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2023年11月16日 (木)

人生意気に感ず「天安門で原稿を没収された。緊迫の天安門で国旗掲揚式に出る」

厳戒の天安門広場で私は原稿を没収された。空港のチェックを遥かに凌ぐ厳しさに驚く。日の出に合せた国旗掲揚式に参加する人々は長蛇の列である。身に付けたものは全て探知機を通される。その上両手を上げ脚を開かされタッチされる。その朝書いた内ポケットの「北京報告」に目を付けられた。“面倒なことになる”、瞬間そう思い、持って来たことを後悔したが後の祭り。手書の原稿用紙に役人は強い関心を持ったらしい。「何が書いてあるか。説明して下さい」。外国人の文書の持ち込みは禁止だと知らされた。私の手書きの文書は彼らの注目の的になった。担当の黄さんはバッグの中のノートまで調べられることになった。東京の会議で全国日中友好協会のHさんが「中国ではスパイにされないようくれぐれも注意して下さい」と言っていたことが甦る。長い時間をかけて調べられ、やっと関所の通過を許される。広場に向う人の波は驚く程増していた。前方に毛沢東の写真を掲げた天安門があった。あの上で1949年、毛沢東は建国宣言をなした。私の前に「人民英雄・永垂不朽」と刻んだ巨大な塔があった。1889年民主化を求める若者のうねりとこれを抑えようとする人民軍がここで衝突したのだ。あの時百万を超える大衆に戦車が突入した。戦車の前に立ちはだかる少年の姿をメディアは報じた。今回の天安門の緊張はあの天安門事件とは無関係であるが、新たな緊張の要素がこの広場を覆っていた。その緊張は世界の動きと連動しているに違いない。それはウクライナ及びイスラエルの戦闘であり、アメリカとの対立である。

 広場に集まる群衆は私の予測を遥かに超えて一万人に及ぶのではないか。朝日が空を染め、予定の6時48分が近づいた。天安門の毛沢東の姿の下から一隊の人々が現われ、ポールに中国旗がスルスルと上がり始めた。連日続けられるこの行事は何を意味するのか。一度見た人はリピーターになることは少ないだろう。それでも連日押し寄せる人の波、これこそ中国の底力を示すものかも知れない。

 重装備なのに身を切る寒さ。手袋をしない手は凍えるようだ。米中戦はばいずれが勝つか。私はまさかの時の民主主義と専制主義の力関係のいかんを考えた。長期で見れば民主主義の勝利を確信するし、それが歴史の示すところであるが、無尽蔵の大衆に強権を発動する専制主義に密かな恐怖を禁じ得ない。民主主義は理念であるから現実との乖離はやむを得ない。しかし乖離の定着が続けば民主主義は機能不全になる。現在世界の民主主義は試練の場に立たされ危機にある。(読者に感謝)

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