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2018年10月27日 (土)

小説「死の川を越えて」第130話

 

これを聞いて万場老人が言った。

 

「社会の無知と偏見が差別を生み、それが患者の精神までも侵し、暗くいじけたものにしてしまうのじゃ。間違った法律や制度が偏見と差別を助けてしまう。このことを中央の役人に知って欲しい。国の政策をつくり、それを実際に動かすのは役人の皆さんなのだからな」

 

 万場老人は西村課長の目をのぞき込むようにして言った。

 

「わしにも一言」

 

 そう言って発言を求めたのは森山抱月であった。

 

「私は、森山という県会議員です。木檜先生とはかつて群馬の県議会で同僚の間柄でありました。私は、この湯の沢集落の皆さんに大変学ぶことがありまして、行政の上で大いに役立ったのです。実は、今発言した下村正助くんの一家を県議会に招いて話してもらったのです」

 

「可愛い坊やが元気に発言した姿に、議員たちは感激したのです。そして、ハンセン病の人たちが助け合って生きる姿を初めて知ったのです」

 

「ほお。それは貴重なお話ですね。木檜先生がどういうお気持ちで何を語られるのかが分かる気が致します。今日は大きな収穫がありました」

 

「お願いがござる」

 

 万場老人が改まった声で言った。

 

「あなたの来訪によって、本省との貴重なつながりが出来ました。これを今日限りのものとせず、この湯の沢集落のため、今後に生かせるものにしたいものじゃ」

 

「はい、万場先生。もちろんでございます。行政に携わる者として大切な現場を知る機会を得たのです。私の方こそお願いする次第です」

 

 西村数馬は、ずしりと手ごたえのある成果を得た思いで湯の沢を後にした。

 

 

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

 

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