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2016年12月31日 (土)

小説「楫取素彦物語」第196回

「ブース様、電車は間もなく利根川を渡ります。すると直ぐに前橋駅でございます」

 山室が説明を始めた時、車窓の光景は一変した。そしてブースは叫んだ。

「おお、ワンダフル、素晴らしい光景です。すごい水の流れです。これが利根川ですか、あの山々は何ですか」

「はい、ブース様、あれが赤城山、左手に榛名、妙義の山々です」

 山室の説明に頷くブースの眼下に岩を噛む激流が轟々と流れていた。明治4十四年四月二五日、ブースを乗せた電車は前橋駅に着いた。

ブースの一行が姿を現すと駅前広場を埋めた群衆は、わあっ、と一斉に声をあげた。長身で黒い山高帽、顔を埋め胸までたれた白い髭、この際だった偉容は、人々の目に西洋画の一場面が再現されたように写った。

 駅舎を背にして式壇が設けられ、その一方の側に共愛女学校の生徒が整列し、他の側に救世軍、キリスト教の人々が並び、壇の前には県、市の有力者が陣取っていた。そして、これらを数千の民衆が囲んでいた。音楽隊の音楽が流れていた。それが止むと、歓迎の挨拶があり、ブースは、女学生に手を差し伸ばして握手した。少女がこわごわと顔を上げると髭の中の青い目に涙が光って見えた。

 ブースは壇上で語り出した。通訳は山室である。

「群馬の皆様、ありがとう。東京とは違う素晴らしい歓迎です。美しい山々、広場を囲む緑の木々、そして、流れる風が皆さんと一つになって私を歓迎しています。こんな感動は初めてです。ありがとう、ありがとう」

 万雷の相手が起きどよめきが湧いた。人々には壇上のブースが一層大き見えた。白い髭の中の赤い口から流れでる言葉が伝説の巨人が語る御伽話のように聞えた。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

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2016年12月30日 (金)

人生意気に感ず「超巨大火山の噴火近し。死後離婚急増。糸魚火災で焼けなかった家」

 

 ◇動乱の2016年が終わる。人間界も自然界も呼応したように沸き立っている。長い歴史を見ると人智を超えた妙な周期があるのかも知れない。やがて6年になる東日本大震災は自然界の大きなメッセージとも思える。首都直下型、南海トラフ型等の巨大地震が、近い近いと言われながら時が過ぎていく。 

 

28日午後9時過ぎ、茨城で起きた震度6弱は、麻痺しかかっている私たちの心を震撼させるものだった。来年はいよいよ何かあるのではないかとの感を抱く。

 

◇超巨大火山の噴火の兆候が科学誌で報じられている。イタリアの火山性カルデラ盆地カンピ・フレグレイの地下にある超巨大火山が長い眠りから醒めようとしているという。

 

 科学的な解析のデータによると、マグマがガスを放出する臨界圧力に達している可能性があり、現在「加速的な変動と温度上昇が観測されている」とイタリア国立地球物理学研究所は報じた。このカルデラ噴火は過去にヨーロッパ史上最大の噴火を起こし大量の灰は地上を覆い、「火山の冬」を実現した。日本のカルデラ火山と言えば阿蘇山である。自然界の一呼吸は長い。その間のほんの一瞬の平穏に私たちの生がある。

 

◇日本の伝統の家の制度は崩れ、核家族と言われる現象が広がり、更に家族を中心とした人々のまとまりは増々薄くなっている。そのような社会状況の中で、いわゆる死後離婚が急増している。正確な意味の離婚ではない。配偶者が亡くなった後、その親や兄弟との関係、いわゆる姻族関係を解消すること。届出ひとつで可能。夫を亡くした嫁が姑との関係を切る目的が多いと言われる。嫁と姑の関係は永遠の宿怨といわれ、姑に仕える昔の嫁さんは大変だった。今は立場が逆転して姑が小さくなっているが、義理の親の介護など面倒を嫌うのだろう。女性の自由の尊重や女性の自律と関係あることであるが、死後離婚の急増は社会現象の一面を現すようで淋しい気がする。来年もこの現象は続くのだろうか。

 

◇糸魚川大火のその後は災害の時代に向けて教訓を提示している。カンナくずのように燃えた住宅の中で唯一軒焼けなかった木造がある。建築資材の工夫だという。普通の住宅と比べ建築費は約1.5倍増というが結果的に大変安い。地震・津波の対策も日本の技術で対応出来る面は大きいに違いない。(読者に感謝)

 

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2016年12月29日 (木)

人生意気に感ず「安倍首相の真珠湾演説。日米同盟の深化とは。最後のふるさと塾でカストロを」

 

◇安倍首相の演説を聞いた。真珠湾でのこと。ノー原稿で、整然とし、格調があり、心を打つものであった。「政府同士、国民同士で一番憎しみ合ったのが、一番親しい域に達した」、「戦後の食べ物のない時に、ミルク、衣類など惜しみなく与えてくれた、子どもたちはそれで成長することが出来た」、「寛容の心がもたらした和解の力」等、安倍首相は堂々と訴えた。

 

 昨年4月、安倍首相は米議会で演説し拍手喝采を浴びた。その時、首相は安政のペリー来航に触れ、それが民主主義との「遭遇」だったと語った。この言葉には太平洋戦争の敗北を経て、民主主義を成長させたことを訴える意味があった。

 

 今回、首相は「寛容の心」と「和解の力」を訴えたがこれらは人間の尊重や平等を旨とする民主主義の理想と共通するものである。日米同盟を支えるものが、このような民主主義の理念であることは非常に重要である。なぜなら共に力を合わせて戦うためだけの結びつきでなく、民主主義を守るために同盟ということを意味するからである。アメリカと日本の分断を狙う中国は、今回の安倍首相の真珠湾演説による日米の深化を苦々しく見ているに違いない。

 

◇オバマ政権の末期に日米同盟の深化を確認した意義は誠に大きい。なぜなら、この同盟の基盤はアメリカの建国の理念に合致するものであって、アメリカの国益に直結するものだから、次期大統領のトランプ氏も重視するに違いないからである。

 

◇昨夜の「ふるさと塾」は盛会であった。利根川を見下ろすロイヤルホテルの9階。忘年会と兼ねた今年最後の塾は60人以上が参加して充実したものになった。私は30分だけ語った。話は先日亡くなった激情と理想主義の革命家カストロの姿。アメリカの南端フロリダからキューバまで140キロ余り。アメリカの傀儡(かいらい)バチェスト政権を倒したカストロは、アメリカに対抗して半世紀以上一歩も引かなかった。初の国連演説では4時間29分もアメリカを非難した。ケネディのときのキューバ危機は実際核戦争の寸前までいった。核がある限り使われる可能性があることを示す事件だった。核廃絶を訴えたオバマが去る。プーチンとトランプは核の新たな競争を始めようとしている。カストロを動かした正義の情熱を私は短時間で訴えた。(読者に感謝)

 

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2016年12月28日 (水)

人生意気に感ず「中国は空母で覇権を。大地震の予測。カストロと核戦争」

 

 ◇中国が25日、空母を動かし始めた。沖縄の石垣市長は26日陸上自衛隊の配備受け入れを表明した。これらは日本の安全保障が非常に厳しいことを物語る。既に死に体のオバマ政権、中国に対して対抗姿勢を打ち出しているトランプ次期大統領。日本はこのような状況下で、いかに対応すべきか。第二次大戦後、世界大戦はなく70年以上が過ぎた。今、世界は大きな変化に揺れ始めた。きれいごとで平和を守れない。息を呑む歴史的瞬間を私たちは生きている。 

 

◇中国はアメリカと対峙する大国を目指し、太平洋に進出しようとしている。目の前に立ちはだかるのが日本である。国際法を無視して南シナ海に進出し、軍事拠点づくりの既成事実を展開している。中国の軍事的脅威を肌で感じているのが沖縄の人々である。離れた所にある沖縄を他人ごとと見ることは許されない。私たちは一体なのである。原発、地震などの災害も同様。離れたと所の同胞の苦しみを自分のことと受け止めることが今求められている。しかし今、無責任な自己主義が極点に達しようとしている。

 

◇日本と同様に地震大国の南米チリで、25日M7.6の地震があった。日本で大地震が近いと言っても、人々は慣れっこになって本気にしない。「オオカミが来るぞ」を風評として受け止めるか、科学の声として受け止めるか、区別しなければならない。

 

 大自然の一呼吸は長いが、今日の科学のレベルはその微妙な変化を察知出来る。電気通信大名誉教授の早川正士氏は、25日までに青森、福島などに震度4程度、関東では震度3以上と予測していたが、26日、茨城・栃木・埼玉・千葉で震度3の地震があった。私たちは「群馬は大丈夫」という安全神話に胡坐(あぐら)をかいてきたが、私の友人の地震学者は群馬が危ないという警告を発している。備えあれば憂いなし。災害は忘れた頃に必ずやってくる。

 

◇今年最後の「ふるさと塾」は、今日28日、忘年会を兼ねてロイヤルホテルで行われる。少し趣向を変えて、30分程私が話し、あとは食事と懇談となる。私の話は、先日90歳で亡くなった情熱の革命家カストロが中心となる。二つの超大国の米ソの代理戦争が朝鮮半島、ベトナムで行われたが、核戦争の瀬戸際までいった代理戦争がキューバ危機だった。アメリカの喉元で抵抗を貫いたカストロは清貧な理想主義者だったと思う。(読者に感謝)

 

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2016年12月27日 (火)

人生意気に感ず「葬儀の変化と日本の沈没。糸魚川の大火と火元の対応」

◇長い政治家の習慣から毎日「おくやみ」欄を見るが最近「家族葬」が非常に多い。私はそこに社会の変化を感じるのだ。葬式の簡素化は社会の人間関係の希薄化と、死を弔うことの希薄化を意味すると思う。社会と人の心がぐずぐずと崩れていくようだ。人間を物体とみることは人命の軽視と同意義である。

◇今、「遺体ホテル」とか「お坊さん便」というビジネスがはやっているという。これは「多死社会」という言葉と繋がっている。高齢化とともに死体が増え、火葬待ちが増加し、順番待ちの遺体を預かるラストのホテルで「ラステル」と呼ぶそうだ。都会では、このビジネスが徐々に増えているという。

 直葬と言って、遺体を葬式をしないで火葬場で直接搬送する方法も増えているらしい。さすがにバチが当たらないかと良心のとがめを感じる人も多いのだろう。その場に僧が駆け付けてお経を唱えることが行われる。相談センターがあって、登録僧がいて、連絡があると派遣されていくのが「お坊さん便」である。宗教心も死者への畏れもない。合理化の極致である。こういう状況を日頃見慣れていると、途中の省略を社会貢献のように勘違いして、死に近い人間をゴミのように扱う事件が起こるのではないか。安楽死を安易に認めてはならない意味は重大である。

◇糸魚川の大火は火の恐ろしさをまざまざと見せつけた。火は住宅密集地帯の家々を10時間半にわたりなめ尽くした。「何も持ち出せなかった」、「まるで空襲のようだった」等、被災者は茫然自失の状態。フェーン現象が重なって最悪の事態となった。正月目前のこの寒空に全く気の毒だ。

 市は公営と民間の住宅206戸を家賃無料であっせんしている。火元は中華料理店で原因は鍋の空焚きだと言われる。当人は生きた心地がしないだろう。誰かが「賠償責任は」と言っていた。この点については「失火の責任に関する法律」があって、重大な過失以外は賠償責任がないことになっている。失火の場合の長い市民社会の習慣と歴史を考えたもの。昔は白足袋で町内をあやまって歩いたという話だ。料理店の主人の直後の対応が非常に重要だ。謙虚に反省する姿を示せれば同情も湧くが、一歩間違えば地域で暮らせなくなる。今、各地で頻繁に火災が発生している。都会の集合住宅は大変だ。火の恐さを改めて自覚したい。(読者に感謝)

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2016年12月26日 (月)

人生意気に感ず「真珠湾訪問の意味。核戦争の危機。小池誕生の意味」

 

 ◇かつて「もはや戦後ではない」という言葉があった。それから更に歳月が過ぎ、太平洋戦争の体験者が少なくなっている。安倍首相の真珠湾訪問の意味は大きい。両国民の心に怨みはほとんどない。 

 

 両国は国運を賭けて堂々と戦ったのだ。小国日本が巨大なアメリカと見事に戦った事実を今後の平和と両国の関係に生かさねばならない。多くの若者が空に散り、海の藻屑となった。彼らの死を活かすとはどういうことか。首相の真珠湾訪問は、これを考える好機であり、日米同盟を深化させることに役立つ。

 

 「歴史は繰り返す」。人類の歴史がそれを教えている。核戦争の恐れが現実化しつつある。オバマ米大統領は、広島を訪れて、核のもたらした悲惨さを見て、被爆者を抱きしめて核なき社会の実現を訴えた。

 

 オバマ氏が去ろうとする現在、世界は非常に危険な状況にある。世界の大国が人類の平和という崇高な理念よりも自国の利益を優先させようとし始めている。ロシアのプーチンが核の増強を進め、トランプがこれに対抗しようとしている。超大国のこの姿は北朝鮮などが核政策を進める上での大きな刺激となっている。「核があれば核が使われる」。日本は人類唯一の被爆国である。このことを子どもたちにしっかりと教えねばならない。

 

 私は昭和15年生まれで、翌年12月に真珠湾攻撃が始まった。昭和20年8月、私が住んだ前橋は焼野原になった。敗戦、飢餓線上を生きた国民。新憲法の公布。皆、生々しい現実なのに風化し忘却の彼方に去ろうとしている。

 

 歴史を知らなければ、現実を直視できない。戦争を知らない人が非戦を訴え、戦争を知る人は口をつぐみ、この世を去ろうとしている。安倍首相の真珠湾訪問を歴史を直視し取り戻す機会にしなければならない。

 

◇日本列島の1年を振り返って、私の目から見た最大の出来事は小池百合子都知事の誕生である。一極集中の巨大都市東京に改革の渦が生まれようとしている。集中しているのは人口と資本だけではない。災害の危機も集中している。「地方の時代」と言われて久しいが、地方議会は形骸化していた。都も地方なのである。都の改革は地方を変えようとしている。地方の活力は死に体の地方を甦らせ、若者を呼び戻し、人口減少に歯止めをかける契機となる。首都直下巨大地震が近い。戦後70年が築いた繁栄が崩れるのか永続するかの瀬戸際である。(読者に感謝)

 

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2016年12月25日 (日)

小説「楫取素彦物語」第195回

 老大将の目は、新たな冒険に挑む若者のように燃えていた。

 東京での各地の歓迎は、凱旋将軍を迎えるようであった。二十二日の夕方、東京座で学生大会が開かれた。会場に入れない多数の若者はブースが出てくるのを待っていた。ブースはこの光景を見て馬車の上から挨拶した。堂々たる体格、顔を埋めて胸まで届く白いひげ、七十九歳にも関わらず馬車の上に立つこの異国人に若者たちは神秘的なものを感じ酔っていた。

「ブース大将万歳」

 誰かが叫ぶと人々は一斉にこれに和した。

 二四日の朝、早稲田大学の校庭にはおよそ一万人の学生が集まっていた。ブース大将は約一時間、「生甲斐ある殉愛の生活」と題して語った。聞き終わった学生たちは角帽を上に上げて万歳を三唱した。

「私は未だかつてこのような壮観に接したことがない」

 ブースはこう言って主催の学生の手を握りしめた。

 その夜は、堤灯行列が日比谷公園で行われた。まるで嵐のような東京の歓迎はかくして終わり、翌二十五日からは地方を訪ねることになった。

 地方訪問の最初は群馬県前橋であった。

ブースは、前橋へ向かう電車の中で山室軍平から聞いた前橋の歴史を思い起こし少年のように胸をときめかしていた。廃娼運動で救世軍は輝かしい実績を東京や名古屋であげたが、この運動の発祥は群馬県であることを知った。

県令楫取素彦や、多くのキリスト教徒が活躍して全国初の廃娼県を達成させた群馬県とは、そして県都前橋市とはどんな所か。群馬県でも救世軍が活躍しているというがその実態はどうか。キリスト教は現在どのように根付いているか。廃娼の成果はどうなっているか。電車が前橋に近づくにつれブースの胸は高鳴るのであった。

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年12月24日 (土)

小説「楫取素彦物語」第194回

「日本には昔から公娼といって国が認めた売春の制度がありました。そこで働く女はまことに悲惨で正に奴隷でした。明治になり、この制度を廃止する動きが起きました。政府は娼婦を解放すると命令を出しましたが、実情は少しも変わりませんでした。そういう中で、群馬県は全国に先がけて公娼制度を廃止しました。県令と県議会が力を合わせたから出来たのです。県令は楫取素彦様といって現在、貴族院議員をされています。県議会ではキリスト教徒の議員が中心になって意見をまとめました」

 山室がここまで話したとき、じっと耳をすまして聞いていたブース大将が手をあげて話しを制して言った。

「いま、クリスチャンのことを言いましたか。県議会の中にクリスチャンがいて活躍したとは不思議ですね。日本はキリスト教厳禁の国であったのに」

「そうです。新島襄という優れたキリスト教徒がいて、その教えでキリスト教徒になり、県会議員になった人々です。議会の外でもキリスト教徒の青年がいて、廃娼運動の大きな力になりました」

「おお、ワンダフル。私、群馬県に大変興味あります。我が救世軍は、群馬のキリスト教徒と協力すべきですね。群馬県には、キリスト教の拠点はありますか」

 ブース大将は胸まで届く白いヒゲに手をやって尋ねた。

「はい、ブース様、群馬県の都は前橋といい、キリストの教えに基づく女子の学園がございます。廃娼運動に尽くした県会議員も多く参加して創設された共愛学園です。その近くには、キリスト者が設立した孤児院がございます」

「おお、共愛学園と孤児院をキリスト者が中心になって。イギリスに似た光景が目に浮かびます。そして、孤児院にはどのようなチャイルドがおるか」

「はい、大震災で親を失った子、また私たちが郭から救い出した婦人の子などもおります」

「おお、ミゼラブル、可哀そうに。私は、前橋のそれらの所を是非訪ねてみたい」

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

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2016年12月23日 (金)

小説「楫取素彦物語」第193回

 終 章 ウィリアムプース大将の登場

 

 明治四十年(1907)四月、救世軍の創始者ウィリアム・ブース大将が来日し、日本は沸き立った。東京は歓迎の坩堝(るつぼ)と化した。この歓迎振りには、日露戦の勝利の直後で、この戦勝にはイギリスの後ろ盾が大きかったことも影響したと思われる。

 新橋停車場には特別の歓迎アーチができ駅前広場は二万人の人で埋まり、日比谷公園では花火が打ち上げられた。

 そして、四月十八日、東京市議会議事堂で歓迎会が催された。伯爵大隈重信は、挨拶の中で、我が同盟国たる英国の偉人として歓迎する。救世軍の宗教的・社会的運動は世界に偉大な影響を与えたと讃えた。この宗教的・社会的運動が主に廃娼運動を指すことは明らかだった。

 この後、山室軍平の通訳でブース大将が挨拶した。

 二十日の朝は、皇居で明治天皇に拝謁した。この間、山室、ライト、デュースたち、救世軍幹部は日本のおける活動状況を報告した。

「娼婦の解放は大変興味深い。日本の奴隷解放ですね」

ブースはこう語り、廃娼の歴史を知りたいと求めた。ライトたちに促されて山室が説明することになった。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

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2016年12月22日 (木)

人生意気に感ず「アメリカの変化。日中友好協会は。日本の真の危機は。若者の地方回帰」

 

◇平成28年の終わりが秒読みに入った。振り返れば激動の1年だった。後世の歴史家は時代の大きな転換点と語るだろう。時代の大きな変化を象徴する出来事はトランプ次期大統領の出現。アメリカの変化は世界の変化である。時を同じくして、中国も大きく変わろうとしている。アメリカに対抗して世界に覇をとなえんとして太平洋への進出を図っている。太平の海は大変の海に変わる危険がある。太平洋は日米が死闘を繰り広げた海である。

 

 日本は米中と同時に戦った。今日の日本はこの両大国との戦争の結果を乗り越えた姿である。「昨日の敵は今日の友」。アメリカとの関係に軸足を置きながら、日本は両国との間でこの諺を実現することが最大の課題である。日本の最大の特色はアジアの歴史に根ざしながら西洋文明の価値観も国家存立の基礎に踏まえていることだ。日本は、米中の対立の中で素晴らしいカードを使える立場にあるのだ。

 

◇昨日(21日)、群馬県日中友好協会の大事な会議があった。第二回、群馬県上海市青少年書道展の実行委員会である。昨年は群馬を舞台に良い成果を得た。第二回は来年、上海に会場を移して行う。群馬の日中友好協会は日中間が最悪の時スタートした。試練を乗り越えたことから大きな教訓を得、自信を得たといえる。それは、一触即発の対立時にあってこそ民間の交流は大事だということだ。私は会長として、謙虚に頑張る決意。

 

 私は中国が日本を必要としていることを肌で感じた。戦略的互恵ということの真の意味を噛み締めねばならない。

 

◇1年を振り返って、改めて思うことがある。歴史的転換点に立って、日本が世界史の上で重要な立場にあるといっても、それを担うのは一人一人の国民である。ところが、日本人の心が音を立てて崩れる危機を感じるのだ。親が子を殺す。子が親を殺す。日本中至る所から死体が見つかる。生産性のない高齢者はぼろきれのように扱われる。幼児施設は子どもの声がうるさいからと迷惑施設となりつつある。物の豊かさは人間の貧しさをつくった。行き詰った日本を救うものは何か。

 

◇一つの光明が感じられるのは若者の地方回帰の現象である。農山村に真の豊かさを求める傾向が生まれつつある。地方自治体が競ってそれを支える、国もそれを助けるなら、真の地方の時代が開け、人口減少に歯止めがかかるだろう。新しい時代の若者の反乱を期待したい。(読者に感謝)

 

 

 

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2016年12月21日 (水)

人生意気に感ず「内閣支持率の低下は何を。米中ロ三国対立の中で。ブナの木納会」

 

 ◇内閣支持率は5・9ポイント下がった。国民はカジノ解禁と北方領土問題を苦々しく見ているのだ。カジノは賭博を連想させる。北方領土は、恐いロシア、遅刻常習のプーチンのイメージと結びつく。 

 

 カジノ法案採決を強行した安倍政権にはおごりがあると国民は見ている。安保関連法を成立させ、中国に毅然とした姿勢を貫く安倍首相を多くの国民は支持している。憲法改正を目指すことについても同様である。強かさには品格が求められる。北方領土交渉は品格の落ちるプーチンに振り回された感がぬぐえない。

 

◇今、世界史の舞台は壮大な新しい展開を示しつつある。主な登場人物はトランプ、プーチン、習近平である。それぞれが自国の栄光を回復したいと本音をむき出している。アメリカと世界を二分して支配した感のあったソ連が崩壊して久しい。プーチンを熱狂的に支持するロシア国民には過去の栄光を取り戻したい願いがあるに違いない。中国には長い歴史を貫く中華思想がある。中国こそ世界の中心だという自己中心の優越思想。近代に至り長いことこのプライドが傷つけられてきた。現代の中国は、世界の経済大国となり自信を取り戻し、世界に覇をとなえようとしている。

 

◇米中ロの対立は、西洋文明と東洋文明の対立という一面を持つ。対立の舞台は太平洋。両文明の同心円のいずれにも加わる日本は新たな世界史で重要な役割を果たす可能性を持つ。その役割を果たすために、アメリカとの同盟は極めて重要だ。プーチンは今回の北方領土交渉後の会見で、日米安保条約の新たな動きを懸念することを述べた。それは分かるような気がする。日本は強かに、忍耐強く国益を主張しなければならない。その場合に重要なことは、文化国家、平和国家、道義の国という旗印である。

 

◇19日、劇団「ブナの木」の納会に出た。宮沢賢治の童話を劇にして広く小学校などで演じている。私の地元芳賀公民館でも公演した。故大野代表との長い付き合いがあった。久しぶりに顔を出すと多くのメンバーは入れ替わっていた。個性的な若い団員たちの間を幼児たちが元気に飛び回っていた。焼いたイノシシの肉は巧みに味付けがされ美味かった。このような地道な文化の動きが漂流する日本人の心を繋ぎ止めている。私の立つ新しい舞台を話し、小説「死の川を越えて」を説明した。(読者に感謝)

 

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2016年12月20日 (火)

人生意気に感ず「トランプの民主主義。民主主義の未来。死の川を越えて。応徳温泉」

 

◇トランプとプーチンの存在は、世界が大きく変化しつつあることの象徴に見える。トランプの正体は未だよく分からない。民主主義の本家ともいえるアメリカの国民が選んだことに重大性がある。民主主義とは何かを考えさせる材料だからである。トランプは「アメリカ第一」を掲げて大衆に訴えた。アメリカ第一の中味は、移民排斥、イスラムへの敵対姿勢、経済の保護主義などであり、これらは民主主義の本来の価値と必ずしも相容れない。

 

◇民主主義は人類の理想でもあり、それ故に普遍的価値を持つことから、アメリカは中国の人権侵害問題やフィリピンのドゥテルテの蛮行を非難してきた。トランプのアメリカは、これから世界の人権侵害を非難するトーンを落とすに違いない。

 

 アメリカのこの大きな変化は、民主主義には限界があることを示すものであろうか。民主主義は高い理想であるから現実との間に隔たりがあるのは当然であるが、いつまでもこの距離が縮まらないと、民主主義そのものに問題があるように見えてくる。最近の世界の状況には、民主主義の政治の行き着くところは衆愚政治かと思わせるものがある。

 

 大衆を導くべき政治が大衆に迎合し人気取りを目指すと大変なことになる。民主主義の危機である。世界の大国が自国本意になれば、偏狭なナショナリズムに落ちる危険がある。現在は岐路にある。歴史は繰り返す。この流れの中で日本は非常に重要な役割を担うというべきだ。

 

◇17日、草津の栗生楽泉園に向かった。私の小説「死の川を越えて」の新聞連載は今月5日から始まったが、後半はハンセン病患者の強制隔離の場面にも入る。そのための取材で楽泉園内の自治会長・藤田三四郎さんにお会いした。何度も通ったお宅で90歳を超えた藤田さんは衰えぬ気力で対応してくれた。

 

間もなく真冬の厳しい寒気がやってくる。園内にはかつて多くの患者が凍死した重監房の跡地がある。近くの谷には湯川が流れる。小説の題名「死の川」はこの流れに由来する。かつて、この川は生き物の生存を許さぬ強酸性の流れであった。

 

 帰途、道の駅六合にある応徳温泉に入った。こちらは弱アルカリ性。白濁の湯に黒い湯の花が漂う。皇太子も入った天下の名湯。目を閉じると心も洗われる気分で様々な想念が湧く。(読者に感謝)

 

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2016年12月19日 (月)

人生意気に感ず「ロシアは恐い国。プーチンをどこまで信じるのか。カジノにカジを切る。安倍首相は」

 

◇ロシアはどこまで信じることが出来るのか。手段を選ばぬ謀略の国というイメージだ。2時間半以上の遅刻は何を意味するのか。大統領の遅刻は国家の遅刻。たまたまやむを得ぬ事情でということもあるが、常習となると本質に関わることで、信用出来なくなる。県会議員の時、同僚県議に1時間以上いつも遅れることで有名な人がいた。それでも当選を続けたことが不思議だった。 

 

 昭和20年、戦争終結後におよそ60万人の日本人を騙してシベリアに連れ去った。このことに始まって、21世紀の今日のクリミア併合に至るまで、不法を行う国である。一事が万事。遅刻が全てを物語っている。

 

 遅刻魔と言われ、ドイツのメルケル首相は4時間以上、ローマ法王も一時間待たされた。こういう国だということをしっかり踏まえ、眉をしめして対応しないと本当に「食い逃げ」される。

 

◇北方領土の問題を考えるにつけ思うのは、ソ連(当時)に北海道を占領されなくてよかったということ。スターリンは、昭和20年8月16日北海道の北半分をソ連が占領することを要求し、アメリカに拒否された経緯がある。万一、そのようなことになったら、ことは北方領土の比ではない。原爆の被害は恨むに値するが、日本はアメリカによる単独占領で幸いであった。

 

◇期待が過剰気味であった。プーチンの姿を見て、衣の下に鎧が隠されていることを知った思いがした。北方4島で共同経済活動を進める方針だが、日本の企業には相当の覚悟が要る。プーチンの遅刻魔ぶりは、我々の世界が到達した「法の支配」が通用しない相手であることを雄弁に物語る。

 

 ロシアは全体主義、独裁主義の恐ろしい国である。平和条約締結ということを日本は有効なカードとして使わなければならない。北方4島に限らず、シベリア開発まで済し崩し的に協力するとなれば、大きな禍根をつくることになる。強(したた)かなロシアには強かな対応が求められる。

 

◇安倍首相は、経済活性化のために「カジノ」を急ぎ過ぎたのではないか。今日本で一番大切なことはモラルの問題である。ロシアとの取引にも経済第一主義があるのではないか。ロシアの術中に陥ってはならない。大衆迎合が世界を覆う。大衆が最も動かされるのが目先の経済である。日本は重大な岐路に立つ。(読者に感謝)

 

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2016年12月18日 (日)

小説「楫取素彦物語」第192回

  山室軍平が言った。

「この廃業届けに署名してください」

「大変な借金が残っている。どうしてくれるのだ」

 楼主の顔は怒りと狼狽でひきつっている。楼主に向かって、モルフィはきっぱりと言った。

「借金があっても廃業できることはお分かりのはず。裁判の結果もそうなっている。いくら働いても借金がふえることがおかしいのです。

私たちはいつでも裁判をする準備が出来ているのです」

 楼主は観念して廃業届に署名した。大崎ことは、遂に廃業をなし遂げた。楼主はことが郭を出るとき、借金のかわりだと言って、ことの着ている物を剥ぎ取り丸裸にした。せめて他の女郎対する見せしめであった。山室たちは自分の服を脱いでことに与え郭の外に出た。

「やったぞー」

「おめでとう」

 一同は完成をあげた。

 ことは持ち出した行李の中から修身説約を取り出し胸に抱いて心の中で叫んだ。

おっ母さん、自由になりました。おっ母さん言ったことを守り、人の心をなくさなかったからです。おっ母さんありがとう。ことは遠からず、きっと赤城山に帰ります。元気でいて下さい

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年12月17日 (土)

小説「楫取素彦物語」第191回

 

「他の女の手前もある。お前が々と出ていって、他の女もまねるようになったら、郭は沈没。われわれにも覚悟がある。若いもんも黙ってはいない。

 どう、ものは相談、この書類に印を押してくれぬか。拇印でいい。借金も大幅に減らしてやろう」

 新吉はそう言いながら用意した一枚の紙を広げたとみるや、ことの手を掴んで引き寄せ無理やり拇印を押させようとした。

「あれ、何をなさいます。いやでございます。絶対に死んでもいやでございます」

「このアマめ」

 それは廃業しないこと誓う書面であった。

ことは必死で抵抗した。無理と知ると新吉はいまいましげに舌打ちをして言った。

「売り飛ばしてやる」

 翌日、新満楼には朝から緊迫した空気が流れていた。ごろつき連中が動きまわり、女たちは落ちつかなかった。やがて、この緊張感をさらに盛り上げるように郭の客とは無縁に見える二人の男が新満楼の玄関に立った。山室軍平とユージー・モルフィである。二人は中に通されたが、表には警察と新聞記者の姿が見られた。

「大崎ことさんはあなたに間違いありませんか。私は救世軍の山室軍平、そして、こちらは友軍のモルフィ殿です」

「はい、大崎ことに間違いありません」

 ことは両手を畳について言った。髪にかんざしはなく、思い詰めた表情は、客に媚を売る女郎のそれではない。

「廃業意志に変わりはありません、それを確かめた上で、楼主の出方いかでは、この新満楼に、神の御意志に従って戦いを宣言し進軍いたします」

 二人の姿には、静かだが犯し難い雰囲気があった。

「廃業の考えは、神かけて変えません。どうか助けてください」

 この時、モルフィが口を開いた。

「あなたが群馬県の人と開いて私たちは驚きました。県令楫取素彦様が廃娼運動を始めただからです。さらに驚いたことは、あなたが楫取様が作らせた道徳の教科書をもっているということです。妓楼にいる遊女が道徳の教科書をもっているとは、ここでも人の心が生きていることで、そのことが私たちに伝わったことは、誠に神の意志です」

 ことの後ろには楼主たちが座り、その背後の障子のかげには穏やかならぬ怪しい男たちの影があった。楼主たちにとって救世軍やモルフィは天敵であった。神を掲げ、命を失うことも恐れず、裁判所も動か、誠にやっかいな存在であった。

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年12月16日 (金)

人生意気に感ず「プーチンの大遅刻。自民党県議団に小説を。性的少数者の差別と偏見」

 

 ◇やっと安倍・プーチン会談が始まった。2時間以上も遅れたプーチン大統領は、遅れて申し訳ないと謝罪したのだろうか。ものものしい警備状況を考えると、これだけの大幅な遅刻による経済的損失は莫大な額になるに違いない。直接間接の損害は億単位になるだろう。もし、安倍首相がいらいらし、精神的肉体的に疲れて交渉力が落ちたりしたら、その損失は更に測り知れない。源流島の佐々木小次郎の比ではない。 

 

 安倍首相はプーチンを迎える挨拶で「会談後の温泉で疲れがとれる」と言い、プーチンは「疲れないのがよいこと」とジョークを飛ばした。あたかも待たされた安倍首相と待たせたプーチンの関係を言っているようで面白い。安倍首相には「日本には時は金なりという諺があります。遅れた代償は北方領土で償って欲しい」と言ってもらいたいものだ。

 

◇昨日(15日)、県議会の自民党県議団総会で挨拶した。小説「死の川を越えて」を紹介することになっていた。久しぶりの古巣は大変温かく迎えてくれた。「今度は楫取素彦さんではないんですね」、誰かがジョーク。井田団長が先輩の中村先生からお話しがあります」と紹介した。32名の議員席には上毛新聞連載の1回と2回分が入った封が配られている。

 

「県政と関わる事なので話しをさせて頂きます」と言って、私はマイクを握った。「小説のテーマは差別と偏見と闘う人間ドラマですが、差別と偏見は極めて今日的課題です」と切り出して、放射能避難者生徒のいじめ問題などを例にあげ、「月火の週2回で1年近く続きます。ご声援を願います」と結んだ。自民党控室には年末年始の議員活動に備える空気が流れていた。それを見て、自分は別の世界の人間になったことを感じた。その後、リベラルの部屋にも立ち寄って同じような話をした。

 

◇上毛新聞一面の「性的少数者」への配慮の記事を見て、社会はここまで進歩したかの感を抱いた。10年以上前、県会議員として北米を行政視察した時のこと。サンフランシスコのある町は同性愛が盛んだった。私が取り上げたら「昼飯時止めてくれ」と言われたのを思い出す。伊勢崎、太田、安中は投票所入場県券に「男」、「女」を記していない。本人への配慮と、差別と偏見につながることを恐れるからだ。性的少数者は個人の特性の問題であるが、未だ偏見は強い。障害者の問題など限りなく広がる。(読者に感謝)

 

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2016年12月15日 (木)

人生意気に感ず「安倍VSプーチンは武蔵と小次郎。4島か2島か。避難といじめ」

 

◇いよいよ今日、安倍・プーチン会談が始まる。私は先月の「ふるさと塾」で北方領土を取り上げただけに大きな関心を寄せている。 

 

 読売新聞がクレムリンで事前に行ったインタビューを報じた。日本のマスコミを通じてのメッセージは強かな計算に基づいているに違いない。宮本武蔵は試合前から準備をし、実質的にはその段階から試合は始まっていると考えていた。安倍・プーチンの一騎打ちも既に始まっている。プーチンは「引き分け」が最良というようなことを言ったと伝えられるが、そんなことは有り得ない。巌流島の対決はどちらが武蔵か小次郎か。

 

◇北方領土とは、歯舞(ハボマイ)、色丹(シコタン)、国後(クナシリ)、択捉(エトロフ)の4島。日ソ共同宣言で2島引き渡しを明記したのは、歯舞と色丹。歯舞の面積は4島の2%に過ぎない。語源はアイヌ語で、ハポ(母)、マ(泳ぐ)、イ(所)。最大は択捉で、長さは214キロ、沖縄本島、佐渡より大。4島は日本固有の領土であるがプーチンは国後・択捉は返さぬと言っている。昭和31年の共同宣言は鳩山一郎が政権の命運をかけて行ったもので、これにより瀬島龍三ら長期抑留者の帰国が実現した。欧亜にまたがる地球上の大国にして隣国と平和条約が結ばれないのは、確かにプーチンが言うように「時代錯誤」。黒帯の大統領の真意は何か。日本中が固唾を呑む。

 

◇ロシアは恐い国という感はぬぐえない。最大の理由はシベリア強制抑留である。60万人が連れ去られ、うち約6万人近くが酷寒と強制労働で死んだ。北方4島の支配は不法で火事場泥棒のようなもの。主権で譲歩すれば尖閣や竹島問題にも響く。

 

◇プーチンとの会談は山口県長門市で行われる。同じ山口県の日本海に面した萩市の沖に小島が浮かぶ。これらの島に、かつて日本海海戦で敗れた多くのロシア兵が漂着した。萩の人たちはむすびを提供して温かく対応した。日露が戦った日本海の歴史と風景はプーチンの目にどう映るのか。

 

◇各地で福島から避難した子どもがいじめを受けていることが理解できない。無知が差別と偏見を生むことの象徴的出来事ではないか。原発をきちんと教えないことも一因だ。福島の原発事故を他人事と考える風潮が広がる。

 

◇性的少数者への配慮・アウティングに注目。明日のブログで書く。(読者に感謝)

 

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2016年12月14日 (水)

人生意気に感ず「98歳の岩田さんと会う。地獄の戦場は今。死の川を越えて」

 

◇13日、岩田亀作さんを訪ねた。一週間ほど前、衣料品が小包で届き、身辺整理が終わったことが書かれていた。間もなく98歳を迎える岩田さんは、ニューギニアから生還後、長いこと衣料品の販売業に従事した。店は奥さんに任せ、自身は富士見や芳賀地区を車に衣料品を満載して行商していた。お得意先を回りながらニューギニアの話をするのが楽しみであり生きがいだった。ダンピール海峡を長時間泳いだこと、3千m級のサラワケットを命をかけて超えた話、上官の毒殺命令に逆らって毒薬を地中に埋めた秘話などは、何度聞いてもドキドキさせられた。最近は奥さんが認知症になり、洋品店は閉め10年程前から行商も止めた。売れ残った商品が山のようにある。いくつもの段ボールに詰め、ニューギニアなどに贈る作業を続けてきた。 

 

 岩田さんは、耳が非常に悪くなったが頭脳は驚く程明晰である。最近まで、限られた距離であるが車も運転していたのだ。無事故、無違反を貫いてきた。さすがの岩田さんも年が明けたら免許を返上する決意を固めた。全国の戦友がほとんど上に行ったと天を指して言った。岩田さんの話を聞きながら、ニューギニアを慰霊で訪ねたことを思い浮かべていた。「今見る地獄の戦場」という小冊子を書き、ここに書かれたことを岩田さんと各地で講演したことが懐かしい。

 

この人と約束していることがある。数年前に「百歳まで生きて下さい。私が弔辞を読みます」と話したことである。百歳はもうすぐ確実にクリアできるだろう。弔辞の時も必ず来るだろう。「それは急がなくてもいいよ」と、私は心の中でつぶやいた。ニューギニア、シベリア、その他で過酷な戦争体験をした人がほとんど地上から消え去ろうとしている。

 

◇岩田さんは、私の顔を見るなり「新聞の連載を読んでいます。昨日は休刊日でしたね。今朝の第3回を読みましたよ」と言った。何と嬉しいことか。思わず岩田さんの手を握った。「死の川を越えて」を岩田さんの生涯である「死線を越えて」と思わず重ねていた。人間のドラマの究極の姿は、「死線」を超えた所にある。生死を超越した岩田さんの冷たい手から、私は無限のエネルギーを受け取る思いであった。

 

◇12日、前高卒の県職とOBの忘年会で「死の川を越えて」をコピーして配布した。1年が間もなく終わる。(読者に感謝)

 

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2016年12月13日 (火)

人生意気に感ず「TPPと世界の民主主義。北方領土は。小説・死の川を越えて」

 

 

◇TPPが可決承認され関連法も可決成立した。安倍首相はTPPを成長戦略の柱と位置づけているが、トランプの出現でTPPの発効は難しくなった。それでも、首相及び経済官庁幹部はあきらめていない。それは何故か。TPP掲げる理念が世界の危険な潮流の中で重要な意味をもつからだ。TPPの重要さは経済だけではない。目指す公正な貿易のルールは法の支配を根幹とする。それは民主主義の理念でもある。世界の危険な潮流とは、アメリカが保護主義に向かおうとしていることに現われている。保護主義とは自国の利益を保護することだから、大衆に迎合し偏狭なナショナリズムに通ずる恐れがある。移民排斥も自国本意ということで、グローバリズムに反し、人道主義と対立するものだ。TPPは太平洋を囲む地域で民主主義の理念と土台を築く意味がある。太平洋の名にふさわしい、平和な海を実現する意味がある。アメリカが加わらなければ発効しないが、トランプを説得すればいい。アメリカの国益にもかなうことだから、説得の可能性はある筈。説得の大きな材料は、TPPが最終的に不可能になれば中国の存在が格段に大きくなりアメリカの存在が脅かされる恐れがあることだ。南シナ海に強引に拠点をつくり太平洋への進出を狙う中国は今、北朝鮮と同じように千載一遇のチャンスと喜んでいるに違いない。

 

◇ロシアとの交渉が底流で激しく進んでいるらしい。ロシアにとってシベリアの開発と発展は行き詰った経済を打開し、国の活力を生み出す不可欠の道であり、そのためには日本の協力が欠かせない。

 

 ロシアは大変な資源国であるが故に資源に頼り過ぎ、技術の開発を遅らせた感がある。資源がない故に技術大国を達成させた日本と対象的である。ハボマイ、シコタンの2島で満足するのか。4島こそ日本の固有の領土である。そのために60年もの間頑張ってきた。強かなロシアに「食い逃げされる」との声が高い。安倍首相の正念場である。

 

◇書道協会の大きな催しがあった(10日)。表彰式及び祝賀会である。私は挨拶の中で、求められて「死の川を越えて」を語った。ハンセン病と闘う人々の物語である。底に流れるものは人権、つまり人間の尊重の理念である。差別と偏見は形を変えて常に現われる。ハンセン病の問題は今日的なのだ。(読者に感謝)

 

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2016年12月12日 (月)

人生意気に感ず「韓国の危機と北の脅威。金正恩は何を。朴槿恵の悲運」

 

 ◇朴大統領の弾劾案が9日国会で可決された。嵐のような民衆のデモの力に屈した感がある。罷免を求める国会の判断が妥当かどうかは憲法裁判所が審理する。朴槿恵(パククネ)大統領の罪責は親友とされる崔順実(チェスンシル)の国政介入に関与したこと、及びセウォル号沈没事故の時、7時間も動静が不明だったことである。 

 

 韓国の民主主義を考える上で重要なことはこの二つのうち前者、つまり親友との関係であると私は考える。

 

◇「親友」との関係で政治を動かす、これは一つの縁故主義である。韓国の人は、いったん火がつくと「理性」より「感情」で動くといわれるのも縁故重視と関係があるのだろう。最近の空前のデモも「理性より感情」の現われに違いない。私には、引火性の高い国民に見える。歴代大統領の多くが一族の利益を図って失脚している。全斗煥(チョンドファン)は一家の不正蓄財を追求された。金泳三(キムヨンサム)は次男が金銭問題で逮捕、金大全(キムデジョン)は三人の息子が収賄で逮捕、盧武鉉(ノムヒョン)、李明博(イションバク)もそれぞれ側近や実兄が不正資金問題で逮捕されている。今回朴槿恵氏が親友を国政に関与させたのもこの流れの中にあるといえる。

 

 この韓国の腐敗と混乱を千載一遇のチャンスとして狂喜しているのが北朝鮮である。国際孤立と経済の破綻で追い詰められていた北は国民に自国の正当性を説き、悲願である南北統一のチャンスとして動く可能性が高い。

 

◇北朝鮮の国営通信は11日、特殊作戦大隊の戦闘訓練が実施されたと報じた。これは韓国大統領府襲撃を狙ったもので、その報道の中で「青互台(大統領府)を火の海にし南朝鮮当局を滅亡に追いやる軍の闘志が示された」と述べた。

 

 このような状況は韓国に異常な衝撃を与えているようだ。弾劾可決、大統領職務停止で大統領代行に就いた黄首相は「北朝鮮は指導部の決定次第でいつでも新たな挑発が可能だ」と指摘した。独裁者金正恩は今何を考えいかなる決断をしようとしているのか。独裁者を縛る文民統制(シビリアンコントロール)などはないのだ。まさかの時、あの熱狂的エネルギーを示した国民大衆は、国を守るためにどう動くのか。今、我が国にとっても息を呑む瞬間なのである。「拉致問題」が吹き飛ばされてしまった感がある。朴槿恵の運命は悲しい。(読者に感謝)

 

 

 

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2016年12月11日 (日)

小説「楫取素彦物語」第190回

 

「かつての楫取県令の地から、この郭に来ている女がいるとは本当に驚きました。また、道徳の教科書で一世を風靡した修身説約が遊女の口からでると

 モルフィが口を挟む。

「私は、貴族院を訪ねて楫取様にお会いした時、廃娼は自分が播いた種だからよろしく頼むと言われました。この女を救出できれば楫取様もさぞ喜ぶに違いない。皆さん頑張りましょう」

 早速、新満楼を訪ねて大崎ことに会い廃業の意志を確かめることになった。廃業手続きの第一歩である。この度は特に重要な案件なのでモルフィと山室軍平が当たることになった。

 モルフィにも、救世軍にも蓄積したノウハウがあった。楼主側とのトラブルはなるべく避けたい。新吉原の警察に話し大崎ことに会う日を告げた。間をおかず、直ちに行動しなければならない。時間的余裕を与えると、その間に楼主に何をされるか分からない。拷問にあったり、廃娼の意志がない旨の誓約書に印を押すことを強要されたり、果ては、転売さることも有り得ることであった。

 明日、二人が大崎ことに会うとの連絡が警察から楼主になされた。果たせるかな大崎ことは楼主の前に引き出された。他の楼主二人も同席した。この問題は業界にとっての一大事だからだ。

新満の主人新吉が言った。

「お前はこの郭から出て行くというのは本当か」

「はい、大変お世話になりましたがそうさせていただきたいのです」

「そんなに簡単に出て行けると思っているのか。恩知らずめ。多額の借金はどうするのだ」

「申し訳ありません。ですが、ことは何としても、廃業したいのでございます」

 ことは畳に手をついて畳につく程に頭を下げた。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

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2016年12月10日 (土)

小説「楫取素彦物語」第189回

 

そっとかくれて読みますと、人間は貧しくとも、正直に生きろ、人の道を外してはならぬとあります。私ははっとして人の心をなくしかけていた自分に気付いたのでございます。私の体は汚れ、虫の巣のようでございますが、人間の心はまだなくしてはおりません。できることなら、皆さんの力におすがりして、真人間に戻りたいと考えるようになりました

(ウーム。よし、必ず救ってやるぞ)

山室は心に誓った。

月の検査の時、お医者様にそっと聞きました。この汚れたからだを元に戻すことは出来ますかと。そしたらお医者様が申すには、それはお前の心次第だ、この境遇を抜け出して歯を食いしばって頑張れば元の体になれると申します。私は、このまま、ここで病気で死ぬくらいなら、皆さまにすがって死んだつもりで外で頑張りたいと思います。おっかさんがこの本を行李に入れてくれた意味が今やっと分かったのでございます

私は、この世界に入ってから、人の善意が信じられなくなっていました。男の真実なんうそだと思っていたのでございます。ところが今、皆さんのことを知り、自分が馬鹿だったと分かりました。どうか、どうか、この私を助けてくださいまし。群馬の県令様はかとりもとひこ様ということも最近になって知りました。上州の出身でありながら今までこのお人の名すら知らなかったことを恥ずかしく思っております。

         あなあなかしこ。

救世軍様

もるふい様

           新満楼 大崎こと

 一同は女郎の手紙を見て大いに心を打たれた

先ず、一人の隊員が口を開いた。

「上州赤城山の麓とは驚きですな」

 山室軍平は先程から何度も読み返しながら

頷いている様子であったがきっぱりと言った。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年12月 9日 (金)

人生意気に感ず「安倍対蓮舫の軍配は。原発、カジノ、タバコと国家の品格」

 

◇賭博だ、神ってる、品格を欠く。これらは蓮舫氏が党首討論で安倍首相攻撃に使った武器である。カジノは賭博である。勤労を怠らせ、犯罪を誘発させる。質問に答えない力、質問から逃げる力、質問をごまかす力は、神ってる。「神ってる」は今年の流行語大賞になった言葉で、神がかっている、つまり神が人にのりうつっている意だ。 

 

カジノから直ちに連想するのは博打である。暴力団あたりは何となく自分たちの世界に日が差す思いで喜んでいるかもしれない。文化国家、人間尊重の憲法と並べると「品格を欠く」というのも頷ける。残念ながら、この論戦の軍配は蓮舫氏に上ったのではないか。

 

◇外国人観光客が押し寄せる時代が進む。彼らはカジノで大金を使うだろう。しかし、景気復興の目玉と考えるのは邪道である。正攻法で景気対策を考えてこそ、文化国家の面目を示すものであり、真の経済大国の品格ではないか。

 

 私は、安保関連法案には賛成である。しかし安倍首相がカジノ法案に躍起となる姿には深い政治哲学が感じられない。同じ浅い政治哲学で安保法案を進めたのかと思われることが心配である。

 

 私の身近にもパチンコ依存症の人が少なからずいる。カジノとなれば、使う金は天井知らず。嵌(はま)り込む人は財産だけでなく心も失う。犯罪を誘発させるだろう。国民の健全な勤労精神にマイナスの影響を与えるに違いない。国民の多くはカジノに反対である。上がってきた安倍政権の支持率は一時的に落ちるのではないか。

 

◇昨日の国会論戦では、タバコ産業を追求する議員がいた。こちらも追求する側に説得力があった。健康を害することが明らかな産業を政府は後押ししている。国民の3人に1人が癌にかかる時代なのに、政府の姿勢は後ろ向きだ。

 

◇原発、カジノ、タバコ。これらの問題で政府は品格を示すべきだ。やれば出来ることをしない。勇気がない。参院は理性の府。衆院のコピーと言われ、存在意義が常に問われている。本質的な議論を激しく深く戦わせてほしい。(読者に感謝)

 

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2016年12月 8日 (木)

人生意気に感ず「名門大生の破廉恥罪の意味。議会でハンセン病が。国際化と人権」

 

 ◇酒に酔わせて女性に乱暴する事件が頻発している。表に出て事件化するのは氷山の一角に違いない。被害女性には相当な決意がいるからだ。強姦や強制ワイセツが親告罪とされるのは女性の名誉を保護するためである。 

 

 千葉大医学生、慶応大生、東大生と、名門大学の学生が次々と逮捕されている。背景には止まるところを知らない倫理観と性道徳の乱れがある。

 

 慶応大生の起こした事件は衝撃的で信じ難い。テキーラを10杯も飲ませて暴行し、その様子を撮影。その上、女性に放尿したというのだ。女性を遊びの道具と見ている。世間を一際騒がせたのは東大生の事件。集団で女性を全裸にし体を触ったというのだ。そして、今年9月の千葉大医学部の生徒及び医師の事件は、特に高い倫理観を求められる人々だけに遂にここまで来たかの感を抱かせる。大学研修医及び3人の医学生は顔写真と共に報じられた。女性はどうにでもなるという観念が若者の間にはびこっているに違いない。

 

 千葉大は「人として、ましては医師、医師を志す者としてあってはならない行為」として謝罪した。医は仁と言われる。それは医が人間にとって最も大切な生命に関わる行為だからである。日本が沈み行く恐怖を感じる。

 

◇ハンセン病の患者を扱った私の小説「死の川を越えて」の連載が上毛新聞紙上で始まったのが今月5日。昨日(7日)、県議会文教警察常任委員会でハンセン病対策が取り上げられた。新聞が連載を決断したこと及び、議会で取り上げられた事実、これらはハンセン病の問題が今日的課題と結びついていることを示すものと言えよう。その根本にあるものは人間の尊厳であり、人権の尊重である。無知が差別と偏見を生む。この課題は形を変えて常に頭をもたげる。ハンセン病の問題点をきちんと検証し、過ちを今後の教訓に生かさねばならない。

 

◇昨日、留学生を指導する学院の職員の前で、私は次のように挨拶した。「グローバル化の中で多くの国の若者が日本に留学しています。私たちにとって最も大切なことは、肌の色、人種、貧富の差を超えて、彼らを人間として尊重することです。これは、私たちの憲法の基本である基本的人権の問題です」。

 

 日本語学院には、西はアフリカ、北はモンゴルと世界から若者が集まっている。私たちの価値観が試されている。(読者に感謝)

 

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2016年12月 7日 (水)

人生意気に感ず「私の小説・死の川を越えて。首相の真珠湾訪問の意味」

 

 ◇小説「死の川を越えて」の連載が始まった。ハンセン病に関する人間ドラマということで静かな反響が広がり始めた。そのことを感じながら議会の自民党控室を訪ねると、話題になっていた。ハンセン病は県政の課題でもある。やがて県議会のことも小説で取り上げるので、ここで小説のことを話したいと申し入れ、団総会でその機会をもらうことになった。 

 

 ついで野党のリベラル群馬の控室に顔を出した。現職の頃から通じるものがあったが、バッジを外して垣根がなくなった感じ。某議員にサインを求められた。私が白根開善学校を描いた「遥かなる白根」である。開善学校を視察して入手したという。教育の原点を見詰める姿勢を感じた。

 

◇昨日の敵は今日の友。太平洋戦争で日本は国の存亡をかけて戦った。無謀な勝ち目のない戦いであったが、火蓋が切られたなら戦わねばならない。多くの若者が祖国を守るために雲の彼方に消え、あるいは海の藻屑となった。彼らの死があるから今日の日本と我々がある。彼らの死を無駄にしてはならない。

 

 あの太平洋戦争は昭和16年(1941)12月8日、真珠湾への奇襲攻撃で始まった。あれから75年が経った。今月26日安倍首相は真珠湾を訪ね、あの時の犠牲者を慰霊するという。20歳だった若者も95歳である。アメリカの元兵士が語った。「日米両国がここまでたどりついたことは素晴らしい」と。戦いが激しかったことは、今では懐かしい思い出になっているに違いない。戦った兵士たちには、恨みはない。むしろ戦争を知らない人々の心に恨みが生まれる恐れがある。安倍首相の慰霊は、今後の日米の新しい絆を築く上で重要なのだ。トランプ大統領との間で新しい歴史の扉を開く上でも非常に重要である。侵略戦争の犠牲者という思いを抱く中国は、安倍首相の動きを複雑な思いで見ているだろう。

 

◇「死の川を越えて」は小説の形で差別の世界の重い扉を開こうとするもの。毎週月火。5日の上毛新聞は第一面で次のように紹介。「国策で人権を侵害された患者の苦悩、差別や偏見との闘いを描く人間ドラマです」。フィクションであるが背景は歴史的事実。不思議な老人万場軍兵衛とこの老人を訪ねる美女。正助はさやの腹に子をおいて戦地に向かう。戦雲が急を告げる中で「らい」の存在は「聖戦」を妨げるという思想が広がる。無知が差別と偏見を生む。(読者に感謝)

 

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2016年12月 6日 (火)

人生意気に感ず「カジノは賭博だ。原発とばい菌、いじめ。五輪と巨大地震」

◇カジノ法案が成立する見通しだ。賭博を罰する意味がまた薄らぐ。野球賭博で巨人の選手があんなに社会から非難されたばかりだ。刑法は賭博をした者は50万円以下の罰金、常習賭博は3年以下の懲役。刑法上の犯罪なのだ。賭博とは財物を賭け、偶然の勝敗によってその得喪をきめることだ。財政上の理由などで競輪、競馬、モーターボードなどが法律で特別に認められているが本質は賭博(富くじ)行為だ。

 なぜ刑法が犯罪行為として定めるかといえば国民の健全な経済観念、勤労観念を守るためである。現在、額に汗して働くという価値観が増々薄くなっている。その上、カジノかという感を抱く。賭博行為には副次的に他の犯罪の誘発など種々の弊害を伴う。自民党はテレビで盛んに正当性を説いているが説得力に欠けるようだ。野党は審議が不十分だと猛反発している。自民党はもっと十分な審議時間を設けて議論を尽くさねば国民は納得しないのではないか。一強の傲(おご)りと言われても仕方ないのではないか。

◇新潟の小学校で、福島県から福島第一原発事故のため避難している男児が、担任から「ばい菌扱いされている」と受け止め学校を休んでいる。市の教育委員会は、この児童が同級生からいじめを受けていたことを明らかにして謝罪した。担任は、男児を呼ぶとき「キン」を名の後につけたことには別の理由があると説明している。しかし、仮にそうだとしても福島の原発事故で心を傷つけられている児童への配慮に大きく欠けると言わざるを得ない。いじめはなくならない。なくす努力と併行して、いじめをを察知して被害児童を守る努力が教師には求められる。

◇小池都知事が連日、オリンピックの競技会場の問題でマスコミに大きく取り上げられている。オリンピック、パラリンピックは、今はごたごたしているがやがて落ち着いてうまく行くと思う。私が心配するのは、首都直下型地震などの自然災害である。東日本大震災はまだ終息していない。その影響もあって首都直下型は確実に近づいていると思う。五輪と重なったら未曽有の結果が生じる。国・都・都議会は力を合わせて対応しなければならない。都は、五輪と結びつけて巨大地震を取り上げることが怖いのではないか。五輪のコストを下げ、その分を災害対策に充てる議論をすべきだ。(読者に感謝)

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2016年12月 5日 (月)

人生意気に感ず「韓国の悲劇と壮大なドラマ。センデナリアン。小説・死の川を越えて」

 

 ◇数十万人の怒りの人の波。信じ難い隣国の光景。引火性の高い国民性。正に炎上した姿である。民主主義の一つの形なのだ。朴大統領は遂に辞意を表明したが、追求は更に厳しく野党は大統領弾劾訴追案を国会に提出した。 

 

 この異常事態、国家的危機を天の恵みと喜んでいるのが北朝鮮であろう。国民を飢えさせる狂気の独裁国家として世界の非難を浴び脱北する国民は跡を絶たない。対比させられるのが韓国であった。そんな国民に対して「それ見るがいい。豊かさの実態は偽りだった。全国民があのように怒っている」と、北は最大限に利用しているに違いない。

 

◇韓国大統領の多くは悲惨な末路を辿っている。初代の李承晩は亡命、次の(ユンボソン)は実刑判決を受け、現大統領朴槿恵の父朴正煕は暗殺され、全斗煥は死刑判決を受けた。歴代大統領の悲劇は続く。盧泰愚(ノテウ)は不正蓄財で懲役17年判決、盧武鉉(ノムヒョン)は不正資金疑惑の中で自殺。初の女性大統領朴槿恵(パククネ)はどんな末路を辿るのか。韓国の民主主義は生き延びることが出来るのか。そして、連動しているように見える北朝鮮の運命は。

 

◇先日、深夜テレビをつけたらセンデナリアンをやっていた。それを見てこれだと思うことがあった。センデナリアンとは百歳以上の人のこと。加齢と共に人間の身体機能は低下する。しかし、最近の研究では前頭葉の一部に百歳を超えても生き生きした部分があることが分かった。これがセンデナリアンの精神と関わっているらしい。登場人物のセンデナリアンは語った。「百歳を超えると心が豊かになり積極的に生きたいという意欲が生まれる」と。多くのセンデナリアンは、人生を振り返って一番幸せな時はと訊かれ「今です」と答えていた。人間は精神の動物と言われるが、その極致の具現ではないか。人類進化の到達点である。その数はアメリカが第1位で日本は第2位。2012年現在51,376人とか。

 

◇今日から私の小説「死の川を越えて」の連載が上毛新聞の紙面で始まった。長い県会議員生活を通して、政治や行政の基盤とすべき人権につき、人々の自覚と認識が薄いことを痛感した。登場人物の姿を通して私の思いを伝えたい。正助が戦地に向かった後、さやは悩んだ末に子を産む。正助に届いた手紙にはもみじのような赤ちゃんの手形があった。(読者に感謝)

 

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2016年12月 4日 (日)

小説「楫取素彦物語」第188回

「その通りです」

と山室が言った。

それに頷きながらモルフィは続ける。

そこで、女郎衆に与える文というものを書きました。易しい文章にして、自由に廃業出来るようになったこと、そして、堅気になることに付いては私たちが懇切丁寧に面倒を見ますと言ってその連絡先を書きました。この文を皆さんも女郎衆の手に届くように配布してください。私自身も一生懸命に頑張ります」

 モルフィはこう言って自ら書いた一文を救世軍の人に渡した。

それを受け取りながら救世軍の隊士はきっぱりと言った。

我々の機関誌ときのこえといっしょに配布しましょう」

 それからいく日かが過ぎた東京の救世軍の事務所に一通の封書が届いた。明らかに女の筆跡。山室軍平は何かを直感して逸る胸を押えて封を切った。文字面に視線を走らせるだけで女郎の手紙と分かった。

「ぶしつけではございますが、現在のきょうがいにたえかね、ご相談お願ひいたすことにいたしました。ときのこえ、ならびに、もるふい様のおいらんに与へる文を手に入れよませていただきました。自由はいぎょうのことをしり、出来れば一度かぎりの人生、これからはかたぎでやりなおしてみたいと考へます

(これは凄い)

山室は興奮してつぶやいた。

私は上州赤城の麓で生まれました。自由はいぎょうのことを知り、客にたずねたりし、私なりに勉強いたしました。そしたら、私どものような不幸な女を救う道は、むかし、群馬の県令様が始めたと知りました。思いあたることがあり、行李の底をさがしたら、一冊の本が出てきたのです。家を出るとき、おっかさんが、いつかきっと帰る時があるから人の心をなくしてはなんねえ、これを読めといって、おとっつあんにも内緒で渡してくれたもので、県令様が作らせた修身説約とう本でございます

(何と、遊女は楫取県令がいた群馬の人とは)

山室は驚きの余り、息を呑んだ。

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年12月 3日 (土)

 この声は、郭の女たちにも届いていた。格子にすがって演説の中味を聞き取ろうとする女郎の姿も見えた。演説を囲む人々の中には「ときのこえ」を求めて懐にしまい込む人もいた。群衆の中には一見して目つきの悪い男たちがいた。郭で雇われている用心棒たちであった。

 救世軍のこのような行動は人々の目にいかにも珍妙なものに映った。しかし、次第にひやかしではない、売名でもないことが伝わるようになる。各地の救出の例も耳に入る。このままだと大変なことになると感じた郭の楼主たちは彼らなりに自衛策を話し合った。

 ある時、救世軍の一隊を数十人のごろつきが襲った。旗は折られ、ラッパは曲げられ、太鼓は破られ、隊士たちは殴られ、蹴られ、重軽傷者が出た。

 この事件は新聞社にとって、この上なく面白い取材の対象であった。

 警察署で署長が尋ねた。

「君たちは傷害の告訴をするかね」

「いや、私たちが相手にするのはこの人たちではありませんから、告訴する理由はありません」

 きっぱりと救世軍の隊士は答えた。救世軍の大義の前に、こんな暴漢はとるに足らないゴミであった。警察署長には理解できなかったが、記者たちには救世軍が大きな目的のために戦っていることが伝わった。新聞は社会正義の立場から大々的に報じた。

 また、ある時、救世軍の山室軍平たちはモルフィと会議を開いた。モルフィが言った。

「救出活動を進める上で最も大切なことは、女郎の自覚です。自由廃業を決めるのは営業主の女郎なのですから。しかし、自由廃業出来るということをまだまだほとんどの女郎が知りません。楼主は女郎の無知を悪用している。国も警察も楼主と一体となって女郎を騙している。明治五年の太政官布告精神、それを受け継いだ民法九十条が踏みにじられています。これを放置している政治家の責任は重大です。貴族院議員の楫取様が嘆いていた通りです

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年12月 2日 (金)

人生意気に感ず「天皇譲位の意味。放射能をばい菌といじめ。鳥インフルの恐怖」

 

 ◇天皇の生前退位、譲位を巡る有識者会議が大詰めを迎えている。何が問題でどこが重要なのか。それは日本国憲法に凝縮されている。 

 

 天皇は日本国と日本国民統合の象徴で、その地位は日本国民の総意に基づく(第1条)。この第一条は日本の長い歴史を物語る。天皇制がなければ日本人の心、日本の文化は瓦解すると私は信じる。天皇の意志を尊重するのは非常に重要だが、容易に認めると連綿と続く制度が崩れる恐れがある。

 

 しかし、現実は厳しい。日本の役割が高まる中で天皇の公務は激しい。天皇がこれに耐えられるか、負担を軽くなければならない。表面に出すことを遠慮しているが、認知症の問題は避けられない。一代限りの譲位を認める特別法の制定が考えられているが、超高齢社会の中で同様の問題が予想されることから特別法の対応にも問題がある。一方で憲法は皇室典範によって「摂政」を置くことを認めている(第5条)。

 

 以上を考慮すると、皇室典範の改正の中で柔軟に対応することが妥当なのではないか。現在、憲法改正が盛んに議論されている。現行の天皇制堅持にほとんど異論はないが、自民党の改正草案では、「天皇は国の元首であり」と明記している。

 

◇私が県会議員の時、教育問題についてよく発言したが、その中でも強調したことはいじめ問題だった。明子ちゃんの自殺では、いじめの自殺を群馬でストップさせねばならないと本会議で訴えたが一向に減らない。教育の無力を痛感する。

 

 最近感じることは、無知・偏見が差別といじめを生むという新たな状況だ。原発事故で福島から避難した生徒にばい菌とか賠償金をもらっているとか言って、心にナイフを突き刺している。軽い気持ちで言っているのだろうが福島の生徒とすれば、地獄の惨状を引きずっている身として、居たたまれない筈だ。学校が原発事故をきちんと教えないことに問題がある。私は、小説「死の川を越えて」の中で無知が差別と偏見を生むと書いたがこの種の問題は形を変えて絶えず現われると感じる。

 

◇鳥インフルが猛威をふるい始めた。青森、新潟で合わせて約50万羽の殺処分。韓国では500万羽とか。新型インフルの恐怖を思う。それはウイルスが変異して人から人に移る事態だ。かつてメキシコの豚インフルから始まって群馬でも死者が出た。あれを警鐘として生かさねば。(読者に感謝)

 

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2016年12月 1日 (木)

人生意気に感ず「男子厨房に入る。買い物は楽し。小説・死の川を越えて」

 

 ◇大根1本130円、豆腐1丁100円、豚肉1パック284円、うどん1パック200円等、それぞれ生産者、国産大豆使用等が表示されている。昨日の食の駅での私の買い物である。妻が「主夫ですね」と笑った。かつて頭痛で苦しんだ暗い表情は、ほぼ過去のものとなった。最近の私の生活上の大きな変化は、台所で食事を作ることである。こんなに楽しいものかと思う。少年の頃、食品製造に関わっていたことが懐かしい。今度は何を作ろうかという意識が、スーパーや食の駅へ私を向かわせる。 

 

◇昔は「男子厨房に入らず」と言った。男性中心社会の文化の一断面であった。私は大根を買う自分に全く抵抗感がない。目線が変わったとふと思った。県会議員のころ、農薬、食育、放射能汚染等叫んでいたが、実態を知らなかったと反省している。並んだ食品の表示1円単位の値段、これらがTPPや健康長寿の問題に繋がっている。国会議員から地方議員に至るまで、スーパーで買い物するようになれば、文化が変わるだろう。議会の発言も地に足がついたものになるに違いない。

 

◇私の小説「死の川を越えて」の連載がいよいよ始まる。昨日、県庁の一室で「新聞連載に関する契約書(案)」を交わした。月・火の週2回、一年近く続く予定。

 

◇7期の県議生活を通して、人間の自由と尊厳、つまり人権の事が政治と行政の基盤であるにも拘わらず人々の感心が薄いことを痛感した。小説の登場人物を通して、この問題の扉を開きたいというささやかな思いがある。上毛新聞の英断に傷をつけるようなことのないようにしたい。題字は友人の書家郭同慶氏。

 

◇今日12月1日は、世界エイズデー。私が県議の時代、社会がパニック状態だった一時期があった。横浜で開かれた予防博を見て、目をそむける衝撃を受けたことが思い出される。大スター、ロックハドスンやバスケットのスーパースターが羅患して注目を集めたりした。あの頃と状況が一変した。薬が開発されウィルスと共存して生きられる時代となった。しかし恐怖が薄らいだ時こそ、一つの危機ではないか。日本はエイズ対策に成功している国と言われ、この10年、年間の新規感染者は1500件前後と言われる。しかし、安心感と発見の恐れから検査しない人が多い筈だから隠れた感染者は非常に多いに違いない。ウィルスは人類にとって永遠の敵である。(読者に感謝)

 

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