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2018年9月 2日 (日)

小説「死の川を越えて」第112話

 

 

 

「県議会の動きは聞いておる。ハンセン病は恐ろしい伝染病だから隔離せよというのが、県議会の空気らしい。湯の沢は草津の温泉街に接していて非常に危険だというのだ。今度の牛川知事は非常に立派な人物と聞くがどうやら同じ考えをもっているらしい。偉い人にも無知と偏見があるのじゃ。湯の沢集落の歴史と意義、そして我々の決意を県議会に分かってもらわねばならぬ。そのために、森山さんは重要な人物じゃ。お前の役割は大きいぞ」

 

「俺には、大変過ぎる仕事ですね。不安です」

 

「なんの。飾らず力まず、思うことを伝えればよい。シベリアの体験を思えば何でもあるまい」

 

 万場老人はきっぱりと言った。

 

 それから数日が過ぎたある日、正助は県会議長室で森山抱月と向き合っていた。イエスを学んでいることをリー女史が伝えていたせいか、正助は森山の態度に親しみを感じた。森山は歩み寄り口元に微笑を浮かべて言った。

 

「正太郎君は元気かな」

 

「はい、いたずらで妻が手を焼いています」

 

「は、は、は。利発で将来が楽しみじゃ。ところで、湯の沢集落のことだが、世の流れは複雑じゃ。国の方も関心を示し始めた」

 

「湯の沢集落が動くとか、なくなるとかいうことがあるのですか。私たちはとても心配です」

 

「うむ、わしは湯の沢集落を訪ね、君たちの話しを聞いて、あの集落の素晴らしさを知った。その後、調査もして、君たちの言っている意味がよく分かった。マーガレット・リーさんがあれほど魂を入れ込んでいることも重視しなければならぬ」

 

「もし、湯の沢集落が解散とか移転とかいう方向なら私たちは闘わねばなりません」

 

 正助の気迫を受けて森山の目が光った。

 

「勇ましいことを言う。何か最近変化がありましたか」

 

 

 

※土日祝日は、中村紀雄「死の川を越えて」を連載しています。

 

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