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2017年9月26日 (火)

小説「死の川を越えて」  第13話

 

 キリストの坊主の説教ということで好奇心も手伝って参加者は増えた。その中には子分を連れた太平の姿も時々あった。暫くして、説教が順調にいき始めたと思われた頃、米山司祭が太平を訪ねて来た。

 

「親分、困ったことが起きました」

 

「困ったこととは何だね」

 

「実は、宿屋組合が私たちの説教に反対で、松村さんで説教が出来なくなりました」

 

「それは一体どういうことだね」

 

 椚田は片腕をまくって身を乗り出した。米山は、組合が説教の目的を誤解していると語った。

 

この頃、各地のハンセン病患者を相手にする旅館が金のある患者を取り合っていた。米山司祭を派遣した熊本にはハンセン病患者が集まる拠点があったので、説教によって、そこへ客を引こうとしていると誤解されたのだ。

 

米山の訴えは椚田の義侠心に火をつけた。椚田は、松村屋で説教を始めるにつき自分に仁義を通した米山の窮状を見過ごすことは出来なかった。

 

 椚田は早速、力を尽くして米原のために伝道場を確保した。米山は喜んで説教に励んだ。それを見て椚田は伝道所を訪ねて言った。

 

「先生、何か看板を出した方がよかんべえ。ナンマイダの方は大層なものを出してやがる。負けちゃなんねえでがしょう」

 

「その通りです。遠慮していました。親分に言われて勇気百倍。考えます」

 

「それがいい。早い方がいい」

 

 米山はこう言われ、興奮した様子でどこかへ飛び出して行った。

 

翌朝のことである。米山は親分に言った。

 

「良い名前を考えました。光塩会です。聖書の言葉『地の塩、世の光』から思いつきました」

 

 米山の声は弾み瞳は輝いていた。

 

 

 

※毎週火・木は、上毛新聞連載中の私の小説「死の川を越えて」を掲載しています。

 

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