« 小説「死の川を越えて」 第105話 | トップページ | 人生意気に感ず「広島の記念式典と自国第一主義。子ども代表の訴え」 »

2018年8月12日 (日)

小説「死の川を越えて」 第106話

 

「その意味が山田屋で初めて分かった気がするの。神様の命令と思っていらっしゃるのね。異国の神様って分からないけど何か凄(すご)い力なのね」

 

「俺もそう思うんだ。俺はシベリアで大変な体験をした。撃たれて土に埋まって、もう駄目だと諦めた時に救われた。今思い出しても身の毛がよだつのは海底洞窟だ。今振り返ると神様に救われたと思えてならない。さや、俺は、あの日から心にかかっていたのだが、リーさんに近づいて神様のことをもっと知ろうと思うのだがどうだろう」

 

「まあ、あなた」

 

 さやはそう言って、大きく見開いた目で正助を正視した。

 

「実は私も同じことを考えていたの。あなたのいない時、お腹の正太郎を産むかどうか大変迷って聖ルカ病院のクリスチャンの女医先生に相談しました。先生は京都大学の小河原先生を紹介して下さいました。私は、こずえさんと京都大学へ行き小河原先生を訪ねてその教えを聞いて産む決意をしました。今振り返ると神様の力が働いたような気がしますわ」

 

「2人とも不思議な体験をしたのだね」

 

 さやは頷きながら袂(たもと)に手を入れた。拳に何かが握られている。

 

「実はあなたに言い出せないことがありました」

 

「いったい何だい」

 

 正助は不思議そうな顔をしてさやの目を見た。さやは頷いて拳を開いた。

 

「あっ」

 

 正助は思わず叫んだ。さやの手に小さな十字架が光っている。

 

「明霞さんが私とこずえさんに、御守りにと言って下さいました。大切にしてね、御縁があるといいわねと言いました。そして明霞さんはそっと、首にさがる同じような十字架を見せてくれました。おそらく明霞さんはこの神様を信じているのよ」

 

「そうか、そうだったのか。明霞さんがこずえさんとお前に・・・」

 

 そう言って、正助は感慨にふける様子であった。

 

 ある日、正助夫婦とこずえはリー女史と会っていた。

 

「先生、先日の山田屋ではお世話になりました。あんな感動は初めてです。新しい世界を見た思いです」

 

 正助がこう言うとリー女史は表情を一変させた。

 

「まあ、私こそ、とても感動でした。皆様とイエス様を囲むことが出来たのですもの。教会でないところで、教会を実現出来たなんて。奇跡です。私の胸、今もドキドキです」

 

「私たち、今日、あなたの神様をもっと知りたくてやってきました」

 

「おお、ワンダフル。なんと素晴らしいこと。あなたたちの上にイエス様の姿が見えるようでございます」

 

 

 

※土・日・祝日は、私の小説「死の川を越えて」を掲載しています。

 

|

« 小説「死の川を越えて」 第105話 | トップページ | 人生意気に感ず「広島の記念式典と自国第一主義。子ども代表の訴え」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 小説「死の川を越えて」 第106話:

« 小説「死の川を越えて」 第105話 | トップページ | 人生意気に感ず「広島の記念式典と自国第一主義。子ども代表の訴え」 »