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2018年4月 8日 (日)

小説「死の川を越えて」 第67話

 

木檜泰山は、最後に重要な地元問題があると言って、ハンセンの問題を取り上げた。ハンセン病、湯の沢集落という言葉を聞いたさやとこずえは身を固くして固唾を呑んだ。

 

「私の地元、草津の湯の沢には、ハンセン病の人たちが住んでいる。差別された人たちを救うのは、国と県の使命ではないか。県は何をしているか。ハンセン病の人たちを救うのは社会の正義である。政党色をむき出しにして、不公平な施策を行っている大山知事に、人間を救う正義を実現できるのか問いたい」

 

 木檜のこの発言に大きな拍手が湧いた。さやとこずえは、顔を見合わせて頷き合った。二人の女は、恐いと思っていた県議会に意外な味方を発見した思いで大きな勇気を得たのであった。

 

 木檜は、ハンセン病に関する中央の動きを示し、群馬は意識が低い、こんなことで国家社会に真に貢献できるのかと訴えた。

 

 さやとこずえは、県議の木檜の様子を万場老人に報告した。老人は身を乗り出して、二人が互いに語ることを一語も聞き逃さじと耳を傾けていた。

 

 聞き終わると静かに言った。

 

「森山さんの言ったことは本当だった。今の話でそれが分かったぞ。木檜という人は、ハンセン病という社会の不正義を許さないと森山さんが言った意味が分かったのじゃ。お前たち、本当にご苦労であった」

 

 さやとこずえは誉められていかにも嬉しそうであった。

 

「いずれ、森山さんに頼んで、木檜先生に会わねばならぬ。地元であるから何よりも重要な人物なのじゃ」

 

 万場老人は自分に言い聞かせるように言った。その後、木檜泰山の身に大きな変化が起きた。大正九年、この人は国政に打って出て、帝国議会の衆議院に入ることになるのである。

 

 

 

※土・日・祝日は、私の小説「死の川を越えて」を掲載しています。

 

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