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2019年4月13日 (土)

小説「死の川を越えて」第181話

 

 正太郎が湯の沢の子どもということは、初め秘密にされる方針であったが、隠し切れることではない、やがて分かるということで、敢えて隠さず自然に任せることになった。正太郎の両親も、むしろそれを望んだ。一部の生徒には早くもどこからか、正太郎が湯の沢の子であることが伝わっていた。

 正太郎は全身を耳にして座っていた。湯の沢と囁く小さな声が聞こえた。休み時間になった時、純子という女の子が言った。

「私のお父さんは警察官よ。でもね。優しい、いい警察官なの。あたしも、最近越して来た新入生なの。宜しくね」

 純子は、新入生の割には皆に溶け込んでいて元気にはしゃいでいる。正太郎は勇気づけられる思いであった。

 家では、正助とさやが心配していた。

「先生はね萩野花子先生といって、こずえお姉さんのようにきれいな人だよ。隣りの席は市川純子さんで、お父さんは警察官だって。でもね、優しいいい警察官だってさ」

 正助とさやは正太郎の話を聞きながら教室の風景を想像し、顔を見合わせて頷いた。両親の安心した表情を見て正太郎は得意げに続ける。

「ぼく、指されて答えられたよ」

「へえ、何を聞かれたの」

「うちゅうっていう字を書ける人と言うんで、ぼく手を上げたんだ。宇宙のこと、リー先生に教えられて、ぼくワクワクして聞いたことが役に立ったよ」

「まあ、勇気があったのね」

「ぼくしかいなかったみたいで、指されちゃった。前に出て黒板に書いたら皆んなが拍手したよ」

「は、は、は。それはよかった。正太郎、よくやったな。早速、万場先生に話さねばならない。実は先生も心配していたのだよ」

 こうして、草津小学校の正太郎の生活が始まった。 

しかし、正太郎には思いもよらぬ試練が待ち受けていた。ある日のこと、学校から帰った正太郎の様子が変である。さやは敏感に察知して訊ねた。

「学校で何かあったの」

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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