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2018年9月 1日 (土)

小説「死の川を越えて」第111話

 

 

 

 万場老人の話を聞いて正助は頬を紅潮させていった。

 

「偉い先生だったんですね。正太郎も俺たち夫婦も幸せでした」

 

 それからしばらくしたある日、リー女史から正助に会いたいと連絡があった。聖ルカ病院の一室に入るとリー女史が待っていた。

 

「森山先生が正助さんに会いたいと言っています」

 

 開口一番、女史は言った。

 

「えっ、あの県会議員の」

 

 正助が驚いて言った。正助の胸には妻と正太郎を連れて県議会に招かれた時の光景が甦っていた。その後、県議会でハンセン病のこと、湯の沢集落のことがどう話し合われているか、正助は気にかけていたのだ。

 

「正太ちゃんも県議会へ行ったそうですね。森山先生が、大変お利口な子どもだと感心されておりました」

 

「正太郎は誉められて、得意になり俺たちより張り切っておりました。子どもは恐いもの知らずで、大勢の偉い先生もまるで眼中にありません」

 

「ほ、ほ、ほ。それが子どものよいところ。若い心は純で無敵なのよ」

 

「ところで森山先生の御用とは」

 

「県議会で湯の沢集落の移転に関することが議論されているそうです。前に、湯の沢に来て皆さんと話して実態は分かったが、集落を移すかどうかというと重大なので、私の考えを聞きたいというの。それなら正助さんにお聞きなさいと申し上げましたら、それがいいということになりました。それから、正助さんがイエス様を勉強していると申し上げたら大変驚いておいででした」

 

「そうですか。そのことを森山先生に聞かれたら俺、恥ずかしいな」

 

 正助はこう言って頭をかいたが、その表情は嬉しそうである。

 

 それから数日が過ぎ、リー女史が森川議員と打ち合わせした日が近づいた。正助は、湯の沢集落の運命に関わる話かと身構え緊張していた。正助は出発に先立って万場老人に意見を訊いた。

 

 

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

 

 

 

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