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2019年3月16日 (土)

小説「死の川を越えて」第173話

 

 ある日、万場軍兵衛は正助たちを集めて言った。

 

「正助、良い話が出来たらしいな。わしは、この生生塾が役に立っていることを感じて嬉しいぞ。お前は住民運動の流れに加わったのじゃ。我々患者のためという大義を信じて謙虚に、そして堂々とやるがいい。お前の行動と発言はこの塾に報告せよ。生生塾にとって素晴らしい成果であり、生生塾がお前を支える基礎になるからな。この小さな塾が天下の大問題を支えると思うと痛快ではないか」

 

「先生、有り難うございます。俺は、初めて大勢の前に立った時、足が竦(すく)む思いでしたが、シベリアの海底洞窟のことを思ったら気持ちが落ち着きました。しかし、もっともっと大切なことがあると気付いたんです。それは正しい知識、そして俺がやっているのは正しいことだという自信です。それを湯川生生塾が支えてくれることがよく分かりました。先生、俺頑張ります」

 

 正助は、励まされて外に出ると、改めて湯川生生塾の文字を見詰めた。ごんごんと流れる湯川の音も正助を励ましているようであった。正助は立ち止まってじっと考え込んでいる。正助の胸に韓国で経験した激しい反日運動の光景が甦っていた。<中途半端は逆効果だ>。正助はそう呟いて何か考えていたが、ある事を決意し、権太の所へ走った。正助は嘆願が簡単に通るとは思わなかった。その時は住民の騒ぎになるだろう。それを予想して権太にある策を授けたのだ。

 

 実行委員たちは、嘆願書を持って上京した。一行の中には正助の姿もあった。

 

 川村社長は頑として引かなかった。

 

「当社は経営上の無理を承知の上で、草津の発展を願って電車を通しました。患者専用車の配備などとんでもない。余裕が全くない。無い袖は振れませんな」

 

 

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

 

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