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2018年9月 8日 (土)

小説「死の川を越えて」第113話

 

「ドイツ人宣教師のカールさんという人が韓国から来て、リー先生たちと一緒に、カールさんの話しを聞き大変勉強になりました」

 

 正助は、カールが「生きるに値しない命」というドイツで最近出た論文について話したとこを語った。そして、リー女史がこの思想についてキリストの教えに反することだと怒りを示した姿に心を打たれ、それがきっかけでキリストについて勉強を始めたと述べると、森山は立ち上がって正助の手を握って言った。

 

「感動的な話ですな。その思想については私も教会を通して耳にしておった。キリスト教の立場から許し難いのは勿論ですが、宗教を離れた人道上からも許せない。将来、日本とドイツが手を握るようなことがあれば、日本はこの思想に強く影響を受ける可能性がある。それにしても、この思想がきっかけとなって、君がイエス様と出会ったとは、不思議なことだ。湯の沢集落のことは、このことからも疎(おろ)そかにはしませんぞ」

 

 森山の口元には静かな決意が現われていた。

 

 正助は、湯の沢のことは疎そかにしないという森山の口元を見詰めながら、その真意は何かと思った。出発前の万場老人の言葉を思い出したからである。そこで正助は自分たちは湯の沢の光を育て人間らしく生きる決意を強くもっている。だから、そのことに反する移転には強く反対すると述べた。森山は大きく頷いてみせた。

 

「君の考えはよく分かった。承知していたが改めて確認したまでじゃ。ところで、正助君、君には今日もう一つ大切な仕事があるのだ」

 

 森山は、微笑みながら切り出した。

 

「何でしょう」

 

「今日、牛川知事が君に会いたいと言っている」

 

「えっ、県知事様が何で私に」

 

「うむ、牛川知事は立派な人物でな、湯の沢集落のことには重大な関心を持っておられる。先般君たちが県議会に来た様子を耳にしたそうだ。そして、この度、是非君に会いたいと申されておる。シベリアのことにも強い関心をもっておいでだ。では、知事が待っておられる。行くとしよう」

 

 正助はえらいことになったと思った。

 

 

 

※土日祝日は、小説「死の川を越えて」を連載しています。

 

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