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2017年10月19日 (木)

小説「死の川を越えて」  第20話

 

「何でも尋ねてよいと申されておる」

 

万場老人が固い空気をほぐすように口を開いた。

 

「誰から給金をもらうのですか」

 

正助の唐突な質問であった。

 

りー女史の英語まじりのたどたどしい日本語を通訳が補った。

 

「神の命令です。神に応えられたという喜びが何よりの報酬なのです」

 

「神様って、見えないけれど本当にいるんですか」

 

権太が聞いた。

 

「おられます。神は偉大です。神の前では皆平等です。国境も、人種も、肌の色もないのです」

 

リー女史は、静かに微笑んでいる。若者たちは、目の前の異国の女性から何か犯し難いものが滲んでいるのを感じた。<これが神というものなのか>。正助はふとそう感じるのだった。

 

 若者たちが不思議そうな顔をしているのを見て、リー女史は言った。

 

「イエス様は、昔、王様に逆らって十字架にかけられて死にました。イエス様は人類の為に身を捧げ、そして教えを示されたのです。イエス様を思えば何でも耐えられます。この世の中は矛盾でいっぱいですが、神を信じて戦うことで一歩一歩進んで行くのです。私はこの谷の病と闘うことを考えています。皆さんと会えたのも神様の力です」

 

リー女史は、言葉を選び、短く区切りながら、語りかけた。万場老人が口を挟んだ。

 

「西洋の神のことは、すぐには分かるまい。この国では、昔の戦国時代、ザビエルというキリスト教徒が来てキリスト教を広めた。江戸時代に入って、キリスト教は厳罰となった。明治になって、それが許され、群馬にもキリスト教が少しずつ広まっておる」

 

「安中の新島襄ですね」

 

正助が言った。

 

「おお、そうじゃ。その教えを受けてキリスト教徒になった県会議員がおる。昔は湯浅治郎がいた。また、最近の県会には、わしの友人の森川抱次さんがいる。信者になるならぬは別のこととして、お前たち、異国の神を白い目で見たりせぬことが、この集落のためじゃぞ」

 

※毎週火・木は、上毛新聞連載中の私の小説「死の川を越えて」を掲載しています。

 

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