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2018年7月 8日 (日)

小説「死の川を越えて」 第95話

 

 

 

さて、万場軍兵衛が、藤岡の朝鮮人虐殺は県議会が取り上げるに違いないと言ったことはどうなったであろうか。それは、綱紀粛正の建議案とそれに関する森山抱月の発言となって実現した。

 

 すなわち建議案では、「暴民が勢いづくのを見逃して職責を顧みない警察がいる」「今、これを根本的に粛正しなければ、県政の将来が心配である」と指摘し、だから「当局は速やかに警察官の粛正を断行して欲しい」と訴えた。

 

 そして森山議長は、建議案について自分の考えを次のように表明した。

 

「藤岡事件は警察官の責任観念と見識の欠如を現す。責任を明らかにした措置をとらねば警察の威信を保つことは出来ません」

 

 森山議長は、このように警察官の責任感と見識を問題にした。森山の胸中には、警察官が地域のハンセン病患者を圧迫して苦しめているという思いがあった。彼は、この議会で町田議員がハンセン病は秘密病だと言って警察官を批判したことを、議長として警察官の見識の問題として改めて指摘したのであった。また、森山議長は、自ら抱き続ける信念をここぞとばかり言い放った。

 

「朝鮮人を虐待することは、単に朝鮮人だけの問題ではありません。それは、誤解・差別・偏見の問題です。つまり、広く人間をどう見るかの問題なのです。ですから、この議会で議論されているハンセン病患者とどう向き合うかということで共通の問題なのです。群馬県議会は、明治の御世に、全国に先がけて廃娼県を実現させました。その誇りを忘れてはなりません。廃娼もハンセン病患者の救済も、そして朝鮮人の保護も、人間尊重という点で共通の問題です」

 

 

 

※土・日・祝日は、私の小説「死の川を越えて」を掲載しています。

 

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