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2017年9月 9日 (土)

今、みる地獄の戦場 -ニューギニア慰霊巡拝の旅― 第69回

 

 山深く進むにつれ横たわる死体が増えていた。ラエからキアリまでの間で2,200人の兵士が死んだというのだから場所によっては正に死屍累々という状況であった。遺体をまたいで進む。初めは耐えられなかった死臭も今は感覚が半ば麻痺していた。死体が裂けて中から盛り上がった蛆があふれている。岩田さんは、これを「湯が煮え立つようだ」と表現した。別の人の戦記では「小指ほどもある大きな蛆が体じゅうを這いまわって」とあるが、熱帯の蛆は大きいのであろうか。歩いている兵士の怪我のところにポ、ポとうどん粉を振りかけたように小さな点が沢山見える。それはハエの卵であった。一見怪我もなく歩いている兵士でも背中にびっしりハエがたかるようになると不思議にその人の命は短かったという。

 

 一人一人の兵士が限界線上を生きているのと同様にそれぞれのグループもぎりぎりの状態で行進していた。助け合いもグループ内のことで、他をかえりみる余裕などなかった。あるグループが野豚をつかまえた。貴重なごちそうであった。たちまち解体し全てが食用となる。それを見た岩田さん達の仲間が内蔵の一部を分けてくれと申し込んだら断られたという。豚の内臓は、今日、私達の食卓にものるごちそうであるから、サラワケットの山中では宝物であったろう。岩田さん達は、近くを捜したら、親を失った子豚を捕まえることが出来た。

 

 山中を進むと所かまわず、糞の山でみじめな光景であった。中には、糞の中に顔を突っ込んで死んでいる兵士もいる。規律を守る兵士が何でそんな節度のないことをするのか。「マラリアで下痢をしている上、ほとんどの兵士がろくなものを食べていない。草や木の芽、木の根など繊維質のものをやたら食べるから、便ばかり出る。変なものを口に入れて、マラリアで腹をこわしている上にまた食中毒をする。道を一歩はずれて尻をまくればと思うが、道をはずれれば、尻を出したまま谷底にころげ落ちる危険がいっぱいなのです」

 

 岩田さんは笑いながら振り返った。

 

 

 

 

 

※土日祝日は、中村のりお著「今、みる地獄の戦場 -ニューギニア慰霊巡拝の旅―」を連載しています。 

 

 

 

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