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2018年12月30日 (日)

小説「死の川を越えて」第151話

 

 しばらくしたある日のこと、正助がやって来て興奮ぎみに言った。

 

「先生、親たちの評判がいいです。子どもがいろいろ話しているのですね。こずえ先生の評判も上々です。皆、美人先生が好きなようですよ」

 

「まあ、そんな。恥ずかしいわ。私なぞ、何も出来ないのに」

 

「は、は、は。それは愉快。わしも嬉しい」

 

「そこで、先生。お母さんたちが、俺に言ってきたのです。今、湯の沢集落が揺れているらしい。勉強しないとついていけないから湯川生生塾で、やさしく教えて欲しい。子ども達のように。こう言うんですよ」

 

「ほほう。それはいいことだ。親にとっても勉強は生きる力。親は現実の厳しさに日々直面しているのだからな。よし、そういう人たちに、承知したと申してくれ。よい動きだと思う。わくわくするが、慎重にしっかり取り組むぞ」

 

 正助は、権太や正男たちにも頼んで準備を進めた。お母さんたちは、塾という学校に参加出来ることが嬉しくて周りに話を広げ、仲間を誘った。正助は、動きが大きくなっていることを感じた。

 

 予定の日が近づいたある日、正助が万場老人のところへ走り込んで来た。

 

「先生、大変です。希望者が多くてとてもここでは狭すぎます。どうやって断りましょうか」

 

「ふうむ。嬉しい悲鳴というやつじゃ。断るのは良くあるまい。今回は、山田屋の世話になろうではないか。お前から話してみてくれぬか」

 

「先生やってみます」

 

 正助は勇んで飛び出して行った。

 

 

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

 

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