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2018年11月 4日 (日)

小説「死の川を越えて」第133話

 

 ここで山田衛生局長は、国のハンセン病政策の基本を話すことになる。木檜の提案に答えるためにそれを明らかにする必要があるのだ。

 

その為に、前夜、山田局長は西村数馬課長から報告を受けた。

 

「御苦労でした。ほお。万場軍兵衛さんに会ったのか」

 

「はい。万場さんは現場で苦闘された私たちの先輩という感じを受けました。草津湯の沢では、患者が助け合って生きるという珍しいハンセン病の歴史を築いているようです」

 

 こう言って西村は、正助という若者のことや森山県議の話にも触れて、湯の沢の実態を説明したのだった。

 

 山田は、答弁席に立って語り出した。

 

「木檜先生のお話には核心に迫るものがございます。先生のご提案に答えるため政府が考えているハンセン病政策の方向をご説明致します。政府はハンセン病予防に関する特別委員会を設け大正9年に日本のハンセン病予防の根本の方策を決めました。

 

主なものは3点です。第1・第2は療養の方法がなく貧しい患者対策です。そして、第1とは、一般の貧困者対象の大療養所を各地に増設することです。

 

そして、第2とは無戸籍者とか他の患者に迷惑をかける不良性の患者を特に集める療養所の建設です。第一と第二を一緒に収容することは治安のためにも適切でないからです。そして、第3がただ今問題となっておりますことで、資力のある患者のために適当な地域を選定して自由療養区というものをつくることです。湯の沢は、分類としてはこれに入ると認識しております。

 

 この点につきましては、その必要を認めながらも、主に財政上の理由から手が伸びておりません。実現する場合、どの場所が適当で、どういうことをしたらよいか等を検討し、なるべく早く着手することを切望しておる次第であります」

 

 

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

 

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