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2017年10月14日 (土)

シベリア強制抑留『望郷の叫び』第4話

 

気付くともう一人の大柄な女性がドミトリーの背後から近づき、私に手を差しのべた。彼女は、日本政府から勲五等瑞宝章を受けたロシア人ガリーナ・パタポアさんだった。これからの数日間、この二人には大いに助けられることになる。特に、いまだ知られていない、見捨てられたようなビロビジャンの日本人墓地に案内されたこと、国立文書館でまさかと思っていた「スターリン大元師への感謝文」を入手できたこと、青柳由造さんがロシア民間人の家庭で倒れた時の危機脱出など、この二人には並々ならぬお世話になった。これらについては、後に触れることにする。

 

 

 

二 極東シベリアの拠点ハバロフスク市のこと

 

 

 

 私たちの目的地であり、塩原さんが二年以上も収容されていたハバロフスク市とはどんなところか。私たちは専用の車に移り、宿舎のインツーリストホテルに向った。好青年ドミトリーは、私の質問に答えて、流暢な日本語でハバロフスクのことを教えてくれた。

 

 ハバロフスク市は現在、人口70万人。極東シベリア最大の都市で、また文化や経済の中心都市でもある。バイカル湖のあたりから流れ出し、日本海の間宮海峡に注ぐ全長4,400キロメートルの大河アムール川に面して立つこの都市は、かつてはシベリア強制抑留の拠点で、多くの強制収容所が存在した。少年の頃、歌手の三波春夫がハバロフスク小唄を歌うのを聞いたことがある。

 

ハバロフスク ラララ ハバロフスク

 

ラララ ハバロフスク

 

故郷は遥かな 雲のかげ

 

いつの日に妻や子と逢えるやら

 

男泣きする夢ばかり

 

その時、良い唄だなあと思った。特に三波春夫が、「故郷は遥かな雲のかげ」の部分を歌うときの表情が印象的であった。その後、この歌が収容所の人々によって作られたことを知った。望郷の思いに駆られた人々が故郷の山河や妻子を思い描きながら盛んに歌ったのだ。三波春夫自身もハバロフスクの収容所で過ごした一人であった。これらのことを知って、改めてこの歌を聞くと、人々の思いが切々と伝わってくる。

 

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著「シベリア強制抑留『望郷の叫び』」を連載します。 

 

 

 

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