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2017年10月 5日 (木)

小説「死の川を越えて」  第16話

 

 

 

一、 コンウォール・リーの登場

 

 

 

 ある日のこと、例の3人が万場老人の家の戸口に立っていた。正助は戸に手をかけようとして、その手をそっと引っ込めた。権太と正男が何事かと首をかしげる。正助が小声で言った。

 

「こずえさんがいるよ」

 

正助の鼻は、戸の隙間から仄かに流れている女人の香りを敏感にとらえていたのだ。正助は中に声をかけた。

 

「こんにちは」

 

「はーい」

 

明るい女の声。正助の予感は的中し、戸は中から開かれた。こずえの美しい姿がそこにあった。

 

「お入り下さい。御隠居様がお待ちです」

 

殺風景なあばら家をぱっと明るくしているようなこずえの笑顔である。

 

3人の顔を見るなり万場老人は言った。

 

「こんな小屋、しかもハンセンの老人の家など訪ねる女はこずえのみと思っておったが、最近珍客があった。しかも異国の女なので仰天した」

 

「さすがの御隠居様があの慌てよう。本当におかしい様でしたわ、ほ、ほ、ほ」

 

こずえは思い出して愉快そうに笑った。

 

正助がすかさず言った。

 

「今日、話して下さるという女のことですか」

 

「そうじゃ、驚いたのは異国の女ということだけではない、むしろその話の内容なのだ」

 

一同は、老人の口から何が飛び出すのか身を固くして待った。

 

「先日のことじゃ。この家の戸を叩くものがある。現われたのは2人の女で、その1人は異国の女ではないか。もう1人は通訳の日本人じゃ。腰を抜かす程驚いたぞ。は、は、は。これがそばにいたからまだよかった。この穴倉のような小屋で、この顔じゃ、どうなるかと思った」

 

万場軍兵衛は、おかしさを堪えているこずえに視線を投げながら言った。

 

 

 

※毎週火・木は、上毛新聞連載中の私の小説「死の川を越えて」を掲載しています。

 

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