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2020年7月31日 (金)

人生意気に感ず「PCR検査の拡大こそ。ワクチン使の優先順位。知事の自己評価は70点」

◇感染拡大が迫っている。それに対してなすべきベストを怠っていないか。敵の実態を知ることが第一である。孫子の兵法は言う。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」。“敵を知る”とは現在PCR検査を拡充してウイルスの実態をつかむこと。“己(おのれ)を知る”の最重要事はウイルスに立ち向かう医療体制を工夫することだ。多くの医療機関が赤字となり経営危機に陥っている。29日、某野党は山本知事に「緊急要望」を渡した。主な内容は県内感染者は明らかに増大していることを踏まえ、PCR検査の抜本的拡充と医療崩壊を防ぐための医療機関への支援等である。これは今や全国的緊急課題であり、地方は国と連携して取り組まなければならない。

◇PCR検査の遅れは酷い。主要7カ国の中では最低。人口比での低さはアフリカ諸国にも負けている。世界の経済大国の名が泣く。布マスクの配布どころではないだろう。PCR検査を抑えている主な理由は何か。多くの陽性者が見つかったら医療崩壊が起こる。偽陰性も増えるということらしい。「偽陰性」はウイルスをもっていて、つまり感染力を有している無症状者だ。これを放置したために感染拡大を許したと指摘されている。偽陰性が家庭内で高齢者にウイルスを伝える。高齢者は重症化する。虎は野に放たれたのか。全国の感染状況を見ると手遅れの恐怖感を抱く。

◇ワクチンの実用化が直ぐ目前に来た。大きな課題は限られた資源を有効に使うために優先順位を議論しておかねばならぬこと。私が県議会にいた頃、2009年の新型発生時も問題になった。医療従事者、リスクが高い妊婦や子どもから接種することが必要だ。公平、平等、人権の問題につながる。重態の高齢者のことなど考えると極めて難しい問題が存在する。現在、政府は多くの課題を前に無策の感がある。それに対し救いが感じられるのは地方の存在である。国難の時に真の革命児が現われて壁を突破してきた。戦後75年の泰平の眠りの中で日本人の精神的基盤は崩れ去ったのか。廃墟から立ち上がったハングリー精神を取り戻さねばならない。

◇知事は任期1年目の自己評価を「70点」とした。本人の内心はもっと高得点を意識しているのではないか。2年目の抱負はコロナを最小限に止めることとした。知事の正念場であり後に70点と自己評価できるか興味が湧く。(読者に感謝)

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2020年7月30日 (木)

人生意気に感ず「県内感染者増、第二波は迫る。変革の時代の知事に期待。地方議会の形骸化。ネコの共食い」

◇28日、県内男性3人が新たに感染と確認された。群馬の感染者の累計は183人、死者は19人。これは全国各県と比べても決して少ない数字ではない。今回3人のうちの1人は30代の男性で都内を訪れ会食したという。東京は当分鬼門である。関東で、東京・千葉・埼玉・神奈川の大感染地に近く交通で深く結ばれている。隣県栃木より上位にある。このような状況を第二波が本格化しつつある現在、私たちは深く自覚するべきである。

◇山本新知事就任から29日で1年。異色の知事登場はコロナ戦の嵐と重なっている。私はこの知事とは長い付き合いで、そのキャラクターを良く知る。風雲急を告げる変革の時代に相応しい。長く安全神話にあぐらをかき危機感にとぼしい県民性に活を入れる時であり、とかく惰性に流され事なかれ主義の県庁職員が目を醒ましその真の役割を自覚する必要性は今をおいてない。特に強調したいのは県議会の存在である。二元代表制の下で、知事と議会は車の両輪の建前であるが現状は知事の力が突出し、議会は追認機関であり形骸化しているという批判が絶えない。マックスエーバーは言った。「議員のレベルはそれを選ぶ有権者のレベルに対応する」と。過激ムードもある知事の登場により、県民が目覚める時である。

◇地方の時代が進む。群馬が真に目覚め危機に対して立ち上がるためには、県議会以外の地方議会も目を醒まさねばならない。市町村議会の形骸化が特に指摘されている。質の低下は議員職への信頼低下を来たし、良い議員が現われず議会存亡の危機を招いている。知事と呼応して地方の議員が反乱の狼煙を上げる時なのだ。

◇信じ難いニュース。それはみなかみ町のネコ大量放置死。閉じ込められた部屋、50匹以上、共食いなどの言葉は凄まじい場面を想像させる。目を覆いたくなる光景だったという。部屋は固く閉ざされていた。飢えで極限に追い詰められれば人間でさえ何でも食べるのだからネコが共食いすることは容易に想像できる。私は亡くなった愛猫トコを思い出した。動物愛護法の罰則が強化された。現代は無責任時代で命を軽視する時代である。動物愛護法は動物の命を守ろうとする。動物の命は「命」として生き物の命であり人間の命に通じる。自分の産んだ子を放置する若い女性は命の尊さをどう受け止めているだろう。(読者に感謝)

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2020年7月29日 (水)

人生意気に感ず「新たに8千万枚のマスクとは。都の状況が全国化している。既存の法律をギリギリ使うべし」

◇コロナ状況は新たな大波の中で先が見えない。こんな中で司令塔である政府が混乱しているように見える。その一例が布マスクの配布。施設などに向けて今後約8千万枚を配布するという。「無駄だ」「役に立たない」といった轟々たる批判の声が起きている。施設などの現場では災害時に求められる臨機応変がなっていないとの声が上がっている。コロナ状況は絶えず変化しているからそれに適切に応じなければ効果がない。これが臨機応変なのだ。

◇一方、東京都も新たな感染者増加にアップアップの状態である。激増する若い感染者対策である。当初ホテルを確保したが沈静化が見える中でホテルとの契約を解除した。一つの理由は維持費が大変で、夏にはコロナは落ち着くという予想だった。そこへ、現在の急変、つまり予期せぬ急増である。ホテルの新たな確保に負われる状況に追い込まれている。結果論だが無駄を覚悟で確保しておけばよかった。

 現在の都の状況は深刻である。若い感染者は軽症者が多い。恐らく陽性と確認されぬまま動いている例は多いのではないか。そこから高齢層に感染する。高齢者は感染すると重症化しやすい。このような構造的変化は今は都だけの問題でなく全国的状況に変化しつつある。私はこれが第二波を迎えたと思われる実態なのだと考える。

◇「安倍首相は裸の王様になっている」との声が大きくなっている。安倍首相はこれまで非常によくやってきて、異例な長期政権を続けるに至っている。従って苦言を呈するのが難しい状況となっていることは容易に想像がつく。この緊急時に「裸の王様」では舵取りを誤るのは必至である。今求められるのは冷静にして強力なリーダーシップだ。内憂外患の国難の時に、挙国一致の政権をつくるべきである。こんな時に布マスクを更に8千万枚配布などは愚策の象徴せはないか。

◇この緊急異常時に持てる駒を有効に使うのは当然である。緊急事態再宣言が出せない状況で政府は既存の法律をコロナ対策に使う方針である。その法律とは風俗営業法、感染症法、建築物衛生法、食品衛生法などだ。これらを状況に応じて使い、警察の立ち入り、換気の指導、店名の公表などをギリギリ強力に使いこなすべきだ。民主主義の死活をかけた戦いの時である。(読者に感謝)

 

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2020年7月28日 (火)

人生意気に感ず「ALS患者と嘱託殺人。障害者と生きるに値しない命。人権の碑の意義を」

◇大変な事件が起きた。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者に頼まれて殺したとして医師二人が嘱託殺人容疑で逮捕された。超高齢社会の進む中で起こるべくして起きた事件だと思う。同様な状況に追い込まれている人は多いに違いない。今日の社会の一面を象徴する出来事である。ALSの患者と聞いて私は直ぐにあの車椅子の天才・故ホーキング博士のことを思った。宇宙の創生と発展の秘密を解き明かすと期待された天才は難病と共に生き人生を全うして世を去った。

◇さて、被害者の51歳の女性は自力で食事や会話ができず眼球の動きで操作できるパソコンを使用。「安楽死」を望む意志を繰り返し表明していたという。容疑者の医師は自身のブログに「もうそろそろという方々には撤退戦をサポートする医者でありたい」と安楽死を簡単に容認すると思われるような事を記していた。

 被害女性のブログは衝撃的だ。「すごく辛い。早く楽になりたい。なぜこんなにしんどい思いまでして生きていないといけないのか私には分からない。助からないと分かっているなら、どうすることも出来ないなら、本人の意識がはっきりしていて意志を明確に示せるなら、安楽死を認めるべきだ」

 人間は最期まで人間である。人間の尊厳をどう実現するかは極めて難しい。一片の法律で片付けられる問題ではない。

◇知的障害者施設「やまゆり園」で入所者19人が殺害された事件は26日で早くも発生から4年となった。死刑が確定したこの事件は、社会に大きな衝撃を与えた。植松被告は「意思疎通が取れない障害者は不幸を生む」という特異な考えを貫いているようだ。社会の生産に参加できない存在は人間ではないと言わんばかりだ。かつてのナチスの優生思想を思わせる。私はハンセン病をテーマにした新聞連載小説「死の川を越えて」の中で「生きるに値しない命」はあるのかを取り上げた。草津楽泉園に完成した「人権の碑」には「私たちは人間の空を取り戻した」と刻まれた。差別の問題は尽きることがない。人間の空が曇ることがないように闘いを続けねばならない。やまゆり園の事件は社会の深淵に蠢く怪物の存在を物語っている。

◇先日国立ハンセン病資料館の代表から、重監房資料館の運営委員を委嘱された。人間の空を貫く一環の役割を思って引き受けた。(読者に感謝)

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2020年7月27日 (月)

人生意気に感ず「歴史的なふるさと塾で。ワクチンは直ぐそこまで。アメリカの狂乱とナショナリズム」

◇25日(土)、嵐の中の「ふるさと塾」だった。2つの会場を一つにして使い、定員満席、コロナ対策は打てる万全を尽くして行った。20年以上も続く「塾」の歴史の中でも特別のものになるだろうなと感想を抱いた。私の胸には人類史的戦争のただ中にあって、またとない瞬間に居るという思いがある。テーマは「コロナと日本、コロナ後の日本の行方」。

 渦巻く嵐を冷厳に語るのは数字である。事務所で準備した2~3日前のパワーポイントの数字を改める必要に迫られた。先ず感染者の数である。アメリカの357万人は404万人に、世界の累計は1,380万人から1,540万人に。そして日本の状況である。東京は凄まじい。23日、東京都は366人。1日あたり300人を超えたのは初めてだ。東京だけでなく各地で爆発的な動きである。私はパワーポイントの表を補って強調した。愛知97人、埼玉64人、福岡66人と。これらも過去最多なのだ。これでも政府や都は「第二波」とは言わない。専門家は「近づきつつある」とビクビクと表明し、「10日頃の予想が前倒しで」などと言っている。

 私たちは「正しく恐れる」ことが重要である。正しく恐れるためには正しい情報とその適切な受け止めが求められる。マスクの講演は苦しいが末席迄の人々が真剣に耳を傾ける姿が私を大きく励ました。

 日本の状況が世界の縮図となってきた。東京都では20代から30代までの感染者が全体の6割を超えた。若者の状況が高齢者に波及している。同じく都であるが50代以上の感染者は3週間で9倍に達した。

◇コロナの嵐はいつ静まるのか。マイクロソフトのビルゲイツ氏とノーベル賞の本庶氏の論文を紹介した。本庶氏は東京五輪までにワクチンは間に合わないと表明、ゲイツ氏は来年の後半には実用化と強い期待を打ち出している。しかし、世界のワクチン開発状況は私たちの想像を遥かに超えている。先頭を走るイギリス、そしてそれを追うアメリカ。そこにコロナの直撃を受け国家存亡の危機に迫られた国々の覚悟を見る。膨大な国家予算を注ぎ込んで今年の10月にも接種可能というから驚く。WHOも23種の有力なワクチン候補が臨床試験に進んでいると表明した。私は最後にワクチンナショナリズムについて話した。巨費を投じて開発したワクチンを自国のものだけにしてはならない。

貧しい国々を助けることが自国の救済に直結する。WHOの役割は益々大である。(読者に感謝)

 

 

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2020年7月26日 (日)

小説「死の川を越えて」第254回

熊本地裁における大谷富男の証言の日が近づいていた。そのおよそ3か月前のある日、副島の奔走で、大谷と水野たちが会う機会が訪れた。大谷は正太郎たちに是非会いたいと言っているということである。場所は熊本の菊地恵楓園。大谷は尋問に備える調査のため秘かに園を訪ねることになったのだ。副島は「熊本まで誠に恐縮ながら是非に」と書き添えていた。

 さやとこずえが、旅費のことを気にしているのを察して、水野が言った。

「リー女史の寄付・リーマインドが、このように人間回復の裁判に役立つのだから、リー女子も天国で喜んでいるに違いない。リー女史の期待を裏切らないよう頑張って来よう」  

 その日がやってきた。さやとこずえは、初めて見る南国の景色に驚いている。また、一同は元厚生省の高官に会うということで緊張していた。

 こずえが言った。

「昔、2人で京都大学を訪ねたときを思い出すわね」

「草津の山の中の女が京都大学の時計塔の下で震えていたわね。その時、こずえさんがお腹の小さな赤ちゃんが頑張れと励ましている、そう言ったのよ。そしたらお腹の赤ちゃんが動いたの。あの時を思い出すと勇気が湧くわ。こずえさん、頑張りましょうね」

 これを聞いて正太郎がにっこり笑ってこずえの手を握った。

 大谷富男という人物は、皆の予想とは違って腰の低い男で、元国の高官という威圧感は感じさせなかった。

「遠路、御苦労様です。私が大谷富男です。小河原先生は私の師です」

「初めまして、私は下村正太郎です。小河原先生は、私の運命の父です」

「おお、副島君が言っていた小河原先生を訪ねた草津の女性のお腹の子とはあなたのことですか」

「その女が私でございます。さやと申します。この方は、私と一緒に小河原先生を訪ねたこずえさんです」

「おー、おー。熱いドラマが目に浮かびます。実は、私は小河原先生からあなたたちお二人のことを聞いたことがあるのです。我が師、小河原先生が私に、生きた教材として示された」

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年7月25日 (土)

小説「死の川を越えて」第253回

「先生、正太郎さんの出生と関わった小河原さんのこと、先生は京大で同窓と言われましたね。実はこの小河原さんは、大谷さんが大変尊敬している恩師だそうです。私が調べたところによりますと、大谷さんは小河原さんの人柄を尊敬するだけでなく、その学説に深く心酔しているのです。小河原氏の隔離せず治療するという医療は今回の訴訟で国の責任を追及するための中心となる問題点と思われます。隔離する必要がないのに強制隔離したとすれば患者の人権を侵害したことになるからです。

 そこで、私は提案したいことがあります。それは、太谷氏が証言する前に、正太郎さんと先生が大谷氏にお会いになることです」

 うーむ、と思わず水野は唸った、水野は副島の狙いを直ちに理解した。深く頷いて紙面に目を移すと次のようにあった。

「段取りは私が出来ると思っています。大谷さんの了解が得られるようであれば御連絡致します。誠に恐縮とは存じますが、この歴史的なハンセン訴訟に勝利するためと思い、敢えて無理な提案をさせて頂きますが宜しくお願い申し上げます」

 水野は読み終えて、この訴訟は歴史を反映したダイナミックなものになると確信した。

 副島の話を聞いて、さやとこずえも熊本へ行きたいと申し出た。2人で京都大学を訪ね小河原先生に会ったことが裁判の行方に大きな意味があるのなら、是非役に立ちたいと言うのだ。水野は大賛成だった。水野は言った。

「さやさんとこずえさんが元気で生き抜いた姿は、国の隔離政策を打ち砕く大きな力になるに違いない。小河原さんが感銘した話も、正太郎さんとさやさんたちがセットになっていることです。大谷さんに大きな勇気を与えるに違いない。また、東京地裁で始まる我々の動きに対する助言も得られるでしょう」

 熊本地裁で裁判が始まったことの衝撃は大変なものであったが、関東でもいざ訴えを起こすとなると迷うものが多かった。「国に面倒を見てもらっているのに」、「社会に迷惑をかけているのに」、「国の名誉を汚している役に立たない存在であるのに」、「お上を訴えるなんて大それたことだ」等の意識である。正に、水野がかつて反省した奴隷の心であった。

 しかし、水野高明や木霊勇二など人権に心を砕く人々は訴訟という人間回復の舞台に登場しなければ道が開かれないと決意して準備を重ねていた。後に取り組む東京地裁への提訴は、熊本地裁提訴のおよそ8か月後であった。

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年7月24日 (金)

小説「死の川を越えて」第252回

老人は食入るような目でじっと見ていたが、やがて頬に押し当て叫んだ。

「これは間違いなく倅の物です。何という不思議。これがあなた様によってニューギニアから届けられるとは」

 男の目から落ちる涙が光って見えた。この光景を見て副島がつぶやいた。

「国を相手どった裁判が始まりました。被告である国にこのこともしっかり法廷で伝えるべきですね」

「その通りです。副島君、力を合わせましょう。カツオブシが裁判にまで勇気を与えてくれます」

 水野の声に正太郎は大きく頷くのであった。

 やがて被告である国の答弁書が出された。

 

二、大谷富男との出会い

 

 ある日の副島の手紙は、文面から興奮が伝わるものであった。

「先生、ドキドキハラハラのニュースです。厚生省元幹部の大谷富男が証言台に立つそうです。この人は全国の国立療養所を管理する立場にありました。つまり、国の隔離政策の責任者でした。いわば、私たちハンセン病の行政に関わる者の最高司令官だった人です。この人は、実は国の隔離政策に反対で悩んだ人です。これは、私が昔、九州帝大で先生に質問した義務の衝突ではありませんか。この人がハンセン病患者、つまり原告のための証言をすることは確実だと言われます。実は私が興奮することは、他にもあるのです」

 水野はここまで読んで2枚目に移る前に紙面から目を逸らした。先を読むことが怖い気もする。また、厚生省のトップが義務の衝突で悩むとは信じられない思いがあった。再び紙面に目をやる。

紙面をめくると、何と小河原泉という文字が飛び込んで来たのだ。

 

※土日祝日は中村紀雄著・著「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年7月23日 (木)

小説「死の川を越えて」第251回

 恵楓園の視察が終わりに近づき、園の人々との交流会が始まった時、副島が正太郎にささやいた。

「あなたがニューギニアの山中で会った人は何といいますか」

「佐々木でしたが、何か」

「草津の重監房から出て、ここに転園した人で佐々木という人がいます。息子さんがニューギニアで死んだと言っています。もしかして何か関係ある人でしょうか」

「えーっ」

 正太郎は押し殺した声で叫んだ。正太郎の胸にサラワケットの山中の光景が浮かんだ。あの男は古里の父に届けてくれと言ってお守りを渡した。正太郎はそれを財布に入れて常に携帯していた。

「会ってみますか」

「はい是非とも。会わせて下さい」

 副島は正太郎を園の一室に案内した。そこには車いすの老人が待機していた。白髪で頬はこけ、落ち込んだ黒い眼窩の底の怯えたような瞳が正太郎をじっと見た。

「重監房は地獄だった。あんな所へ入れるなんて人間ができることではない。カツオブシに助けられました」

「草津の栗生園の下村正太郎と申します」

「カツオブシを提案し、差し入れた人です」

 副島がそう言うと、老人の表情が変化した。眼窩の奥の鋭い光がじっと正太郎を見据えて言った。

「おおー、有り難う。生きているうちにお礼が言いたかったのです。佐々木と申します。堅いカツオブシは強い意志を教えてくれた。カンカンと壁を打つと、別の房からカンカンと応えた。この音で励まし合った。カツオブシは神様でした」

 正太郎は初めて聞くカツオブシの新しい話に驚いた。

「ニューギニアの山中で熊本の佐々木という人に会いました。この人は古里の父にと言ってこれを私に渡しました」

 正太郎はそう言って財布から取り出したお守りを見せた。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年7月22日 (水)

人生意気に感ず「ワクチンの実用は目前か。途上国へのワクチンとWHOの役割。ワクチンと日本」

◇ノーベル賞の本庶氏は早期にワクチンに期待することは困難だと表明している。そして東京五輪までに「ワクチン」はできないと警告する。しかし、欧米ではワクチンの開発競争、開発中のワクチンの争奪戦が加熱している。

 欧米が凄まじい程の巨費を開発費を投じている背景にはコロナ禍の被害が最もひどいという現実があるに違いない。欧米のワクチン開発がいかに目前であるかは、9月と10月の実用化をあげていることが物語る。

 WHOによれば15日時点で163種類のワクチンが開発中で、そのうち23種類は臨床試験まで進んでいるといわれる。コロナに有効に立ち向かう上でワクチンの成果はいかにも頼もしいが大きな壁が予想されている。それは開発に巨費を投じた国や製薬会社とすればまず自国優先を考えることだ。しかし世界は一体化しているから途上国にワクチンが回らなければワクチンの波は先進国に押し寄せるだろう。ここで役割を期待されるのがWHOである。WHOは中低所得国にワクチンが回る仕組みを整えようとしている。アメリカがWHOから撤退を決めたことはトランプ最大の愚策と言わねばならない。11月の選挙で負けた場合、最低の大統領だったことの理由の一つに挙げられるだろう。中国もワクチン開発に大きな力を入れており、治験の最終段階のものもあると言われる。習主席はアフリカ諸国に優先的に提供すると表明している。そこには、アフリカに影響力を広げたいという意図がうかがえる。

◇気になるのはワクチン実用化に向けた世界の奔流に日本はどう関わるかということ。技術の面で潜在的な力は世界に決して遅れていない筈であるが、現実には出遅れ感は否定できない。その中で政府は500億円を開発に、1,377億円を大量生産の支援にと補正予算に計上した。製薬企業アンジェスが開発したワクチン候補に関して治験が6月末から始まり、年度内に20万人分の製造が見込まれている。国立感染症研究所と塩野義製薬が共同してのワクチン開発も進む。

 もう一つの柱は海外のワクチンを日本国内で利用することへの取り組みである。海外で承認されたワクチンを「特例承認」して日本でも使う策である。この関係で、早ければ年末の接種もという見方も。オリンピック開催の日程が決まった背景にはこのようなワクチン状況があると思われる。(読者に感謝)

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2020年7月21日 (火)

人生意気に感ず「ミライズの例会で地方議会の形骸化を。それは日本の民主主義の危機」

◇18日、月1の勉強会ミライズの例会は良かった。メンバーには複数の市の職員も参加している。某市議会で長く事務局を務めたR君が地方議会の形骸化を話した。実態は深刻で、担当者の話だけに皆真剣に耳を傾けた。現職議員もいるのでR君は遠慮しながら話したのだ。議員の質の低さが議員の低い評価の原因となり、魅力のない職業だから立候補者が少ないという悪循環が指摘された。議会の質問に議員の質は如実に現われる。実質的に役人が質問を作るようなことが全部ではないにしろ未だ行われているようだ。議員がいかに情報を集めるかは非常に重要で大いに工夫の余地がある。良い例も紹介された。大津市では龍谷大学と連携して成果を挙げている。「学」との連携である。政務調査費についても指摘があり議論が交わされた。社会は難しい課題を抱え、地方議会は激しい濁流にもまれている。地方創生の時代の中で地方議会の役割は益々大きい。それにもかかわらず地方議会は危機にある。議員数が少なくて議会が成立しないことも生じている。R君の報告はこの点にも触れた。高知県の大川村で「村総会」が新聞で報じられた。地方は「民主主義の学校」という諺がある。民主主義は有権者と密接であることによって支えられる。その実態が地方にある。日本の地方の現状は民主主義の危機を物語る。

 この勉強会では他市から参加しているある市議からコロナ禍の中で市議が動けないことが述べられ、会員からこういう時こそ市議は知恵を出して大いに活動すべきだという意見が出た。

◇7月の「ふるさと塾」は25日(土)、午後6時半から。前回に続き「コロナ」であるが、テーマは「コロナと日本、コロナ後の日本」である。マイクロソフトのビルゲイツやノーベル賞の本庶佑氏なども登場させる。災害に強い群馬県としてかつて安全神話が支配した状況は一変した。17日現在で感染者166人、死者19人は決して少なくない。東京・埼玉と隣接し交通機関で太く結ばれていることも大きな要因だろう。群馬の女性2人が新宿で観劇し感染したことが大騒ぎになっている。こども園、スズランデパートに関係していることで影響が重大になった。二人の女性は生きた心地がしないだろう。これらは特別かもしれないが私たちは多くの人との関わりで生きている。自分が感染すれば拡大することを自覚しなくてはならない。塾ではこのことも話すつもりだ。(読者に感謝)

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2020年7月20日 (月)

人生意気に感ず「全国で新たに自粛要請。群馬の行方。全体主義か民主主義か。コロナ後の日本。女性器判決」

◇東京都の新たな感染者は18日現在290人と報じられた。300人台に迫る状態が連日続く。日本は民主主義の国だから強権を発動することには限界がある。知事などの行政トップが自粛を強く要請し住民が最大限協力することで成果をあげなくではならない。全国47都道府県の約半数の23道県が住民に「3密」を避けるなど慎重な行動をとるよう呼びかけている。

 山本一太知事は県民に対し当面都内への不要不急の移動を控えるよう要請を強めた。このような強い要請を発信しないと重要な立場にありながら新宿繁華街に観劇に出かけるような事態がこれからも起こりかねない。

◇県は都の異常事態を踏まえ、16日、追加の感染防止策を公表した。その中で注目されるのは「ストップコロナ・対策店認定制度」。感染症対策に積極的に取り組む店舗を認定し、店頭にポスターやステッカーを掲げる。お客はこれを見て安心して店を利用できる。そういう店舗に客は集まり、そうしない店への客は減ることが予想されるから、死活に晒されている店舗は協力するに違いない。強制力でなく知恵を使って同様の成果をあげる。このような努力こそ、私は民主主義を支える基礎だと考える。

◇世界史を振り返れば国が呑み込まれるような危機の時、民主主義は駄目だと言って全体主義(独裁主義)が現われた。戦前の日本・ナチスなど。しかし、少し長い目で見れば民主主義が勝利している。現在のコロナ状況を乗り越えるために強権はいかにも効率的で民主主義は無力に見える。その中で日本は世界が驚く程善戦している。強権、強制力に頼らずに自粛要請で未曾有の国難を克服しようとしている。その基礎は人間尊重の日本国憲法であることを私は強調したい。日本の姿は壮大な実験に直面しているようだ。コロナ後に世界はどう変わるか。価値観が変化するに違いない。コロナのトンネルを抜ける時、災害大国日本の新しい姿が世界の中に一層の存在感を増すと私は信じる。物の豊かさよりも精神の豊かさや安全安心が尊重される社会である。

◇女性器のデータ判決が最高裁で確定した。自分の女性器のデータの配布はわいせつか芸術かが問われた。私の頭も古い価値観の部に属すようだ。自分の女性器からデータを作成する姿を想像してしまう。日本が崩壊していく光景か。(読者に感謝)

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2020年7月19日 (日)

小説「死の川を越えて」第250回

「いや、驚きですね。正太郎さんのお母さんの主張も原告の主張を裏付ける生々しい事実ですね」

 有馬が感動して言った。

 ここで水野が先を促すように発言した。

「原告の主張で具体的に注目すべき点をいくつか知りたいですな」

 副島は水野に向き直って頷いた。

「はい先生、簡単に申し上げますと、特効薬プロミンが出た後も隔離政策を続けたこと、優生手術をしなければ結婚させなかったこと、患者に作業を強制させたことなどがあります」

「副島君、御苦労でした。訴訟の大体の姿が見えてきました。遠からず国は被告としての答弁書を出すでしょう。原告の準備書面、そこで述べられた原告の主張、これを被告が認めるのか、争うのか、争う場合その理由は何か。そして、それに対し証人はどう発言するか。ドキドキしますな。その成り行きは私たちの運命に関わることであり、更に人間の尊厳がこの国で実現されるのか、そして日本国憲法が本物であるかが問われることになるのです」

「先生、九州大学の講義が時を超えて甦った感じですね」

 副島が興奮気味に言うと、本吉と有馬もその通りという風に大きく頷くのであった。

 難しく緊張した話が一段落すると、人々は酒を酌み交わしながら懇談に入った。話題は熊本と群馬の自然や歴史や人情などが中心であるが、それもいつしかハンセン病患者の話題になり、熊本で始まった裁判にどのように協力し戦い抜くかに及んでいった。水野は、草津における自分の体験とこの訴訟の動きに関する考えを書き送ると約束した。

 翌日、水野たちは副島の案内で菊地恵楓園を訪れた。そこで見たことは重監房を別にすれば栗生園より深刻なものであった。彼らはハンセン病の患者の現実が全国的な重大事であることの認識を深め、同時に裁判の大きな意義を肌で感じることができた。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年7月18日 (土)

小説「死の川を越えて」第249回

「なぜ、原告は裁判に踏み切ったかということですが、一口で言えば、国の隔離政策による人権侵害に対する怒りです。社会から隔離され、強制労働させられ、断種や堕胎を強要されました。患者だけでなく、その家族も差別と偏見に苦しめられた。国は、社会復帰のための措置も十分にしない。このことに対する患者の怒りです」

 なるほどと頷いて水野は言った。

「この点が裁判の攻防の中心になると思います。そこで、第一にですね。国が行った強制隔離ですが、それが間違っているという医学的理由について、原告はここでは何か主張しておりますかな」

「はい先生、主張しております。ハンセン病が、感染力及び発病力のいずれも非常に弱く、人の体内にらい菌が侵入し感染が成立しても発病することは極めて稀で、適切な治療により治癒する病気だから、強制隔離する医学的理由は存在しなかったと主張しています」

「うーむ、そこですよ副島君。その説は小河原泉氏のものです。京大病院で学界で孤立しながら、国の隔離政策に反対して頑張った、小河原さんは京大で私と同窓、先輩です。そうそう、小河原さんといえば私よりこの正太郎さんの方が遥かに彼と縁が深い。この裁判にも関わりがあることです。正太郎さん、説明したまえ」

「はい先生、分かりました。皆さん、この熊本の地で小河原泉先生のお話ができるなんて私は感激です。実は私がこの世にいて、皆さんと今日お会いできるのは小河原先生のお陰なのです」

「えーっ」と本吉と有馬が同時に叫んだ。

「私の母は、私がお腹にいた時、産むべきか否かうんと悩んだそうです。そこで、勧められて京都大学に行き、小河原先生に会い、遺伝病ではない、感染力は極めて弱いと言われ私を生む決意をしたのです。私は成長してから自分の出生のことを確かめたくて母と京都大学を訪ね、小河原先生にお会いしました。小河原先生は、昔、患者である元気な母と会って、隔離政策は間違っていると確信したと申されました」

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年7月17日 (金)

人生意気に感ず「夜の街の実態。都の悲壮感。スズランの危機の意味。世界の協力とWHO。超大国は駄目だ」

◇「意趣返しているような菅語録」。全国紙に載った川柳である。記者会見から小池知事の危機感が伝わってくる。「夜の街」を抱える都知事と政府では危機感の認識に於いても当然差がある。

「夜の店」の薄い危機感が指摘されている。6畳2間に6人で共同生活するというホストの生活様式が報じられた。歓楽街の経営者の中には破れかぶれの人もいるに違いない。新宿は元々違法と適法が混在する街。人間の欲望を法で縛るのは無理という人間の深淵に通じる問題もある。そんな新宿をコロナが襲った。強いられた自粛は牢獄だ。それが解かれたから暴走が起こるというのは当然。再び慌てて規制を強めようとしても無理な感がある。知事は「指針を守らない店の利用は避け認証マークのある店を選んで欲しい」と強調。知事の胸には学歴詐称などの批判を吹き飛ばそうという意識があるかもしれない。

 しかし強制力のない制度の下で無軌道を必死で食い止めようとする姿には共感を覚える。空前の得票も大きな後押しになっているのだろう。

 この歓楽街に観劇に出かけてコロナを持ちかえった群馬の2人の女性に批判が巻き起こっている。スズランの被害は甚大だろう。コロナの魔力がいかに凄いかを改めて認識すべきだ。

◇米中の対立が激化している。トランプ大統領は目前の選挙の劣勢にあせりを感じているのだろう。トランプは香港に対する中国の「国安法」に制裁を加え始めた。英国がこれに同調している。欧州各国もその方向らしい。中国が恐れるのは国際的孤立である。コロナ対策の上で最大のマイナスは国際的対立。特に米中の悪化だ。5年前のエボラの時はオバマが世界的な指導力を発揮した。今のトランプにはそのような大局観が見えない。WHOからの撤退はアメリカ自らの首を縛るもの。

◇そんなアメリカにも救いが感じられる現象がある。米国の企業及び個人から国別で最大額の寄付がWHOに寄せられているという。これはトランプに反対する健全な民意の存在を物語る。各国民間の寄付にはWHOにとって大変ありがたい存在である。ひも付でない金を迅速に途上国の医療物質供給などに回せるからだ。WHOの存在意義はコロナ危機のような時にこそ最大限発揮されるべきだ。

◇コロナ対策で超大国が頼りにならないことが歴然となった以上、日本の役割は益々大である。人類史上のチャンスを天が日本に与えている。(読者に感謝)

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2020年7月16日 (木)

人生意気に感ず「新宿は魔界。新宿観劇の群馬県人。制限緩和は警戒感を薄める」

◇東京都の感染状況はただ事ではない。小池知事は15日最高の警戒度だと表明した。また、専門家は第二波が近いのは間違いないと言っている。日本全体の緊急事態が解除され、首相が「ほぼ収束」と表明した直後に緊張が緩んで油断が生まれた感がある。欲望の都市新宿は魔界である。日本人の心の崩壊現象の象徴とも言うべき都市。その実態はコロナによっても変わらなかった。欲望という名の魔物は人間の心に棲んでいる。コロナの状況を正しく恐れるなら新宿などの歓楽街に近づくべきではない。群馬の場合、東京埼玉の直結している上に「群馬は大丈夫」という安全神話が尾を引いている。

◇伊勢崎市のこども園勤務の女性が新宿で観劇した事実は象徴的である。女性が訪れた劇場「シアターモリエール」ではクラスターが発生したとみられていた。驚いたことは、この劇場で前橋市の50代女性が観劇し感染した。これで終わりであろうか。県は、女性が保育教諭として勤務していた「二葉こども園」の園児と職員計71人を濃厚接触者と判断した。この人たち全員にPCR検査を実施するという。二葉こども園だけの問題ではない。全ての幼稚園、保育園の関係者、更には高齢者施設等の関係者に二葉こども園の出来事に学ぶことを徹底させねばならない。

◇世界のコロナ状況は最悪となっている。百年前のスペインかぜのようなことになるのだろうか。あの時は3年以上続き試写は数千万と言われた。医療状況などが全く違う現代ではあるがコロナ軍団の勢力は拡大の一途だ。

 世界の感染者は13日現在、1300万人を超えた。WHOはこの状況を指して「感染拡大は加速している」と強調した。感染者の52%が、死者の51%南北米大陸に集中。国別では、アメリカ・ブラジル・インド・ロシアが突出している。

◇米国の急増情勢と経済活動の再開状況の関係は、日本の現状を考える上で興味がある。南部や西部など特に急増が激しい州は比較的早く経済の規制を緩和した。このことが住民の感染への警戒感を薄くさせ感染拡大の基になったと指摘されている。これは日本にも当てはまるに違いない。水が低い方に流れるように人間の心理として共通なものだ。日本の文化は素晴らしいと言われるが戦後アメリカナイズされた部分は非常に大きい。欲望第一、物質第一で精神的な貧しさは日本の社会の崩壊を思わせる。そこに今回の未曾有のコロナ襲来である。経済の規制緩和は倫理というブレーキを失った日本人の心の基盤を揺るがしコロナ拡大を許していると思える。(読者に感謝)

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2020年7月15日 (水)

人生意気に感ず「都の感染状況と群馬。新宿の観劇者のこと。広域搬送の工夫。ビジネス渡航者の備え。ダルクに米を」

◇日本の感染状況は何を意味するのか。実態がよく分からない。東京の感染者が増えているのは事実だろう。懸念されることは感染者の多くが自由に動き回っている。それらが軽症の若者だということもある。自由に動き回ることで感染者が更に増える。累は高齢者に及ぶ。高齢者のダメージは大きいから深刻だ。

 東京と埼玉は一体となっている。そのコロナ禍の波が群馬に大きな影を落としている。群馬の第二波、第三波にはこのような背景を踏まえて対策を立てねばならない。

◇県は、県内の全11消防本部との間で患者(感染者)の広域搬送に関する覚え書きを結んだ。

 先日、「藤和の苑」の被害について検証結果が明らかにされた。検証は反省を活かすために不可欠。失敗は成功の基なのだ。そこで得られた重要なことの一つに、スラスターが発生した際の病院搬送の課題がある。輸送手段が十分でないため遅れが生じた。時は命である。県が11消防本部と広域搬送で連携を図る目的はここにある。県内に存在する輸送手段は連携してこそ効果が生まれる。私はこの連携策は、現状の対策として、また近い将来の第二波第三波に備えて大きな意味のあることと思う。

◇県内20代の二人が感染したと報じられた。このうちの1人である女性は伊勢崎市の認定こども園「二葉こども園」勤務。新宿の劇場で観劇していたという。今後の展開が心配だ。新たなクラスター発生に繋がらねばよいが。現在、社会全体に気の緩みが生じていると思う。長い間の自粛によるストレスがたまったことからすれば無理もない。しかし、今一番求められることは油断を戒めることだ。正しい情報により正しく恐れることだ。伊勢崎の女性の件はこのことを私たちに突きつけている。

◇ビジネスで国外に出ることが不可避となっている。だとすれば迅速に大量に検査する対策が必要だ。政府はビジネス渡航者PCRセンターを開設して対応する。羽田、成田、関空などに設け1日3000人を検査できるという。コロナを乗り切るために、地方と中央に於いて日本の総合力が試されている。

◇私は長いことダルクと関わってきた。薬の依存者の人たちもコロナ禍と闘っている。昨日、玄米60キロを寄付し、理事のH君が受け取りに来た。コロナは社会の弱者に容赦しない。(読者に感謝)

 

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2020年7月14日 (火)

人生意気に感ず「元側近マティスの勇気ある声明。アメリカの団結の意味。民主主義と人類が試される」

◇アメリカは建国以来最大といえる部類の危機に直面している。アメリカの危機の中で最大のものは南北戦争であった。それは国家が分裂するギリギリまで進んだ究極の国難であった。自由と平等という建国の旗印の下にこの分裂の危機を乗り越えたからその後のアメリカの躍進が実現した。建国の理念(精神)である自由と平等は普遍的な価値であるが故にこれを掲げたアメリカは世界の指導者に成り得た。真のアメリカナンバーワンは「自由と平等」の回復によって達成されると私は信じる。これを否定し目先のアメリカナンバーワンを目指しているのがトランプ大統領である。

◇前置きが長くなったが前国務長官マティスの勇気ある発言を紹介するのが目的である。文藝春秋最新号は「トランプはアメリカの脅威だ」を載せた。ここでマティスは「アメリカは団結することで力を発揮できる」と彼の信念を踏まえてトランプを真っ向から攻撃する。ボルトンに続いて大統領の側近だった人物が現職の大統領を攻撃する。これは異例なことである。同時にトランプがいかに最低であるかを示し、また、このような批判が可能な点にアメリカの民主主義が健在であることが窺われる。前国務長官マティスは今回の声明で、リンカーンの発言を例にして、アメリカの団結を訴える。トランプが民衆の抗議デモを押え込むために州兵を動員しようとしたことに怒りを爆発させた。彼は言う。「トランプは私の人生でアメリカ人を団結させようとしない、いや、そのふりさせしようとしない最初の大統領です」、「今、私たちは未熟な指導者の下で過ごした三年間の結果を目の当たりにしています」と。

◇アメリカを襲っている未曾有ともいえる大波は目前の大統領に向っている。私の目には世界の民主主義、世界のコロナ等、皆この大統領選に流れ込んでいるように見える。マティスの声明は絶妙のタイミングでなされた。マティスが言うアメリカの団結は世界の団結に繋がる。コロナ対策の最大の有効打は世界の団結である。第二波第三波が地球を覆い人類を危機に陥れることは必至である。今回のアメリカの大統領選ほど面白いものはない。ここで示される自由と民主主義の勝利こそコロナを打ちのめす最良のワクチンといえるだろう。

◇世界の感染状況は凄い。米国、ブラジル、インド、この順位と数はコロナ戦の今後を暗示する。(読者に感謝)

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2020年7月13日 (月)

人生意気に感ず「コロナ禍の下の茶会。本庶さんのコロナ対策。免疫力の差は種の保存にプラス」

◇コロナ禍の下、赤城山山中の茶会に出た。広い敷地に大木が緑をしたたらせ紫陽花が咲き乱れる。茶室のオーナーは奈良東大寺と関わる人。法華寺執事に続いて私が「この開かれた緑の空間は最良のコロナ対策になります」と挨拶した。奈良から車で駆けつけたという尼さんの話に壮大な古代の歴史を想像した。法華寺は東大寺を創建した聖武天皇の妃・光明皇后が開いた寺で光明皇后は藤原不比等の娘である。尼僧の渡邉執事と茶を味わいながら田中正造について話した。

◇ノーベル賞の本庶さんの文藝春秋8月号、「東京五輪までにワクチンはできない」を読んだ。ワクチンは近いという説が流れているがそれは簡単ではいことを知った。しかし、私が大いに勉強になったと感じたのは本庶さんの「なぜ日本人の死者が少ないか」を「種の保存」の点から説く部分である。本庶さんは日本を含めたアジアに於いてコロナの死者が驚く程少ないのはヨーロッパの種族と比べ免疫力が強いからだという。コロナと離れても免疫力は種族により、また同じ種族でも個人により異なることは良く知られている。例えば風邪に罹っても発症しない人もあれば死ぬような重症になる人もいる。種族によって免疫力に差がある方が種の保存には間違いなくプラスだと本庶さんは主張する。なぜなら、ペストのような強力な感染症に襲われた時、全ての種族が同じ免疫力なら皆罹りあっという間に人類は滅亡してしまうからだ。

◇日本人がコロナに対して免疫力が強くある程度抑えられているとすれば、第二波第三波は間違いなく外国から来る。それを水際で食い止めるために「検査」と「検疫」により「鉄壁の守り」を築かねばならない。大量の外国人に対応するには極く短時間で検体を採取し結果を掴む必要がある。そのための「全自働」のPCR検査装置及び「試薬」の生産は現在遅れているが政府が決断すれば難しいことではない。年に一千億円かかるとしてもマスク配布に460億円かけるよりずっと賢明な策だ。このように感染症対策を有効に行うことによって多くの外国人が訪れるようになり国民も不安なく働くことが出来、経済回復に繋がる。ノーベル賞の本庶佑氏はこのように力説する。コロナによってノーベル賞受賞という基礎科学への貢献が人類救済に大きな役割を果たすことを知った。コロナに感謝すべきことも多い。(読者に感謝)

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2020年7月12日 (日)

小説「死の川を越えて」第248回

 それを聞いて本吉が言った。

「凄い話ですね。裁判では国が人権を侵害した貴重な証拠になるに違いありません」

 副島が大きく頷きながら続けた。

「菊地恵楓園には草津から転園した人が生きていて重監房の恐怖を時々語るといいます」

 この時、黙って聞いていた正太郎が顔を上げて言った。

「私はニューギニアに従軍しましたが、サラワケットという山を越える時、山中で息も絶え絶えの人に遭いました。私が群馬の草津だと言うと、驚いたことにその人の父親は重監房に入れられ、差し入れられたカツオブシで生きて出られたと言いました。カツオブシは私の提案だったと言ったら、私の手を握り有り難うと言って息絶えたのです」

「ほほー、ニューギニアの山中で」

「不思議な話ですねー」

「カツオブシと重監房の関係を国の役人は知らんことでしょう。裁判に勝つには生々しい事実を裁判官の胸に突きつけねばならん」

 3人は一様に興奮した表情で正太郎を見詰めた。

 この時、副島は所持したカバン

から書類を取り出した。

「先生、これは原告の訴状です。熊本地裁に出されました。項目だけは先日、先生の所へお送りしました」

「そこに書かれていることは、裁判の基礎になることです。詳しいことはあとで検討するとして請求の原因、つまりなぜこの裁判を起こしたかの部分が重要です。副島君、極く大ざっぱに話してくれたまえ」

「はい先生、昔の大学のゼミを思い出します。久しぶりの緊張が懐かしいです」

 こう言って副島は赤く線を引いた訴状を指でたどりながら語り出した。それは、先生の前に座る生徒の姿であった。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年7月11日 (土)

小説「死の川を越えて」第247回

 水野高明は身体全体で感動を現していた。<ここは俺の原点だ>、水野がそういう思いで熊本の大地を踏みしめると、熊本の自然が<お帰り>と応えている。全てが一変していた。軍国主義の進む中、九州帝大で人権を講義し、本妙寺のハンセン病の集落の人々と交わった。自分がハンセン病に羅患したときの驚愕、人生を捨てたつもりで草津に行った、湯の川の集落で遭遇した様々な人と出来事、それらは不思議な運命の流れであった。この運命の流れに大転換をもたらしたことが、敗戦と新憲法の公布であった。基本的人権を研究し、自らハンセン病の患者として人間の平等に関わってきた水野にとって、正に劇的な展開でありその舞台が熊本地裁なのだと思うと、水野の胸に夢か現実かという思いすら湧いてくるのであった。

 副島悟郎は2人の仲間を連れて面会の場に現われた。路地の奥の小さな食堂である。

「先生、遠路誠に恐縮です。この2人も昔先生の講義を聴いた者です。あの講義が続いていて、熊本地裁に至ったと、先程も話していたところです」

「本吉正です」

「有馬春男です」

「水野です。不思議なご縁ですね。この2人は下村正助さん、正太郎さん親子です」

 水野は正助親子のことを話した。

 本吉、有馬たちは、ハンセン病の患者の両親から生まれた正太郎を目の前にして心を打たれている風であった。2人は特別病室のことを知りたがった。そして、本妙寺集落の人たちが収容されたことには特に強い関心を示した。

 正助が言った。

「特別病室と呼びましたが、病室とは全く違った重監房、悪魔の監獄でした。餓死した人、凍死した人が多くいました。熊本の人を私たちは必死で助けようとして秘かにカツオブシを差し入れたのです」

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年7月10日 (金)

人生意気に感ず「東京の急増は第三波だ。藤和の苑の検証は。ノアの洪水の再来か。大量の象の謎の死は」

 

 

◇都内感染者は9日最多の224人となった。東京の感染状況が地方に影響するのは必死。東京と埼玉は一体化しており、この一体化と隣接するのが群馬である。

 

 東京の最多状況は第二波なのかを巡って激しく議論されている。政府や都知事は、数字はPCR検査が大幅に増えた当然の結果だとして第二波ではないと強調している。しかし、専門家の間では第二波を懸念する声が強い。分析では「夜の街」以外でも増加、2030代が増加している等、新たな状況を示している。私は第二波が到来していると思う。事実を冷静に捉えることが最大の防止策である。パニックは避けねばならぬが正しく恐れることは、今最も必要なことである。東京の現状は恐怖の存在として群馬に迫ってきたと思える。

 

◇第二波に備える上で最も重要なことは過去を検証して今後に活かすことである。この点注目されるのは「藤和の苑」の検証である。伊勢崎市のこのホームでは68人が感染し16人が死亡した。この被害を無駄にしてはならない。報告書は最初の感染者の把握とそれに対する対応の遅れを挙げている。県内の多くの施設等は大いに参考にすべきである。

 

◇九州の豪雨禍が全国に広がってきた。長野県・岐阜県にも一時大雨特別警報が出された。次は群馬県かと思わざるを得ない。群馬は大丈夫という安全神話は過去のものとなった。

 

 日本近海では海面の水温が上昇している。温暖化で、地球の温度が上がっている。温度が上がると大気に含まれ得る水蒸気量が増大する。これと海面温度上昇による上昇気流とがあいまって空中の水が雨となって一気に落下する。これが今回の大災害の背景である。ノアの大洪水のような現象が近づいているかも知れない。

 

◇アフリカのボツワナで300頭を超える象が大量死している。多くの感染症が野生の動物から始まっている。この野生の象も何かのウイルスに襲われているのか。現地の調査では弱々しく気力がなく痩せ細っていると言われる。象は賢い動物で仲間が助け合って生きる。今回の弱った象は仲間が手助けしても適当に動けない状態と言われる。地球規模で何かが起きつつあることの兆候なのであろうか。

 

◇世界の感染者は1200万人を突破。百年前のスペインかぜは一説に6千万人とも。今回はどこまで拡大するのか心配である。米は300万人を超えて、ブラジル・インドの急増も不気味だ。(読者に感謝)

 

 

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2020年7月 9日 (木)

人生意気に感ず「日本はどうなる。未曾有の水害。河井夫妻の起訴と民主主義。トランプとWHO。ブラジルの現在」

◇日本はどうなってしまうのか。九州の豪雨は信じがたい光景を展開させている。8日の時点で死者は57人に達し、行方不明者は12人と報じられた。谷を埋めるように押し寄せる濁流は日本の未来を暗示させる。「これまで体験したことがない」という表現も聞き飽きて衝撃を受けない感じだ。地球的規模の異常気象の一環である。新たな災害の時代の幕開けに違いない。コロナの嵐が地球を覆っている。踏んだり蹴ったりの感がある。

◇遂に河井前法相夫妻が起訴された。参院選を巡り地元議員ら100人に計約2900万円を提供した。驚くべきは夫の克行氏が法務大臣であったこと。法秩序を守るトップにいた人が法秩序を真っ向から踏みにじった。このような事態を担った自民党の金権体質に国民が怒っている。選挙は民主主義を支える基盤である。メディアは河井夫妻が安倍首相に近い存在であることをしきりに報じてきた。首相のイメージが大きく傷ついたことは当然で支持率低下の一因にもなったに違いない。金まみれと言われ金権選挙、金権政治を堂々と押し進めたのは故田中角栄である。一部に田中を「天才」と持ち上げ、このことに目をくらまされる民衆の姿がある。田中の本質が札束のつまった段ボール箱の山にあり、日本の民主主義を否定した点にあることを改めて注目すべきだ。

◇トランプ大統領がWHO脱退を正式に表明した。WHOが中国寄りだという理由である。WHOのこの点を批判することと、世界のコロナ危機を救うためにWHOを助けることは別である。もし、選挙戦のための戦略と考えているとすれば大きな誤算ではないか。民主党の大統領候補となるのが確実であるバイデン氏は当選したら直ちにWHOに復帰すると述べている。コロナ禍の下でのアメリカ大統領選の行方を世界は固唾をのんで見守っている。

◇新聞で報じられる世界の感染者状況を見るのが日課となった。アメリカの首位は不動だ。7日の感染者は300万人を、死者は13万人を超えた。南部や西部で拍車がかかっている。アメリカのこの地域の南に中南米が広がる。世界第二位はブラジルである。一国の政治指導者の姿勢がコロナの感染に大きく関わっている。ブラジル大統領はコロナの危機を真剣に受け止めていないようだ。「陽性」と判明した。このような人を選んだのは国民である。世界一の日系社会が気にかかる。(読者に感謝)

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2020年7月 8日 (水)

人生意気に感ず「香港の抵抗はカマキリの斧か。追い詰められるトランプ。医療崩壊の危機は迫る」

 

 

◇蟷螂の斧というたとえがある。カマキリの斧はむなしい。しかし香港の抵抗運動はトウロウのオノで終わらないだろう。拳を上げる若者たちは訴える。「どんな悪法も心を抑えることは出来ない。香港市民の抵抗は更に強くなる」昨年6月の200万人デモは線香花火とは思えない。抵抗運動は全地球的なコロナの嵐と複雑に連動している。世界史の行方を解くカギがここにあることを感じる。

 

◇世界史の巨大な歯車にコロナが大きく関わっている。習近平主席とトランプ大統領の動きに、それは端的に現われている。中国はコロナの発生源との関わりで香港に対し一層の強権を振るおうとしている。世界はこう見ているし私も同感だ。一方、トランプについては、直近のアメリカの世論調査は「コロナの拡大に一番責任を負うべきは大統領」という結果を伝えている。この世論調査は目前の大統領選と結びついている。大統領選の支持率で、トランプは民主党候補のバイデンに大きく水をあけられている。バイデン49.9%に対しトランプは40.4%であるという。感染者が270万人というアメリカの狂乱のコロナの嵐に選挙戦が巻き込まれ飲み込まれている感がある。注目すべきは前回トランプが勝利した南部や西部の州で全てバイデンの支持率が上回っていることだ。この状況は残り4ヶ月で挽回できないだろう。1918年のスペインかぜでは一説に世界の死者は6000万人と言われた。当時とワクチン開発の動きなど事情は異なるにせよ、今回のコロナは敢然に収束するまでに感染者は2000万人に達するのではなかろうか。正に悪夢の展開なのだ。

 

◇第二波の大きなうねりに対する防波堤の一つは医療であるがこの防波堤が決壊の危機にある。国会の論戦でも経営危機にある医療機関の実態が指摘され緊急の支援が提案されている。私が関わる中小の医療機関も受信者が激減し深刻な状態である。日本の保健制度は世界に誇るべきものである。この制度に乗ってこれまで医院の待合室はサロンの如き感があった。不急の患者はこのコロナで真っ先に来なくなる。受診に迫られている人々も感染を恐れて来ない。医療の崩壊は人間の生命の危機に直結する。私の口座にも10万円が振り込まれた。予算・税金の有効活用が今ほど叫ばれることはない。国会は真の役割を果たすべきだ。このような時、解散の気配が濃くなってきた。(読者に感謝)

 

 

 

 

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2020年7月 7日 (火)

人生意気に感ず「コロナと国連の決議。映画“ワールド・トレード・センター”を観た」

 

 

◇世界のコロナの感染者はこの原稿を書いている間も爆発的に増え続けている。3ヶ月ほど前、コロナとの戦いは「世界戦争」だという表現がオーバーに感じられたが、今や異論をはさむ人はいないだろう。この戦いに勝利するためには世界が対立や争いを止めて力を合わせる以外にない。しかし、現実には各地で不毛の争いが繰り広げられている。今こそ国連の役割と真価が問われる時だ。

 

◇国連安保理はコロナの対策として世界各地の戦闘行為を90日間停止する決議を全会一致で採決した。安保理として初めてのコロナ対策決議である。私としては遅きに失した感を抱く。決議は敵対行為の全般的かつ即時的な停止を紛争当事者に呼びかけた。紛争当事者に対する重要なメッセージであるが、同時に全世界の世論に訴える意味を持つ。

 

 私たちがこのメッセージを届けたいと考える第一の国は北朝鮮である。コロナの嵐が吹き荒れる中で日本海にミサイルを発射したり、韓国への軍事行動を行っている。

 

◇北朝鮮の国民はこのコロナ禍の中でどうしているのか。中国との交流が閉ざされている中で、国民の食糧難が伝えられている。世界から制裁を受け孤立する状況は国家そのものが「三密」となっていると言える。軍事最優先の独裁国は国民不在で暴走している。衛生環境などに金を使おうとしない北朝鮮国内では非常に多くの感染者と死者が出ているに違いない。

 

◇最近、映画「ワールド・トレード・センター」を観た。2001年9月11日の同時多発テロの実話に基づくストーリー。あの時世界中の目がテレビに釘付けになり心は凍り付いた。事実は小説よりも奇なりというが正にそのような事実であった。天に届くような二つの高層ビルに航空機が突き刺さる光景をこれは現実か映画かと私は信じ難い思いで観た。コロナの惨状が渦巻くニューヨークを背景しこの事件を描いた映画を改めて驚きの目で観た。当時アメリカのナショナリズムは一気に炎のように燃え上がった。そしてパニックが静まった時、多くのアメリカ人はなぜアメリカは嫌われるのかと考えたと言われる。コロナ禍の下で、アメリカ人はこの思いを強めているのではなかろうか。この思いは目前の大統領選に影響すると思う。真の意味のアメリカナンバーワンを実現することをこの事実は訴えている。(読者に感謝)

 

 

 

 

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2020年7月 6日 (月)

人生意気に感ず「夜の街は現代社会の縮図・永寿総合病院の会見。解散はあるか。選挙は変わる」

 

 

◇「夜の街での感染者」という表現が動き出した。東京都がホストクラブやキャバクラなど接待を伴う飲食店での感染者を定義した言葉だ。緊急事態宣言解除後一ヶ月余りで5都県の夜の街感染者は少なくとも514人。5都県は東京・さいたま・横浜・宇都宮・福岡の各市。この状況はコロナ対策上重要な問題を秘めている。従業員は若い人が多く、感染しても自覚症状のない人が多い。従って感染を広げてしまう。そして、こういう所へ近づく人々の感覚である。無知なのか、危険を承知で誘惑に負けてしまうのか。ある知人は心に淋しさを抱く人が多いことを指摘した。

 

 隣りのさいたま市及び宇都宮市でもキャバクラで感染者が出ている。これらの市のキャバクラではマスクや距離のルールを守っていない所もあるという。群馬も他人ごとではない。早く手を打つべきだ。防止対策を守っているか調査すべきである。本格的な第二波が近づいている今、緊急事態下にあるような緊張感が群馬の自治体に求められている。

 

◇永寿総合病院の院長が記者会見した。3月23日以降、214人の感染が確認され43人が死亡した。感染の可能性に関する認識不足と予防策の不十分を認めた。また3月初めの感染者に気づくのが遅れた結果大量感染が起きたと語った。その他院内における反省点を説明している。本格的な第二波を前にして、最も重要なことは医療や福祉機関が検証することである。特に全国の高齢者福祉の施設は最大細心の注意をしないとコロナの前に屈服することになる。

 

◇衆院解散の動きが加速し始めた。議員にとって解散と選挙は最大の出来事である。政治に関して何もしないと批判される政治家も選挙だけは目の色を変え必死になる。私は長い間国会議員の選挙に関わってきた。安倍首相は「頭の片隅にもない」と言いながらメッセージを発しているものと受け取られている。根拠がはっきりしないメッセージに動かされているうちに虚像が実現に変化していくのがこれまでの通例だった。お化けが現実のものに変身していく。前橋市内でもポスターの数が増えだした。コロナ禍で選挙のやり方も一変するだろう。従来の選挙は「三密」そのものだった。各陣営の頭脳合戦になる。逮捕された河井夫妻の買収問題も反省材料として影響を与えるだろう。最大の論点はコロナになるだろう。(読者に感謝)

 

 

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2020年7月 5日 (日)

小説「死の川を越えて」第246回

 

「先生は、草津の湯の川は生きた大学だと申されましたね。今、熊本が裁判という形で生きた大学になりつつあります。熊本には本妙寺の歴史があり、ハンセンの患者施設恵楓園がありますが、患者さん及び元患者さんたちは、未だこの訴訟の意味を理解するに至っておりません。先生の先日のお手紙にハンセンの患者が奴隷の心になっていたという部分があり、これは私たちに強い衝撃を与えました。恵楓園の人々も未だにこの奴隷の心を抜けていないと思われます。だからこの裁判には人間回復、そして人間解放の意味があると信じます。私たちの心も、この裁判によって新しい境地を目指さねばなりません。先生を熊本にお迎えすることにはこのような意味があります。何とぞ宜しくお願い申し上げます」

 うーむ、と唸って水野は目を閉じた。水野の心は既に熊本に飛んでいた。

 いつもの仲間に話すと、皆水野の熊本行きに大賛成である。木霊勇二は言った。

「熊本の波は必ずここにも来ます。そのために水野先生の特別の縁を生かすべきです」

 水野は正助の瞳が輝いていることに気付いた。<ははー。前に私の部屋で酒を酌み交わし、君は私のゼミ生だと言った時のことを思い出しているな>と思った。

 相談の結果、水野高明と共に正助、正太郎親子が同伴することになった。正助、正太郎は草津、湯の川の歴史を熊本の人たちに伝えるために、また、今後の訴訟に於ける協力関係を築くために必要と考えられたのである。木霊は、今こちらの訴訟に向けての重要な準備があるので行けないということであった。3人の費用は、「リーマインド」から出すことになった。

 水野と正助親子は高鳴る胸で熊本の地を踏んだ。南国の太陽がギラギラと輝き、正助たちは通りの街路樹にも異国情緒を感じた。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年7月 4日 (土)

小説「死の川を越えて」第245回

 それから一週間ほどしたある日、水野の下にまた副島の手紙が届けられた。副島の熱意の並々ならぬことが伝わる。早くも裁判の進展があったかと、水野は逸る気持ちで封を切った。そこには意外なことが書かれていた。

「先生、今回お伝えすることは裁判に直接関係することではありません。実は熊本には九大で先生の講義を聴いた者が少なからずおります。先生のことはほとんどの者が今や存じ上げております。先生が発病され、草津の療養所に入られたこと、本妙寺の人たちが先生に助けられたこと、特に重監房とカツオブシのことは手に汗握る物語として受け止められております。その上にこの度の訴訟となりました。私たちは国の公務に関わってきましたが、この訴訟の大義はハンセンの患者側にあると信じております。先生の講義を聴いた者は教室で理論としてとらえた人権の問題に、自分たちの職業を通した実践で理解を深め、その上新憲法により信じ難いような人権の姿に遭遇しました。私たちは先生のことを予言者の如く受け止めたのであります。更に私たちの度胆をぬく出来事が今回の訴訟です。先生が先日の手紙で述べられたこの訴訟の意義を私は何人かの仲間に話しましたところ、彼らは秘かに鬼の首を取ったように興奮致しております。そして私たちはこの熊本で先生をお迎えし、直接お話を伺いたいという考えに至りました」

 水野はここまで読んで、書面から目を離した。水野の心は少年のように高鳴っていた。不思議な幸福感であった。自分の人生を呪った日々がここに繋がって実を結ぼうとしている。学者として絶望していた生き方に光が当たろうとしている。副島の手紙はそのことを語ろうとしているのだ。水野は再び紙面に目をやる。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年7月 3日 (金)

人生意気に感ず「牙をむく権力。国家安全法が動き出した。習主席の賭け。真のアメリカ第一とは」

 

 

◇権力が牙を剥く瞬間である。香港の国家安全法成立に抗議する人々と警察との対立である。300人以上が逮捕され、その中の9人は香港独立と書いた旗を所持。人々が最も恐れるのは中国本土へ連行されること。1989年の天安門の大弾圧を連想しているに違いない。

 

 香港はアヘン戦争に破れてイギリスの植民地となった。中国から見れば香港は屈辱の象徴であった。中華思想を抱く中国人(漢民族)には大きな誇りがある。アメリカと覇権を争うまでになった中国である。香港に対する強権発動はこのような中国民衆のナショナリズムをあおる単純な構造と繋がっている。

 

 習主席はコロナ対策で失敗し動揺した。国民の動揺は国家の危機である。一番の解決策はナショナリズム(民族主義)を利用して国民の目をそらすこと。習近平の胸にはこのような思惑があったと私は考える。

 

◇アヘン戦争以来の歴史の巨大な歯車が回る瞬間なのだ。国際条約に反し民主主義に反するものとして世界の自由主義陣営は一斉に中国を非難している。その中で、長く香港を支配したイギリスの反応は注目に値する。英政府は一国二制度を約束した中英共同宣言に明白かつ深刻に違反するとの見解を示した。そして、香港在住の「英海外市民」の受入れにつき制約を大幅に緩和すると発表した。香港では既に市民の間に国外脱出の動きが始まっているが、イギリス政府の方針はこの流れを加速させるに違いない。この動きはコロナで大きな打撃を受けている中国経済にとって更なる大きな痛手となるのは間違いない。

 

◇アメリカの中国に対する世論は現在最悪と言われる。アメリカは複雑な方程式に直面している。その中の重要な要素は目前に迫った大統領選。トランプの支持率は急落し、追い詰められている。トランプの手にあるカードは北朝鮮と中国である。対外強行策によって国民の目をそらそうとする手段は習近平と似ていると言える。トランプが掲げる「アメリカ第一」は偏狭なナショナリズムに繋がると見える。しかし、真のアメリカ第一は建国の理念でもある自由と平等を取り戻すことで実現する。多くのアメリカ国民はトランプを反面教師にしてこのことに気付きつつある。それを試す時がきた。目前に迫る大統領選である。アメリカが民主主義の指導者たる地位を取り戻し、世界が力を合わせる事態を恐れているのはコロナである。(読者に感謝)

 

 

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2020年7月 2日 (木)

人生意気に感ず「香港安全法の成立。コロナの大津波と人間の欲望。ワクチンの朗報」

 

 

◇中国全人代の光景は異様である。香港安全法成立の瞬間だ。全会一致は日本などでは考えられない。正に一党独裁を象徴する光景である。民主化を求める大規模なデモは記憶に鮮明である。この運動を指導した団体などは相次いで解散した。若者たちは中国本土へ連行されることを極度に恐れているに違いない。巨大国家の恐さはあの天安門事件に象徴される。国家の分断、中央政府の転覆、テロ活動、外国勢力と結んで国会の安全を脅かす行為などが禁じられる。これらに違反したとして逮捕された場合、違法性を審理する裁判官に司法権の独立は認められなくなった。

 

 法の成立を急いだ目的は9月の議会選挙対策にある。香港に認められていた高度な自由を踏みにじる巨大な歯車が回り出した。コロナの嵐が吹き荒れる中の出来事である。この選挙の行方は11月の米大統領選と共に、私たちは目を離すことが出来ない。コロナ対策の最大の武器は国家間の対立を乗り越えた連携である。そのための究極の基盤は民主主義だと信じる。

 

◇安倍首相は「ほぼ収束した」と述べて緊急事態宣言を前面解除した。しかし今、この決断を疑わせる事態が頭をもたげようとしている。30日の新規感染者数は138人で、これは宣言解除後最多である。この数字には海外からの感染者も含まれている。検疫でも6人が認められたのだ。背景には世界の感染者1,000万人超、新興、途上国の猛威という現実がある。南海トラフ型の巨大地震、巨大津波が確実に近づいているが、私たちは現在コロナという地球規模の津波に見舞われている。この巨大津波は目に見えない故に緊張感と恐怖心を鈍らせている感がある。このコロナの津波は東京や横浜の歓楽街を直撃している。これらの都市で、ホストクラブの集団感染が発表されている。無知と欲望の現実の姿があらわになっている。コロナは夏に弱いという定説も疑わしくなった。何十億年という歴史をもつコロナは想像を超えてしたたかである。薬に対しても直ぐに耐性を身につけるから、暑さに対する耐性も既に得ているのかも知れない。

 

◇このような状況下の朗報はワクチン治験が国内で初めて開始されたこと。医療企業のアンジエスが大阪大と共同開発したもの。今年度中に20万人分の生産が可能だという。開発競争は国内外で激しい。コロナと人類の生存競争は続くが勝利の日は必至。一人一人の忍耐と協力がカギなのだ。(読者に感謝)

 

 

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2020年7月 1日 (水)

人生意気に感ず「日本語学校でコロナを語る。新たな局面に。インカの末裔を振り返る」

 

 

◇29日、日本語学校・日本アカデミーの授業は壮観だった。大講義場で大勢の留学生が一斉にマスクを付けた光景は前代未聞に違いない。言うまでも無くコロナウイルスのなせる業。授業のテーマも「コロナの嵐」と銘打って、今正に天を覆う未曾有の災害に集中した。日本語学校だから日本語を教えることが本来の目的であるが言葉を教えるだけでは真の目的は達せられない。言葉は文化である。特に私の授業はこのことと結びつけて言葉を理解させようとしている。コンビニで働くこの学園の生徒が誉められることを時々耳にする。日本の文化を教えられたことが物腰や目つきに現れるのかも知れない。

 

◇「皆さん、世界の感染者は1,000万人を超えました。第一の国はアメリカです。日本の感染が非常に少ない。このことが不思議に思われています。これらの原因を考えるのが今日の授業の第一の目的です」

 

 私の授業はこのような出だしでスタートした。「日本の感染者が欧米と比べて非常に少ないのは日本の文化の影響と言われます。きれい好き、ハグや握手よりお辞儀を大切にするなど」。頷く留学生の姿が見られた。

 

 私はコロナに勝つには人種を超え国境を越えた助け合いが必要だと強調した。色々な国から集まった肌の色や宗教も違う留学生にとっても良い勉強になったと思われた。

 

◇世界のコロナ戦線は新たな局面を迎えている。コロナの嵐は6月下旬猛威の中心をメキシコ以南の中南米に移し始めた。ブラジル、ペルー、チリなどで驚く程急増している。これらの国は貧しい層が多い。医療も十分ではない。私はかつてブラジルとペルーを訪れたがそこでは多くの貧しい人々のスラムが存在していた。「三密」を避けることが叫ばれているが、私が見た実態は密集・密接・密閉の極致であった。日本語学校でもふるさと塾でも私はペルーのひしめき合うバラックの光景を紹介した。インカの末裔たちはアンデスから下りて細な商店を営んでいた。このような所を現在コロナが襲っている。南半球の発展途上国は南米だけでなくインドやアフリカを含め膨大な人口を抱えている。コロナの嵐は現在そこにひろがりつつある。それは日本に跳ね返ってくる。スペインかぜの死者は5,000万人とも言われた。今回のコロナの感染者は2,000万人に達するかも知れない。悪夢である。(読者に感謝)

 

 

 

 

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