人生意気に感ず「北京の第二報。袴田死刑囚再審を北京で考える。零下の北京の朝を走る。私の報告をみよ」
◇事務所と連絡をとる。順調らしい。柴犬のさん太に餌を忘れないようにと注意する。私の担当なのだ。今は亡き秋田犬のナナを懐かしく思い出す。海外出張から帰ると狂喜して騒いだ。忠犬ハチ公の系統であった。さん太にそれは期待できない。ケータイから娘の声が。「パパのが上毛新聞の“ひろば”に載ったよ」。日本を発つ前に「袴田死刑囚の再審に思う」を投稿していた。遠く離れた異郷で老いて精神まで蝕まれた老死刑囚を哀れに思う。今自分は民主主義と人権尊重の国を離れ、主義と制度が異なる国にいる。中国の死刑の実態は大いに気になるところである。欧米と比べアジアは総じて死刑存置国である。“ひろば”は死刑反対の信念を心の奥に据えて描いた。
北京の雰囲気には堂々とした秩序が在った。この世界の超大国はイラク及びイスラエル・ハマスの戦闘にどう対応するのか。アメリカが分断と対立の中でその民主主義が揺れている。対立する中国の存在感が相対的に大きくなっている。その渦中にあって世界情勢が大いに気に掛かる。今日午後の私の演説の中心は「日中友好条約と民間交流の意義」であるが世界情勢を強く意識しながら話すつもりである。
◇北京の朝を走る。北京時間6時。予報では零下になるらしい。ユニクロで買ったズボン下をはき長袖の下着を重ねホカロンも貼った。私はズボン下を身に付けることはほとんど記憶にない。外は暗い。見上げると細い月と星が輝いている。車の流れは激しくなっている。昨日走った通りなので安心して走れた。暗い中を動く姿は道を清掃する人々である。前方の信号が人の形を青く示している。私はスピードをあげた。交通事故は絶対に避けねばならない。異国で、しかも強権力の国での警察沙汰は面倒に違いない。中国の交通状況は日本と比べ人命尊重、歩行者優先ではないと聞く。こちらが青で進んでいるのに車を突っ込ませる場面があった。交通はその国の人権尊重の姿を示すといえよう。地下鉄入口あたりに来ると東の空が明るくなってきた。ポニーテールの娘さんが走っている。仕事に向うらしい人々も徐々に目立つ。公安事務所の所で引き返す。今日の出番をイメージしながら走った。背中は汗であるが手は痛い程冷たい。
◇演説のテーマは「条約の初心を受け継ぎ、新時代の民間交流を」。日中友好条約の基本的精神を強調するつもり。中でも重要なのは全ての地域で覇権を求めるべきでないこと、及び日中の歴史を踏まえた民間交流の重要性である。役割を果たすことが日本への土産になると信じて。(読者に感謝)
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