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2019年3月18日 (月)

小説「死の川を越えて」第174話

 

 正助は発言した。

 

「ハンセン病は遺伝病ではありません。感染力も非常に弱い。世の中には誤解と偏見があります。草津の湯はハンセン病に効く。患者にとっては天の恵です。草津の発展のために草津まで鉄道を伸ばして下さった精神で、患者を助けて頂けませんか、それが草津の発展に通じ、鉄道会社の評判が高まり、それは会社の発展のためになると信じますが」

 

「君、それは理想論だよ。現実はそんなに甘いものではない。会社は多くの社員を抱えているのです。慈善事業をやっているのではない。また、会社の経営が安定することが草津温泉の発展の基礎ではありませんか」

 

 川村社長は、生意気な青二才とばかりに不快感をあらわし、頑として要求を聞こうとしなかった。

 

 町の役場は重大な関心を寄せていたので、実行委員たちの交渉が気になり、電話で会社に問い合わせた。会社は、全く問題にならないと答えた。これが住民に伝わったので人々は激昂し叫んだ。

 

「このままでは済まされないぞ。草津駅に実行委員を出迎えよう。それを利用して大きな大会にするんだ。報告を聞いた上で、次の戦に立ち上がろう」

 

 さやが万場老人の所へ走った。

 

「先生、皆が騒いでいます。大変なことになりそうなの。正さんは大丈夫でしょうか」

 

「うむ、正助は心配ない。しかし、群集は、火がつくと止まらなくなるから、ちと気になるぞ。さやさんは正助の動きをしっかり見届けて報告しておくれ」

 

 さやの表情には悲壮なものが漂っている。それを見て、老人は呟いた。

 

「これは荒れた大会になるぞ。群集のエネルギーを上手く導かねば大変なことになる」

 

 

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

 

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