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2019年4月 7日 (日)

小説「死の川を越えて」第180話

「どういうことですか先生」

「分からぬか。差別の突破口よ。湯の沢は特別とはいえ、まだまだ差別されている。低く見られている。学問する能力も資格もないと考えている人が多いのも事実じゃ。正太郎によって見直すに違いない。正太郎は辛い思いをするに違いないが、名誉ある先兵になるのじゃ。あの子なら出来る。我々も力一杯支えねば」

「先生、よく分かりました。正太郎にはよく言って聞かせます」

 正助夫婦の目には喜びの色が溢れていた。

 万場老人は次にマーガレット女史に会った。正太郎のため、湯の沢に対する差別を突き破るためということに女史は打たれた。

 草津町小学校は正太郎を診断し学力を検査した。正太郎は11歳に達していたのである。学校側は正太郎の学力の確かさに舌を巻いた。算数、国語、歴史などの教科の力は草津小の生徒と比べ群を抜いているように見えた。そして、協議の結果、4年生への編入が適当だろうということになり、町長もこれを認めた。

 ある日、正太郎は4年生のクラスに出席した。緊張で胸がドキドキしている。クラスの皆が好奇の視線を向けている。それが正太郎には刺さるように感じられた。

 萩野花子という若い先生は、正太郎を紹介した。

「下村正太郎君です。今日からクラスの仲間です。仲良しになって下さいね。草津小学校に入るための試験に健康も勉強も立派な成績で合格しました。正太郎君をクラスに迎えることは、皆さんにも大変勉強になるに違いありません。席は市川純子さんの隣りよ。純子さんお願いね」

「はい、分かりました。大丈夫です」

 活発そうな女の子はにっこり笑って正太郎を隣りの席に迎えた。萩野先生は、湯の沢の子ということでいじめられたりしないよう、また、不安がったりしないよう配慮するように校長から言われていたのだ。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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