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2017年9月28日 (木)

小説「死の川を越えて」  第14話

 

「うーむ。聖書のことは分からねえが、世の光が気に入った。それに致しやしょう」

 

 椚田の胸には、万場老人のハンセン病患者の光という言葉が甦っていた。

 

 キリスト教の動きが活発になるにつれ、湯の川地区に良き師を招きたいという声が強くなった。それには、仏教側が時々名のある僧を招いていることへの対抗意識も手伝っていた。

 

そんな時、マーガレット・リー女史の話が伝えられた。イギリスの貴族の名門に繋がる出自で、社会の虐げられた人々の救済に一身を捧げ、神のようにあがめられているという。椚田は、この話を光塩会の中心人物である大沢襄から聞いた時、すかさず言った。

 

「その先生を湯之沢にお呼びしようではありませんか」

 

「来てくれれば、そんな素晴らしいことはないが、どうかなあ」

 

 大沢はため息をつくように言った。

 

「いちかばちかですぜ。我々の世界では丁か半かでやす。閃いた時は行けるもんです。もっともわしは今、足を洗いやしたがね。呼吸は心得ている。この話は勝ちそうな気がするんでさあ」

 

 大沢は賭博と聖書をいっしょにすることに戸惑った様子であったが、親分の勢いに押されて東京牛込の教会にリー女史を訪ねることになった。人々が計画を練っている時、椚田が突然顔を出して言った。

 

「この勝負、俺が振ったサイコロだ。中途半端じゃ念力は通じねえ。俺にお伴させておくんなせえ」

 

 人々は一瞬驚いたが、反対する理由は見当たらない。この集落の熱意と覚悟を案外伝えられるかもしれないということで話は決まった。

 

 東京の聖バルナバ教会では、リー女史と通訳でリーの日本語教師でもある井村祥子が待ち構えていた。

 

 大沢が来訪の目的を話した。大澤は、湯の川地区とハンセン病の患者に関する事実を詳しく話した。

 

リー女史は井村祥子が置き替える日本語にじっと耳を傾けた。椚原は異国の女性の白い肌、青い目、高い鼻筋に神秘的なものを感じ身を固くしていた。

 

 

 

※毎週火・木は、上毛新聞連載中の私の小説「死の川を越えて」を掲載しています。

 

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