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2018年12月 1日 (土)

小説「死の川を越えて」第141話

 

「私の考えなどは言わず、ただ宿題を与えましたところ、この男、素晴らしい体験をしたのです。

 

 夜、湯の沢を出て、湯川の下流の麓の村まで歩き、帰りは坂道を登り、草津まで戻ったら夜が白々と明けたと申します。夜が明けた時、朝日の中に広がる広大な田畑と森を見て胸を打たれたと言いました。湯の沢集落の近くにこんな世界があることに気付かなかったと言うのです。そして、ここに草津の温泉が引けて、理想の村が出来ればと、ふと思ったと言います。

 

 私は、これが湯の沢の将来に関係があるか無いかを未だ申しておりません。私にも分からぬことです。西村様にはお伝えしておいた方が良いかと思いここに触れた次第でございます。西村様とは、これからもいろいろ関わらせて頂く予感が致します。宜しくお願い申し上げます。山田局長様に宜しくお伝え下さい。

 

尚、木檜代議士、牛川知事、県議会とどう接触するかは今後研究する所存です。その際、中央との繋がりは当面表に出さぬことが賢明かと愚考致しますが、御示唆を頂ければ幸いでございます」

 

一週間が過ぎた時、西村課長から返信が届いた。意外に早い反応に万場老人は驚いた。こずえが差し出す茶をすすりながら老人は封を切った。

 

「早速の御返事を嬉しく受け止めています。鋭い洞察力で帝国議会の動きを受け止められておられることに敬服致します。日本国には現在大きな動きが進んでいます。小生など一小役人で、唯はらはらと傍観するばかりで無念さを感じますが、お国の為に精一杯と、気持ちだけは張り切っております。こんな気負ったことを認(したた)めるのも、万場様を大先輩と考えるからできることかも知れません。どうかお許し下さい。

 

 正助様のことは強く印象に残っております。正助様が一晩かけてあの地域を歩いたとは驚きました。広大な田畑と森が広がっているのですね。そして、近くに草津温泉とは示唆的だと思います。胸に止めて置きたいと思います。これからも万場先輩の御教示にあずかることが何かとあると存じますが、何とぞ宜しくお願い申し上げます。

 

 ところで、正助様といえば、先日のお話しの中で、お子さんを育てられておられること、家族で県議会へ行かれ、そのお子さんが議会で発言されたと聞き驚いた次第です。子どもは将来を担う存在です。また、子どもは、一番に社会から差別される弱い立場なので、自治の集落が子どもの教育にどう取り組んでおられるのか、気にかかっております。どうか、正助様、お子様、お母様にも宜しくお伝え下さい」

 

 

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

 

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