事正の死刑存置論に反対する。今年も10キロを完走するぞ。前高生と外国人留学生の交流のこと」

◇8月付「視点」に載った元検事正内藤さんの死刑存置論には反対である。内藤説でまず看過できないのは「裁判で誤りがあってはならないのは死刑に限らず当然のことで、それは裁判官や検察官、弁護人が努力すべきことです。死刑制度とは別の問題です」と述べていること。死刑は極刑でありその重大さ、そして誤判の深刻さは他の罪と同列に論ずることは出来ない。人権を尊重する憲法は残虐な刑を絶対に禁じている。最高裁は執行方法も含めて合憲としているが最近再審で死の淵から生還した袴田さんは長い間死の影に怯え心身共にボロボロになった。内藤さんは裁判員裁判で慎重に審理した上で死刑判決をためらうべきでないと述べるが裁判員裁判により誤審の恐れは多くなったと言われる。また氏は「一番大事な方が残虐に殺された場合犯人を死刑にしてほしいと思いませんか」と主張するが個人的感情論を優先させてはならないと思う。現在日本国憲法の基盤が揺らぐような時代の大きな節目にある。更に内藤さんは死刑を回避することに反対し「罪を償うとは、死んでしまった被害者を生き返らせること以外には有り得ません」と主張している。これらの内藤さんの発言には種々議論すべき材料が存在する。今こそこれらを踏まえ憲法、人権、社会防衛、死刑制度の犯罪抑止力等々につき原点に立って議論を進めねばならない。

◇今日は23日、あと一週間で84歳。私個人とすれば人生の一大事である。その直後の11月3日が迫る。実際のコースをおよそ半分、2回走った。何とか完走できそうだ。年々マラソンの熱が高まっていることを肌で感じる。当日は多くの人の波の中でアドレナリンが湧くことが期待される。今朝も深夜にいつものコースを走った。若干の冷気とその時が迫っていることで緊張感が増している。計は我が方寸にあり。健康で走れることの幸せを改めてかみ締めた。この世を去った多くの仲間が天で見ているだろう。

◇先日前橋高校を訪ね外国人留学生と前高生との交流につき打ち合わせた。私が理事を勤める日本アカデミーには1500人以上の生徒が学ぶ。海を越えて学びにやってくる彼らの覇気には学ぶべきものが多い。前高に入ると校歌が刻まれている。「男児の粋を集めたる」と。文武両道の気概は健在か。日本の若者の力の衰えを私は憂える。男女共学論が力を得ているが私は伝統の男子校を守りたいと思う。(読者に感謝)

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2024年10月22日 (火)

人生意気に感ず「日曜討論会での各党のエネルギー。衆院選は終盤に。自大敗大敗と立憲の躍進」

◇NHKの日曜討論を興味深く見た。各党の幹事長などが当面の課題を激しく議論した。自公、特に自民は裏金問題につき幕引きを図り逃げようとしていると迫られた。自民の森山幹事長は、「外交日程は詰まっている、来年は参院選もある。だから早過ぎとか幕引きではない」と反論した。裏金をすっぱ抜いたと自負する共産党はなおも厳しい。「国民は怒っている。新しい事実がでても調査しないではないか。自民党ぐるみで実質脱税をやっている」。これに対し森山幹事長は「「新しい事実についてはそれがどういうものか、再調査、検証もする」と答えていた。またある野党は、自民は公認を外してもそれは形だけで実質は公然と堂々と応援していると迫った。選挙区で実際戦っている当事者の切実さが伝わってくる。

 日本の経済力はなぜ衰退したのかにつき各党から議論が出た。注目されたのに次のものが。「世界が求めている物をつくれていない」、「農林水産業こそ重要、IT農業こそ」、「地方から新しい日本を目指すべし」、「中小企業の力を育てよ。政府は大企業優先でその内部保留は600兆円に近い。これに課税すべきだ」。原発再稼働について、維新はエネルギー不足を強調し原発再稼働を進める立場である。他の野党は日本は地震と津波の危険に晒されているから原発は止めて再生エネルギーを増やすべしと主張する。脱炭素と経済成長の両立は可能だと強調。その手段として海は広いから洋上風力を技術力で進めるべきだと訴えた。

 人口減少問題については、若者は産みたくても産めない、若者の収入を増やすべきだ。産む産まないは個人の価値観の問題というが社会の問題であり国の課題だという意見に注目。授業料の値上げなどもってのほかだとも。私は東大の授業料値上げ問題を想像した。国防問題については外交こそ国防の1丁目1番地とする与党サイドの発言に注目。日本の安全保障に関し故大平首相が述べた。「日本は太平洋国家であると同時にアジア国家でもある」にも改めて教えられた。

◇選挙も終盤に入る。大勢が窺える状況だ。大規模な世論調査によれば自民は公示前より50議席程減る見通しという。自民は単独過半数を割り込む公算が大きいらしい。野党は立憲が大幅に増やし維新は議席を減らすと分析される。立憲は躍進して、公示前の98から140に迫るらしい。立憲の穏健な政治姿勢に加え野田代表の存在感が大きい。国民民主は7から大幅増の20前後に、れいわは比例区で3から10前後に増える。政界の混乱が見えるようだ。(読者に感謝)

 

 

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2024年10月21日 (月)

人生意気に感ず「マラソンは人生の放物線。コースを走った。今年はいける。群大生に中国のアドバイスを」

◇ぐんまマラソンが近づいた。ゼッケン、計測用チップ等が送られてきた。10kmのコースマップを見ると緊張感が高まる。1年があっという間に過ぎた。11月3日、No.11661である。コース上で揉まれる自分の姿を想像する。84歳の誕生日が目前に迫った。走る仲間が次々と姿を消していった。今年は最高齢の部類である。改めて走れることを天に感謝する。今年は完走出来るだろうか。記録は正直に人生の放物線を語る。全盛期、56分で走ったが昨年は1時間41分であった。この数字は人生の終焉が近づいたことを示す。それを天命として受入れるのか。私は新たな挑戦を決意した。身体には漲る力がある。世界各地を走ってきた。毎日走り続ける力は健在である。

 それを確かめるために実際のコース上を走ることにした。19日午後4時競技場のスタート地点に立った。昨年の興奮が甦る。東進して国道17号までは芋もみであった。今年もそうに違いない。老いも若きも、目の前の背中はそれぞれの人生を物語る。17号に出た。呼吸は意外に楽である。この日は田口町の上武道路あたりまでを走った。およそ40分間、十分な余力を感じる。いけるなと自信を得た。

 当日の空気は走者に特別の力を与えるものだ。あんな老人が走っている、目の前を若い女性が進んでいく、様々な息遣いと足音が励ましている。当日の参加者の状況は社会の縮図である。高齢化が進む中で誰もが健康を目指している。84歳の私は、高齢者代表の覚悟をもって走ろうと思う。今回は中国貴州省の4人の中国人がフルマラソンのコースに参加する。その資料が日中友好協会事務局に届いた。交通規制、迂回路の指示もあるので注意してあげねばならない。

◇中国との人的交流が密になっている。マラソン参加もその一環であることを感じる。先日石破首相はアセアンの会議で外交デビューを果たした。石破氏は李強首相と会談し、戦略的互恵関係を強く進めることで合意した。様々な課題を抱える日中である。それだけに民間の人的交流の重要さは増している。中国は近くて遠い国なのだ。2000年を超える歴史を共有しあらゆる文化と繋がりを持ちながら政治体制が異なる故に時に火花を散らす関係である。今度数名の群大生が招待されて中国訪問することになった。私は天安門で原稿を没収された事を記した「激動の北京」を渡して中国情勢についてアドバイスした。中国の現実を知る良い機会であること、そして協会への加入をすすめた。(読者に感謝)

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2024年10月20日 (日)

死の川を越えて 第49回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

「ところでな、人の縁というものは実に不思議じゃ。湯の川地区に韓国から来た李という男がおる。昔、ある事件に巻き込まれた時、わしが助けたことがあった。正助が韓国、京城にいることは、別のさる筋から知った。わしは気がかりでな、どうしたものかと悩んでいた時、この李のことを思い出した。正助が京城の部隊にいるが心配じゃと話したら、そういうことなら任せてくれ、恩返しがしたいと。ハンセン病の仲間と組織があるから、まさかの時には力になると言う。実はな、聞いてみるとそのハンセン病の統領は、わしとつながりのある者じゃ。そして、驚いたことに、しばらくして、李の弟が正助とひそかに連絡をとることができたと申しておる。今後の正助のことは、この筋から連絡があるはず。動静を見守るつもりじゃ」

 さやは、万場老人の話を手に汗してじっと聞き入っていた。

「ところで、正助は正太郎のことを知らんわけじゃな。悪いことを予想するわけではないが、今こそ知らせる時ではなかろうか。大いなる生きる力が生まれるはずじゃ」

「わたしも、そのとをずっと考えていました。でも、どうしたら知らせることができるでしょうか」

 さやは、身を乗り出し、瞳を輝かせて言った。

「それは大丈夫。正助のことを知らせてくれる、軍の人脈がある。さやさん、まず手紙を書いてごらん」

 万場老人の表情が、手紙の先の光明を暗示するように緩んだ。

 

つづく

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2024年10月19日 (土)

死の川を越えて 第48回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

「お前たちも承知のように挑戦は韓国といって日本の一部じゃ。今から10年ほど前、併合により日本となったが、住民の反対は根強いものがあった。最近の世界情勢が重なり、朝鮮の隣の中国で反日の嵐が吹いている。その影響で韓国でも反日が強くなった。さらに非常にまずい一大事が生じた」

「まあ、さらにとは何でございますか」

 こずえが不安そうな表情になった。

「ロシアに革命が起きた。北の隣国ロシアが社会主義の国になろうとしている」

「社会主義って何ですか」

 正太郎の顔に頬を寄せるさやの声に緊張感があった。

「労働者が主人公の国が人類史上初めて出現したのだ。今までの国王や皇帝が地位を奪われた。皆平等になるというが理想通りに行くものではない。天地がひっくり返る大変化じゃ。日本もイギリスもフランスも、その影響が及ぶことを大変恐れておる」

「正助さんの身に影響があるのでしょうか」

 さやの声は一段と不安を帯びてきた。

「世界はな、この革命をつぶそうと、シベリアに出兵しようとしている」

「戦いはヨーロッパなのでしょう。なぜシベリア出兵なのですか」

 さやは、正助とシベリアが関係するかどうかが心配なのだ。

「それはな、チェコスロバキア軍救出のためだ。チェコスロバキアという国の軍はドイツを攻める上で貴重な味方。そして革命軍と戦っておる。それが、革命軍によってシベリアに追い詰められている。ドイツに勝ち、そして革命軍を倒すためにはチェコ軍を助けねばならない。日本は地理的に尤も兵を出しやすい。そこで、日本はより多くの兵を出そうとしている。そこに正助が行くことになれば心配じゃ」

 万場軍兵衛は、ここで初めてため息をついた。

 

つづく

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2024年10月18日 (金)

人生意気に感ず「裏金議員の命運は。元東大総長、県民会館に。土下座は懐かしい」

◇裏金議員のレッテルを貼られた候補者たちは地獄の戦いを強いられている。県内序盤情勢はおおむね自民が優勢らしい。私が注目するのは3区、笹川氏(自民)と長谷川氏(立憲)の一騎打ち。どちらも県議時代同僚だった。先日、須藤県議長の会では笹川氏が来賓として挨拶していた。

 県外に目をやれば面白いバトルが展開されている。当時者とすれば面白いどころではないが。裏金議員39名中夫婦で処分されたのは丸川珠代元五輪相と大塚拓衆議院議員の二人。丸川氏は最も悪質な愚か者と叩かれ、夫婦は共に落選の危機にある。丸川氏は東京港区から夫の大塚氏は埼玉9区から。丸川氏が愚か者と表現されるには背景がある。かつて民主党政権下の国会で「愚か者めが」と激しい野次を飛ばして話題になった。それがブーメランのように返ってきて本当の愚か者はお前だと非難されることになったのだ。

◇選挙の真っ只中で様々な話題が飛び交う中で苦い心の傷が甦る。「土下座」である。私の初陣はドラマチックに展開した。ゼロからのスタートだった。恩師の林健太郎元東大総長が手弁当で駆けつけて激励してくれたことは話題になり測り知れない程の勇気となった。大いに盛り上がったがわずか200票余の不足で敗れた。しかし天を仰ぐ陣営を神は見捨てなかった。およそ1年後、偶然の事情により補足選挙の機会が訪れたのだ。多くの支援者は燃えた。最後のチャンスであった。総決起大会の時、選対の中枢にいた小学校の同級生福島浩が静かに切り出した。「一番大切なことを高い所から頼むのはなあ」。何を言わんとしているかは明らかであった。断れる状況ではなかった。妻を説得するのは辛かった。教師一筋にきれいに生きてきた女性である。壇上につかれた左腕に巻かれた白い包帯が視野に入った。幼時囲炉裏に落ちて焼いたのだ。包帯は昂然と胸を張って人生を生きる証でもあった。私たちの一世一代の演技は終わった。4人で一つの椅子を競ったこの戦いで、私は34,831票を得た。新聞は「中村氏初陣を征す」と報じた。林先生に報告した。電話の声は静かであったが県民会館で語ったことを甦らせていた。「歴史を活かした政治家になりなさい」である。先生とはその後不思議な御縁でお世話になった。死後、奥様の計らいで多くの蔵書を頂いた。今月30日84歳となる私はその直後11月3日にぐんまマラソンで10キロを走る。その結果を先生に報告しようと思う。走ることは生きる証であり私の人生の歴史でもあるのだ。我走る故に我有り、デカルトを思う。(読者に感謝)

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2024年10月17日 (木)

人生意気に感ず「日本創生の声は虚しく響く。民主主義は幻か。宇留賀副知事がミライズに」

◇石破首相は「日本創生のための選挙」と位置づけ立憲の野田代表は裏金を争点にし国民と怒りを共有すると訴える。創生とはこの世をはじめて作ること。敗戦の廃墟から立ち上がる程の重みがあるはずのこの表現が虚しく響く。石破氏の言行不一致が目立つからだ。天の声は27日に下る。野党に陣立ての時を許さない自民の賭けはどう出るか。裏金事件は野党にとって千載一遇のチャンスなのにそれを活かす軍師はいない。今回の選挙で脛に傷を持つ大物たちで戦戦恐恐と怯えている人は多い。天下大乱の中から何かが生まれるのか楽しみではある。国乱れて群雄割拠というが地方にその兆しはあるのだろうか。

◇今回選挙の特色の一つは女性候補が多いこと。314人で戦後最高である。女性の時代を現す現象だがどの位実際に当選するか興味が持たれる。諸外国と比べ政治の分野で女性が活躍する数は少ない日本であるが変化の兆しが感じられる。

◇選挙は始まったばかりであるが早くも世論調査が報じられている。共同通信は全国の有権者15万6千人を対象に調査を行った。自民は裏金が響いて低調である。全289小選挙のうち自民がリードしているのは140程度で比例では前回の72議席を下回るのは避けられないらしい。公認されなかった候補の大半は非常に厳しく、重複立候補が認められなかった候補も半数近くが先行されているという。一方追い風を受ける立憲は公示前の98を超える公算が大で無党派層でも支持が拡大しつつあるとか。テレビも新聞も週刊誌も一斉に選挙で騒がしくなってきた。情報が乱れ飛んでいる。人々の心は木の葉のように翻弄されている。これが民主主義の根幹とされる選挙の実態なのだ。民主主義は一つの理想であるから現実との間に乖離があるのは当然だ。その距離を縮めるために主権者たる国民が不断に努力することに意義がある。時の流れの中で部分だけを切り取って見れば滑稽である。日本を取巻く体制の違う国々はそう見ているに違いない。週刊誌などでは「石破大敗予測の衝撃」とか「裏金候補当落リスト緊急公開」などおどろおどろしい文字が躍る。27日はあっという間である。石破氏と自民の運命やいかに。

◇今日27日は我がミライズクラブに宇留賀副知事が特別出演する。県議会と知事が対立したことの実態などを質問する人もいる筈だ。充実した中味になることを期待したい。(読者に感謝)

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2024年10月16日 (水)

人生意気に感ず「遂に公示。過半数の攻防戦。東大農学部教授の話。ギアリンクスのこと」

◇まちの景色が一変した。掲示板に候補者のポスターが貼られ出したのだ。15日、遂に衆院選が公示された。候補者にとって選挙は戦いである。必勝祈願祭のピリピリした空気は戦国時代を想像させる。今回は特に社会的大混乱の中での戦いである。従来盤石な基盤を誇った陣営でもかつてない危機を抱いている陣営が多くある。

 私は長く選挙に関わってきたが今回ほど国民の怒りを肌で感じることは少ない。裏金問題による政治不信は極点に達している。各種の世論調査がそれを示している。変身が指摘され、石破政権の支持率は過去最低に近い。

 全国では小選挙区289、比例代表176の計465議席を争う。自公は勝敗ラインを過半数の233と設定する。結束に欠ける野党が過半数割れに追い込めるかに注目が集まる。

 首相は「日本を再び強い国、温かい国、優しい国にしていく」と訴え、立民の野田代表は「政権交替こそ最大の政治改革」と明言した。

◇先日館林市の文化会館で東大農学部教授鈴木宜弘氏の講演を聴いた。テーマは「日本の食の危機」。私の席は鈴木教授の隣り。須藤県会議長の配慮である。教授の農学部研究室は、私がかつて住んだ本郷文京区弥生町の向が丘寮に近い。ああ玉杯に花受けてと歌われた寮である。

 鈴木教授は幾つかの論点をパワーポイントで訴える。その一つは「地元の農業を守れ、安保で武器も大切だが食料こそ国を守ることだ」と。「消費者は賢くなれ、行動すべし」も胸に響く。それぞれの地域が工夫して支え合うことが重要だとして群馬県版食料安全条例をつくれと訴える。須藤議長はその日電話でこの条例づくりに挑戦したいと決意を語っていた。

 中国はアメリカとの対立に備え世界中で食料を集め備蓄の努力を続けている。教授は日本も備蓄に金を使うべしと訴える。私は南米各地を訪ねた時、中国が食料を買い集めている現実に驚いたことがある。

 また教授の備蓄の話を聞き、2005年に農業大国アルゼンチンを訪ねたときのことを思い出した。飯田領事(当時)は興味あることを語った。岐阜県は備蓄に関し「ギアリンクス」という法人を立ち上げ1200ヘクタールの土地を6千万円で買ったというのだ。岐阜のギ、アルゼンチンのア、両者を結ぶリンクである。あの時領事は驚くべきことを語った。中国が土地を買っているためその地は2億円になっているというのだ。あれから長い年月を経た。世界の土地の状況はどうなっているか。日本の自給率は低い。(読者に感謝)

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2024年10月15日 (火)

人生意気に感ず「ラオスで国際舞台にデビュー。被団協ノーベル賞で歓喜の涙。尾身氏辞退と新たな戦へ」

◇私は先に、千両役者・大根役者そのいずれかと石破首相の国際舞台登場につき書いた。ラオスのビエンチャンでの外交デビューは千両役者には及ばないが大根は免れたかと感じる。

 今回の外交デビューは極めてタイトなスケジュールの下で実現した。事実上国会論戦を回避して9日解散、夜記者会見、10日午前0時過ぎ羽田を出発、午前4時過ぎビエンチャンに到着という凄さだ。東南アジア諸国連合(ASEAN)出席をいかに重視しているかを物語る。東南アジアは重要な課題を巡り沸き立っている。その中心は中国である。首相は総裁選中語った。「ウクライナで起きていることは次はアジアかもしれない」と。世界は連動し日本の役割は極めて大きいのだ。

 石破首相はASEANの首脳会議で「東シナ海での日本の主権を侵害する活動や挑発的な軍事活動に強く反対する」と明言した。中国が念頭にあることは当然。石破氏と中国の李強首相は日中両国が戦略的互恵関係を包括的に推進させることで合意。李氏は「中国は高く評価する」と表明した。中国との間には深 圳での日本人学校男児刺殺事件を初め様々な課題がある。トップの会談の状況は直ちに下に影響する。強権の独裁国家の特色でもある。

◇被団協がノーベル平和賞を得た。協会理事長の歓喜でぐしゃぐしゃの顔がクローズアップされた。ノーベル賞委員会は強くたたえる。「核兵器が二度と使われてはならないことを証言を通じて示した。並外れた努力は核のタブーの確立に大きく貢献した」。ノーベル賞委員会は最近の世界情勢に強い危機感を抱いている。ウクライナなどで核の使用の懸念が高まっているからだ。日本は唯一の被爆国で広島・長崎の惨状は時を超えて生々しい。核を持つ国は使用の誘惑に常に駆られる。民主的コントロールがない独裁権力の手に核が握られている恐怖は測り知れない。世界の監視が必要なのだ。

◇11日、尾身朝子氏は衆院選比例出馬辞退を表明した。政治不信、裏金事件の衝撃波がもろに来た。この日午前9時半から尾身事務所は方向性が見えない中で事務所開きを行い、私は選対事務長に選ばれた。北関東比例でのトップが決まっていたが、深刻な状況はそれも無に帰した。尾身氏は語る。「しかるべき機会が来たら尾身を最優先にするとの言葉を頂いた」と。複数の事務所及びスタッフを維持して次の機会まで活動を続けるのは至難のこと。尾身氏は選挙区内を説明に回る決意。新たな戦である。(読者に感謝)

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2024年10月14日 (月)

死の川を越えて 第47回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

 京都帝国大学の小河原の言ったことは真実と思えた。遺伝はしない。感染もしない。さやは正太郎を抱いてそのことを実感した。

 ある日のこと、さやが正太郎を湯に入れていると戸が開いた。湯けむりの中に姿を現したのはこずえであった。

「まあ」

「正太郎ちゃん順調ね。ずい分大きくなったみたい」

 こずえの声が弾んでいる。

「ねえ、さやちゃん。私、思い切ってここに来たのよ」

 並んで体を流しながら、こずえは意外なことを言う。

「何のこと」

 さやは、湯けむりを手で払ってこずえの顔をのぞき込んだ。

「ここ見て」

「あっ」

 さやは、思わず叫んでいた。こずえの大理石を刻んだような白い二の腕に、うっすら赤い斑点がある。

「私たち不思議な縁を感じるの」

 秘密を打ち明けるこずえの声は明るかった。

「さやちゃんと京都大学に行って、あの先生の話を聞いた時、さやさんと同じように感動したの。私も同志なの。力を合わせましょうね」

 さやとこずえは思わず、手を握り合って喜んでいた。さやはあの時、こずえが自分のことのように喜んだ姿に合点がいった。正太郎の元気な泣き声が湯屋に響いた。

 ある日、さやは正太郎を抱いて、こずえと共に万場老人を訪ねた。こずえを通して会いたいという知らせがあったのだ。

「正太郎が元気で何よりじゃ。重要な話がある。正助は今、韓国におる」

「えっ、韓国ですって」

 突然の老人の言葉にさやは思わず叫んでいた。

つづく

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2024年10月12日 (土)

死の川を越えて 第46回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

〈夢か〉。正助は兵舎に戻ると信じられぬ思いで先ほどの出来事を振り返っていた。異郷の果てで、ハンセンの同病者から草津と万場老人のことが語られるとは誰が想像できようか。正助は運命の巡り合わせの不思議を感じた。

 紙を広げると「火急の時に」と記され、「ハンセンの谷の白鬼」とあり、その下に暗号めいた数字と記号が記されていた。それが何を意味し、どう使うのか。この時、正助は特に気に留めることはなかった。ただ、「うーむ」とうなるのみであった。京城に待機している正助にとんでもないことが起きたのは、それからしばらくしてのことであった。

 

  • 枯れ木屋敷

 

さやが住むふもとの里の屋敷は、通称枯れ木屋敷と呼ばれていた。数百年を経たケヤキが屋敷の黒塀の外へ大きく枝を伸ばしていた。確かな命をつなぐこの巨木は、屋敷の古さを象徴するように枯れた姿にも見えた。枯れ木屋敷の呼び名の由来は、この古木であった。

さやは、離れの一室を当てがわれ、家の家事と農業を手伝っていた。家の人々は、万場老人のゆかりの者ということでさやを温かく迎えた。正太郎を産んだことは、さやにとって人生の一大事であった。さやは元気な泣き声に感激し、赤子の体をくまなく見て、異常のないことを知り神に感謝した。

〈正さん、やったわよ〉。さやは心で叫んだ。そして、初めて正助と肌を合わせた湯の川地区のことを思い出した。同病であることは承知していても、それを確かめ合う機会であった。

 右の腕に正助と同じ大きさ、同じ色の斑点があったのだ。2人は運命の不思議さを感じた。呪わしいと同時に不思議な絆の証にも思えるのであった。さやはあの時を懐かしみ、正助の身を案じた。

 

つづく

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2024年10月11日 (金)

人生意気に感ず「解散の意味を丁寧に語れ。首相は国際舞台に。ハリスの優勢は続く。巨大ハリケーンも選挙に参加か」

◇衆院が解散された。議場で万歳三唱する議員たち。不思議な光景である。選挙で頑張るぞーという叫びなのか。15日公示、27日投開票である。主役は主権者たる国民である。何のための解散か、争点は何かを候補者はしっかり分かり易く語るべきだ。石破首相は当初国会論戦を重視するとしていたが予算委を開かず解散した。超早期解散で国民には十分な説明がなされていない。その分候補者は選挙の中で語るべきは当然だ。

◇解散の旗印は何か。首相は「日本創生解散」と命名した。勇ましいかけ声が虚しく響く。野党からは、立憲野田代表の「裏金隠し解散」、その他「ドタバタ解散」、「とんずら解散」などの絶叫が激しい。こんな中、首相はASEANの会議に向けて出発した。待ち受けるのはきらびやかな国際舞台。日本の役割の重要性が問われ、日本の存在感が試される。石破氏の魁偉な容貌は千両役者を演じるのか、それとも大根役者で終わるのか。世界の目が注がれる。

◇今年は国際的にも選挙の年。その中で最も注目されるのがアメリカである。ハリス対トランプの戦いが激しく深く進行中だ。9月10日のテレビ討論の視聴者は6,700万に達し、その流れの先に11月5日がある。日本の運命と深く結び付く世紀の決戦の行方は。私の目の前に2枚の図面がある。全米各州の選挙人獲得見込み状況を示したものだ。一枚は8月23日時点のものでトランプがややリードしハリスを超しているが、直近では逆転しハリスが7人上回っている。それにしても接戦だ。諸要素が複雑に入り組んでいるが最近の状況はハリスの民主党有利に動いているようだ。例えば各州で始まっている郵便投票は民主党が有利になると予想されている。また、民主党は過去最高の選挙資金獲得に成功し接戦州につぎ込んでいる。最も重要とされるのはペンシルベニアで、民主党は共和党の2倍ともいわれる事務所を設け、戸別訪問などの地上戦を展開している。その成果は11月5日に形となって現れるだろう。わが石破首相が初の女性大統領ハリス氏と手を握り合うことが実現されるかも知れない。

◇アメリカでは100年に1度と言われる大型ハリケーンが猛威をふるっている。数100万人に避難命令が出た。11月5日に向けて最終盤に入る中、ノースカロライナとジョージアの両激戦州にも甚大な被害が生じ災害対応は両陣営の新たな争点になっている。ノースカロライナとジョージアはいずれも選挙人は16人で接戦州である。(読者に感謝)

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2024年10月10日 (木)

人生意気に感ず「党首討論は面白かった。7条による解散だ。異常気象は地球の危機。火薬庫北朝鮮」

◇石破総理と野田立憲代表の論戦を観た。それぞれ論客振りを発揮してなかなか面白かった。個々の政策や課題については互角に切り結んだが政治姿勢等については首相が激しく批判される

場面があった。それは首相に就任して変身し旧来の自民党的になってしまったのではないか、なぜ解散を急ぐのか、予算委員会を開くべきではないか等であった。他の野党党首からも裏金解散だと追求されていた。

 解散の儀式を観た。紫色の布に包まれた解散の証書が額賀議長に渡される。議長は言った。「憲法7条により解散します」。多くの市民は解散の根拠に余り注意しないのではないか。これから始まる、日本の方向を決める一大事のスタートなのに。そう思いつつ7条を読んだ。曰く「天皇は内閣の助言と承認により衆議院を解散する」と。ここに内閣の長たる総理大臣が解散を決めることが読めるのである。さぁこの瞬間実質正式に戦いの火蓋が切って落とされたのだ。本県では1区から5区までの小選挙区で計14人が立候補する。

 非公認の人々、公認されても重複が認められない人々は厳しい状況に立つ。世論は裏金の罰だと見る。後世までこの選挙は裏金選挙として名を残すだろう。野党にとって千載一遇のチャンスだがバラバラではそれも活かせない。27日に向けて歴史的歯車がギシギシと回り始めた。

◇急に寒くなった。10日午前1時半の気温は13.5度。30度以上が常態であっただけにこの落差には驚く。東京の外国人観光客がカイロを買っていると報じられていた。つい先日まで熱中症の警告が続いていた。地球規模の異常気象には連日驚かされる。大アマゾンが信じられない渇水で死に瀕している。支流ネグロ川の水位が12m以上下がって川底を歩く人の姿が報じられた。私はネグロ川の海のような光景を見た。あそこに居た巨大な生き物たちはどうなったろうか。米のフロリダ半島にはかつてない巨大ハリケーンが襲っている。59mとも言われる風速はあらゆるものをなぎ倒す。数百万人という人々に避難命令が出された。ヨーロッパ各地は大洪水である。それはノアの洪水の再来を思わせる。地球に滅亡の危機が迫っていると思わざるを得ない。

◇東アジアの火薬庫、北朝鮮の動きが激しくなっている。韓国との間に要塞化壁工事を始めようとしている。韓国統一を目指す相手ではなく別の国家たる敵対国として対決姿勢を強めている。国民の熱狂振りは引火性の強い火薬の塊に見えてならない。(読者に感謝)

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2024年10月 9日 (水)

人生意気に感ず「日本アカデミーにホンジュラスから入学。袴田さん無罪確定。解散の行方」

◇8日、日本アカデミーの入学式で挨拶した。コロナで潰れそうになった学園の再建に関わってきた。生徒は千数百人に。10月期生の入学式には注目すべき変化があった。これまでにない幾つかの国からの入学生である。その一つが中米のホンジュラスからの二人。カリブ海に面しその先にはキューバやコロンブスが到着したサンサルバドルがある。この二人はどんな気持ちでジパングたる日本を訪れたのか。機会があったら話してみたい。

 私は挨拶で言った。

「困難を乗り越えて日本に来られた皆さんを尊敬します。ハングリー精神を忘れた日本の若者は皆さんに学ばねばなりません。この学園で学んだことは皆さんの人生の宝になるでしょう」

 グローバル化が進んだ社会なので様々な文化や習慣が押し寄せる。学園は入墨を入れた者の入学は許されない。今回も発見されて入学出来ない若者がいた。アルバイトや先の就職が出来ないからだ。私の町のコンビニでもこの学園で学んだ人が働いている。人々に溶け込んでいる姿は微笑ましい。

◇袴田死刑囚の再審無罪が確定した。検察が控訴を断念した。91歳の姉の笑顔は青空のようだった。事件から58年である。判決は冤罪であることを明言した。執行されていたら取り返しのつかないことであった。正に死の渕からの生還である。それにしても再審制度にかかる時間は長い。生命尊重、人権尊重の原則をかみ締めねばならない。日本では約8割もの人が死刑に賛成している。深く考えないで感情論で済ませている人も多い。世界の文化国家日本はこの袴田事件を活かさねばならない。それは主権者たる国民一人一人が死刑について関心を深め考えを進めることである。

◇今日10月9日は日本にとって特別の日になる。昨日国会の代表質問が終わり石破総理は衆議院を解散する。いよいよ総選挙だ。自民党はどれだけ減らすのか野党はどの勢力がいかに増やすのか大いに気になるところ。そこである週刊誌は早くも総候補予定者の当落予測を出した。取材チームを組んで調査したのだからかなりの程度参考になるに違いない。自民は単独過半数を大きく割り込み、36議席減らすという。一方立憲民主党は33議席を増やし、131議席となる。百議席を超えるのは結党後初めてのことだ。この結果をどう見るかは分かれるだろう。選挙は戦いで、戦いは戦略のいかんによる。意外な展開もあり得るだろう。(読者に感謝)

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2024年10月 8日 (火)

人生意気に感ず「大災害に対応する地方の差。首相の裏金対応。Kさん死刑廃止を問う」

◇能登半島の人々は泣きっ面に蜂の思いで天を怨んでいるだろう。同じ国民でありながら何千年に一度、ある特定の地域が不幸に見舞われる。現在はかつてと異なり科学技術が飛躍的に向上し、また国全体が豊かになった。これらを不幸な地の救済に向けるのは政治の役割だ。様々な法律や制度が出来ているがそれらを活かすのは自治体の自覚や覚悟にかかっている。既に同じ法律や制度がありながら自治体によって大きな格差が生じているのはこのことを物語る。議場での居眠り議員の存在は議会の形骸化を示すもので、この格差の一因というべきだ。安芸高田市の議会で石丸氏が叫んだ「恥を知れ」の声が聞こえるようだ。

◇石破首相は6日、裏金事件の衆院選対応を発表した。収支報告書不記載の裏金議員を原則公認した上で比例代表への重複立候補は認めないというもの。非公認の対象は、4月の党処分で「選挙での非公認」より重かった旧安倍派幹部の下村博文、西村康稔、高木毅の各氏だけでなく、より軽い処分だった一部議員にも広げた。世論の激しい声に応えるため厳しい基準にしたという。首相は「国民の不信や怒りにきちんと対応することが必要だと強調」9日の選対本部で正式決定するという。当落線上の議員にとって重複が認められないことは死活問題と言われる。しかし、そもそも重複という手段で救済するという制度自体がおかしいという声も少なくない。選挙制度は主権者たる国民にとって分かり易いことが第一である。

◇先日みなかみ街のKさんという方から突然電話を頂いた。かねて私の新聞記事等の愛読者だというこの人は私の『死刑廃止論』を読んで、教えて欲しいという。この種の質問は私を攻撃するものが多いがKさんの声からは好意的なものが伝わってきた。国民世論の8割位が死刑賛成論なのだ。私はいくつかの論点を挙げて簡単に説明した。第一は憲法が残虐な刑を絶対に禁ずるとしている点。それでは死刑は残虐かとなるが最高裁は現行の絞首刑は残虐でないとする。第二は冤罪の恐れである。それは常にある。執行されたら取り返しがつかない。袴田さん再審無罪(まだ控訴の可能性)はそのことを示す。第三は現実論として死刑を回避するために終身刑を設けるべきことを話した。現行の無期は10年も服役すれば外に出られる。これらの点を論じると電話の向こうで耳を傾ける様子が窺えた。さて、台湾は死刑につき極めて厳しい条件を附す。裁判官全員の一致を要するなどだ。日本も袴田再審を機に感情論でなく議論を深めるべきだ。(読者に感謝)

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2024年10月 7日 (月)

人生意気に感ず「なぜ火山を届出の対象外とするのか。日本のポンペイは語る。裏金議員の処遇。激甚災害に指定」

◇10年前の2014年の大噴火は記憶に新しい。登山客58人が死亡、5人が行方不明となった。火山はある時予告なしに目を覚ます。あの教訓は活かされているか。登山規制の動きには観光客が減るという声が妨げになっている。人の命と目先の経済的利益といずれが重要か。本末転倒の価値観と言わねばならない。地方議会は適切な条例化を急ぐべきである。群馬県を含め動かない地方議員に言いたい。なぜ動かないのか。国は翌15年活火山法を改正した時、登山届の提出、自治体による登山者の情報把握を努力義務とした。しかし、条例で提出を義務付けているのは長野・新潟・岐阜・石川・山梨の5県のみ。群馬は遭難対策として登山届の条例はあるが火山は対象外となっている。

 天明の大噴火、日本のポンペイと言われる鎌原村の悲劇を忘れたでは済まされない。死者不明者2千人と言われた惨事は1783年8月5日のことで、今からわずか241年前のことである。観音堂の石段わきに立つ石柱には「天明の生死をわけた十五だん」とある。火砕流に追われて逃げ人々の姿が目に浮かぶ。

◇9日解散15日公示27日投開票と表明されている。既に戦場である。この状況で裏金議員の処遇はどうなるのか。首相は結論を持ち越している。「何も決まっていない」と述べた。再協議するというのだ。世論の風当たりは非常に厳しい。首相は全員を公認すると打ち出している。党内からはこれを踏まえて「非公認とするのは一事不再理の原則に反する」との強い批判がある。ある幹部は「全員公認は有り得ない」と語る。

 石破首相は衆院選について裏金事件への批判が強い中で行われると指摘し、「自民が国民の不信、怒りにきちんと対応していることを示さねばならない」と述べた。首相とすれば目前の選挙の行動に政権の安定がかかっているから必死の筈だ。立憲の野田代表は「裏金議員には有権者がペナルティを与えるチャンスをつくることが大事だ。可能な限りの誠意ある対応を各党としていきたい」と決意を語る。自民が窮地にある今こそ千載一遇のチャンスと見ているのだ。天下分け目の関ヶ原は迫る。勝敗を決するのは主権者たる国民である。

◇首相は就任後初めて石川県の被災地を視察し防災庁設置を強調した。立憲の野田代表は防災庁よりも2024年度補正予算成立を優先すべきと主張した。首相は馳知事から復旧復興支援要望書を受取り今回の豪雨災害を激甚災害に指定すると方針を伝えた。国交相にも緊急復興を指示する。(読者に感謝)

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2024年10月 6日 (日)

死の川を越えて 第45回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

 五・四運動である。この動きは韓国にも大きな影響を与え、日本の支配に抵抗する三・一運動が起こった。韓国は明治43(1910)年以来、日本に併合されていたが、反日、そして独立を求める動きは根強くあった。

 これに影響を与えたのが隣国中国の民族運動であり、ウィルソン米大統領の「民俗自決」のメッセージだった。大正8年3月、元韓国国王・李太王の国葬に際し、日本式で行うという日本政府の決定に対し、学生たちは激しく反発した。独立宣言書を朗読し、「大韓独立万歳」を叫んでデモ行進し、一般市民も合流した。この運動は各地に広がり、警察や官公署が襲われるほどになった。

 そこで原内閣は兵を増派することになった。各地から集まった日本兵の中に正助の姿があった。韓国は日本の一部とはいえ、京城での兵士の外出や単独行動は厳しく規制されていた。それでも4月になると、京城の街はいく分静けさを取り戻していた。

 ある日、正助が兵舎を出た時。突然物陰から歩み出た男がいた。一見して、異様な風貌である。正助は、はっとして立ちすくんだ。紛れもない、ハンセン病の顔であった。

「旦那、ちょっとよろしいですか」

 男は意外にも日本語で話しかけた。正助は、その場を走り去ろうとしたが、男に敵意が感じられず、何か引かれるものがあって足を止めた。

「下村正助さんでございますね」

「えっ」

 正助は思わず叫んでいた。

「どうして私のことを」

「はい同病の兄が群馬の草津で、万場という人に助けられました。あなた様が京城へ来られることは、草津の兄が、その人に頼まれて知らせてきたのです。困った時はお助けしろと。何かの時はここへ。私は李と申します」

 男は小さな紙片を渡すと、あっけにとられた正助を置いて姿を消した。正助は高鳴る胸を抑え、平静を装ってその場を離れた。

つづく

 

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2024年10月 5日 (土)

死の川を越えて 第44回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

  さやはおなかが大きくなり始めるころ、ふもとの集落に移った。そこは、万場老人の一族の屋敷でこずえも住んでいた。湯の川地区で子を産むと、生まれる子が差別と偏見を背負うことになるから避けた方がいいという万場老人の配慮だった。 

 さやは時々、夜になると村の社に通って、そっと手を合わせた。健全な子が生まれますように、正助が無事でありますようにと。

 ある夜、杉の木立の中を社に向かうと、後ろからヒタヒタと近づく足音がした。こずえであった。

「知っていたのよ。一緒に祈ってあげる」

 にっこり笑った顔が青い月光の下で美しい。

 

まあ、うれしいわ。思いがきっと通じるわね」

 さやの目に光るものがあった。

 期待と不安の重圧の中でさやはその時を迎えた。元気のいい玉のような男の子であった。

〈正さんに目がそっくり〉。さやは不思議な感動にひたっていた。

 名前は正太郎。万場老人が名付け親になった。

 

 第二章 大陸の嵐

 

  • 抗日

 

 正助の隊は中国の青島に向かったが、大正7(1918)年、韓国に移動した。この時期、中国でも韓国でも抗日運動が盛んになっていた。正助たちが急きょ韓国に回されたのは、民衆運動に備えるためであった。中国では日本が不当な二十一カ条の要求を突き付けたことで、抗日運動が一層激しくなった。

 そして、ベルサイユ条約でこの要求を世界が承認したことで、翌年5月4日、北京大学の学生を中心とした若者が一斉に立ち上がり、抗日の嵐は中国全土に広がった。

 

 つづく

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2024年10月 4日 (金)

人生意気に感ず「ぐんまマラソンの資料届く。放物線は下降を辿る。世論調査は語る。当落の予測早くも」

◇昨日3日夕刻ポストに大きな封筒が。遂にと思った。ぐんまマラソンである。10キロコースを今年も走る。20年以上も続けて今年は第34回である。走ることは私の人生で特別の意味がある。健康のバロメーターであるが生きている証でもある。11月3日まで一ヶ月を切った。直前の10月30日、満84歳を迎える。ぶ厚い「マラソンの記録」で振り返った。昨年は1時間41分22秒、男子の部でラスト。捲土重来を期して翌日から走った。ベストは2007年の56分32秒。人生の放物線を物語る。外国訪問でも必ず走った。思い出に残るのはテキサスのヒューストン、南米ペルーのリマ、中国各地、韓国ソウルなどだ。早朝の街にはその地の生の姿が見えて面白い。今年は完走できるであろうか。最近はコースに第一関門、第二関門と設けられて制限時間で車に拾われるのだ。これから先、色々な人生の幕引きが待ち受けるに違いないが、その一つになる可能性がある。頑張ろう。

◇石破内閣が発足し、各紙の世論調査が行われている。裏金の嵐が納まらぬ中の調査を待ち受けていた。支持率は主なところで50%とか46%が目に付く。内閣発足直後の支持率で岸田内閣は45%だった。政治不信が極度に落ちた状況にしてはという感を抱く。石破内閣支持の理由で最多は「ほかに適当な人がいない」である。衆院選前の予算委については72.7%が開くべきだとする。投票先を決める際、裏金事件を考慮するが59.6%。私は裏金の衝撃度はもっと大きいと思っていた。政党支持率は自民42.3%(36.7%)、立民11.7%(12.3%)、維新5.4%(8.5%)、公明4.1%(4.1%)、共産4.0%(4.2%)と続く。( )内は石破内閣成立前、8月の調査。( )内と比べ自民がかなり上がっているのはいわゆる御祝儀を意味するに違いない。

 飽きやすいのが世の常。大衆の心理は浮草のようでもあるが、右の数字は主権者の実態を現し民主主義の現状を語る。

◇衆院選の投開票は10月27日。そして早くもメディアは全議席の予測を掲げる。裏金はどう響くのか。自民はどこまで減らすのか。予測では自民は単独過半数を大きく割り、立憲は初めて百を超えるとする。それぞれが219、131である。首相は裏金議員原則公認の方針というがどう審判が下るのか見物である。兵庫県知事の影響は、そして蓮舫氏は復活するのか。問題を抱えた人たちはいかなる天の声が下るかと戦戦恐恐の気持ちではなかろうか。選挙はそれでも民主主義を支える。天の声は主権者の声だ。(読者に感謝)

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2024年10月 3日 (木)

人生意気に感ず「石破氏の面白い閣僚の面々。村上氏は村上水軍の子孫。美人妻佳子さんのこと」

◇石破丸が動き出した。不安と期待に包まれながら。弱小基盤に立つ石破氏は高い志は先行するが目的達成は容易でなかった。5度目、最後の挑戦で辛うじて、しかも複雑な要因の絡み合う中で実現した新総裁の椅子であった。組閣も思うようにいかないのは当然である。石破氏はその状況で最善を尽くした。

 目に付く閣僚の顔ぶれに注目する。総務大臣・村上誠一郎、官房長官・林芳正、財務大臣・加藤勝信、こども政策・三原じゅん子、文部科学・安倍俊子、経済再生・赤沢亮正、経済安全保障・城内実等々である。初入閣は13人で、上記の2人の女性及び赤沢、城内氏も初入閣である。

 面白いキャラクターの人々もいる。先ず総務大臣の村上誠一郎氏。相当のサムライらしい。かつて安倍元首相を、その死後だが国賊と表現し一年間の役職停止処分を受けた。この人の祖先は戦国時代、瀬戸内海で村上水軍として知られた海賊であった。また外務省キャリア官僚出身の城内実氏は幼少期をドイツで過ごしドイツ語が得意の人。首相や皇室関係者のドイツ語通訳を務めた。2人の女性閣僚の1人三原じゅん子氏は「3年B組金八先生」でツッパリ役を演じた。44歳で子宮癌を患ったことを機に医療に関心を持ち政界に入った。総裁選では小泉陣営の中心の一人だった。

◇石破氏を誰よりも温かく支えるのはかつて慶応大学の同級生の時「この世にこんなきれいな女性がいるのか」と一目惚れした妻、佳子さんだ。結婚当時佳子さんはロッキード事件の渦中にあった丸紅に勤務していた。披露宴に親代わりとして出席した田中角栄はスピーチで語った。「丸紅はいい会社だ。私のことがなければもっといい会社だ」。

 地元鳥取では石破氏を上回る人気。控え目だがいざという時は意外な力を発揮する。2018年石破、安倍が総裁の座を争った時、銀座の街頭演説でマイクを握り驚かせた。

 今回鳥取市内のホテルでの勝利の挨拶は人々の心を打った。歓喜の涙を流しながら言った。

「石破の目線ではますます物が見えなくなるかも知れません。良い日本を築くため褒めるばかりでく今まで通りのアドバイスを寄せて頂きたいと思います」

 武骨な男が惚れた女性は才色兼備であった。石破氏を評価する場合将来ファーストレディたるにふさわしい女性を若き情熱でつかんだ点を見逃してはならない。政治家にとって内助の功は測り知れない。(読者に感謝)

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2024年10月 2日 (水)

人生意気に感ず「ふるさと塾は新総裁とハリスの動きで燃えた。トランプの最後のあがき」

◇9月28日の「ふるさと塾」の予定の一部を変更した。新総裁石破氏が出現したため「総裁選」の部で石破氏に焦点を当てることにした。塾生は日頃政界には関心が高い。石破茂という人物は幾分奇異的な存在として映っていた。政権内では日の当たらない所を歩く。ギョロリとした目で愛想が悪い。綺麗事を尤もらしく話す。孤立した人で議員仲間には評判がよくない。こういう人物評が流れていた。私はこの人の本質は深いところにある。それは民主主義の本質に繋がるものである。なぜなら政治をやる多くの人々は票が欲しいあまり有権者に媚びたり機嫌取りばかりする。大衆は目先のことしか考えないからこれに迎合する政治は衆愚政治になる。石破氏は政治という村社会で孤独に耐え耳に痛いことも直言した。総裁選の勝利は様々な要素が作用し合って生まれた奇跡でもあった。塾生にはそれを易しく伝えたかった。党員票では確たる自信を持っていた石破氏は蓋を開けて驚く一票差で高市氏に敗れたのだ。勝ち馬に乗りたいのが政治の世界の常。麻生氏は決戦投票になったら高市氏にと画策した。危機感を抱いたのが岸田首相。靖国参拝を公言している高市氏が首相になれば中国や韓国との関係が決定的に悪くなる。外交の岸田氏は同志に働きかけ石破票を集めた。このようなことを熱く語った。

◇後半は9月10日の世紀の対決である。固唾を呑んで見た全米の人々は6,700万人。ほとんどのメディアはハリスに軍配を上げた。周到に準備したハリスはトランプの怒りの感情を引き出した。核のボタンを握る大統領に求められる資質は冷静さである。大統領にふさわしいのはどちらかというCNNの直後の世論調査でハリスだとした人々は63%に達した。私は例によってホワイトボードに地図を描いた。今度は合衆国である。民主党、共和党、それぞれの優勢が決まっている州ではない競い合う7つの激戦州の動向がカギを握る。ペンシルベニア(19)、ミシガン(15)、ノースカロライナ(16)、ウイスコンシン(10)、ジョージア(16)、ネバダ(6)、アリゾナ(11)である。( )内の選挙人の数字と共に。最重要州はペンシルベニア。選挙人が多いばかりでなく独立宣言が採択された合衆国発祥の地。討論会もこの州で行われた。最後に重要な情報を紹介した。超党派の700人超の退役軍人や元政府高官がトランプ不支持を訴えたのだ。軍の最高指導者として不適切というのだ。トランプは今回破れたら次の大統領選に出ないことも表明。私はさすがの傍若無人の猛者も力尽きたの感を抱く。(読者に感謝)

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2024年10月 1日 (火)

人生意気に感ず「高市氏への危機感、総裁選の意外さ。石破氏に期待」

◇久しぶりの大型ドラマが実現した。石破新総裁の実現である。総裁の座は5度目の挑戦。自身は人生最後の機会と言っていた。党員の間では高い評判がありながら議員間の不評が前進を妨げていた。非主流、反妥協を貫くことは容易ではない。本物かの期待を抱かせる。若い小泉氏が颯爽と現れ、本命視されたがやがて馬脚を窺わせ失速した。9人の討論会は面白かった。上位2人による決戦投票になり石破・高市2氏の争いとなった。高市氏が勝てば初の女性総裁であり期待も少なくなかった。しかし首相になったら靖国神社に参拝すると公言する政治姿勢が命取りになった。靖国を表に出せば中国及び韓国との関係が決定的に悪くなることは明らかである。決戦投票を前にして麻生派は一致して高市氏を押すという情報が流れた。60人近い議員が実際に動けば大勢を決することになりかねない。派閥の結束が力を発揮する時代ではない。そして麻生さんも賞味期限切れの感がある。高市氏が首相になれば日本外交の危機になるとして動いたのは岸田首相だった。その呼びかけに志を同じくする人々が動いたのだ。この場合、派閥の論理だけではない要素があったに違いない。政策を重視する人々の集まりなのだ。人々は高市氏では選挙を戦えないという認識があった筈である。189票対173票、21票差で石破氏が勝利した。

 新総裁が誕生した壇上で岸田首相は挨拶した。「自民党が変る覚悟を示しました。ノーサイドで一致結束して責任を果たしましょう。私も一兵卒として支えます。国際社会は激動の中にあり歴史の転換点にあります。日米同盟を強化し、国際社会を協調に導かねばなりません。国民の共感が得られる政治をつくらねばなりません。生まれ変わる一歩です」

◇石破対野田両氏の四つに組んだ国会論戦が楽しみだ。どちらも論客で鳴る。立憲民主党からは「石破氏は非常に手強い」との声があがる。長い間日の目を見なかった人が初めて本分発揮の場を得た。最悪の状況で最高の舞台を与えられ政治家として本望に違いない。野田代表は石破氏のことを「逃げないタイプ」と評した。逃げる筈はない。ごつい岩のような風貌と一見もったいぶった様に見える口ぶりは時に空振りに見えた。石破氏のことを目が恐いとか顔が悪いという人がいる。顔は自らがつくるもの。顔は履歴書である。5度目の挑戦の成果に奥さんは泣いた。この人を得るために8年待ったエピソードが。純情な愚直の門出を祝う。(読者に感謝)

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