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2020年5月31日 (日)

小説「死の川を越えて」第236回

 水野はここだと強く意識して立ち上がった。
「皆さん、これだけ盛り上がった力を今後に生かすために敢えて言わせて欲しい」
 水野は言葉を切り会場を見詰めて言った。
「これは私たちの闘いですぞ。私たちの人間回復のための闘いです。新しい憲法ができて、私たち虐げられた者が人間として生きる扉が開かれようとしているのです。この闘いは、この扉を開き、新しい道を創る闘いです。日本生活党の支援は有り難いが、闘いの主人公は私たちであることをしっかり踏ねば重大な誤りを犯します。この点を確認しようではありませんか」
 日本生活党にも異存はなく彼らは言った。
「闘いの本筋はその通りです。我々も目先の党利を越えて基本的人権の尊重という観点から協力したい」
 かくして大会参加者はこの闘いが自分達のものであり時代の大きな流れに乗った意義のあるものなのだという自覚を深めた。
 やがて、施設側との交渉に入ったがそれは凄まじいものとなった。激しい追及に施設側はほとんど回答らしい発言ができずただうなだれるばかりだった。重監房を追及する場面では会場から絶叫に近い声が飛んだ。
「自分で一晩でも特別病室へ入ってみろ」
「殺人罪で告訴するぞ」
 この状況は全国紙でも取り上げられた。
「狂死、獄死が続出、お菜はわずか梅干し一つ、光なき栗生園の内情明るみへ」
 このような報道は社会に強い衝撃を与え大きな反響を巻き起こした。
 このように草津栗生園の大会が全国に波及する中で、ある日栗生園の代表が求められて東京の多摩全生園で報告会を催すことになった。その中に水野高明と下村正助の姿があった。群馬の山奥の施設で想像を超えた牢獄が存在するという話は全ての人に強い衝撃を与えた。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

 

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2020年5月30日 (土)

小説「死の川を越えて」第235回

 昭和22年当時、施設側は患者たちに強圧的な姿勢を強めていた。それは、社会の治安の乱れを反映していたものと思われた。人権尊重の新憲法ができたとはいえ、それだけでは何も変わらない。既成の権威と価値観が崩れた上に、何でも自由といった雰囲気が人々の心を煽っていたのだ。栗生園の患者には静かになっていた重監房と所内の監禁所が再び動き出すように感じられた。

 患者たちが追求する問題には患者の労働に対するピンハネ、前年施行された生活保護法に基づく支給がなされないこと、そして何よりもうやむやにされてきた重監房の責任問題などがあった。追求が始まると、その他数々の問題が浮上した。今まで抑えつけられていた重しが外されたように、また、たまっていた不満が堰を切ったように流れ出し、治まりがつかなくなり、ついに患者大会が開催されることになった。

 大会を前に正助親子が水野を訪ねた。

「先生、大変なことになりました。政治が関係することで、一挙に全国的な注目を集めることになりそうですが、政治に利用されることで大きな誤りが生まれるのではないか不安です」

 正助がやや興奮気味に言った。それに水野が応えた。

「いや、正助君その通りだ。これは私たちの闘いであることに意味がある。昔、乗車拒否反対運動をやりましたな。あれには政治家は関わらなかった。小学生のように整列して行進した姿は、正に私たちの自発の姿であった。患者大会が誤った方向に進まないように冷静に見守らねばならない」

 患者大会で次のことが提案された。

「窮迫せる生活状態と園当局者の非人道的な仕打ちに関する具体的な資料をとりまとめ日本生活党に提出すること」

 大会幹部は、すべてを生活党に任せればうまくいくと考えている雰囲気であった。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年5月29日 (金)

人生意気に感ず「県立図書館競技委員の役割。小学生一人一台のパソコンと新しい教育。カイロ大卒は嘘か」

 

 

◇県立図書館協議会委員の公募に応募した。動機等を800字に書き一次の書類審査をパスし、昨日は二次の面接日だった。私は少年の頃から現在に至るまで県立図書館の利用者である。だから県立図書館には発言すべき意見を持っている。県会議員の時は図書広報委員長として図書館の運営に関わった経験もある。県行政は県立図書館を重要視していない感がある。これはトップの文化や教育に対する姿勢に関わることだ。県立図書館は知の砦であり、文化の城であり、群馬県の顔である。羅針盤を持たない船で大海を漂うような現代に於いて県民の心のよりどころでもあるべきだ。最後の奉公としてこの考えを進めたい。これが応募の動機の総論部分である。県は改正された条例に基づいて協議会を作ろうとしている。採用は二人。図書館は面白い所。もっと本当に有意義な場所にしたい。

 

◇県立図書館の改革の方向の一つとしてインターネットやパソコンを充実させることがある。コロナウイルスを機に県は市町村と連携して児童生徒一人に一台のパソコンを実現しようとしている。持ち運び可能な端末は自宅でのオンライン学習を可能にする。新型コロナウイルスは現在収束しつつあるが第二波は必ず来るだろう。それは今年の秋の可能性が高い。自宅でのオンライン学習の必要性は迫っている。

 

 新型コロナウイルスは社会を大きく変えようとしているが子どもの教育の世界もこのように変えようとしている。コロナ後の新しい社会の足音が近づいている。

 

◇本県の小中学生のパソコンの利用状況は5.9人に一台で全国39位である。オンライン学習にはデメリットも伴うだろう。とまどう子どもたちの姿が想定される。群馬大学の調査では不慣れな端末操作に疲労する子ども達のことが指摘されている。特に小学校低学年生についてそのことが懸念される。オンライン学習の普及は子ども達の世界を変えてしまう可能性をはらんでいる。私は自分の小学生時代の活気に満ちた教室を思い出す。何十年振りの同窓会で話題になるのは必ずあの頃の涙と笑いの光景である。コロナ後の世界として守らねばならぬものも多い。

 

◇都知事選を目指す小池知事に文春砲が向けられている。カイロ大学を首席で卒業したというのは嘘だというのだ。コロナを乗り切るしたたかな女性はどのように都知事選を闘うのか。(読者に感謝)

 

 

 

 

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2020年5月28日 (木)

人生意気に感ず「ほぼ収束した日本、しかし世界は。貧民街の地獄。三四郎さんの句碑。京アニ殺人逮捕」

 

 

◇新型コロナウイルスの状況は全世界で一体となって変化している。私たちは日本の状況を知り同時に世界の状況を知り、そしいてこの両者の関係を知らなければならない。

 

 先ず日本であるが、25日に緊急事態宣言が全面解除になると堰を切ったように経済活動が再開し、株価が大幅に回復した。WHO(世界保健機関)は日本の対策が「成功」したと評価した。一方でWHOは中南米・南アジア・アフリカで感染拡大が続いていると指摘した。このことは日本の「成功」がこれらの地域の感染状況の脅威に晒されていることを意味している。

 

◇「ほぼ収束」と首相が強調しWHOも「成功」と評した日本の現状はどうか。26日、国内感染者は10人、死者は4人であった。

 

 WHOが感染拡大と指摘する中南米の中で、今はブラジルに注目する。日本と関係が深い国であり、この国の感染の深刻さが政治と社会状況(国民性も含めた)に深く関わっている点は日本の成功を浮き彫りにさせるからだ。ブラジルの感染者は米国に次いで世界二位。背景には政治の乱れと社会の貧困がある。大統領は経済を重視し感染予防に無頓着。ファベーラと呼ばれる貧民街は急斜面に小さな家が凄まじい程に密集し、正に「三密」の極致。衛生環境は極度に悪く、死者の急増に墓地が追いつかない。

 

 私は政治が人命を軽んじ、国民の習慣が悪いところの例としてブラジルを見ているが、南半球にはこのような国や地域は非常に多い。アフリカの各地はブラジル以上に深刻である。南アジアやインドも大変である。日本は「成功」した国として国内を守ると共に世界に貢献しなければならない。

 

◇先日、藤田三四郎さんの句碑が届けられた。「定位置にルーペとペンと春ごたつ」。藤田三四郎さんは昨年末92歳で亡くなられた。天国で地上のコロナの状況をどう見ているだろうか。隔離され視力む失ったなかで文筆活動を続けた。それを知る人は「定位置」、「ルーペ」、「ペン」が格別な意味を持つことを直ちに理解する。楽泉園の一角に建てられた新しい碑が藤田さんの生涯を静かに語っている。

 

◇京アニ放火殺人容疑者が、発生10ヶ月後の27日逮捕された。36人が死亡。容疑者は全身やけど、5回の皮膚移植。未だ自力で身体を起こせない。このような状態での逮捕は前例がない。今後取り調べが適切に進められ裁判が可能か注目を続けたい。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月27日 (水)

人生意気に感ず「緊急事態宣言の全面解除とその課題。“田中正造”無償配布の反響。ワクチン実現の足音」

 

 

◇政府は25日、緊急事態宣言を全面解除した。中国を別とすれば世界に先駆けた快挙である。宣言は4月7日に7都道府県に出され、同16日に全国に拡大されていた。安部首相は「わずか1ヶ月半で流行をほぼ収束できた。まさに日本モデルの力を示した」と強調した。最大の課題は全面解除を維持できるかどうかだ。この秋にも第二波の襲来が懸念されている。

 

 日本の快挙を世界が「なぜ」と注目している。私は最大の要因は日本人の国民性と日本の文化だと思う。政府は「新しい生活習慣」を掲げているが、それはほぼ従来の日本人の習慣と同様のものである。コロナ後の社会は日本人の守ってきた生活習慣が一層発展し世界に広がると思う。

 

◇第二波第三波が懸念される中で期待される救世主はワクチンや治療薬である。世界の製薬会社が必死になっている。その成果を真に人類の共有財産にしなければならない。薬の早期開発とその利用のために最も大切なことは世界が力を合わせること。米中は人類の大義のために力を合わせるべきだ。「アメリカナンバーワン」及び「中国ナンバーワン」を乗り越えてこそ超大国といえる。新型コロナウイルスは全人類に大きな試練と課題を与えた。

 

◇毎日新聞連載の「田中正造」が静かな反響を生じている。既に連載された分をコピーし、小冊子にして無料配布始めたら意外なことが明らかになった。数百部を配布した中で多くの感想が寄せられたが、そこから今まで表に現われなかった田中正造ファンが多くいることが分かったのである。こういう人たちに対して今日のコロナウイルス状態が影響していることは否定できないと思われる。

 

 寄せられた反響の一例を紹介したい。前橋市のOさんは小型トラックで突然私の前に現われ驚かせた。運転席の横腹に「田中正造のように信念を持って今を精一杯生きていこう」と大書されているのだ。連載の副題は「よみがえる田中正造」であるがOさんの姿は、百年の時を超えて「よみがえった」田中に動かされたかのようだ。

 

◇新型コロナウイルスを予防するワクチンの開発が世界で本格化している。コロナ大戦争に強力な援軍の足音が聞こえるようだ。世界で120種以上のワクチン研究が進み10種類が臨床試験に入っている。日本でも塩野義製薬は来年秋を目標に1000万人分のワクチン供給を目指している。それまで耐えねばならない。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月26日 (火)

人生意気に感ず「内閣支持率急落と日本の奇跡。コロナ後の社会と日本国憲法」

 

 

人生意気に感ず「内閣支持率急落と日本の奇跡。コロナ後の社会と日本国憲法」

 

◇新型コロナウイルスは一年から二年は続くというのが大方の専門家の意見である。連日報道機関が報じているようにコロナ禍は社会のあらゆる面に深刻な影響を及ぼしている。それは今まで表に出なかった社会の矛盾を一挙に表面化させた。特に社会的弱者が受ける打撃は大きい。コロナ対策で最も重要な役割を担うものは政治である。従って政治のトップである内閣は極めて厳しい批判の矢面に立たされるのは当然だ。

 

 内閣の支持率が急落している。毎日新聞の23日の調査では前回(6日)と比べ14ポイント下落して27%になった。これは多くの国民が混乱しパニックに陥っていることと無関係ではないと思う。この数字は回復するに違いない。日本の感染状況は世界の中で奇跡的と言われている。日本時間で23日の死者の状況はおよそ米国96,000人、英国36,500人、イタリア32,600人、スペイン28,600人、ドイツ8,240人、日本825人等である。この数字はそのまま受入れることは出来ないが日本は世界から注目されるに値すると思う。その理由は日本の文化、国民性に負うところが大きいのである。

 

 コロナ後は日本も世界も一変するに違いない。長く続いた秩序は制度疲労を起こす。そして改革には限度がある。世界の歴史を振り返れば変化に対応できなくなった場合、多くの国は革命によって乗り越えた。75年前の敗戦に伴う新憲法の成立は一種の革命であった。新型コロナウイルスは追い詰められた社会に革命的な変化を余儀なくさせると思われる。その時こそ日本国民の真価が問われるに違いない。

 

◇私はコロナ後の社会再建の基本は日本国憲法であると信じる。成立当初、余りに理想的と言われたが幾多の試練に耐え現実的な輝きを発揮するようになった。時代の変化に対応出来ない点は改正の必要もある。しかし、基本的人権の尊重、平和主義国などの基本原則はしっかり踏まえた上でのことである。

 

◇日本の感染者が少ない要因として、マスクや咳エチケット、ルールを守るなどの国民の習慣が大きいと言われる。今後懸念されるのは外国からの入国制限が緩和の方向に動くことだ。そうなれば日本の国民性や習慣が傷ついてします。現在、南米やアフリカにコロナが爆発的に広がりつつある。イスラム圏も不気味である。日本は緊急事態宣言が解除されつつあるが、世界からの入国は大きな脅威である。このような状況と共に第二波が迫っている気がする。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月25日 (月)

人生意気に感ず「世界の連帯と超大国の対立。英ジョンソン首相の変化」

 

 

◇WHOがコロナ対策で今世界で最も求められているのは世界の連帯であるがこれが進んでいないと訴えた。その典型例がアメリカと中国の対立である。私は歯がゆさと共に怒りを感じる。かつての米ソ冷戦時代、天然痘の猛威に対し米ソは力合わせて乗り越えた。2014年のエボラ出血熱の時は当時のオバマ大統領が国際的な協力を呼びかけ世界はこれに応えてエボラウイルスを押さえ込んだ。このような国際的連帯に逆行するような動きを示すのがトランプ大統領である。トランプが叫ぶ「アメリカナンバーワン」は世界のことより先ずアメリカということだからこの連帯の動きに反するものだ。この動きは目前の大統領選に大きく影響するのは必至である。私はこのブログで時々トランプは敗北するだろうと書いたが最近の世論調査はトランプの敗北が現実的であることを示している。偏狭なナショナリズムに通じる「アメリカナンバーワン」はアメリカの大義とアメリカの建国の精神に反するものだ。アメリカ国民はコロナの襲来の中でこのことに気づいたに違いない。

 

◇イギリスのジョンソン首相の動きに注目している。この人はコロナに感染し、一時は生命の危機に立たされたという。最近の彼の変身ぶりはコロナ感染と無関係ではないと思われる。EU離脱を強引に進めた彼の背景にはイギリス第一主義の思想があったと思われる。その思想の中心にあるものはサッチャー以来の個人の自由、企業の自由を尊重して、その規制(制限)に反対する政策である。最近のジョンソン首相は「社会というものが存在する」と発言して世界を驚かせた。これはコロナを乗り越えるには社会の連帯が必要だというもので、サッチャー以来の「個人の自由にまかせればよい」、「市場の競争に任せればうまくいくから規制は少ない方がよい」という思想に対立するものだ。ジョンソンは賢明な態度を選択したと私は感心している。

 

◇中国共産党が建国以来の試練に立たされている。アメリカと覇権を争う超大国になって、かつての中国とは異なる世界への責任が求められるようになった。そこで必要なのは世界が認める「大義」である。大義の中心として求められることは先ず「隠さない」ことだ。事実をオープンにしなかったためにコロナが全世界に広がったという批判に習主席は応えない。経済が大きく行き詰まっている。中国はこの危機をどう乗り越えるか。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月24日 (日)

小説「死の川を越えて」第234回

「お休みになったようです。そっとして差し上げたい」

 こずえが手を離そうとした時、万場老人の手に力が甦った。うっすら明けた口から言葉が漏れた。

「人権闘争とは、裁判のこと。国を相手の裁判じゃ。水野さん、あんたの出番じゃ。国は憲法違反を犯した。人間を回復するための闘いじゃ。頼むぞ、天国で見ている」

 老人の首ががっくりと下がるのが分かった。

「万場先生の遺言、この水野が確かに受け止めましたぞ」

 万場老人の顔は今までになく安らかであった。

 

 人権闘争の狼火(のろし)

 

 敗戦、そして米軍による占領、これは正に日本にとって開闢以来の出来事であった。歴史の新しい頁が開かれたのだ。昭和21年の冒頭、1月1日、天皇の人間宣言が行われた。これは神国日本の否定、そして民主国家へ踏み出す第一歩に他ならなかった。この年3月政府は憲法改正草案を発表、続く4月これを一つの重要テーマとした衆議院総選挙が行われた。このような怒涛の変革の波は草津のハンセン病患者たちも呑み込んでいった。

 ハンセン病患者にも選挙権が認められることになった。患者たちの一票一票は候補者にとっては当落を左右する貴重なものであるから、にわかに栗生園に政治家が訪れることになり、ここにハンセン病患者の実態が生々しい政治と結びつくことになった。くすぶっていた不満に候補者たちは当然のことながら耳を傾ける。候補者が有権者の話を熱心に聞く機会は、選挙の場が最高である。患者たちは候補者から、励まされて俄然燃え上がった。

 これが人権闘争に火がつくことにつながる。それまで極めて社会的に弱い立場のハンセン病の人々と、これを支配する施設側という構造が一種の治外法権的環境を作り出し、そこには追求されるべき多くの不正が蓄積され渦巻いていた。それに対する抵抗運動は人間の回復を目指すものであり、人権闘争に他ならなかった。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年5月23日 (土)

小説「死の川を越えて」第233回

こずえは怯えた表情でそっと言った。

「御隠居様はみなさんに会いたいと言うのです。もう大きな声は出せない状態です」

 人々は、万場老人の回りを囲んだ。老人が死に瀕した状態にあることは明らかであった。こずえが老人にそっと手を添えて言った。

「御隠居様、皆様がおいでです」

 万場老人はうっすらと目を開けた。微かな視線が人々を捉えると、それが熱を帯びるのが分かった。老人の視線に意識が宿ったのだ。老人は低いかすれた声で言った。

「おおー、正助、さやさん、水野先生、権太ではないか。ああ、正太郎もおる」

 老人はこれだけ言うと力が尽きたように、また目を閉じかけた。

「先生、正助です。しっかりしてください。先生は湯の川で、先日人権闘争と申されました。何のことか教えて下さい」

 この時、万場老人はこずえの手をしっかり握って最後の力を振り絞るようにして言った。

「水野先生、重要な事実が二つあります。一つは長いハンセン病患者の虐げられた歴史です。人権が糞尿のように汚された時代です。もう一つは最高法規によって、つまり憲法によって人権が保障されることになりました。この二つが示すことは、闘いによって二つを結びつけねばならぬことです。それが人権闘争です。私が皆さんに託すことは、この闘争のことです。こずえ、金庫のことは、金庫のことは頼むぞ。軍資金に。リー先生の遺言だぞ」

 万場老人の声が小さくなった。その時である。法学士水野が老人の上に身を乗り出すようにして、老人の耳に口を近づけて言った。

「万場先生、水野です。人権の闘い、よく分かりました。人権の闘いは万場先生の人生の歴史だった。私も同じでした。しっかりと受け止めましたぞ。どうかご安心下さい」

 万場老人の口元にうっすらと笑みが浮かんだ。万場老人はわずかに手を伸ばし、虚空をさぐる仕草で何かを言おうとしている。こずえが耳を近づけると

「最後に聞いてくれ」

 老人はそう言って、力が尽きたように目を閉じた。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年5月22日 (金)

人生意気に感ず「黒川検事長の賭けマージャン。WHOの決議の意味。衆院での参考人の意見」

 

 

◇東京高検の黒川検事長が賭けマージャンをしていたという報道が社会に衝撃を与えている。賭けマージャンは刑法が犯罪行為(賭博罪)と定めるもの。検察は犯罪の起訴の権限を握る機関である。犯罪を取り締まる機関が犯罪を行っていると非難の声があがっている。週刊文春が大きく報じた。信じがたい軽薄な行為。恐らく日常的に行っており罪の意識が麻痺していたのだろう。規範意識が薄れ、享楽と欲望に走る人々の一員になっている。緊急事態宣言下で「三密」を避けねばならない時に三密の状態のテーブルで賭博とは。腐敗した行政、堕落した権力の象徴と言わねばならない。

 

WHOが重要な決議を採択し幕を閉じた。その重要な点はワクチンの公平利用とそれを貧困国が使えるように訴えていることだ。世界的な製薬会社は新型コロナウイルスに効くワクチンの開発に必死になっている。その日は近いと言われる。最も望んでいるのはアフリカなどの貧困国である。そこでの爆発的な感染は先進国に及んでくる。コロナ対策では世界は一つであり、ワクチンは正に「公共財」なのだ。企業は社会的存在であり、社会的な利益を追求することが基本であるべきである。コロナ禍の下でのWHOの総会は極めて重要である。テドロス事務局長が中国寄りであることが批判されている。WHOへの拠出金を減らそうとしているトランプの姿勢も偏狭である。全世界が「緊急事態」にあるがここで最も求められるのは全世界が協力することである。

 

◇20日の衆院予算委で参考人がコロナウイルス対策で述べたことは非常に重要である。参考人の中心は政府の諮問委員会会長の尾身氏。

 

 尾身氏は次の感染拡大に備える上で検査、医療の強化が重要で、そのカギは地方の衛生研究所が握ると表明。10年前の新型インフルエンザ流行時の教訓が活かされないのは政治の責任と暗に述べた。また尾身氏は高齢者施設で院内感染を防ぐために防護具の供給などで財政支援が必要と表明した。特に私が注目したのは質問者が米中の対立及び日本の役割について質問した点である。尾身氏は政治的対立があってもヘルスの分野では協力が必要で日本はそのためにリーダーシップを発揮すべきと述べた。この点について、私は群馬県日中友好協会会長として同様な日本の役割を訴えている。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月21日 (木)

人生意気に感ず「第二波は必ず来る。薄氷の上の日本。WHOは訴える。ワクチンは世界の公共財」

 

 

◇緊急事態宣言が解除され幹線道路が急に賑やかになった。ホッとした空気が広がり出した。しかし、心配なのは第二波第三波である。かつてのスペインかぜをはじめウイルスの歴史がそのことを教えている。

 

 私は毎日世界各国の感染者・死者の状況を見ているが、日本は極端に少ない。この事実には重大なメッセージが潜んでいる。「楽観するな」、「元に戻るぞ」ということだ。現に北海道には第二波が押し寄せている。今回のウイルスの特徴は感染しながら無症状や軽症の人が多いこと。楽観し油断すると無症状や軽症が目を醒まし第二波に繋がる恐れがある。

 

 日本がこれまでうまくいったのは国民の自粛努力によることが多い。しかし医療体制や検査体制が不十分であることを踏まえれば私たちは薄氷の上にいる。私たちはこれまで必死の努力で時間稼ぎをした。それを無駄にしてはならない。医療を立て直し検査の網の目を充実させねばならない。

 

 外国の失敗例に学ぶべきだ。ヨーロッパではイタリアで感染爆発が起きた時、周辺諸国はその波及を防げなかった。EUという体制下で各国の往来が自由だったことも大きい要素だろう。日本は海に囲まれている。この自然の利点を活かさねばならない。

 

◇振り返ってクラスター(小集団感染)は重大であった。病院や福祉施設が大変な存在だった。緊急事態宣言が解除され企業活動が活発になれば企業がクラスターの源になる恐れが増す。それを防ぐため、従業員が定期的に検査を受けることが重要になる。山本知事は改めて県内の企業に呼びかけるべきだ。企業としてもその存続に関わることだから呼びかけには応じる筈だ。

 

◇ウイルス戦は人類の存在がかかる全地球的出来事だから世界が手を繋がねばならない。だからトランプがWHOに反対し拠出金を出さないと言い出したことは世界の流れに逆行する。アメリカは自ら首を絞めることになる。

 

WHOはワクチン開発で国際的連帯が必要だと訴えた。「世界はほとんど結束できていない。ワクチン開発が出発点になる」と表明した。結束して開発したワクチンを「世界の公共財」としなければならない。その時は近い。現在は時間稼ぎの時。公共財はアフリカなど発展途上に重点的に使うべきだ。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月20日 (水)

人生意気に感ず「検査庁法改正と首相の視線。館林市長と会う。巨大地震の前触れか」

 

 

◇検察庁法改正案の今国会成立が見送りとなった。世論の強い批判が政権を動かしたのは異例といえる。民主主義の勝利という声も聞かれる。私も同感である。ポイントは検事総長や検事長らの定年を内閣が必要と判断した場合に延長できる特例を設ける点にある。

 

 検察は起訴の権限を独占する機関。内閣が必要と判断すれば、この起訴・不起訴に影響を与えると国民は懸念する。かつて田中角栄が起訴されたが、この時起訴の権限を握る検察のトップを政府の判断で動かしたら事態は変わった可能性がある。検察権の行使は裁判所と同様に政治からの独立が求められる。三権分立は民主主義の根幹を担う。三権とは立法・司法・行政のことで、検察は行政の一環であることに難しさがある。つまり行政組織であるが、行政のトップたる内閣に支配されてはならないのだ。強気の安倍首相が世論に押されて一歩退いた感がある。マスクから除く首相の目が心なしか弱く感じられる。マスクがコロナ対策であることを考えれば、首相の視線の変化もコロナと無関係とは言えない。

 

◇19日、館林市役所で須藤市長と会った。かつて県議会で私と新型ウイルス問題で力を合わせた仲である。その時、スペイン風邪を例にとって警鐘を鳴らしたことが懐かしい。「心配したような状況になりましたね」と語りあった。今でいう新型ウイルスであるスペイン風邪は第二波第三波が襲来して本県に大きな被害をもたらした。今回の新型コロナウイルスについても同様なことが懸念される。緊急事態宣言が解除された直後の館林に至る道路は混雑していた。館林市役所内は市民で賑わっていたが見渡す限り職員の前はビニールの幕が下がり異様な光景だった。

 

◇館林はかつて田中正造の拠点でもあった。今でも田中正造記念館は存在感を発揮している。この記念館主催で、私は5月に田中の講演を予定していたがコロナのため中止となった。今回の市長訪問は今後田中に関する運動で協力を求めるためである。快諾を得た。実は山本前橋市長とも連携する予定。かつて龍さんは知事選に挑戦したが館林でのスタートは田中が拠点として鉱毒と戦った雲竜寺であった。

 

◇最近地震が異常に多い。19日は岐阜県・長野権及び宮城県・福島県でそれぞれ震度4であった。特に岐阜・長野で急増している。太平洋プレートの影響だと言われる。巨大地震の前兆かと不気味である。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月19日 (火)

人生意気に感ず「書斎のカッパの少女。文化会館などの解除。学校再開の意義」

 

 

◇私の書斎は私の戦場である。私は毎日午前0時には起きて原稿や読書に取り組む。この空間に最近、私の心を癒やす存在が出現した。カッパの少女の座像である。カッパの女の裸体といえば小島コオの絵を思い出す。目の前の少女もそれに劣らず魅力的である。赤城の山中のある工房で手に入れた。私はカーパちゃんと名付けた。かつては深夜のこの書斎を愛猫トコが訪れてカーパちゃんの位置にうずくまっていた。トコは天国でこの光景をどう見ているだろうか。

 

◇休業要請が一部解除される。警戒度を現状の4から3に引き下げたことによる。具体的には文化会館、図書館などの文化施設、及び古書店、レンタルビデオ店、スーパー銭湯などの商業施設だ。私個人としては図書館と総合福祉会館の動向が気になっている。図書館が使えないことは資料の関係で大変不自由している。また福祉会館は「ふるさと未来塾」が開けない点で困っていたのだ。これらの施設も近く利用できるのでほっとしている。

 

◇6月1日に学校が再開される意義は大きい。ウイルスの拡大がこのまま抑制されれば、県は6月1日にも段階的に県立学校を再開する方針である。県内の学校は地域の実情に基づいて再開の時期と運用を異にしている。前橋などは県の方針を受入れて6月1日から再開の予定である。

 

 学校教育は様々な課題を抱えているがコロナによる休業は学校の問題を考える良い機会になったといえる。学校嫌いな生徒も学校の存在が生活の基本になっていることを痛感したかも知れない。学力は単なる知識ではなく生きる力を培うためのものということをコロナの襲来の中で教師も父母も学んだのではないか。コロナとの戦いは政治や文化や生活習慣と深く関わっている。机の上の知識偏重の感があった学校教育は社会の現実の中に活きた教材が限りなく存在することを学んだに違いない。

 

 再開された学校では新型コロナウイルスから最大限の教訓を引き出すべきだ。子供たちは長い人生でウイルスを含め多くの災害に遭うはずだ。今回のコロナウイルスは彼らにとって貴重な体験になるだろう。学校再開を教育の新たな地平線に向けての第一歩にすべきだ。

 

◇16日現在、県内は10日連続して感染者の確認なしである。これは本物なのか心配だ。経済再生相は「全国的に気の緩みがある。再び大きな流行になる」と警告した。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月18日 (月)

人生意気に感ず「緊急事態宣言解除と本県の課題。県議会の質問時間短縮。藤田三四郎さんの歌碑」

 

 

◇14日に本県を含め39県につき緊急事態宣言が解除された。その効果は直ちに現れた。国道17号の車の数はにわかに増え人体に例えれば血液が急に動脈に流れ出した感がある。自粛要請により企業は窮地に追い込まれ外出を控えた人々はストレスがたまりこちらも限界に近い状態だった。解除により「三密」が増えることは避けられない。その結果一時的に感染者は増えるだろう。山本知事は本県の解除につき、例外、つまり解除しないよう政府に求めている。難しいところだ。地方の力が試されている。知事はまだ油断できないと危機感を県民に伝えようとしている。

 

◇県内の感染確認なしが14日現在連続8日間続いている。これは県民の活動自粛の成果に違いない。私は「解除」により逆戻が生じることを恐れる。本県が東京及び埼玉と密接に繋がっていることを重視すべきだ。本県には感染を押さえ込むために重要な課題が多くある。

 

◇県議会の役割は非常に重要である。22日に定例会が始まる。ここで注目されることは質問時間の短縮である。一人当たり20分短縮するといおうが、私は疑問を感じる。「県難」の時にあたり、今こそ県議会は存在感を示すべきだ。

 

「三密」回避を工夫しながら各議員は最大限役割を果たすべきではないか。二元代表制の下、知事と議会は県政を進める上で車の両輪であるが、現状は知事の動きが目立つ一方で議会の動きは見えにくい。県議会の動きは県下各市町村議会に大きな影響を与える。今後、感染爆発が生じた場合、県議会は十分な使命を尽くしたかが問われるだろう。

 

◇15日の上毛新聞で私のことが報じられると凄い反響があった。朝7時代から夕方まで電話が続いた。「田中正造」を毎日新聞に連載し、その一部を小冊子にして無料で配布するという内容である。この記事に私の携帯番号が記載されたことが反響に繋がったと思われる。

 

 田中正造の政治姿勢については今日の政治家が学ぶべきことが非常に多い。多くの県民が時を超えて田中に強い関心を抱いていることを痛感した。私の携帯は080-1162-0407である。

 

◇先日亡くなられた藤田三四郎さんの歌碑が栗生楽泉園内に建てられた。「定位置にルーペとペンと春ごたつ」。凝縮の文字の中に深い意味が込められている。隔離の空間から発せられた三四郎さんのメッセージを噛み締めている。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月17日 (日)

小説「死の川を越えて」第232回

 この時、正助が言った。

「私が昔、万場先生を訪ね、ここからハンセン病の光が出ていると聞いた時は不思議な気持ちでしたが、今、その大きな意味が分かってきた気がします。私たちはこれからどうしたらよいのでしょうか」

「うむ。思い出すぞ。あの時、お前は湯の川地区の歴史を知りたいと申した。なぜかと訊くと、お前は人間として生きたいからと言ったな。虐げられた人が全て人間として生きられる時代を迎えたのじゃ。お前との対面はわしの心に新しい息吹を吹き込むことになった。あれが、時代を超えてここに繋がっているとは想像もしなかったことじゃ。じゃが、今、水野先生が言われたとおり、全てはこれからの努力にかかっておる」

 万場老人はそう言って、湯川を眺め、それから天を仰いだ。

「では先生、これからどうしたらよいのですか」

 正助が再び同じことを訊いた。万場老人は正助の顔を正面から見据えて言った。

「よく聞いて欲しい。わしはもう長くない。天命を感じるのだ。今日、皆さんとここへ来たのも、それを確かめる意味があった。わしはこの湯川を見て、そしてこの音を聞いて、この湯川がわしの天命を受け入れていることを知った。そして、水野先生や正助の声を聞き、わしの心は定まった。この死の川を前にしてお前たちに後事を託したい。人権闘争じゃ。この死の川が証人じゃ。死の川は妥協を許さぬぞ」

 人々は言葉もなく万場老人の青ざめた白い表情を見詰めていた。そして人々は改めて激しく流れる川の音に耳を傾けた。折からの雨で水かさを増した湯川の轟々という音は、人々を励ましているように聞こえた。

 それから2週間程過ぎたある日、万場老人の緊急事態が人々に伝えられた。水野高明、正助親子、こずえ、そして権太が駆け付けた。

 こずえが離れた所でそっと病状を告げた。それによると、数日前に肺炎を起こし、医師によれば高齢のこともあり、危ない状態だという。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年5月16日 (土)

小説「死の川を越えて」第231回

「それからお前に頼みがある。わしは改めて湯川を見たくなった。時代の変化は余りに急じゃ。死の川は新時代を迎え、わしらに何かを訴えているに違いない。それを知りたいのじゃ。これはわし一人の問題ではない。わしらの将来に関わることじゃ。よいか、水野先生、正助たちにも声をかけてくれ」

 万場老人の顔には何か思いつめたものが現われていた。こずえが皆に声をかけ、万場老人の体調も考えて実行の日が決まった。万場老人は杖をついて踏み出そうとしたが、体がふらつき困難そうであった。そこで病院から車イスを借り、正太郎が押すことになった。万場老人の家は、下地区の中ほどにあった。北の正門までのだらだら坂はかなり長い。

 湯川の渕に着いた時、人々は余りの変わりように一斉に声を上げた。

「わあー。これが私たちのいた・・」

「ここがハンセン病の光が発する所か」

 昭和16年の県との契約により全ての建物は撤去されていた。それを十分承知の人々も草で荒れた光景を目の前にして改めて衝撃を受けた。強者どもの夢の跡の感があった。

「見よ。ここがわしの家。生生塾じゃった」

 万場老人が絞り出すような声で叫んだ。そこにはかつて、安田大臣が松下村塾と言った面影はかけらもなかった。

 万場老人の声と呼応するように湯川の流れが響いている。湯川の音に耳を傾けながら老人は続けた。

「ここからの撤退には、我々が国家の政策に屈した感があった。しかし、時代は大きく変わった。新憲法は人間の尊重、人間の平等を強く打ち出した。今、改めてこの湯川の渕に立つと、この音は勝利の声に聞こえる。水野先生、どう思いますか」

「いや、御老人。よくぞ申された。同感です。日本国憲法がこの死の川に新しい命を吹き込んだと申しても過言ではありません。全ては天が与えた大きな可能性を今後いかに生かすかにかかっています」

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年5月15日 (金)

人生意気に感ず「緊急事態解除。28歳の力士の死。映画・大列車作戦。危うい中国の行く手」

◇コロナウイルス対策に関する新たな動きである。政府は14日、47都道府県に発令されていた緊急事態宣言につき、本県を含む39県で解除を決定した。4月7日に7都道府県に発令し、16日に全国に拡大していた。政府は今回の解除を機に制限してきた社会経済活動の段階的再開を図る考えである。金縛りにあっていたような日本の社会が動き出す。今回の決定は感染状況の好転によるが、解除によって状況が逆戻りすることが心配である。

 だから、解除後の感染急増対策が非常に重要である。そのために政府は、人と人の距離確保、マスク着用、手洗い等を基本とする「新しい生活様式」の定着を求め特定警戒都道府県への人の移動やクラスターが発生した場所への外出自粛を要請する。本県は特定警戒都道府県の都と埼玉と近い。これらの地域と交通の大動脈で結ばれている。従って新幹線、高速道等によってコロナウイルスが持ち込まれる恐れが高い。これを防ぐために本県独自の対策に知恵を絞らねばならない。

◇28歳力士の死に衝撃を受けた。大相撲の勝武士(しょうぶし)さんである。医療機関が逼迫し当初受入れ先がなく手当が遅れたらしい。持病の糖尿病も病状悪化に関係したのではないか。職業の特性としてお相撲さんは糖尿が多いといわれる。全国最年少の死は悲しいと同時に不気味である。不気味なのは若く持病があるとはいえ体力抜群の死だからである。変異したウイルスの出現を想像してしまう。

◇映画「大列車作戦」に感動した。バートランカスター主演、舞台は第二次世界大戦末期のパリ。連合軍によるパリ解放が迫る中でナチスに対するレジスタンスが激しく展開されていた。ピカソ、ルノアール、セザンヌなどの大量の名画がドイツに運ばれようとしていた。「絵はこの国の一部、フランス文化の神髄、私たちの理想であり誇りです」美術館の女性美術史は闘士たちに必死で訴えた。列車を操作するフランス人たちはドイツ軍の目をくらませ列車の方向を変えるために秘術を尽くす。芸術文化の大切さとそれを守る人々の姿は時と国境を越えて胸を打つ。

◇中国経済が動き出したがはらはらの状況の中どう進むか先行事例として世界が注目する。感染が再び広がる恐れがあり、輸出先の世界が感染の中にある。22日に全人代が開かれる。一帯一路もコロナに塞がれている状況である。(読者に感謝)

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2020年5月14日 (木)

人生意気に感ず「トヨタ、ホンダは壊滅的。コロナは人間の心に警告を。トランプは敗れるだろう。コロナ後の世界は」

 

 

◇コロナウイルスの影響は日本の企業を直撃している。日本を代表するトヨタやホンダが凄い減益である。非常事態宣言を出して企業に自粛を求め、国民に外へ出るなと呼びかけているのだから車が売れないのは当然である。状況は世界を覆っているから世界的規模で車は売れない。トヨタは営業利益が前期比8割減の予想だという。ほぼ壊滅である。全ての自動車産業が同様に違いない。自動車産業はおびただしい下請け産業が部品を作っている。これら中小企業が受ける打撃はもっと酷いはずである。そこで働く人々、その家族の惨状は筆舌に尽くしがたい。私は長いこと日本製鉄(旧新日鉄)の株主であるがここもついに大幅な赤字に転落した。車が売れなければその原料となる鉄も売れないのだ。

 

◇第二次世界大戦と同様の状況だとよく言われる。しかし私は楽観的である。私は子供の頃、戦争の廃墟、瓦礫を体験した。今は瓦礫ではない。トヨタもホンダも日鉄も形は健在でただ機能していないだけだ。コロナが去れば息を吹き返すことは間違いない。しかし、コロナ後の日本と世界は一変するに違いない。コロナの打撃を最も敏感に受け止めたのは私たち人間の心だと思う。享楽に酔い、欲望に流される生活に慣れ、社会公共に尽くすという志を忘れ骨抜きの状態だった。社会を支えるものは人間の心であるからこれが変われば社会が変わる。先ず変わるのは政治でなければならない。コロナの打撃を世界で最も深刻に受けているのはアメリカである。私はアメリカが大きく変化すると思う。その契機は11月の大統領選である。アメリカ第一主義という狭い価値観がアメリカの民主主義を狂わせ世界の指導者の足下を崩した。南北戦争はアメリカを分断させる危機だった。今回のトランプ状況は南北戦争以来のアメリカ分断の危機である。トランプは敗北し、民主党が勝利すると思う。私の願いでもある。

 

◇16日(土)は、毎日新聞の「田中正造」掲載日である。ゴールデンウィークのため一週ずれた。既掲載分を小冊子にして無償配布している。ノンフィクションに私のコメントを加えている。意外な好評が広がっている。田中の神髄はその文明観である。真の文明は自然を壊さず人を殺さずと訴えた点は極めて今日的でコロナに心があれば同じことを人類に警告しているだろう。田中の天皇直訴が迫る。(小冊子は希望者にお送りしています)読者に感謝

 

 

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2020年5月13日 (水)

人生意気に感ず「自粛解除の動きと第二波の恐怖。暑さとコロナ、貧者とコロナ。近づく巨大地震」

 

 

◇休業要請や自粛が解除に向かって大きく動き出した。やむを得ないことと思うがせっかく積み重ねてきたものが逆戻りすることが心配でならない。北海道などは第二波に見舞われている。総合的に判断した結果の動きが国、県共に進んでいる。また緊急事態宣言についても群馬県を含めた34県の一斉解除が進められている。

 

 山本知事は11日、今月末まで実施中の休業要請や自粛の解除の指針を発表した。それは4段階の警戒度を設け、2週間ごとに引き下げを検討するもの。徐々に社会・経済活動の再開を認めるのが目的だ。そこで、16日にも警戒度を4から3に下げる。「4」は県内の感染リスクが大きく現在のように休業と自粛の要請が行われている状態である。「3」は、県内では感染リスクが抑えられているが都内では感染リスクが高い状態。県内の感染者は11日で、5日連続ゼロであった。「3」ではどうなるか。三密となるハイリスクな場所は一般に自粛、高齢者等ハイリスク者はハイリスクな場所に限らず自粛となる。

 

◇休業要請の対象になっていなくてもコロナの打撃を受けている業種は少なくない。特に客と接近して仕事をする歯科医や理美容業などである。理容業、美容業の中には来店客数が半減した所もあり悲鳴を上げているという。これらの業種では不特定の客と接するが、その中には感染している客がいる可能性が高い。この客からもらえば次には他の客にうつす危険が生じる。

 

◇11日、県内は非常に暑かった。桐生市では全国一位の33.4度を観測した前橋と伊勢崎も全国4位の33.2度。県内で計5人が熱中症で救急搬送された。今年も超異常気象の始まりかと心配だが、この高温で苦しむのはコロナウイルスも同様らしい。コロナウイルスが22度以上になると活動が弱ると言われる。この暑さの中で、県内感染者ゼロが更新されるといい。

 

◇コロナは弱者により打撃を与えている。都内のネットカフェ生活者は悲惨だ。都の要請でネットカフェが休業、その上この人たちが働く日雇いの仕事もなくなっている。中には路上生活を余儀なくされている者も少なくないという。コロナは格差社会の矛盾に容赦しない。富者の命は守られやすく貧者の命は失われやすい。巨大地震が近づいている。もしそれが発生したら社会は崩壊し貧者の命は吹き飛ぶだろう。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月12日 (火)

人生意気に感ず「コロナの嵐の中で西部劇を観た。駅馬車、捜索者が問うもの。アメリカの再生は」

 

 

◇コロナコロナで二ヶ月以上が過ぎた。新聞もテレビもコロナ一色である。コロナの波は瞬く間に全世界に広がった。想像を超える勢いでウイルスの数は増え、この地上を覆っているに違いない。目に見えない微小の存在であることが不気味でもあり救いにもなっている。もし、ウイルスが赤い目に見える物体でそれが無数に空中を漂い、死者と感染者が急増するニュースが伝えられたら、多くの人は発狂するだろう。各地で暴動が起き、米中は戦争を起こすかも知れない。

 

 目に見えないことが楽感を生み休業や自粛を自分の趣味に活かす人もいる。私もその一人でこの間多くの書を読み、何十巻ものDVDを観た。私は少年の頃から大の西部劇ファンである。何十年も経って同じものを観ることには格別の意味がある。人生経験が物語に対する別の視点を可能にするからだ。

 

 何十巻というのは大げさではない。シェーン、駅馬車、赤い河、荒野の決闘、ガンヒルの決闘、捜索者、リオブラボー、大いなる西部等々。私の胸に少年の頃の若さが甦る。これもコロナ様のお陰か。

 

「ふるさと未来塾」や日本アカデミーの「へいわ」の講義で歴史を語ることが多いので西部劇の歴史的背景に関心が向く。これらの作品の背景はほとんど19世紀後半、南北戦争後の混乱を舞台にしている。国家の分裂を免れ、アメリカの資本主義は新天地西部を目指して拡大の一途を辿る。特に戦いに敗れた南軍の人たちの中に、追われるように西部へ向かった人が多い。秩序が定まらない町でアウトローの拳銃が火を噴く。駅馬車、荒野の決闘、捜索者はジョンフォード監督作品でヒューマニズムとユーモアがあふれ単なる殺しではない。これらは何度観ても飽きないし新しい発見がある。駅馬車では馬車の中に気高い貴婦人と過去を背負う女、この女に心を寄せる無法者キッド、差別の視線、インディアンの危機迫る中で貴婦人は産気づく。捜索者ではコマンチにさらわれた少女は酋長の女になっていた。助け出す人に「私は今は種族の人」と叫ぶ女性の姿は涙を誘う。

 

 アメリカの歴史は人権の歴史である。アメリアの偉大さは矛盾に満ちながらそれを乗り越えてきた過程にある。西部劇は人権の舞台でもあり近代アメリカの原点の一つなのだ。アメリカの人権の歴史を傷つけているのはトランプ。そのアメリカを今コロナが集中的に攻撃している。11月大統領選アメリカ更生のチャンスになるだろう。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月11日 (月)

人生意気に感ず「先が見えてきた。終息は夏に弱いコロナ。6月末か。抗体検査とは。第二波はいつ」

 

 

◇新型コロナウイルスの状況に変化が感じられるようになった。県内で初めて感染が確認されたのは3月7日。4月28日以降は感染ペースが鈍化している。陽性率、つまりPCR検査数に占める陽性者の割合も低下が続いている。このような傾向は日本全体についても、また世界についても大まかに言えば当てはまる。私の心にも春の日差しが感じられるようになってきた。

 

 問題は第二波の到来である。既に北海道は第二波に襲われている。やっと手にした成果は「三密」を守るために行動を自粛したり、マスク・手洗いなどを施行した成果であるから、気を緩めてこれらに手を抜いたら大変なことになる。“勝ってかぶとの緒を締める”の精神が求められる。

 

◇コロナウイルスは夏に弱い。気温22度、湿度50%以上になるとウイルスの活動が収まるとの報告がある。5月になって夏日の予報があると今年は朗報だと思うから妙である。具体的に終息はいつ頃なのか。専門家は一つの波は長くても6ヶ月で、猛烈なピークは2ヶ月~4ヶ月と言っている。これからすれば3月下旬から始まったコロナの波は6月末にはひとまず終息するのではなかろうか。

 

◇文藝春秋の最新号で感染症に関する記事を読んだ。その中で、実効再生産数、抗体検査、第二波の襲来時に触れている。「実効再生産数」とは一人の感染者が生み出す第二次感染者数のことで、一人が何人にうつすかである。

 

 都内で3月下旬「2」近かったのが現在「1」に近づいており「1」を下回れば終息に向かうのだという。もう少しの辛抱だ。

 

 「抗体検査」はウイルスに抵抗する力(抗体)をもっているかどうかの検査。分かりやすく言えば軽症でも一度罹ると抗体が体内に出来る。だから軽症の患者が広がれば終息には都合がよいということである。北欧のある国は全国民に感染が広がることを戦略にしていると言われる。

 

 今回の新型コロナは無症状、軽症者が多いので流行の現状がはっきり把握できない。そこでそれを知るために「抗体検査」が極めて有効となる。しかも、これは検査が簡単で10分~20分で出来ると言われる。

 

「第二波の襲来時」につき専門家は10月から12月あたりを警戒する。息つく暇もないが救いは世界中で薬の研究に取り組んでいること。既にレムデシビルやアビガンに関する朗報がある。歴史的な戦いも勝利は必ず来るのだ。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月10日 (日)

小説「死の川を越えて」第230回

万場軍兵衛の遺言

 

 万場軍兵衛が病床に伏してから1か月近く経った。80歳代の後半に入り、めっきり体力が衰えたところへ、追い打ちをかけるように感冒とあって、さすがの万場老人も大きく気落ちした日々を過ごしていた。こずえが時々病院から薬を運んでいた。

 ある日、こずえが訪ねると、珍しく老人は床から出て何やら作業をしている。

「御隠居様、お仕事でございますか。何か手伝うことでも」

「いや、それには及ばん、ちょっと起きると息が切れ目まいがする。弱くなったものじゃ。身辺整理の時が来た。人生の決算じゃ」

 万場老人は力のない声で言うと、手にした書類を置いて床に戻った。

「おお、そうじゃ。お前に話しておくことがある」

 万場老人はそう言って、部屋の奥の一角を指した。直角に交差した壁に沿って書類が積まれている。こずえは言われるままにそこに立った。

「その書を少しずらして見よ。お前の力で動く筈じゃ」

 こずえが腰を下ろし力を入れて押すと書の山が僅かに動き、下に黒い台が現われた。

「よいか、それは金庫で重要なものが入っておる。リー先生から渡されたものもそこじゃ。わしに何かあった時はこれで開けてくれ。これは鍵じゃ。お前がしっかり持っていてくれ」

 万場老人はそう言って小さな鍵をこずえの手に握らせた。

「まあ、そんなことを」

 こずえは戸惑った声を出したが、老人は有無を言わせぬとばかりにこずえを握る手に力を入れた。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年5月 9日 (土)

小説「死の川を越えて」第299回

「何百万という人が死んだ、海に野に。国土は廃墟となった。零からの出発じゃ。先の見えぬ大海原に。そこでじゃ。日本国憲法は天が示した原点に違いない。そして、神が与えた海図だと思う」

 正助が言った。

「耐え難きを耐え、永久の平和を築いていくという天皇の声が分かってきた。知事は戦後初めての県議会で高い道義の文化的平和国家を建設すると決意を述べたと言いますが同じことを指していると思います」

 水野が大きく頷いて応えた。

「その通りです、正助君。人間を尊重する国は高い道義を掲げた文化的平和的国家でなければなりません。新しい日本国憲法ではこのことがしっかりと位置付けられています。私は昔の九州帝大の講義を思い出して感無量です。しかし、問題はこれからなのですぞ。いくら立派な海図が出来ても、それを使う船長がいなければ宝の持ち腐れです。船長は我々国民なのです」

「僕は昔、お父さんと県庁へ行ったことを思い出します。偉いヒゲの先生が僕のお父さんほど勇気のある人はその中にいないと言っていた。天井にシャンデリアが輝いていた。お父さんのように勇気のある人が皆死んでしまった。これからはもっと辛い闘いが始まるんだね。新しい闘いなんだね」

 正太郎の言葉に水野が答えた。

「人権闘争です。ハンセン病の人たちが人権を獲得するための闘いです」

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年5月 8日 (金)

人生意気に感ず「レムデシビル等の朗報。ゼロが注目される岩手県とベトナム。中等症受入れ病院を」

 

 

◇全世界に広がった新型コロナウイルスをそれぞれの国が受け止めている状況は実に興味深い。一口に言って、その国の総合力によってコロナ戦の勝敗が分かれるようだ。国の総合力とは政治、文化、国民性などが主なものだが地理的状況なども影響する。

 

 世界の感染状況は、日本時間5日の時点で感染者数360万人以上、死者は25万人超に達した。感染者、死者の世界最多はアメリカである。それでもピークは過ぎたとして各州で経済活動再開の動きが広がっている。これは行動制限の緩和を意味するが、この緩和が感染拡大の第二波に繋がるのが懸念されている。一方で抗ウイルス薬やワクチンの開発も世界の先進国で懸命に行われている。正に近代科学とウイルスとの戦いである。この点で注目されるのは抗ウイルス薬レムデシビルである。「特令承認」によって七日に承認された。

 

 薬に関する朗報は続く。北里大はイベルメクチンにつき治療薬として承認を得る方向だとされる。これはノーベル賞の大村教授が開発に貢献した抗寄生虫薬である。また北里大と花王は新型コロナウイルスが細胞に感染するのを妨げるタンパク質を人口的に作製したと発表。これは新たな特効薬の開発につながるものと期待される。

 

◇私は国内外のコロナの感染状況の一覧表を毎日見るが、注目するのはゼロの数字である。国内では岩手県、国際面ではベトナムである。単純な数字の比較には問題があるとはいえ、このゼロの背景には大変な努力と工夫が存在するに違いない。ベトナムはかつてアメリカと戦って一歩も引かなかった国である。この国の対コロナ戦略の特色は厳しい隔離政策である。結果として人口約9,700万人中、感染者は271人、死者はゼロ。人口に占める感染者の割合は世界最少である。武漢で感染者が出ると直ちに中国人に対するビザ発行を停止し、国内感染者に対する施設隔離を大規模に実施した。共産主義故に実行できる政策といえるが私たちが学ぶべき点はあると思う。

 

◇軽症者でなく重症でもない中等症の受入れ医療機関の整備が喫緊の課題となっている。これらは重傷者より人数が多い上に重症化の恐れがある。受入れ病院を探すのが大変な状況。「電話をかけまくる」、「たらい回し」等の悲鳴が。県下の苦しい医療状況の中で、ギリギリの分担の工夫を重ねるべきだ。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月 7日 (木)

人生意気に感ず「外出要請解除の動き。34県の基本的対処方針の改定。岩手県ゼロの謎。船越小の奇跡」

 

 

◇政府が出した自粛要請がいつまで続くかは私たち一人一人にとって、また社会全体にとって極めて重要である。春の日差しが強まる中で感染者の確認数が減少傾向にあるという。

 

 私たちの心の緊張も緩んできたことを感じる。しかしここで気を抜けば一気に逆戻りするかも知れない。忍耐には限界がある。ぽかぽかの太陽の下、家に閉じこもるのは辛い。見通しが分かればそれも耐えられる。緊急事態が延長されたが、その中で外出自粛はいつまで続くのかという市民の声が聞こえる。

 

 大阪府は外出自粛要請の段階的な解除に向け独自の基準を決めた。主な要件は重症病床の使用率6割未満などが7日間続けば自粛要請の解除に向かう。具体的な基準が示されることで府民はホッとするだろう。日本全体を考えねばならない政府は辛い立場にある。

 

◇コロナの状況は刻々と変化しているからこれへの対処の仕方もそれに応じなければならない。緊急事態が延長される中で基本的対処方針が改定された。それは13の特定警戒都道府県とそれ以外の34県で異なる。群馬はこの34県に属する。この34県では一定の感染防止策を前提に社会経済活動の再開が一部認められた。例えばイベントも50人ほどの小規模のものは容認される。外出については自粛要請が続けられるが、この点独自の基準を設けて解除に向かおうとするのが前記の大阪府である。

 

 施設や店舗は地域の実情に応じるというのが改定された基本的対処方針である。この点群馬県はホテルや旅館に対する休業要請を解除する。しかし、パチンコなどの遊興施設への休業要請は今月末まで続く。

 

◇岩手県の感染確認ゼロが続くのは謎である。検査人数が少ないことを理由に挙げる見方もある。全国最低なのだ。岩手県の低い人口密度が有利に影響していることもあるだろう。もともと「三密」を避ける自然状況が存在するといえるからだ。基本的には手洗いや外出自粛を励行する真面目な県民性が重要な点だろう。岩手県の医療関係者は内陸と沿岸部の生活圏との間に距離があるため人口移動が少ないことを理由に挙げている。私の友人は「ここまでゼロが続くと自分の所から出しては大変だという意識が強いから、接触やエチケットをよく守っています」と語っている。私は岩手県船越小で全員が力を合わせ裏山に登り津波から逃れた奇跡的事実を思い出した。これも真面目な県民性の現れだった。(読者に感謝)

 

 

 

 

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2020年5月 6日 (水)

人生意気に感ず「緊急事態延長と新しい生活様式。高齢者の危機。予防接種への影響」

◇緊急事態宣言が31日まで延長されることになった。首相は感染者は減少しているがそれも十分でなく、かつ医療提供体制がひっ迫していることを理由にあげた。山本知事も同様の考えを示した。私も延長は当然だと思う。感染者は減少していても、いつ増加に転じるか分からない。そして感染減少を支える医療が崩壊に瀕している為、全く油断できないからだ。ちなみに県内の状況は5日時点で8日連続の感染確認なしである。この状況が何を意味するのか、私は期待と不安の気持ちで受け止めている。

◇政府も専門家もコロナウイルスとの闘いは長期化するとみている。ならば私たちはそれに備えねばならない。長期化に対応した生活のスタイルが必要になる。そこで専門家会議は「新しい生活様式」を提言した。その内容は細かくて全てを守るには困難を感じる。私はもっとシンプルにすべきだと思う。主なものを挙げれば、症状がなくもマスクを着用する。他人とは2メートル(最低1メートル)離れる。「三密」を避け、毎朝の検温を行う。店の物には触れない。支払いは電子マネーで。ドアノブに注意。正面での会話や食事はしない。等々だ。これらの中にはコロナ後の社会に影響を残すものもあるだろう。社会が大きく変化する一つのきっかけになるに違いない。

◇緊急事態が続くなかで、深刻な事態に追い込まれているのは高齢者である。特に在宅の高齢者が困っている。デイサービスの休業が増えているからだ。体の弱った高齢者はどこでも医療を受けられない危険に立たされている。感染者がこれ以上増えれば高齢者は地域医療機関での受診が益々困難になる。そして、高齢者が感染した場合重症化の危険は大きいのが現実である。多くの高齢者が息をひそめて不安におののきながらコロナが過ぎるのを祈っている。一人暮らしの高齢者の孤立が心配だ。地域の力で助けなければならない。民生委員や自治会の組織がセーフティネットの役割を果たさねばならないという現実は悲しい。政治は無力だという声が聞こえる。

◇コロナに追われる医療状況のため他の感染症対策が重大な影響を受ける恐れが出ている。予防接種で医療機関に行くのを恐れる保護者の気持ちは分かる。医療機関もひっ迫しているから接種を断られるかもしれない。確実に予防可能な他の感染症から子どもたちを守らねばならない。(読者に感謝)

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2020年5月 5日 (火)

人生意気に感ず「コロナと憲法改正。異常緊急はこれからが本番。改正権の限界」

 

 

73回目の憲法記念日を迎えた。第一回の時私は小学校一年生で、胸を膨らませて手にした教科書からは平和の匂いがあふれ、村には「リンゴの歌」が流れ極端な貧しさの中、人々の目には活気があった。私たちは今、この記念日を新型コロナウイルスの嵐の中で受け止めた。憲法成立時と同様な国難であり、憲法の意義が改めて問われることになった。

 

 感染が爆発的に増えている。この異常事態を乗り越えるには強い権力が要る。政府は緊急事態宣言をようやく出したがもっと早い適切な対策ができなかったのかと批判の声があがっている。民主主義は異常事の決断に時間がかかる。民主主義を維持しながら緊急事態に向き合うにはどうすればよいかが問われている。今回のコロナウイルスが去っても、このようなことはこれからも起きると考えねばならない。ウイルスだけではない。国際テロの脅威が迫っている。首都直下型や南海トラフ型の巨大地震が刻々と近づいている。外国の侵略にも備えねばならない。我が国の上空や近海にミサイルが飛んでいる。長く平穏な時代が続いたが、今大災害と大動乱の時代が始まろうとしている。それに対する備えがあるかが問われている。

 

 必要なのは憲法改正の議論である。具体的には緊急事態の対応を憲法に定めておいた方がよいのではないかということだ。民主主義の下でのまさかの時の強権の発動である。憲法で基本原則を定めた上で、その強権の内容や発動の手続きを法律で定め、強権の限界と歯止めを法律で明確にしておくのである。万一の混乱時に国会議員の任期が切れ選挙が出来ない事態も想定しなくてはならない。その時は特例で国会議員の任期を延ばす必要が出てくる。任期は憲法で定められているから任期の延長には憲法上の根拠が要る。このようなことも含め、憲法改正の議論をする時が来た。日本のように長い間憲法を改正しない国は希である。改正の議論すらタブー視する向きもある。改正に関しては誤解も存在する。改正によって昔の軍国主義に戻ることも可能とする考えである。しかし憲法には「侵すことが出来ない永久の権利」がある。現在の根幹は堅持しつつ時代の変化に応じるための改正は議論されるべきである。私の「ふるさと塾」ではポケット版の冊子を用意して憲法を学ぶことにしている。憲法を支えるのは私たち一人一人である。憲法記念日にあたりこのことを銘記したい。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月 4日 (月)

人生意気に感ず「北海道の第二波。福祉施設の危機。全ての基礎に憲法が」

 

 

◇北海道の悲鳴が聞こえる。コロナ軍団の第二波が札幌市中心に押し寄せている。北海道は一度は発生が止んだかと思われた。安倍首相が緊急事態宣言を出すことに躊躇している時、道知事は2月末に独自の緊急事態宣言を行いそれは効を奏し、私は拍手した。打ちのめされたかに思えた怪物は息を吹き返し、再び猛威を振るいだした。第二波の特徴はクラスターの発生である。

 

 この北海道の事態は今後の国及び各地の新型コロナ対策に影響を及ぼすに違いない。下火になって終息が近づいても復活する可能性があるということだ。

 

◇福祉施設が深刻である。そこでは集団感染が増えている上に濃厚接触が避けられないからである。福祉施設は「三密」になりやすい環境である。入浴や排泄は三密なしには難しい。職員には防護服が不足しポリ袋をかぶって対応している所もあるという。このような所は元々重態の人々が多い。そういう人たちが感染者になっている。しかし、福祉施設では感染者の治療は出来ない。施設から優先的に入院を求める声が出ているがそれに応じられないのが現実である。医療崩壊が迫るような状態となっているからだ。

 

◇私は相模原の施設における大量殺人事件を思い出す。回復困難な人々はどうしているだろうか。優先的に治療を受けるべき人々が捨て置かれる状況が生じる可能性が出ている。

 

 コロナを機に重大な社会の課題が浮き上がってきた。人間とは何か、人権とは何かが問われる深刻な状況である。判断の基準、政策決定の究極の基盤は憲法である。53日は憲法記念日であった。昭和2253日、日本国憲法は施行された。国民は基本的人権の享有を妨げられない(11条)、すべて国民は個人として尊重される(13条)、全て国民は法の下に平等である(14条)等と憲法は人間の尊重を高らかにうたう。これら憲法の理念は弱者こそ厚く保護されるべきことを訴えている。

 

 新憲法の施行について、私には長い人生を振り返って特別の思いがある。この年、宮城村の小学校に入学し新しい教科書を手にした。それは従来のものと比べ一新されていた。初めの詩を覚えている。「おはなをかざる みんないい子 きれいなことば みんないい子 なかよしこよし みんないい子」当時は勿論分からなかったが権力を感じさせない自由な雰囲気が流れている。これが戦後社会の原点だったと改めて感じる。コロナ禍はこの原点を見詰めることを教えているのだ。(読者に感謝)

 

 

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2020年5月 3日 (日)

小説「死の川を越えて」第298回

「苦しい時、これを握りしめて頑張りました」

 正太郎は、そう言って胸元から小さな十字架を取り出した。出征の時、さやから渡されたものであった。

 2・3日後、万場老人、水野法学士、こずえを交えた人々が老人宅に集まっていた。下地区の万場宅が、新しい生生塾になっていたのだ。

「おお、正太郎生きて帰ったか。ニューギニアは地獄だったと聞く。奇跡じゃな」

 万場老人はいかにも嬉しそうである。

 正助は水野高明に向かって言った。

「大変多くの人が死ぬ中で、正太郎は貴重な体験をしたと申しております。それは、人の命こそ人権の中の人権、人権の中心ではないかというのです。この言葉は正太郎が地獄の戦場から持ち帰った素晴らしい土産だと思いました。そして、俺は気付いたのです。そういえば、俺もシベリアから同じ体験を持ち帰っていた筈だと。是非、水野先生の考えを聞かせて下さい」

 目を閉じていた水野が大きく頷いて言った。

「素晴らしい体験です。人の命こそ人権の中心とは、正太郎君が極限の体験で掴んだことなんですね。地獄の戦場で例え一人でもこのような確心を得た日本人がいることは大きな救いです。それが我々ハンセン病の仲間であるとは、偶然以上の神の恵というべきでしょう。そして更にです。正太郎君の土産を歓迎するように新憲法が基本的人権を正面から認めたとは。ああ、この巡り合わせを私たちはどう受け止め、どう生かすべきか」

 水野は再び目を閉じた。その横顔は何かを追っているようだ。それを見て万場老人が言った。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年5月 2日 (土)

小説「死の川を越えて」第297回

「その人のお父さんが重監房に入れられ、差し入れられたカツオブシを舐めて助かったと申しました。草津の人たちの恩は忘れない、死ぬ前にカツオブシの人と会え、お礼が言えるなんて神様の導きだと言うのです。その人は僕の手を握り何度も礼を言って息を引き取ったのです。

 サラワケットでは、2千人以上の人が死にました。僕はカツオブシの話に励まされた。そして、僕がカツオブシを提案したことをニューギニアのあんな山中で感謝されたことにうんと誇りを持つことが出来た。そして、サラワケットを越えることが出来たんだ。人間て心が豊かになると大きな力が湧くんだね。前にお母さんと京都大学を訪ねた時、小河原先生が心の力が免疫力を生むといったことが本当だと思ったよ」

「そうかい、お前、凄い経験をしたんだね」

 さやのほおに止めどなく涙が流れている。

 正助は昔、シベリアから魔の海底洞窟を抜けた光景を懐かしく思い出していた。

「戦争に負けたんだ。これからどうしたらいいか分からない。しかし、大きな望みは新しい憲法だ。国民が国の主人公になった。一人一人が平等になった。その一人一人の人間が人間として尊重される。それが人権なのだと水野先生が必死で教えてくれた」

 正助は戦地から帰った我が子に大切なことを伝えようと真剣であった。

「万場先生がいつも言っていたハンセン病の光ですね。それが、ハンセンを超えて全ての人間を照らす光、それが基本的人権なのですね。僕は戦場で多くの人が傷つけられ、死んでいくのを見てきた。そして、戦争から抜け出して、命の大切さが分かりました。人間を大切にすることが人権だとすれば、人権の核心が命だと思えます」

「待て正太郎よ。お前は今、凄いことを語っている。お父さんはその通りだと思うが、正しく判断できない。この続きを万場先生、水野先生をいれてやろうではないか」

「その通りですね。お父さん、是非お願いします」

「お前が戦地に出て行く前の晩のことが思い出されます。諦めないで必ず生きて帰ってと言った私たちの願いを守ってくれたのね。有り難う。これは神様のお陰です」

 さやは涙をぬぐいながら言った。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2020年5月 1日 (金)

人生意気に感ず「自宅療養の危機。学校の9月入学。緊急事態宣言の延長。ロシアの感染状況と独裁主義」

 

 

◇感染拡大で生じた重大問題の一つは「軽症者は自宅」である。医療のひっ迫でこうせざるを得なかった。結果として在宅者の死が発生した。それは軽症から急に重体化するコロナウイルスの恐さもあるが、在宅の場合医療従事者がない上に家族に感染するリスクが伴う。そこで厚労省は軽症者の療養先を自宅でなくホテルなどの宿泊施設に方針を変えた。

 

 私が関わる群馬ロイヤルホテルもその対象として検討されている。ところでホテル療養には多くの課題が伴う。医師や看護師らの常駐が必要になる上、感染者の生活支援や連絡調整の人員も確保しなければならないからだ。各都道府県は療養先の確保を急いでいる。私は今こそ、地域全体の力が問われていると思う。県議会にいた頃、地域の発展のために産学官の連携を訴えてきた。毛利家の三本の矢の教えのように力を合わせればより大きな効果が期待できるからだ。今、この緊急事態下でホテル療養に関しても求められることは、行政、医療、事業者らが連携することである。

 

◇学校の休業が進む中、従来の四月入学の変更が迫られている。休校を来年の4月まで長引かせれば学習の遅れが深刻化するからだ。安倍首相は29日の衆院予算委で9月入学を検討する意向を述べた。しかし、9月入学に踏み切るためにはその影響を考えた制度や慣行の変更などが必要になる。入試や就職活動、採用などが4月入学に合わせて行われているからだ。

 

 世界の主流は9月であるから、変更は国際化に合わせることにもなる。従来から要望が強かった。コロナ危機によって変更が実現するに違いない。

 

◇これら様々な課題は緊急事態宣言の継続か解除に大きく関わっている。この宣言は56日が期限である。全国知事会は29日にテレビ会議を開き「延長」を政府に求める方針を決めた。異論もあったようである。私の実感ではコロナウイルスはやや勢いが小さくなるかと思う。正念場なのだ。ここで解除したら元に戻るのは明らかである。多くの国民は耐える覚悟である。安倍首相は30日、延長の方針を表明した。

 

◇ロシアで感染者が爆破的に増えている。1日に6千人増というから驚きである。多くが院内感染かららしい。そして遂に首相までもが感染した。医療が脆弱で権力による秘密主義も一因だと思う。プーチンの独裁制に注目だ。(読者に感謝)

 

 

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