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2017年10月 3日 (火)

小説「死の川を越えて」  第15話

 

「湯之沢の本当の姿は、この親分、いや椚田さんの話をお聞き下さい」

 

 リー女史は頷いて椚田太平に視線を移した。

 

「湯の川地区は、死の川と言われる湯川が流れる谷にありやす。生き物は生きられねえ流れで、昔は生きられねえ患者を投げ捨てたそうです。この集落の特色は、患者が助け合って理想の村を作る目的で出発した点です。へえ、ハンセン病の患者が村を動かし税金まで納める。こういう所は、世界広しといえど他にねえと聞きました。ある人は、ここからハンセン病の光が出ていると申します。ところが今、湯之沢は乱れ、この光が消えようとしているのです」

 

 ここまで話した時、リー女史は身を乗り出し、手を上げて話を制した。

 

「ハンセンの光が消えようとしているとは」

 

「へえ、患者は開村時の心意気を忘れ、生きる希望をなくし、神も仏もねえと思うようになったのでごぜえます。わしも最近まで、悪者の代表みてえなものでごぜえやした。今、必要なことは、まっとうな人間の心を取り戻すことだと気付きやした。そのきっかけは、キリスト様との出合いでやす。わしらの心に芽を出し始めた小さなものを大きく育てるために草津の湯之沢に来てもらいてえ。死の川と共に、死にかかっているのはわしらの心でごぜえます。どうかよろしくお願えしやす」

 

 宿沢は側で聞いていて、大きく頷き、目頭をぬぐっている。親分がこんなに心に響く深い話をするとは想像もしなかったのだ。この時、リー女史に変化があった。姿勢を正し親分の手を取って言った。

 

「素晴らしいお話です。私、死の川を見たい。皆さんの心のお手伝いがしたい。ハンセンの光に接してみたい。私を案内して下さい」

 

 リー女史の顔は少女のように輝いて見えた。椚原は、それを見て心に叫んだ。

 

〈俺の賭が当りやがった。これは偉えことになるぞ〉

 

 上州へ帰る椚原と宿沢の足取りは躍るようであった。

 

 

 

※毎週火・木は、上毛新聞連載中の私の小説「死の川を越えて」を掲載しています。

 

 

 

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