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2019年2月16日 (土)

小説「死の川を越えて」第166話

 

 

 

二、住民大会開く

 

 

 

 軽井沢、嬬恋村間に鉄道が開通したことはハンセン病の患者にとって天の恵の筈であったが、軽井沢で頻繁に乗車拒否される。このことに対する湯の沢住民の不満は日を追うごとに大きくなった。実は、鄭東順等が乗車拒否された頃、住民の怒りは忍耐の限界を超える程に高まっていた。区長の呼びかけで対策会議が度々開かれた。ある日の会議に正助が出席していた。

 

 区長が発言した。

 

「乗車拒否が酷すぎる。会社には何回も止めて欲しいとお願いしているが聞いてもくれない。どうしたらよいでしょうか」

 

 いろいろ意見が出たが聞いていた正助が発言した。

 

「先日も、韓国からの大切なお客様が乗車を拒否されました。会社にお願いするという穏やかな方法では駄目ですよ。力で動かす他ないでしょう」

 

 誰かが即座に声をあげた。

 

「そんないい手があれば教えてもらいてえ」

 

正助はこれに応えて言った。

 

「会社は俺たちを営業の邪魔者と見ている。俺たちは弱い立場です。しかし、まとまれば会社に圧力をかけられます」

 

「昔の百姓一揆をやるのか」

 

 これに正助は大きな声で応えた。

 

「昔の百姓一揆は指導者は首を切られたり、はりつけになった。今はそんな時代ではない。武器を使わないで、住民運動をうまくやるんです。俺は朝鮮で日本に抵抗する大衆運動の凄さを見た。湯の沢は自治をやっている。組織があるんだから生かさねば損だ」

 

 正助の発言はもっともだったので、賛成者が現われ、会議の空気はそういう方向で動いた。

 

 正助は更に言った。

 

「ただ騒ぐだけでは効果は小さい。嘆願書のようなものを作って県や国に正式に働きかけるべきだと思います」

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

 

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