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2017年1月31日 (火)

人生意気に感ず「応徳温泉に。すいとんの味。重監房。小説を読む人々」

 

◇29日取材で草津を訪ねた。冬景色と化した西吾妻を進むと、雪をかぶったまだら模様の山林の上に一際輝く雪の世界が神々しいように見える。草津白根である。国道292に入り、白砂川を北上し六合(くに)の道の駅の一角にある応徳温泉に入る。入湯料は300円。外の雪景色を見ながら日頃のストレスを癒した。

 

 ぬるい湯であるが天下の名湯で、地元の人は草津より良質だと言う。平成4年には皇太子が入られたことで有名である。

 

◇近くに80歳の老婆が営む食堂があり、私はここですいとんを食べるのが楽しみになっている。すいとんは、戦中戦後の飢えの時代を知る者にとっては懐かしい。キノコ、しみ豆腐、ゴボウ、かぼちゃなど様々なものが入って実に美味しい。料金は700円。御主人が弱って施設に入ったので気楽に1人で商売を続けているという。立居振舞、笑顔や話し方が亡き母を思わせる。

 

 私はこの老婆からはちみつを入手したが、ふと話すその言葉が気になった。近年「ハチがどっかへ行っちまった」というのだ。「蜜を置いたまんま消えちまった。このあたりの箱は、みないなくなった。どこへ行ったんだかね」と。私は世界的に問題になっている「蜂群崩壊症候群」といわれる現象を思い出した。こんな山里にも地球的異変が押し寄せている兆候なのか。昆虫などは、私たちにははるかに及ばない超能力を備えている。すいとんを味わいながら近未来への不安を感じた。

 

◇私の小説、上毛新聞連載の「死の川を越えて」は、やがて特別病室「重監房」に近づく。何度も訪れて学芸員の方とはすっかり親しくなった。究極の牢獄ともいうべき重監房で亡くなった人は22人であるが、監房内で死んだ人は14人で、あとの8人は外に出された後、健康を取り戻せずに死んだ人であるという。また、14人のうち、3~4人は縊死(いし)、つまり首をくくって自殺した人だという。これらの人たちは、公開裁判という司法手段を経ることもなかった。最高裁は非を認めて謝罪したが、裁判の内容は不十分だった。最高裁は果たして重監房の実態をどこまで知っていたのか。

 

 この日、3か所に寄ったが、さすが草津、私の小説を読んでいると言われ嬉しかった。六合の豆腐屋の御主人、温泉図書館の職員の女性、そしてコーヒーを飲んだ店で働く老婦人である。今朝第14回、大陸の嵐の章に。(読者に感謝)

 

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2017年1月30日 (月)

人生意気に感ず「トランプの本格外交が。アメリカ第一と中国。日米同盟の意義」

 

 ◇安倍首相は28日夜、トランプ大統領と電話会談、2月10日ワシントンで首脳会談。いよいよ日米の直接の接触が始まった。日本とだけでなく、世界各国とのトランプ外交が本格的に動き出した。霧の中から突然姿を現した巨大怪物にどう向き合うか。世界中が戸惑っている。就任演説でも外交方針については明確なメッセージがなかっただけに各国の戸惑いは大きい。 

 アメリカを中心に世界の舞台は回っているから、戸惑いつつも、各国はアメリカと対応しなければならない。トランプ大統領との電話会談の申し入れは殺到していると言われる。

 

◇トランプ大統領との電話会談の順位が、アメリカにとっての重要度を示すかのようだ。

 

 28日の電話会談は、日本が最初で、ドイツ・ロシア・フランス・オーストラリアの順。

 

日本が重視されているのは、中国との関係で日米同盟がいかに重要かを示すといえる。

 

◇トランプ大統領は就任演説で「アメリカ第一」を強調した。世界で第一であることを示すための最大の障害物たる存在は中国である。

 

 中国は世界の工場となり、世界の貿易の舞台に登場した。中国にとって、最大の貿易相手国はアメリカ。アメリカの対中貿易赤字は右肩あがりに増え続けている。中国は貿易で稼いだドルで軍備の増強を続けている。中国の存在は、貿易(通商)と軍事(安全保障)が一体となって強大化を遂げ、アメリカの脅威となっている。アメリカが中国を抑えて「アメリカ第一」を実現するためには、日本の存在が鍵なのだ。

 

次期米国務長官ティラーソン氏は南シナ海で中国が造成した人工島へ中国がアクセスすることを認めないと明言した。中国も容易に後にひけない。アメリカは軍事の増大を叫んでいる。米中戦争の危機がないとはいえない。日米同盟の重要性は、日米両国にとって測り知れない程大きい。日本の世界史的役割は、戦争を避けてアジアの平和を実現し、世界の平和に貢献することである。その場合、日本が基本とすべきものは、日本国憲法である。日本の近代化は日英同盟を一つの基盤として達成された。この同盟がなければ日露戦に勝てなかった。21世紀は日米同盟の時代になった。日本は基本的に海洋国家である。日米同盟の舞台は、かつて激しく戦った太平洋である。この海に新たな海洋国家を目指して進出を図る巨竜が中国である。米中で太平洋を支配するようなことをさせてはならない。(読者に感謝)

 

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2017年1月29日 (日)

『今、みる、地獄の戦場』  第3回

 

 遂に出発の日が来た。小寺知事、県議会副議長、針ヶ谷町村会長、青木次男県遺族会会長を中心とする遺族会の方々、そして報道関係者等、総勢33名が成田空港に集合し、出発を前に団結式が行われた。

 

 団結式では、青木会長、小寺知事、針ヶ谷町村会長、そして私がそれぞれの立場で挨拶した。知事が慰霊巡拝に参加することは初めてということで、青木会長はあいさつの中で大変感激している様子であった。

 

 カンタス航空60便は、成田空港を20時15分離陸、一路南を目指す。約5千キロの夜空を飛んで翌朝、まだ暗い中に、オーストラリアのケアンズ国際空港に着いた。現地時間は22日午前4時30分。1時間の時差があるから日本時間では午前3時30分である。

 

 ズンと鈍い音がして、着陸の衝撃が伝わってくる。それは5千キロの大空を無事に飛んで大地に降り立ったことを知らせる嬉しいサインであった。ほっとした安堵感を噛みしめる。

 

 成田から出国ときも危険物持ち込みに対するチェックは厳重であったが、ケアンズでは一際厳しい。同国人に対する扱いと外国人に対するそれの差であろう。バッグの中を細かく調べられた者、あるいは爪切りや裁縫用の小さなハサミを取り上げられた者もいた。ニューヨークの同時多発テロに始まった緊張が世界を覆っていることを肌で感じる。

 

 

 

土日祝日は、中村紀雄著「今見る 地獄の戦場」を連載します。

 

 

 

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2017年1月28日 (土)

『今、みる、地獄の戦場』  第2回

 

 

 

 しかし、今回の旅は、通常のそれとは違う、飢えやマラリアまでも敵としなければならなかったあの凄絶な戦いで、命を捨てた人たちの慰霊に行くのである。多少の危険を問題にしては英霊に対して申し訳ない、遺族の方々は、このように考えているのかも知れない。また、遺族でない私たちもこのように考えるべきだ。私は10月7日ついに始まったアメリカによるアフガニスタン空爆のテレビニュースを観ながらこんな思いを巡らせていた。

 

 私には、今回の慰霊巡拝を機会に考えてみたいことがあった。それは、現在行われているまったく新しい形の戦争の背景にあって私達が突きつけられている問題である。大ざっぱに言えば、次のようなことである。世界には非常に豊かな国と極端に貧しい国が存在する。貧しい国にも独自の文化や歴史や伝統があるのに、豊かな国は自分の価値観を貧しい国に押し付け、これを支配しようとしている。それでは21世紀の世界平和は実現出来ない。異なる価値観や文化を互いに尊重することが新しい時代の平和の基礎である。日本は豊かな国の側に立っている。アジアの貧しい国に対して日本はどうあるべきか。命を捨てた多くの英霊の犠牲を本当にこれからの平和のために生かすには、このことを考えねばならないのでは、ということである。

 

 

 

土日祝日は、中村紀雄著「今見る 地獄の戦場」を連載します。

 

 

 

 

 

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2017年1月27日 (金)

人生意気に感ず「アジアの留学生に。メキシコの壁。水責めの拷問。前橋の激戦」

 

◇1月が終わる。今月末は、誠に忙しい。30日は午前、多くの留学生を相手に講義し、夜は「ふるさと未来塾」。その間に、ある企業で時局を語る。留学生には「日本の現在と未来」を話す。初めに日本の伝統文化、相撲を取り上げ、19年ぶりに日本人の横綱が誕生した喜び、それから近づく巨大地震のことに触れ、トランプ大統領出現に揺れる日本の姿に及ぶ。

 

 アメリカの変化に対し、アジアの留学生がどういう反応を示すのか興味あるところ。ここでは激動する世界で、日本が安定した姿でいるのは、日本国憲法の故であることを話すつもり。日本は平和と人間を大切にする国で、アジアの一員であり、皆さんとは真の友情を築きたいと願っていることを伝える。志あるアジアの若者の輝く瞳には、日本の未来が映っている気がする。

 

◇メキシコ国境の「壁」つくり。これはトランプ大統領の排外主義、大衆迎合象徴である。知能よりも力で圧倒する過去の恐竜が再現したかのようだ。

 

 国境の長さは約3,100キロで、建設費は約2,8兆円と試算されている。トランプは「国境のない国家は国家でない」と言っている。

 

 しかし、コンクリートの国境だけが国境ではない。万里の長城を再現するのは時代錯誤。現代のベルリンの壁は破壊された。愚策の象徴に対し公に異を唱える者が少ないとすればトランプは既に裸の王様である。

 

◇自由、人権、民主主義等の旗を掲げて世界を指導してきたアメリカの変化は、世界で横車を押す国々の立場を相対的に有利にしている。北朝鮮、フィリピン、中国、ロシアなどだ。韓国の混乱もあり、今まで追い詰められていた北の金正恩がほっと息をついているかも知れない。

 

◇トランプの愚策の連発を見ていると、西部劇のガンマンを連想してしまう。テロ容疑者に対する「水責め」の拷問を肯定する発言をしている。IS(イスラム国)の蛮行を責められないのではないか。日本が世界で一番安定していると言われる意味を噛み締める。アメリカに安易に同調しないことだ。真の友は時に苦言を供さねばならない。日本の立ち位置を確かにしているものは日本国憲法である。

 

◇前橋の市議選は激戦になりそうだ。社会問題に前向きな若者が減り、選挙にならない地方もある今日。実りある民主主義の基盤になれば。(読者に感謝)

 

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2017年1月26日 (木)

人生意気に感ず「メキシコの壁。万里の長城。ベルリンの壁。TPP・永久離脱。冬の異常気象」

 

 ◇トランプ大統領が動き出した。大統領令への署名だ。メキシコ国境の壁作りとTPPからの永久離脱表明に驚いている。メキシコの壁作りは、大統領選中にまず、世界を驚かせた発言。私たちはまさかと笑い呆れた。私は直ぐに万里の長城を連想した。これはトランプ氏の政治姿勢を象徴する事態である。「署名」によって、現実の問題となった。そして、これはアメリカが進もうとしている内向き政策・保護主義・大衆迎合・アメリカ第一主義などの象徴となりつつある。どんな規模で、どんな壁を作るのか。万里の長城は北方民族の侵入を防ぐため秦の始皇帝が始めた。宇宙から肉眼で見える唯一の人工物と言われてきた。現代版万里の長城のつもりか。中国の軽蔑の笑が聞こえるようだ。 

 

◇「壁」は障害であり、遮る手段である。時に敵や邪魔ものを防ぐ物理的手段として使われた。それは言葉で解決出来ない場合の手段である。ベルリンの壁は壊され、万里の長城は世界遺産となった。メキシコの壁は造られたとして、どんな運命を辿るのか。21世紀の最も進歩した筈の国の愚策の象徴となるに違いない。その費用はどうするのか。メキシコが払う筈はない。愚策のために血税を使うことにアメリカ国民は承知するのか。

 

◇トランプ氏は、TPPからの永久離脱を表明した。そこには、TPPをビジネスの問題と割り切るビジネスマンの姿が見える。TPPは経済だけに限らず、自由、公正、法の支配などの高い理念を実現しようとするもの。

 

 これを経済の論理で割り切って自国の産業と雇用が守れると考えることは、短絡であり、大衆の人気取りである。このような深い哲学のない軽薄な政策は結果的に中国を利することになるだろう。西欧文明は行き詰っている。東洋の価値が見直されつつある。中国は悠久の歴史に自信を取り戻しつつある。東西の価値と理念を調和させ、近代国家を築いた日本に対して、中国は秘かに敬意を抱いている筈だ。日本は日米同盟を賢く使い、これを進化させながら、中国との新しい関係を発展させるべきだ。私は中国と接触する中でこう思う。

 

◇鳥取県の異常な雪、車の渋滞は夏の異常豪雨の冬版に他ならない。異状寒波は凄い。北海道では零下30度を超すところが出た。世界では富の格差が進む。冬の異常気象は貧しい人々に容赦なく襲いかかる。政治は無力である。(読者に感謝)

 

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2017年1月25日 (水)

人生意気に感ず「日中友好新年会での中国大使。稀勢の里の横綱に思う」

 

 ◇昨日、日中友好新年会に出た。会場は神田の如水会館。身を切るような寒さだった。会長は前中国大使の丹羽宇一郎氏。丹羽氏は米中貿易戦争という言葉を使っていた。そして、トランプと習近平だけで自転車のハンドルを切るように世界を動かすことは出来ない、今年は最も忙しく最もやりがいのある日中関係になると語っていた。 

 

 今年は日中国交正常化45周年という節目。それは田中内閣の下で、昭和47年(1972)に達成された。それから5年後、福田内閣によって、日中平和友好条約が結ばれた。来年はその40周年という節目を迎える。このように日中にとって非常に重要な時に、トランプ大統領が現われた。そして、日本は安倍首相が強調するように戦後70年という節目。日本に関わる大きなうねりが重なる時を迎えた。このような時なので、中国大使が何を語るのかに私は注目した。

 

◇程永華中国大使はいつものように用意したメモを見ながら話した。ソフト、堅実、誠意、これがこの人物から受けるいつもの印象である。程氏は、語った。「日中関係は改善の軌道に乗った。日中間の良い点は拡大し悪い点は縮小したい。しかし、順風満帆とはいえない。良くない国民感情を改善したい。日中は引っ越し出来ない関係にある。保護主義が強まる中で、日中は地理的、文化的、経済的に非常に重要である。今年の45周年、来年の40周年、これは日中飛躍の重要なチャンス。国が難しい時こそ、民間が重要で民をもって官を促すということがある」このような内容が私の胸に残った。

 

◇稀勢の里の横綱昇進にほっとした日本人は非常に多い筈だ。やはり、相撲という伝統文化は日本人の心の支えの一つ。チャラチャラした浮草のような文化が現われて消える。そんな中で相撲は神代から続く不思議な存在だ。モンゴルばかりが横綱となってと淋しく思っていた。

 

 最近のテレビでは女性客が多いのに驚く。一瞬の勝負にかける力士にとって小さな土俵は大きな舞台に違いない。稀勢の里は中学を卒業して角界に入った。学校だけが学問の場ではない。日々の精進を通して多くのことを学んできたことだろう。テレビでは中学生の頃4番を打った野球少年の姿が紹介された。不器用らしいところがいい。これからが大変だ。歓迎祝いなどに振り回されないで欲しい。せっかくの日本人の「横綱」を守ってもらいたい。(読者に感謝)

 

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2017年1月24日 (火)

人生意気に感ず「分断を超えられるか。安倍氏の就任。稀勢の里優勝に」

 

 ◇アメリカは分断を乗り越え、再び「偉大な国」を取り戻せるのか。新大統領が就任演説を行っている時、多くのアメリカ国民は、自分たちの大統領ではないと訴えてデモを行っていた。 

 

 トランプは次のように国民に呼びかけた。「肌の色が黒でも褐色でも白であっても私たちには同じ愛国者の血が流れている」と。この言葉は、メキシコ国境に壁を築き、移民を排斥し、イスラム教に敵意を示す彼の価値観とどのように整合するのか。

 

 リンカーンが南北戦争によって分断された国民に訴えた演説が大きな効果を発揮したのは、その内容である高い建国の理念。それに彼の人格の力の故である。不動産王、市民とかけ離れた大富豪。この大統領の肌の色を超えた人間の理解、貧しい人々に対する理解、更にこれらの理解の根底をなす民主主義に対する理解が果たして可能なのか。不動産ビジネスの手法で国を動かし、世界を動かそうというのか。

 

 中国に対する強硬姿勢は一見頼もしい。しかし、深い理念や哲学を踏まえないとすれば目先の利益を狙った「取り引き」によって、日本にとって重要な安全保障も動かされはしないか。こういう大統領と付き合うには、日本が確固とした政治姿勢を持つことが何より求められる。その際の最も重要な要素は憲法である。

 

◇トランプの就任演説との関連で安倍首相の施政方針演説を考える。首相は「廃墟と窮貧の中から毅然と立ち上がって次の時代を切り開いて世界第3位の経済大国、世界に誇る自由で民主的な国を未来に生きる世代のために創り上げた」と強調。そして、アメリカとの関係については、「日米両国には、世界の平和と繁栄のため、ともに尽くす責任がある」こと、そして「日米同盟こそ我が国の外交・安全保障政策の基軸である」と訴える。これらを貫くためには、日本の立場を確固なものとした上で、日本と組むことがアメリカの国益にかなうことを新大統領に理解させねばならない。

 

◇稀勢の里の優勝に感動した。千秋楽を待たずに優勝し、千秋楽に横綱白鵬を破った。久しぶりの日本人横綱の誕生である。国技でありながら横綱はモンゴル人ということで淋しかった。日本を代表する伝統文化である。若い頼もしい力士が多く育っている。日本人横綱の誕生は大きな励まし。日本人全体に勇気を与える。(読者に感謝)

 

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2017年1月23日 (月)

人生意気に感ず「就任演説は。アメリカ第一とは。法王ナチスと批判」

 

◇深夜、私は歴史的瞬間の言葉を待ち、そして聞いた。アメリカ大統領の就任演説だからだ。期待は裏切られた。歴代大統領は就任演説で理念と理想を語った。それは圧政を倒して打ち建てた建国の深い理念であるために聞く人の心に響いた。またそれは、民主主義の理想である故に普遍性と説得力があった。多くの歴代大統領の言葉が人々に感動を与えたのはその言葉を発する大統領の胸に「理念」と「理想」についての熱い思いがあったからだ。 

 トランプ大統領の演説にも、夢と希望と理念を語る部分はあった。例えば「とても大切な信念があります。国家は市民に奉仕するためにあるということです」。しかし、これらが私の心を捉えないのは、トランプの胸に熱い本物がないからに違いない。

 

 繰り返す「アメリカ第一」が薄く表面的なものに感じられた。アメリカが偉大で、第一である理由は、経済力や軍事力ではない。これは、偉大さの要素であっても本質的なものではない。アメリカの真の偉大さは、自由・民主主義・人権といった普遍的価値が脈々と受け継がれている点にある。トランプタワーを背にした新大統領からはこれらの力が伝わってこない。

 

「アメリカ第一主義」の表現が、内向き、保護主義、ポピュリズム(大衆迎合主義)、ナショナリズム(民族主義)と結びついて響いている。更に、演説の中の次の表現が、トランプの口から出たものだけに気になる。「全ての国々が自己の国益を第一に考える権利がある」。人類の普遍的価値で世界を指導してきたアメリカの重しがなくなろうとしている。世界中が、この状態で国益第一で走り出したら大変なことになる。今、世界の情勢は危険なところにある。歴史の節目であり何が起きるか分からないのである。

 

◇ローマ法王が21日、ポピュリズム(大衆迎合主義)がナチスドイツの独裁者ヒトラーを生み出すと警告した。トランプがこれに当たるかについて判断を下すのは時機尚早としつつもメキシコ国境に壁をつくり不法移民の流入を阻止する政策を、壁と有刺鉄線で自国を防衛しようとしたナチスと重ねて批判した。

 

◇アメリカの民主主義はキリスト教と結びついている。民主主義は本来宗教と分離すべきもの。トランプは「神のご加護」を訴える。アメリカを十字軍と見るISを刺激することだろう。(読者に感謝)

 

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2017年1月22日 (日)

『今、みる、地獄の戦場』  第1回

 

―パプアニューギニア慰霊巡拝の旅

 

(1) 緊張の中の出発

 

 海外戦跡・慰霊巡拝事業は、群馬県遺族の会創立40周年を記念して、昭和61年度から県及び市町村補助事業として開始されたものである。今回の慰霊巡拝はその一環として行われた。第二次世界大戦においてニューギニアでは、約12万人の犠牲者が出たが、そのうち9,230名が群馬県出身者だという。鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)、この世の地獄といわれたニューギニアの戦跡はこの数字が示すように群馬県と関わりが深い。

 

 平成13年10月21日から始まるパプアニューギニア慰霊巡拝は、果たして実行されるのか、私には若干の不安があった。去る9月11日、ニューヨークで発生した同時多発テロが原因となって世界情勢は日毎に険悪となっていたからである。その影響は、世界的規模でいろいろな面で深刻になりつつあった。特に、航空機を利用した旅行はどこでも急激に少なくなっていたのである。また、身近なところでは、11月に実施される筈の県議会特別委員会のヨーロッパ視察は当分の間延期ということになっていた。私の友人の中には、何もこのような危険な時に通常でも治安がよくないと言われる未開の地に行かなくても、と心配する人達もいた。

 

 

 

土日祝日は、中村紀雄著「今見る 地獄の戦場」を連載します。

 

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2017年1月21日 (土)

 

産経新聞群馬版に連載した小説「楫取素彦」の転載は終了致しました。長いことご愛読下さりありがとうございました。次は「今みる地獄の戦場」をこのブログで連載致します。

 

 これは平成13年、私が副議長の時行われた慰霊巡拝の際書いた小品です。この作品の中に登場する岩田亀作さんは現在98歳で元気でおられます。しかし、多くのニューギニア経験者はこの世を去っています。それだけにこの作品を少しでも多くの方に読んで頂くことを願っております。

 

 

 

                                 中村紀雄

 

 

 

はじめに

 

 太平洋戦争が終わり半世紀以上が経ち、実際に従軍した生き証人の方々も多くは80歳を超え、その数も少なくなってきました。一方、長いこと平和に慣れた多くの人々は、平和を当たり前のこと、そして戦争は無縁のことと考えています。しかし、世界の多くの所で争いが繰り返され、多くの血が流されています。これを自分達と無縁な出来事と考えるのは誤りであり許されないことです。この日本でも、平和がいつまでも続くものでないことは歴史を振り返れば明らかなことです。

 

 太平洋戦争は日本人の貴重な体験として生かされなければならないのに、単なる歴史上の事実として片づけられようとしています。21世紀がスタートし、真に豊かな社会を目指す今こそ、戦争と平和の意味を考えなければならないと思います。

 

 そんな思いから、慰霊巡拝を機に、この小冊子を送り出すことにしました。

 

 

 

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2017年1月20日 (金)

人生意気に感ず「世紀の瞬間近づく。世界が自国本位に。危険なナショナリズムは。日本は犯罪の減少に」

 

 ◇いよいよ世紀の瞬間が近づいた。アメリカの大統領就任式がこれ程世界の耳目を集めたことはない。それは、大統領選挙を通して余りにドラマチック、劇画的、そして西部劇のようであったからだ。そして、ほとんど全てのマスコミの予想を覆して大統領選を征してしまった。すると政治的意識が低かった人もにわかにトランプ氏の一挙手一投足に別の意味で注目を始めた。ツイッターの一言までが株価を動かし、日常のことに影響を与えるからだ。

 

◇全世界はあたかもトランプ劇場になった感がある。保護主義、内向き、アメリカ第一主義等を掲げ、それに喝采を送る大衆の光景。

 

 このポピュリズム(大衆迎合)が世界の流れになりつつある。イギリスがEUを離脱、フランスも極右の女党首の躍進が著しく、ドイツも移民に寛容な政策が批判されヒトラーの「我が闘争」がバカ売れだと言われる。

 

◇新大統領は就任式で何を語るのか。メキシコ国境に本当に壁をつくるのか。TPP拒否を宣言するのか。日米同盟と対中国強行姿勢は。ロシアに弱みを握られていると言われるが対ロ政策は、IS対策はロシアに任せるのか。円安進行に対するドル安誘導はあるのか。株価の暴騰を予測する向きがあるが果たしてどうか。アメリカ国民が切ったトランプが当たるか裏目に出るか。日本流では丁か半かだ。

 

◇就任式当日は抗議デモが数万人、翌日の女性団体の抗議デモには20万人、それぞれが参加予定。国民が分断された状況の今後が気にかかる。

 

 アメリカは暗殺の国である。リンカーン、ケネディ、レーガン(未遂)などの例を考えると、トランプ氏は最も暗殺候補だろう。ISも暗殺を企て、また暗殺の資金を集める運動があり、かなりの額が集まっているといわれる。おかしな国なのだ。このような米国内の混乱に乗じて力を伸ばそうとしているのが中国である。しかし、一方で中国は、予測不能、無茶苦茶やトランプを恐れてもいる。日本の役割は重要だ。オーストラリアからアジア諸国を含め、日本との連携を強め、アメリカの暴走に適切な歯止めをかけねばならない。間もなく劇場の幕は上がる。

 

◇刑法犯の認知数が全国的に減少している。群馬県は戦後最少を更新。何を物語るのか。防犯カメラの普及もあるが、それだけではない。犯罪は社会の実態を反映する。良い社会にするために犯罪の質的変化に備えるべきだ。(読者に感謝)

 

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2017年1月19日 (木)

人生意気に感ず「日中友好協会の様子。ヒトラーの我が闘争。日本国憲法。習近平」

 

◇群馬県日中友好協会の新春交流パーティは、ロイヤルホテルの会場で盛大に行われた。冒頭、私は会長として、最悪の日中関係の中で船出したこの会は早くも4年になる。国際状況は依然として厳しい。この会の役割と今後の方向を考える上で発会の時の「原点」に立つべきだと訴えた。

 

「原点」とは、会則の目的に掲げる「これまでの歴史を踏まえ」「先人が築いた友好の絆を発展させ」「両国の平和と発展に貢献する」こと。私はこの中でも、歴史を踏まえることが最も重要で、中国は歴史的視点を抜きにしては理解出来ない国であることを強調した。

 

 日本にとって中国ほど長い歴史的関係をもつ国はない。国の政治体制が違うこの国とは、この歴史を踏まえ誠実に、そして強(したた)かに対応しなければならない。

 

 中国、アメリカ、ロシア、この世界の3極の接点に立って新たな、そして重要な役割を求められる国が日本である。このような大きな世界の動きの中で、日本の一地方に何が出来るのか。その答えが日中友好協会の動きの中にある。

 

◇世界の動きには大きなサイクルがあるようだ。世界は一体というグローバリズムに反する動きが新たな潮流になろうとしている。これは危険な兆候である。自由、平等、民主主義という普遍的価値よりも自国の利益優先が強調されている。トランプ新大統領の出現、イギリスのEU離脱などはその端的な現われ。これは世界の分裂傾向といえる。このような隙間から危険なナショナリズムが頭をもたげる。

 

 ヒトラーの「わが闘争」の注釈本が大変な売れ行きだという。活字離れが進む中で、この本が正しく読まれるか疑問である。ヒトラーの悪魔的な天才ぶりから興味本位に読まれる恐れがある。

 

 このような世界の動向の中で、日本の存在が光を放つ。その基盤は日本国憲法である。それは、平和、自由、民主主義、人間の尊厳などの普遍的価値を掲げ、日本はそれを実践しているからである。世界の大国が暗い方向に進む中で日本に陽光が降り注いでいる感がする。

 

◇習近平が世界経済会議、タボス会議でグローバリゼーションを訴えている。トランプの内向きな保護主義に対抗する意図であろう。法の支配などで世界の水準から遅れている中国は、真の変身を目指しているのであろうか。(読者に感謝)

 

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2017年1月18日 (水)

人生意気に感ず「阪神から22年、その教訓は。群馬の危険か所。日中交流の意味」

 

 ◇阪神大震災から早くも22年。月日はあっという間に過ぎた。平成7年(1995)1月17日であった。巨大地震が切迫する今、この大地震を振り返る意味は大きい。この地震の教訓を十分生かせないまま、東日本大震災を迎え、そしてまた、更なる巨大地震を平気で迎えようとしている。 

 

 阪神大震災の犠牲者は6,434人。高速道路を支える太いコンクリートの柱が飴のように曲り、人間の技術が自然の威力の前にいかに無力であるかを示された。首都直下型が起きたら、高層建物群はどう耐えるのだろうか。技術の国日本に世界の目が注がれている。

 

◇大地震が近づく中、群馬は大丈夫という安全神話は防災の妨げである。16日、人が集まる県内大型施設で「倒壊、崩壊の危険性が高い施設」32カ所が公表された。震度6強で危ないというもの。安全神話に対する警鐘である。群馬も危ないと言われて久しいのだ。

 

◇今日(18日)、群馬県日中友好協会の新春交流パーティが開かれる。私は会長として挨拶するが、改めて中国と対応することの重要さと難しさを感じる。最近の中国の対外姿勢は傍若無人にも見える。こういう国と友好関係を築かねばならない。尖閣問題、南シナ海の人工島問題。これらは私たちの頭上に振りかざされた大鉈にも思える。それにも拘わらず、ロシアと比べ、私は中国に対して大きな親しみを感じる。そこには、日中の長い歴史があるからだ。中国は歴史を踏まえて捉えねば到底理解できない。

 

 歴史を振り返れば、魏志倭人伝の邪馬台国以来の深くホットな関係である。日本は紛れもなく東洋の一員なのである。それが近代に至って西洋文明を受け入れ現在は西側陣営の先進国となっている。これは、日本が二つの文明に属していることを示す。これが日本の特色である。両文明の衝突の様相が著しい今日、日本の役割は増々重要になった。今日の挨拶では、このような歴史的視点も話したい。

 

◇時あたかも、西側陣営に歴史的変化が起きている。トランプ新大統領の就任演説が明後日20日に迫った。民主主義の本家アメリカが怪しくなってきた。トランプが何を語るかに世界の目が注がれている。中国に対して厳しい姿勢を打ち出しているだけに、中国は息を呑む思いで就任演説を待ち構えているだろう。(読者に感謝)

 

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2017年1月17日 (火)

人生意気に感ず「ロシアのサイバー攻撃は。安倍首相と日本の役割。健康寿命とは」

 ◇ロシアのサイバー攻撃のもつ深刻な意味を私たちは今認識しなくてはならない。アメリカの大統領選を攻撃して、その結果に影響を与えたとすれば、アメリカだけでなく世界の選挙がその攻撃に晒されることを意味する。

 

 選挙は民主主義を実現する過程であり民主主義を支えるものだから、ロシアのサイバー攻撃は世界の民主主義に対する挑戦である。

 

 民主主義の本家が民主主義を否定するこんな国と手を組んで何が出来るのか。オバマ大統領が言った。「現在、民主主義は危機にある」と。これは次期大統領トランプに向けられたものであることが、プーチンと手を組もうとする姿を見てよく分かるのである。

 

 世界に広がるテロを指して、第三次世界戦争が始まっていると言う人がある。ロシアのサイバー攻撃を合わせて考えると、第三次大戦中にあることの感を一層深める気がする。

 

◇こんな世界状況の中、安倍首相が東南アジア各国を回っている。これらの国々は、オーストラリアを別にして、アメリカに不信を抱くと同時に、中国には大きな脅威を感じている。日本の役割は実に大きい。日本は歴史的に確固としたアジアの一員であると同時にアメリカの同盟国であり西欧文明に位置を占める。西欧文明一辺倒では世界の秩序が成り立たない。日本はアジア諸国から尊敬と不信の両方の視線を受ける要素をもつ。不信は第二次世界大戦でアジアを侵略したことに関する。原爆による壊滅から見事に立ち上がった力は、大戦を戦った力でもある。その力が人類にとって本物であることを示すものが日本国憲法である。日本が最も安定した国と評価される理由はこれらの総合に対して与えられるものだ。

 

 安倍首相は、アジアの力を結集して、中国、ロシア、アメリカに対応すべきである。それは覇権の主張ではない。平和、自由、正義、法の支配などが根を張って息づいていることを示すのである。先日の「真珠湾の演説」を世界は見ている。トランプもプーチンも習近平も見ていたに違いない。それが日本国民の姿であることを世界に知らせることが日本の活路に繋がる。

 

◇県は健康科学大と提携して県民の健康寿命延伸に取り組み始めた。これは地方の特色を活かすべき地方の課題である。少子高齢社会の難題を解く重要なカギは健康長寿である。健康長寿一年の延伸は労働人口数百万人に当たる。(読者に感謝)

 

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2017年1月16日 (月)

人生意気に感ず「テロ対策とテロ準備罪創設。トランプの品格」

 

◇平和な国日本を脅かす最大の課題はテロである。宗教や世界の様々な矛盾と結びついて信じ難い自爆テロを繰り返す組織が国家的規模に発展して久しい。「IS」である。

 

 アメリカを最大の標的とするが、原発を抱え五輪を控える無防備な日本。そして、世界の観光客が押し寄せる日本。平和ぼけと言われる日本人の関心は薄いが、テロは私たちの日常生活の敵である。まさにその対策は焦眉の急。

 

◇ISは国際テロ組織だから対策には国際的協力が不可欠。そのための国際条約である国際組織犯罪防止条約に先進国で唯一日本は加盟していない。加盟には、この条約に対応する国内法が必要なのに、それがないからだ。今やっとその国内法整備の取組が本格化した。なぜ遅れているか。犯罪を「計画段階」で処罰対象にするため、不当逮捕などの人権侵害を引き起こす恐れがあるからだ。「居酒屋で上司を殴ると相談しただけで逮捕される」などという誤報が広まったこともあった。危険の切迫性を理解しないもの。近く検討される法案名は「テロ等準備罪」。対象はテロ組織を筆頭に暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺集団など。平和な国日本は、おとぎの国ではない。世界の渦巻く奔流の中で美しい国を守らなくてはならない。

 

◇トランプ次期大統領の記者会見は、この男の不可解さを一層深める結果となった。品格のなさをさらけ出した。品格とは国家のそれ。淋しく去っていくオバマ大統領にはそれがある。アメリカ国民は大統領選で壮大な間違いを犯したのではないか。選挙戦でクリントンに投じた票はトランプを上回っていた。国民を分断した状態でアメリカは世界的役割を果たせるのか。ISに対する世界の結束を維持できるのか。ISを支える力は世界の矛盾の中に潜む。トランプ氏はIS対策でロシアと組んで、ISを掃討する考えらしいが、プーチンのロシアもおかしな国だ。そのロシアにトランプは変な弱みを握られているらしい。サイバー攻撃に助けられて当選し、ホテルでの性的スキャンダルを報じられる大統領のかざす正義に説得力はない。アメリカの国家的品格は何といっても、民主主義という人類の理想である。20日の就任演説は、この建国の理念と整合するものでなければならない。語る人が偽物か本物かはこの理念に照らして明らかになる。(読者に感謝)

 

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2017年1月15日 (日)

小説「楫取素彦物語」第203回

 楫取は一瞬、驚きの表情を現し、次に深く頷いた。そして、三人の顔をしげしげと見詰めた。その時翁の老いた目が変化したのである。それは、若い力が甦ったように感じられた。

 

 そして楫取は口を開いた。

 

「あれは明治十五年であった。群馬で廃娼を布達した。議会、県民と力を合わせて播いた種であった。あれがここまで育つとはのう」

 

モルフィは続けた。

 

「嵐の中で小さな芽は踏まれながらも育ちました。正義の光が小さな芽を守ったのです」

 

それに頷いて山室が言った。

 

「モルフィ殿を見て救世軍が運動に参加し共に闘いました。我等のウイリアムブース大将が来日し、明治天皇に拝謁し、その後、地方巡りでは第一に前橋を選びました。閣下が廃娼を始められた原点の地だからです。大将は孤児院を訪ね、このことさんにお会いされました。赤城山の麓で生まれ、不幸な少女時代を過ごしました」

 

 楫取はことをじっと見詰めて言った。

 

「苦労されましたな。赤城や前橋市、利根川、様々な思い出が結びついております」

 

 ことは一冊の古い書物を楫取の前に置いて言った。

 

「郭に出される時、母が人の心を忘れるなと言って行李の底にこの本を入れました」

 

「おお、修身説約ではないか。これが郭の中で行き続けたというのか。恐れ多くも、この原稿をは明治天皇に御覧に入れたのだった。今日は皆さんに会えて、人生最良の日となりました。あの世で多くの同志が待っていますが、良い土産話が出来ました」

 

 

 

 

 

                 完

 

 

 

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

 

 

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2017年1月14日 (土)

小説「楫取素彦物語」第202回

 やがて山室から楫取様のお許しが出て日時も決まったと連絡があった。ことは大きな決意をして東京に向かった。心には複雑なものがあった。モルフィに会うことは大変に懐かしいことであった。楫取という貴族院議員に会うことは大変に名誉なことに思えた。しかし、また、この三人に会うことは、捨てた自分の過去と再会することでもあったのだ。

 楫取に会う前に三人は会った。

 モルフィが嬉しそうに言った。

「やー、大崎ことさん、懐かしいです。山室さんから聞きました。すっかり厚生して、立派な人生を歩んでおられる。」

「お恥ずかしいです。すべて皆様のお陰です。神様のお陰です。」

 ことは深々と二人に頭を下げた。そこには新満楼の遊女の面影は微塵もなかった。

 それを見てモルフィが続けた。

「私たちの大きな悩みは、廃業して完全に立ち直る人が少ないことです。あそこに身を落とすと、人間は心も大きく傷つきその回復が難しいのです。世間の冷たい目、偏見も大きな壁です。ことさんのように理解ある男と結婚し、キリスト教に入信までされた。奇蹟です。神様の力です。あなたのような人が一人でもあると私は、私の運動が間違っていなかったと救われる思いがします。本当にありがとうございます。」

 白髪が増えたモルフィの目に涙がにじんでいた。

 この時山室軍平が言った。

「さあ、楫取様がお待ちです。参りましょう。」

 明治四十年、楫取素彦翁は七九歳に達していたが、まだかくしゃくとして、時々宮中に出任していた。楫取翁との出会いは翁の行動計画の合間をとらえ関係者の特別の計らいで実現した。モルフィが口を開いた。

「お久しぶりです。あれから十何年か過ぎました。あなた様にお会いし、廃娼の原点と歴史を知りその後に運動に進むことが出来ました。あなた様にご紹介いただいた穂積博士にも大変お世話になりました。心から礼申し上げます。こちらは救世軍の山室軍平殿、そしてこの者は新吉原の郭から我々が救出した山田ことと申し現在立派に更正しキリスト教徒となり孤児院で働いておる者でございます」

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2017年1月13日 (金)

人生意気に感ず「難しい超大国中国は。オバマ氏の涙。講談社社員の逮捕」

 

◇今月18日に群馬県日中友好協会の新春交流パーティが行われる。私はこの会の会長なので日中の今日の状況が大変気になる。尖閣への領有権主張、南シナ海での人工島建設、そして空母の展開。これらは眠りから醒めて立ち上がった巨竜の姿にも見える。日本は、これにどう対応するか。ここに日本のほとんどの課題が結びついていると言っても過言ではない。

 

◇中国は切っても切れない国。それは歴史的にとらえねば理解できない。両国の関係は魏志倭人伝の中に見る古代邪馬台国の昔から今日に至る迄連綿と続く。特に文化の結びつきは強く漢字を例にとってもそれは分かることである。

 

 日本は近代に入り西欧の価値観にどっぷりと踏み込んだ。その極点とも言えるものが日本国憲法である。永久に不変のものはない。西欧の価値観も揺らいでいる。日本は東洋と西欧の二つの基盤をもつ特異な国であり、それは世界に誇れるもので、この点に基づく日本の役割は増している。日本が最も安定した美しい国と言われる根底には、このような日本の特色がある。18日、私はこのような歴史に基づいた戦略的互恵関係を築くことの大切さを挨拶の中で述べようと思う。

 

◇トランプ氏が登場しオバマ大統領が去る。オバマ氏の退任演説はトランプ氏の姿と対称的だ。民主党が大統領で敗れた原因がオバマ氏に帰せられている感がある。トランプ氏は目先の現実をとらえ大衆の喝采を浴びている。オバマ氏は高い理想を訴え続けた。退任の演説でも「民主主義の危機」を強調した。トランプ氏の姿は正に民主主義の危機を現す。それは大衆迎合(ポピュリズム)の象徴であり、安っぽい劇画に見える。記者会見で私はその感を深めた。20日の就任演説で何を語るのか待ち遠しい。オバマ氏の評価は歴史が判断を下すだろう。黒い肌が世界最高の権力の座についた。これこそ、合衆国建国以来のアメリカの民主主義の到達点であった筈。世界の舞台は私たちを乗せて激しく動く。オバマ氏に対する歴史の裁断を待てないのだ。

 

◇今をときめく講談社の編集次長が妻殺害容疑で逮捕された。子育てをめぐる争い、家庭内暴力(DV)などが報じられている。真実は何か。連日このような事件が続く。このような争いは氷山の一角に違いない。生きるのが難しい現代社会。それは家族で和を保ちつつ生きることが難しい社会でもある。(読者に感謝)

 

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2017年1月12日 (木)

人生意気に感ず「トランプ氏の記者会見と民主主義。光格天皇の勇気」

 

◇今朝深夜、トランプ氏の記者会見を見た。半年振りの会見であり、目前に迫った20日の就任演説との関係も窺えるかと思われ興味をもって見た。第一印象はメディアとの激しい対決姿勢である。CNNの記者を指して、「あなたの質問は受けない」と激しい口ぶり。

 

 メディアとの対決は中国と対比すると際立っている。中国では国家権力でメディアを抑え込んでしまう。これは民主主義とメディアとの関係を浮き彫りにするものだ。民主主義では国民が主人で、国民が主人であるためには情報を得て政府を批判できねばならない。メディアは国民の「知る権利」を支えるもの。中国にはこの構図がない。トランプ氏がメディアと対決することには、アメリカが民主主義の元祖であるだけに重大な問題が潜んでいる。

 

◇トランプ氏は日本についても発言した。日本、中国、メキシコと良い取引が出来ていないというのだ。貿易問題は就任演説でも語られるだろう。ロシアと良い関係をつくると強調していた。プーチンとトランプ、両氏にはその過激性と非良識性に於いて共通性が見える。崩壊前の超大国を目指すロシアと、かつての超大国の回復を目指すアメリカは果たしてどんな関係を築くのか。ロシアとの関係は中国との関係に直ちに影響する。日本との関係ではもっと本質的なことを聞きたかった。就任演説では日米同盟について語るに違いない。それは、中国、ロシアに対する世界戦略に関わるからだ。

 

◇昨日このブログで光格天皇に触れた。現在の天皇の直系で、優しい人柄と言われるが、幕府に対して激しい政治的主張をし、皇室の存在感と地位を高めた。それは天明の大飢饉の時である。浅間の大爆発と重なる。地域によっては人々は人肉まで食べた。天皇は幕府に対して救済を申し入れた。これは、「禁中並公家諸法度」に反すること。現在の憲法で、天皇が政治的発言を禁じされているのと同様である。幕府は要請を認め1,500俵の米を放出した。誠に勇気ある行動であった。天皇の行動は尊王思想を高めることになり、日本の社会を大きく変えていく一つの原点になった。

 

 現天皇の譲位の発言も大きな政治的意味を持つ。しかし、それは個人を超えて日本全体の利益につながる。認知症の天皇という事態は象徴性を傷つけ、日本の文化に暗い影を落とすからだ。新元号は明るい未来思考がいい。(読者に感謝)

 

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2017年1月11日 (水)

人生意気に感ず「朝礼でトランプ氏を。天皇譲位と光格天皇。日本アカデミーの新年会」

 

 ◇昨日(10日)、顧問を務めるある企業の朝礼でトランプ次期大統領について話した。社員教育の一環である。昨年から、トランプ氏を巡り「まさか」の連続。その一挙手一投足、呟きにまで世界が振り回されている。株が急上昇を続け、メキシコ進出を図るトヨタが恫喝された。トランプ氏の正体は何か。その政策、世界戦略の具体像は何か。それは20日の就任演説で明らかになる。私はこの演説で何に注目するかを話した。

 

◇安倍さんが真珠湾を慰霊訪問して確認した「日米同盟」にどう触れるのか。中国、ロシア、北朝鮮との対応は。内向き、保護主義と言われる政策への転換は。20日、連邦最高裁長官の立会の下での「宣誓」に次いで、歴史的な就任演説は行われる。歴史の歯車が大きく回る瞬間である。未曾有の反対デモが予想される。暗殺の危険も伝えられる。世界が激しく揺れ動く中で日本の役割が増々重要になる。安定した日本を支える基盤は「日本国憲法」と「日本の伝統文化」である。そして、この両者の中にあって重要な存在が「天皇制」である。

 

◇天皇の譲位が平成31年1月1日に行われる方向で動いているようだ。ことの発端は、昨年8月、天皇が自ら「お気持ち」を表明されたことである。お気持ちの表明は、結果的に社会を動かし、政治に大きな影響を及ぼした。天皇は憲法上「象徴」であり、「国政に関する権能を有しない」。そのために政治的な発言は許されない。それ故に「お気持ち」の表明は厳密には憲法違反との関連が問題となり得る。この点は、政治の知恵でうまく進められるに違いない。世論の反対もほぼない。

 

◇天皇譲位を巡り、江戸末期、幕府と激しく対立しながら天皇の役割発揮に尽くした光格天皇が注目されている。江戸時代は天皇等の行動を厳しく規制した「禁中並公家諸法度」があったが、光格天皇は、飢えに苦しむ民への米の放出を幕府に申し出て実現させた。東北の被災地を訪れた天皇の姿には、光格天皇に重なるものがある。

 

◇今月の「ふるさと未来塾」は30日(月)6時で、昨日の朝礼で話したような「世界の情勢」と、その中に於ける日本の今後を語る予定。

 

◇9日午後8時半、私が名誉学院長の日本アカデミーの新年会。多彩な若者たちの姿に時代の潮流の中で多くの留学生を支える力を感じた。(読者に感謝)

 

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2017年1月10日 (火)

人生意気に感ず「裁判員を脅した工藤会に判決。書道の新年会に思う。育英サッカーは」

 

 ◇最近注目した事件及び裁判は裁判員脅しに関するもの。暴力団工藤会元組員に有罪判決が下った。県会議員の時、警察関係の委員会で福岡県の治安を視察し、強い衝撃を受けた。福岡県警は、民衆の敵工藤会を潰すことを最大の使命としていることを明言した。警察 

に火炎瓶を投げる、学校で先生が批判すると親が工藤会の子がいて学校に抗議が来る等、市民生活が脅かされている実態を知ったからである。

 

 裁判員裁判は平成21年、一般市民が裁判に参加するという司法の民主化としてスタート。刑事裁判の民主化は市民生活の秩序を支える根幹。その裁判員を脅して裁判を動かそうとするのだから罪は重大なのである。

 

 事件は、工藤会幹部の裁判に当たる裁判員に組員が「あんたらの顔は覚えているから」と声をかけたというもの。裁判員等は相次いで辞任した。声をかけて脅した元組員に裁判所は執行猶予付きの有罪判決を下した。事の重大性から、求刑通り実刑判決でもよかったと思う。

 

◇新年会たけなわである。昨日は(18日)書道関係の新年会に出た。県会議員の時は数をこなさねばならなかった。気持ちが入らない新年会でも、一つは義務で、また一つは選挙に備えて、時には殺人的なスケジュールで新年会回りをしたものだ。時間を見計らってさっと飛び込み、挨拶が終わると飛び出して次の会場に向かう。今は違う。真に祝う気持ちで会の雰囲気にひたっている。振り返れば上っ面をなぜるような新年会回りは会の軽視と選挙目当てで、政治不信の原因となっていたかも知れない。

 

◇会の名称が墨痕鮮やかに大書されている。そこには印刷文字にはない心が躍動している。冊子に載った作品を懇談の中でしみじみと味わった。書は書く人の人格が現われる。

 

 最近は全てが機械化して、字を「書く」でなく「打つ」時代になった。この流れの中で書道離れも進んでいる。これは人間の心までが機械化されることを意味する。今年は、第二回の日中青少年書道展が、会場を移して中国で行われる。日中間には様々な課題があるが、書には3千年の歴史がある。時を超えた心の交流が期待出来るのである。私は日中友好協会会長として、又書道協会顧問として訪中団する。

 

◇育英のサッカーが決勝進出を決めた。私は育英の理事なので力を入れて観た。数年前の野球に続くまさかがあるか。積み重ねてきた歴史の成果だ。若者の力も歴史と伝統が育てている。(読者に感謝)

 

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2017年1月 9日 (月)

小説「楫取素彦物語」第201回

 明治四十年も押し詰まったある日、前橋の救世軍の隊士が上毛孤児院のことを訪ねた。山室軍平様からと言って一通の手紙を渡した。

「その折は大変お世話になりました。ブース大将もあなたのことを大変感激しておりました。モルフィ氏に話すと、大変に驚き、かつ喜んでおられました。モルフィ氏は遠からずアメリカに帰国するかも知れないと申しております。ついてはその前に是非あなたにお会いいたしたいというのです。実は、楫取様が御高齢ながら貴族院議員をされており、楫取様に大変お世話になったモルフィ氏は帰国前に廃娼のことを報告し、かつお礼を申し上げたい、ついては、あなたのことは廃娼の輝かしい成果なので楫取様のお許しがあれば、私も含め、三人でお会いしたいと願っています。日程が決まったらお知らせしますので、その折は万難を排して上京してください。なお、その節はあの修身説約を持参してくださるようお願いいたします」

 ことにとって驚くべき内容であった。高鳴る胸を押えてことは夫の留吉に相談した。何ごとも留吉の考えを立てる習慣を貫いていたのだ。

 留吉は驚いて言った。

「お前のような者が、そのような偉い人に会えるのかい。俺に異存はねえが、粗相のねえように随分と気いつけねえといけねえぜ」

「はい、お許しいただいてありがとうございます。十分に注意いたします」

 ことは夫に美しい笑顔を見せて言った。

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2017年1月 8日 (日)

小説「楫取素彦物語」第200回

夫は初め反対しましたが私の心がかたいことを知って認めてくれました。みんな山室軍平様、モルフィ様、救世軍の皆様のお陰でございました。いつかお礼を申し上げねばと思いながら月日が過ぎてしまったのでございます。今回、ブース大将様と山室様が前橋に来られ、孤児院も訪れると聞きこれも神様のお導きと思い胸をときめかしてました。前橋駅へは子どもを連れて行き、このお方が母を救ってくれた人と申し聞かせました。今日、お会い出来ることを心待ちいたしておりました」

 山室はまばたきもせずことの話を聞きはらはらと涙を流した。ブースはいかにも感激した様子で言った。

「ワンダフル、ワンダフル、何と良い話だ。まさに神様の力。救世軍は立派な仕事をしました。私は嬉しい。この話は国に帰って多くの人に伝えることにします」

「モルフィさんにも何とかして、ことさんのことを伝えることにします」

山室は、救世軍の成果を目の前にして感無量であった。

 ことは全てを話し終わって、ほっとしたように明るい笑顔をつくり涙を流した。

 大崎ことは、今は山田姓となって強く生きていた。郭のことは、今となっては新しい人生の大きな財産であった。それはことが謙虚に生きる確かな基盤であった。あの時のことを思えば何でも耐えることが出来た。聖書の勉強を通して書く力、読む力を身につけることが出来た。

 一人息子は一郎といった。ある時、ことは一郎を前に座らせて一冊の古い本を見せて言った。

「これは、私の母からいただいた本で、私が苦しい時、私の心を救った本です。昔、群馬県には楫取素彦様というえらい県令様がおって、人間にとって、心がいかに大切であるかを思って生徒たちのために作った本です。修身説約という道徳の本です。学校にあるかもしれせんが、これは、この母にとって大切な宝。お前にあげるから、大切にして、よく学ぶようにしなさい」

 一郎は素直にうなずいた。

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2017年1月 7日 (土)

小説「楫取素彦物語」第199回

 ブース大将と山室は別室でことと対面した。

 ことは、新満楼を出たあとの歩みを語った。

「私は救世軍の婦人ホームで外の世界で生きる準備をいたしました。外があまにもちがうので、長くあそこにいた私は、外で生きることが大変だと知ったのです。それでも救世軍の皆様のお陰で、次第に気持ちの上で立ち直ることが出来ました。

 故郷に帰ると何かと大変と思い、故郷に帰りたい気持を抑えて東京のある建設会社でまかないや掃除の仕事をしておりました。そして出入りの大工、留吉と知り合いました。留吉に私は前のことを話しましたら、留吉は私を理解してくれましたので世帯を持ったのでございます

 山室は感激し、高鳴る胸を抑えて通訳した。

やっとつかんだ女の幸せ私は必死で夫に仕えて生きていきました。夫は良い人で、子ども一人授かりました。郭で働いた女は子どもは産めないと言われましたが、神様の助けだと思いました。夫も群馬なので思い切って前橋に帰ったのでございます」

 ことはここで言葉を切った。何か重要なことを言い出そうとしていることが窺えた。

「実は、私は、今、キリスト教徒でございます。私をあそこから出してくれたのも、山室様とモルフィ様、神様の導きに違いありません。留吉と出会い、子どもが授かったことも、神様の力であそこから出られたからに外なりません。神様は本当にいるのだと考えておりましたところ、前橋へ来て、孤児院の方に出会い、入信をすすめられました

山室が、ことのキリスト入信を伝えると、ブースは両手を広げ、声を出して驚いた。

「おお、ワンダフル」

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

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2017年1月 6日 (金)

人生意気に感ず「朝鮮半島の不思議。もはや北を潰せない。トランプの暗殺は。その就任演説は」

 

 ◇近代の歴史を振り返って、朝鮮半島は一種の火薬庫だった。最も近い隣国であり、中国・ロシアという大国との接点であることから日本の存亡に関わる出来事が絶えず展開されたからである。日清、日露の戦争も朝鮮半島の支配をめぐって起きた。大国に接し、その脅威に晒された歴史をもつ韓国の人々は気の毒な民族だと思う。激しい民族性はそういう歴史の中で形成されたのだろう。何かあると、かっと燃え上がる。誰かが引火性の高い国民性と言った。こういう民族の中で西欧に起源をもつ民主主義が発展することは難しい。 

 

◇朝鮮半島における北と南の状態は現代の不思議である。私が言いたいのは北朝鮮の現状である。引火性の高い国民が飢餓に追い詰められながら抵抗の狼煙(のろし)を上げることが出来ないでいる。軍事力を振りかざした恐怖の独裁権力によって抑え込まれているのだ。

 

 北の崩壊は近いと言われながら中々倒れない。南も北も自分の方こそ正当性があると主張しているが、北にとっての絶好の材料は現在の南の混乱ぶりである。「それ見ろ」と金正恩の高笑いが聞こえるようだ。

 

 北の核は本物らしい。アメリカを脅かす存在になっている。ということは日本の安全にとって最大の脅威であることを意味する。拉致問題は吹き飛んでしまったように思える。ここまで来ると北を潰すことは不可能に近い。いくら制裁を強めても抜け穴だらけらしく悲鳴が聞こえない。トランプの出現によって、何が起こるか分からない状況になった。トランプの現実主義は北にどんな変化を生むことになるのか。

 

◇今月20日、いよいよトランプ大統領の就任式。未曾有の反対デモが予測されている。まさかと恐れるのは暗殺である。アメリカの大統領はリンカーン以来、多くが暗殺の危機に晒されてきた。最も狙われる恐れがあるのがトランプだと思う。又、世界が固唾を呑んで見守るのがトランプの演説内容である。それには世界の運命に関わるメッセージが込められているだろう。中国もロシアも北朝鮮も一字一句まで分析する。勿論日本もだ。国民一人一人に関わることだから私たちも歴史を解く鍵として真剣に対面すべきではないか。

 

◇今日は県議会と上毛新聞社の新年互礼会に出る。議長、知事、新聞社のトップがこの動乱の流れをどのように受け止めるか注目したい。(読者に感謝)

 

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2017年1月 5日 (木)

人生意気に感ず「人間臨終図鑑を贈る。少子化は奈落の底へ。大腸検査。前橋市議選よ」

 

 ◇私はある親友に新年のプレゼントとして、「人間臨終図鑑」4巻を贈った。枕元に置いて眠りに就く前に読む本である。歴史上の様々な人の死が描かれている。人の死は非常に面白い。人の死は自分の死でもある。人間の死に様は生き様の極致である。与えられた天命を如何に使いきるかを考える時、人の死は大変参考になる。私は老境に入ろうとする友人を励ます意味でこの本を贈呈した。 

 

◇新年を迎え、今年も力一杯生きようと決意する時、最も大切なものは健康だと気付く。昨日、内視鏡で大腸検査をした。胃カメラは昨年やり、その他の検査も済ませ、残ったものが大腸だった。実は昨年ひどい下痢があり気にかけていたのである。76年間使用に耐えた部品は何の異常もなくきれいだった。目の前の画像の映像は赤く鮮やかで、私の生命力を物語っている。カメラを進めながら「今、大腸がんが非常に増えている」と医師は言った。高齢社会を巧みに生きて人生を享受するには進んだ現代医学と付き合って良い関係を続けなければならない。

 

◇私が県議会にいた頃から続いている県政の最大の課題の一つは少子化対策である。このままでは将来消滅すると騒がれる自治体まで現われ、都会から若者を呼び戻すことに県政は躍起である。

 

 昨年の年間出生数は百万人を切った。昭和20年代のピーク時は270万人を数えた。統計はこのまま減少を続ければとんでもない縮小社会の出現を予測する。国の政策と地方の政策を連動させなければならない。そして、地方の役割は非常に重要である。地方の政治は何をしているのか。地方議会の形骸化が叫ばれ政治不信が渦巻いている。

 

◇前橋市議選が近づいているが、少子化対策に具体的政策を提示して、命懸けで取り組む姿が見えてこない。私は議員のバッジを外し観客席から政治の舞台を見ることになった。すると今までとは違った光景が目に入り驚く。

 

 知力と行動力と志を備えた若者が少ない。このままでは日本は滅びる。温室の中のもやしのような子どもを甦らせるものは何か。幼稚園や保育園から響く元気な声が周囲の老人から迷惑がられるという。

 

◇今月の「ふるさと未来塾」のテーマは、「世界と日本はどこに向かうのか」歴史は繰り返す。気付いた時はこの社会、とんでもないことになっているかも知れないのだ。(読者に感謝)

 

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2017年1月 4日 (水)

人生意気に感ず「初詣は草津・死の川。世界も日本も節目。箱根駅伝」

 

 ◇一年の計は元旦にあり。今年の初詣はいつもと違ったことをした。遠路草津温泉に出かけ白根神社と光泉寺で思いを伝えた。私の小説「死の川を越えて」の主要舞台が草津なので、小説が無事展開していくことを祈ったのである。白根神社にも光泉寺にも、世話人さんたちの中に小説を読んでいる人が居て心強く思った。湯畑からは勢いよく湯気が上り硫黄の匂いが心地よく鼻をつく。ここから発する湯川は強酸性で、かつては生き物の生存を許さぬ「死の川」と言われていた。温泉街の東の端大滝の湯あたりを歩いた。その昔、このあたりにハンセン病の人々の集落があった。 

 

 共同浴場に入ると富岡から来たという3人の若者が居た。狭い空間の裸の付き合いは直ぐに親密なものを生む。私は草津温泉とハンセン病の歴史について少し語った。湯に浸り目を閉じると、昔共同浴場にハンセンの患者と一般の人が一緒に湯に入ったという話が思い出された。外気は零下で空にはきれいな星があった。栗生楽泉園を包む森はひっそりと広がっていた。

 

 小説の中で湯の沢の住人である万場軍兵衛は「無知が差別と偏見を生む」と怒りを込めて語る。この言葉は現代人の心にも強く訴えるものがある。差別と偏見は人間の心の本質から発するものだと思う。それは身近な問題から国家・社会の問題にもつながる。

 

◇今日4日から世の中は本格的に動き出す。新年はどんな年になるのか。世界も日本も連動して大きな変化の中でかつてない節目を迎えている。アメリカ、ヨーロッパ、中国、ロシアと。共通の特色は、自国の利益優先を掲げ出したこと。その象徴がアメリカである。資本主義の繁栄は不平等、そして矛盾を生み出した。これは民主主義の危機である。世界の振り子が大きく動こうとしている。その中で政治と社会の姿が最も安定していると言われるのが日本ということになっている。果たしてそうか。日本がぶれないことの基盤は日本国憲法である。このことを基本にして、今年は巨大地震、原発の行方が心配だ。

 

◇今日4日、私は自分の初仕事として大腸検査を受ける。健康とは何か。健康は全てである。昨年、ひどい下痢があったので心配になった。

 

◇箱根駅伝を見た。寒風の中で死力を尽くす若者たちの姿は胸を打つ。スポーツを全ての若者に広げることが日本再生の真の鍵である。(読者に感謝)

 

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2017年1月 3日 (火)

小説「楫取素彦物語」第198回

 その時、山室は、部屋を片づけたり、子どもたちの世話をして、きびきびと動いている一人の女に気付いた。はて、と思っていると女は山室に近づいて深々と頭を下げて言った。

「お久しぶりです」

「あっ、あなたは前橋駅の歓迎式の時、最前列にいた」

「その節は大変お世話になりました、お陰様で生まれ変わることが出来ました」

「ああ、あのときのことさん。あまりの変わりよう。そして意外な場所なので直ぐには分かりませんでした。確かに大崎ことさんだ。何と懐かしいことか」

 山室は感激してことの手を握った。

「あなたのことをブース大将に話してもよいのですか」

「はい、ここの人は、私の過去も理解して支えてくれています。私は、あそこから抜け出せたことを今では誇りとしております」

 ことの曇りない美しい笑顔は、ことが本当に生まれ変わったことを物語っていた。山室は、救世軍の成果の実例としてブースに話すとブースは大変喜んでことと話したいと言う。

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2017年1月 2日 (月)

小説「楫取素彦物語」第197回

壇上の通訳山室軍平は、ふと民衆の最前列に立つ、母子らしい姿に気付いた。顔が会うと頭を丁寧に下げて挨拶をする様子。そしてにっこり笑っている。

はて、どこかで見たような

 山室は一瞬心でつぶやいたが考えている暇はなかった。ブースが演説を始めたのだ。

「東京の次に前橋を第一の訪問地に選んだわけは、この地が廃娼の原点だからです。昔、楫取県令とキリスト教の人々が力を合わせて群馬の郭を廃止しました。私の国イギリスでも女性解放をしましたが、日本の群馬も時代に先駆けて女性を解放したのです。この事実こそ、日本が文明国であることを示すものです」

 ブースが言葉を切ると大きな拍手が起き、それが静まるのを待って山室が通訳する。

「我が救世軍は多くの女性を郭から救い出しましたが、これは県令楫取が播いた種を受け継いでいるのです。皆さん、私は今ここに立って気付いたことがあります。この美しい自然が群馬の人々の歴史と文化を育てたのですね。前橋を第一の訪問地に選んだことは、本当に幸せでした。皆さん、本当にありがとう。前橋は大変にワンダフルです」

 心地よい春の風に乗って、人々の拍手と歓声はいつまでも続いた。

 ブース大将は共愛学園を訪ね、キリスト教と共に歩みを進めた共愛の歴史を学んだ。それから市内の赤城館、柳座で講演し、上毛孤児院を訪ねた。上毛孤児院はキリスト教徒が創設した孤児救済の施設である。救世軍の原点はイギリスの貧民街における貧民救済であった。そこでは、孤児の救済も重要な仕事であった。孤児を励ますことにブースは特別の意味を認めていたのである。

 孤児や事情があって親のもとを離れた子どもたちを、ブースは記念品を贈呈して励ました。イギリスのおもちゃや絵本をもらって子どもたちの喜びようは大変なものだった。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

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2017年1月 1日 (日)

謹賀新年

  動乱の中で動乱の年の幕が開けました。

今年は、いろいろな意味で歴史の大きな転換点になることが予想されます。間もなく現実に一歩を踏み出すトランプ政権の真の姿は何か。世界の目がこの一点に注がれていると言えます。保護主義を訴え、アメリカ第一を考えているように見えますが、強かな戦略を打ち出すのではないかという見方もあります。オバマ大統領との間で、日米同盟の深化を格調高く訴えた安倍政権の行く手に何が待受けているのかも大変気になることであります。

 また、今年は大きな天変地異が予想される年でもあります。力を合わせ、危機を乗り越える年にしたいと存じます。

 私は上毛新聞連載の長編小説「死の川を越えて」に全力を尽くすつもりです。

 このブログの掲載と「ふるさと未来塾」もライフワークとして続けますので、宜しくお願い申し上げます。

 皆様にとって良い一年になりますことを心よりお祈り申し上げます。

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