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2017年9月21日 (木)

小説「死の川を越えて」  第12話

 

「へえ、よく分かる気がしやす。御座の湯は頼朝が入ったからこの名がついたというではねえですか。草津のこんな山奥に、源頼朝が来ていろいろ動いたということは、何か我々患者の運命と関係あるような気がいたしやす」

 

「そうじゃな。親分、わしも同感ですぞ。われら患者と結び付けて、頼朝を生かすということが、重要なことではないか。頼朝は神になった。この神を我々の心の芯に据えようとしたのが、開村の時の集落の人たちの心意気であり、意地なのだ。心の芯にするということは、患者同士が力を合わせ、生きる道を開くことじゃ。患者にとっての理想の村を目指すことじゃ。これは、ハンセンの患者にとって、希望の光を育てること。わしは、湯の川地区こそ、ハンセン病患者の光が発するところと信じておる」

 

「ちげえねえ。大きな意地にちげえねえ。ハンセン病患者の光とは大変なことだ。目の前が開けた気が致しやす。これからは、この湯之沢集落を生かすために力を尽くそうと思いやす。それが仁九郎の頼みに応えることですな」

 

 椚田太平は自分に言い聞かせるように大きく頷いた。

 

 その後、湯の川地区に新たな宗教の動きがあった。それは、九州のハンセン病院の院長、アンナ・リーが湯之沢にキリスト教を伝道しようとしたことである。

 

リーは司祭、米山完治を派遣し、米原は旅館、松村屋で説教を始めた。米原は、この動きを始めるにつき、ある人の勧めで椚田太平に話しを通すことにした。

 

「へえー、ヤソの坊さんが仁義を切りに来るとはおったまげたもんだ。ナンマイダの方は何も挨拶なしにいきなり奉加帳だ。お前の所も奉加帳を回すんかえ」

 

 太平は奉加帳を叩きつけた仁九郎のことを思い浮かべながら言った。

 

「いえ、私のところでは、そういうことはありません」

 

 米山は笑いながら言った。

 

 

 

※毎週火・木は、上毛新聞連載中の私の小説「死の川を越えて」を掲載しています。

 

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