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2017年12月 9日 (土)

シベリア強制抑留『望郷の叫び』第21話

 

 

34頁に及ぶこの小冊子は、隠して持ち帰るには大変なものであるし、実は危険を冒して抑留者が持ち帰る性質のものではない。なぜなら、自分たちを奴隷のように苦しめたスターリンに、考え得る最大限の賛辞と感謝を表明し、ソ同盟への忠誠を誓ったこのような文章を抑留中に作ったことを恐らくすべての日本人は恥ずかしいと思ったに違いないからである。

 

 私は、自分の研究テーマにとって重要なこの書類を、ぜひ持ち帰りたいと思った。そこで、さりげなく聞いてみた。

 

「これは昔、日本人がロシアの皆さんに大変お世話になったことが書かれている大切な書類です。私はこれからの日ロの友好、発展のために役立てたいのでコピーを頂きたいのですが」

 

 ドミトリーが丁寧に通訳する。バタポア女史もそばでお願いしますという素振りを笑顔で示してくれた。

 

 女性部長は、広報部長のサレーエフさんとちょっと相談している風であったが、にっこりして言った。

 

「私の独断ではできません。上の方に相談してみます。許可が出たら連絡します」

 

 ドミトリーとバタポアさんが同時に私を見た。その視線は、よかったね、大丈夫ですよと言っているようであった。

 

 翌日、ドミトリーが連絡して、首尾よく許可されたことが分かり、コピーを手に入れることができた。

 

 エフドキーモヴァ館長はコピーの冊子を差し出しながらこう言った。

 

「日本の方にこれを渡すのは初めてですよ」

 

 私は、ワクワクする気持ちを抑えて書類を受け取った。

 

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著「シベリア強制抑留『望郷の叫び』」を連載します。

 

 

 

 

 

 

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