« 人生意気に感ず「佐野市市長と会う。生命誕生の朗報。感染900万人、回復者450人、回復者の抗体を活かす」 | トップページ | 小説「死の川を越えて」第244回 »

2020年6月27日 (土)

小説「死の川を越えて」第243回

 

 水野は早速副島に手紙を書いた。それは次のような内容だった。

「国を相手どって、国の隔離政策の違憲性を追及することが実際に始まったとは正に晴天の霹靂(へきれき)と驚いています。故万場先生は死の床で、人権闘争をやるべし、それは国を相手どった裁判のことだ、国は憲法違反を犯した、そして裁判は人間を回復するための闘いだと申しました。熊本の裁判は正に万場先生が言い遺したことだと思います。是非裁判の流れを知らせて下さい。この裁判は、きっと私たちも巻き込んだものになる予感が致します。私は湯川で貴重な体験をしました。それは、重ねて言いますが国の世話になっている、そして社会に迷惑をかけていることから国に言いたいことも言えない奴隷の心になっていたことです。そして、気付いたのは人権という人類の財産をハンセンの患者が形にして国家に示し、国の誤りを正す、それには人類の発展に貢献する偉大な意味があるということです。熊本地裁で始まろうとすることは正に人権を形にして国の誤りを正す事業に違いありません。こう思うと私はわくわくして草津の山奥にじっとしていられない思いです」

 しばらくして、副島から早くも返信があった。

「先生のお手紙から大きな勇気を頂きました。ハンセンの患者さんが国の誤りを正すことは社会への大きな貢献になるという点、誠に同感です。先ず、裁判の出発点とその目的をお知らせします。記録の閲覧制度を利用して熊本地裁から資料を取り寄せました。原告はハンセン病患者、又は元患者の人々で、被告は国です。事件名は「らい予防法違憲・国家賠償請求事件」です。「請求の趣旨」、つまりこの裁判で何を求めるかは次の通りです。「被告は各原告に対しそれぞれ金1億1500万円及びこれに対する本訴状送達の翌日から支払済みまで年5分の金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする」次いで「請求の原因」、つまりこの判決を求める理由と説明です。要約すれば、国は長い間、強制収容と終身隔離の政策を続け、その中で断種など甚だしい人権侵害を行った。それに対する国の責任を認め損害を賠償せよというもの。

これらについて、国とハンセンの患者は、口頭弁論でどのような攻防を展開するのか、僕は今からドキドキハラハラです。

 そちらへお邪魔した時の、皆さんが重監房にカツオブシを差し入れ、中の人はそれをかじって生き延びた話が頭にこびりついています。その人々が、この地の熊本の人々だったことも忘れられません。この裁判が熊本と草津という二つの地域と不思議に結びついていることにも改めて驚いております。いずれ、栗生園の方々も裁判に関わることになるのでしょうか。どうか、先生、昔の九州帝大の生徒を宜しく御指導願います」

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

|

« 人生意気に感ず「佐野市市長と会う。生命誕生の朗報。感染900万人、回復者450人、回復者の抗体を活かす」 | トップページ | 小説「死の川を越えて」第244回 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 人生意気に感ず「佐野市市長と会う。生命誕生の朗報。感染900万人、回復者450人、回復者の抗体を活かす」 | トップページ | 小説「死の川を越えて」第244回 »