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2018年4月 1日 (日)

小説「死の川を越えて」 第65話

 

「大山知事は群馬県知事として本県に赴任されたか、それとも群馬県の政友会知事として来たか、県民はそれを知りたがっている」

 

「そうだ」

 

 傍聴席から声が上がった。議長がきっとして視線を投げた。本島議長は政友会所属であった。木檜がいきなりとんでもないことを言い出した。議員たちはこう思って、次に何がこの男の口から飛び出すかと固唾を呑んで待った。

 

「群馬県知事でない実例が多くある」

 

 木檜泰山は、言葉を切って知事を見据えた。会場は水を打ったように静かになった。

 

「例をあげる。県会議員選挙に臨んでは極端に官憲の力を濫用して政友会関係者の当選につとめた。実例をあげれば、県の土木課長が吾妻郡に電話して、人を集めさせ、道路のことは知事様の御考え一つでどうにでもなるから村民に政友会を応援させて欲しいと働きかけた。又、長野原役場にも同様の働きかけを行った」

 

「簡単に簡単に」

 

「議長、中止させるべきだ」

 

 木檜は意に介すことなく続ける。

 

「政友会の選挙のために道路予算を立てたと言われても仕方あるまい。現在民間では政友会なら道をつけてもらえる。政友会に願わなければ何も出来ないと言われている。政友会に頼らねば何事も出来ないという空気が充満しておる。こんなことでまともな県政が行えるのか。特に怪げんに耐えないのは・・・」

 

「問題外、問題外、中止、中止、議長、なぜ中止を命じないのか」

 

「中止を命じます」

 

本島議長の言葉は騒然とした怒号の中でかすれている。

 

「私の質問演説だ。問題外ではない」

 

木檜は政友会議員を睨んで言い放った。

 

 

 

※土・日・祝日は、私の小説「死の川を越えて」を掲載しています。

 

 

 

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