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2018年7月21日 (土)

小説「死の川を越えて」 第99話

 

 

 

 

 

一、 議論は熱く燃えた

 

 

 

 遠来の客を迎える場所には正助が働く山田屋が用意されていた。万場軍兵衛、さや、こずえ、いつもの正助の仲間たちの他に、集落の役員や正助の呼び掛けに応じた仲間も加わり、会場は賑やかだった。そして、人々は、聖ルカ病院のリー女史と岡本トヨが参加していることにも驚いた。また、人々は、美しい韓国人の娘に好奇の視線を注いだ。

 

 正助が進み出て言った。

 

「皆さん、この方々はドイツ人のカールさんと韓国人の明霞さん、そして通訳の田中さんです。明霞さんは朝鮮で差別に苦しむ私たちの仲間です。シベリアで死ぬところを私は多くの人に助けられました。

 

今回の大震災で多くの朝鮮人が殺されたことに、向こうでは大きな衝撃を受けています。カールさんは、私たちに特別話したいことがあるそうです」

 

 大きく頷くカールの目に何か強い決意が現われている。その時、通訳の田中が発言を求めた。

 

「その前にドイツについて日本人の私から少し説明したいことがありますが宜しいでしょうか」

 

 正助が笑顔で承諾を示すのを見て、田中は話し始めた。

 

「ドイツは西洋の大国ですが、世界の強国を相手に戦って敗れ非常に大変な状況です。日本はドイツの敵でした。日本が叩きのめしたドイツのカールさんと仲良しになったのが不思議に思えます。話はそれましが、そういう大変な状況で大変恐ろしい思想が広がり始めています。それは、人間とは何かということに関わる考え方です。カールさんは、韓国に来て、韓国でも同じ考えが広がることを恐れました。カールさんは韓国の差別の実情を見ました。朝鮮人が日本人によって差別されている。そして、ハンセン病の人が人間扱いされていない。韓国と日本は一体で日本が支配しているから、差別の原因の一つは日本にある。そこで、日本に行きたいと思っていたら、大震災が起き思いもよらないことで多くの朝鮮人が殺されました。

 

「カールさんは、キリスト教徒の使命を持って日本に来ました。そんなカールさんの話しを是非聞いて下さい」

 

 田中は一気に語ってカールを促した。

 

 

 

 

 

※土・日・祝日は、私の小説「死の川を越えて」を掲載しています。

 

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