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2019年3月30日 (土)

小説「死の川を越えて」第177話

 住民集会が終わった後のある日、湯川生生塾に人々が集まった。成人の部の授業ということで触書が回ったのだ。髭をつけた学者風の新顔が人々の注目を集めた。

 正助が紹介する。

「明星屋にいらっしゃる水野先生です。偉い法律の先生で、今回、県や国に出す嘆願書で大変お世話になりました。この塾のことを知って、是非参加したいというのでお連れしました」

 水野は万場老人に近づいて丁寧に頭を下げた。

「お噂は聞いておりました。明星屋の客水野と申します。この湯の沢で新たな生き甲斐を見つけました。以後、宜しくお願い致します」

「おお、あなたが水野先生ですか。正助が大変お世話になっております。又、この度は大変勇ましいご活躍をなされたそうで敬服致しておりますぞ」

「はは、もう伝わっておりますか、お恥ずかしい限りです。は、は、は」

「皆さん、今日の塾は特別のものですぞ。先日の大集会は大成功であった。ここには、勉強する大切なことがいっぱい詰まっておる。わしは集会には出られなかったが報告を受けて感動したのじゃ。先ず、正助から大切な点を話して欲しい」

「皆さん、集会の成功は先ず大勢の人が集まったことです。そして、今回は怒った人々であるにもかかわらず、警察の世話にならなかったことです。どちらもうまくいきました。半鐘が鳴ったので皆が駆け付けたと言っていますが、やったのは権太です」

「えー」

 驚きの声が上がった。まさかという視線が権太に向けられる。

「正助に言われていたんだ。嘆願が駄目になって集まれと紙が回ったらやることになっていた。後でまずいことにならねえかと言ったら、問題ねえと言うんでやった。高けえ火の見に登ったら興奮して、思いっきりぶっ叩いた」

 どっと笑いが起きた。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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