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2016年11月30日 (水)

人生意気に感ず「北方領土とは。鳩山一郎の覚悟。シベリアのサムライ。スターリンへの感謝状」

 

◇昨日の「ふるさと塾」はテーマがタイムリーなこともあって盛会だった。「北方領土と強制抑留」が主題。会場の雰囲気は「ロシアは強(したた)か。返さないだろう」。日本の世論の縮図だと思った。

 

 北方領土とは、ハボマイ、シコタン、クナシリ、エトロフの4島のこと。千島列島の一部で、かつて原住民としてアイヌの人々が住んでいた。スクリーンに4島が浮かぶ。ハボマイは、アイヌ語が語源でハポ(母)、マ(泳ぐ)、イ(所)。母が泳ぐ所とは面白い。4島で最大の島はエトロフで、その面積は千葉県に近い。「日ソ共同宣言」で明記されたのは、ハボマイ、シコタンの2島返還である。この日ソ共同宣言から話はシベリア強制抑留に入っていく。

 

◇共同宣言には、鳩山一郎の政治生命をかけた決意が現われていた。昨日の新聞には「抑留者の命には限りがある」という鳩山の思いが記されている。瀬島龍三等長期抑留者は、長期の懲役に服していたが、この国交正常化により、直ちに恩赦、帰国となった。

 

 日ソ共同宣言調印は昭和31年10月19日、恩赦決定はこの年12月23日のことであった。鳩山首相は、訪ソを前に「たとえ鳩山内閣がつぶれようとも私はこの人道問題たる抑留者問題を解決したい」と決意を述べていた。北方領土、そして2島返還問題にはこのような背景がある。来月15日に会談する安倍、プーチンはこれらを踏まえて何を語るのか。

 

◇私は、「望郷の叫び」でシベリア強制抑留を描いた。その中で「日本人が最後に意地を見せたハバロフスク事件の真実(第5章)」と「スターリン大元師への感謝状(第6章)」を書いた。塾ではこれらにも触れた。ハバロフスク事件は奴隷のように意気地が無いと一部から軽蔑された日本人が、収容所側に見事な、そして組織的な抵抗を示した事件である。高学歴者の集団で死を決意して先頭に立った石田三郎を陰で支えたのは、かつての参謀瀬島龍三だった。やり切れない思いの「強制抑留」の中で、日本人の心に光を投げかけるのが「シベリアのサムライ」たちの姿であった。「感謝状」は、スターリンに最大限ごまをすった文書。恥の証文である。帰りたい一心で争って署名した。私は国立文書館の特別の許可を得てそのコピーを持ち帰った。金庫に保存してあるが、日本人として持ち帰ったのは初めてと言われている。(読者に感謝)

 

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2016年11月29日 (火)

人生意気に感ず「カストロの熱く深い人生。その歴史的評価とは。コロンブスのジパング」

 

◇トランプ氏「野蛮な独裁者だ」。オバマ氏「並はずれた人物に対して、歴史が評価を下すだろう」。それぞれ、故カストロ氏へのコメントである。このコメントの中に、両氏の価値観、歴史観、教養の有無を推し量る要素が窺える。 

 

 アメリカは偉大な国であるが矛盾に充ちている。自由、平等という崇高な建国の理念の下で、現実の歩みは苦難の連続だった。中南米の貧しい国々を支配下に置くような国の姿勢は建国の理念と相容れない。キューバに事実上の傀儡(かいらい)政権をつくって支配したことなどはその典型である。貧富の差に苦しむ国民は怒った。その先頭に立ったのがカストロである。僅か150キロ足らずの足下で巨人に抵抗した勇気は、オバマが言う「並はずれた人物」と評するに値する。

 

 カストロは、「革命か死か」と叫び、言行一致を貫いた。演説は過激であるが人々の心を打った。アメリカのCIAは卑屈な手段で繰り返し暗殺を試みた。この現実こそ、「野蛮」ではないか。

 

◇カストロは革命家一般に通じる理想主義者だったが、その理想と現実の差に悩んだ節がある。「地獄の熱さなど実現することのない理想を持ち続けた苦痛に較べれば何でもない」と語ったことがあると言われる。

 

◇カストロが大変な親日家であることに関し、私は楽しい空想を巡らす。マルコポーロは、かつて黄金の国ジパング(日本)を求めて新世界の扉を開いた。サンサルバドルに到着し、そしてキューバに至った。キューバをジパングと思ったが黄金はなかった。現代の日本をカストロは平和で豊かで輝く国と見ていたに違いない。カストロは、日本をコロンブスが求めた黄金の国ジパングと重ねていたのではないか。

 

◇カストロは広島の原爆慰霊碑を訪ねた。宿敵アメリカが、ジパングに核を落として無数の罪のない民間人を殺した「蛮行」を許せなかったに違いない。オバマが大統領として初めて広島を訪ねたことはカストロを考える時、改めて評価の念を深める。トランプのようなリッチな人種には貧しい人々の心は分からないのだろう。貧富の大きな格差に悩むアメリカ人が格差の象徴に一票を投じたこともアメリカの矛盾を窺わせる。アメリカの今後はカストロへの歴史的評価の一要素となる。(読者に感謝)

 

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2016年11月28日 (月)

人生意気に感ず「カストロの死。キューバ核危機を思い出す。トランプの1兆円資産」

 

 ◇カストロが90歳で亡くなった。超大国アメリカの正にのど元で徹底した反米を貫いた偉大な人生だった。アメリカの傀儡(かいらい)バティスタ政権を激しい武力闘争で倒し、キューバ革命を実現した伝説的英雄である。アメリカ企業を接収しアメリカと敵対すると、ソ連と手を組んだ。ソ連によるキューバのミサイル基地建設はアメリカにとって、のど元に突きつけられるナイフ。キューバ危機が発生し、世界は核戦争の瀬戸際に立たされたことを実感した。 

 

 ケネディとフルシチョフの対決だった。キューバに近づくソ連の軍艦。全米軍はケネディの命令を待って臨戦態勢に。全世界が固唾を呑んで見守る中、ソ連の艦隊は遂に反転して去った。あの光景は私の目蓋に焼き付いている。

 

 638回も暗殺の危機に晒された。命を狙われた回数が最も多い人物だった。「いつも防弾チョッキを着ていると聞くが」という記者に肌を見せ「着ていない。モラルというチョッキを着ている。これがあれば強い」と答えたと言われる。

 

 尽きることのない情熱とエネルギーの塊だった。演説は10時間にも及ぶことがあり、実際国連で4時間半の演説をした。世界の多くの独裁者と異なり、私財の蓄積をしなかった。中南米諸国を支配地のように見下す米国に対して頑なに抵抗する男として、この地域の人々に人気があった。親日家で、広島を訪問した。米との間も新しい関係に入りつつある。トランプはキューバとどのように向き合うのか。

 

◇トランプの1兆円超の資産に関する面白いニュースがある。大統領は、その地位を利用して利を得ることは許されない。トランプ氏は全世界で約500の事業を営む。大統領に就任したら「1兆円を超える総資産を売却することが望ましい」と言うのだ。グズグズしていると、地位利用という倫理上の問題が発生する恐れがあるという。さすがアメリカだけに、この種の問題もけた外れだ。トランプは「法律は私に味方してくれるはず」と楽観的。それは資産管理者への事業の委託等だろう。面白いが、それほど大問題ではないのかも。

 

◇反グローバリズム、米国の保護主義、大衆迎合主義(ポピュリズム)、これらは現在の世界の動きを解くキーワードだ。世界は自国本位に向かっているようだ。その先頭にトランプが立つ。世界に新しい潮目が生まれつつある。(読者に感謝)

 

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2016年11月27日 (日)

小説「楫取素彦物語」第186回

 かくして、協力体勢が出来、救世軍の一隊は吉原新楼に向けて進撃を開始した。軍旗を押し立て、太鼓を鳴らしラッパを吹いて進む奇妙な一隊にたちまち黒山のように人々が集まった。従軍した人々の何人かは機関誌「ときのこえ」を配布した。格子の中の女郎たちが好奇の目で一隊の動きを見ている。隊員が女郎たちに近づこうとすると用心棒が激しく妨げた。一隊は新吉原の大門の前で演説を始めた。

「女郎衆に訴えます。私たちは、救世軍といって、神様の御意志に従って皆さんを不幸な境遇から救おうとするものです。皆さんはこの世で最も哀れな人たちです。体をおもちゃにされ、悪い病気をうつされその為に長く生きられない。あなたたちを買うために泥棒、詐欺、強盗など罪を犯す人が多いのはまぎれもない事実です。あなたたちのために、家庭を壊す人も多いのです

「その通りだ」

「そんなことはない」

 見物人の中から色々な声が上がった。それを無視して隊士は続ける。

あなたたちは、借金に縛られて籠の鳥、自由を奪われてどこへも行けません。自由は人間にとって最も大切な宝物です。新しい御世になり、人間は平等で自由になったのに、あなたたちだけ取り残されているのです。いくら働いても借金が減らず逆に増えていくのはおかしいではありませんか

「そうだ」

「格好いいことを言うな」

また、聴衆からいろいろな声が上がった。

皆さんは騙されているのですよ。目を醒ましてください。皆さんは知らないのです。皆さんがその気になればたとえ借金があっても、すぐに廃業出来るというのが法律の仕組みなのです。裁判所の考えもそうなっています。皆さん、その不幸な生活から抜け出して堅気の人生に戻ることを真剣に考えてください。そのお世話をするのが私たちの勤めです

「お前たちの目的は何だ」

鋭い声が飛んだ。

「女郎衆の皆さん、この紙に連絡先が書いてあります。何とかして、連絡くだされば、私たちは命がけで皆さんを助けることをお約束します。私たちが助け出した女郎衆が堅気になって生活している例があちこちに出ていますよ。さあ皆さん勇気を出してください」

 

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

 

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2016年11月26日 (土)

小説「楫取素彦物語」第185回

 救世軍は軍隊の階級組織に似た体制をとっていた。救世軍士官山室軍平がプラート大佐、デュース少佐を伴ってモルフィを訪ねたのは明治三三年七月のことであった。

 三人はモルフィの前に出て、直立不動の姿勢で敬礼した。

 山室軍平は言った。

「私たちは救世軍のものです。モルフィ殿が娼婦の救済に新しい道を開いたと聞き御教示願いたく参上いたしました」

続いてプラート大佐が言った。

「モルフィさん、あなたの財産をいただくのは心苦しいが、力を合わせて、気の毒な日本女性を救いたいのです」

 ここでモルフィが口を開いた。

「救世軍の皆さん、私はそんなに心が狭くない。気の毒な日本の女を救うことは神の意志です。私一人の力で出来ることではありません。それに私が悩んでいること皆さんの力を借りたいことがあります

 救世軍の三人はモルフィと手を握りあった。

 モルフィは娼妓の自由廃業の方法と手続きを詳しく教えた。

「ところでモルフィさん、あなたの悩みとは何ですか」

と、山室軍平が尋ねると、

「実は、苦労して廃業に成功してもアフターケアがないと真に放したことにならないのです。何か良い手はありませんか」

 モルフィが尋ね返した。

「モルフィさん、それについてはイギリスの私たちの経験を生かして婦人ホームを作りましょう。約束します」

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年11月25日 (金)

人生意気に感ず「北海道が中国に買われる。北方領土は。留学生に3・11を」

 

 ◇外国資本による土地買収をどう考えるか。水源地が買われ、美しい日本の水が外国に運ばれる。国民感情として穏やかでない。外国の主権が生まれるわけではないが、実質的に支配される状態が出来ることが心配だ。全国で外国人資本による原野の取得が進んでいる。 

 

 北海道の羊蹄山(ようていざん)はエゾ富士と呼ばれる美しい姿の山。その麓の広大な土地が中国企業に買収された。このような事態が広がっている。中国は日本の土地を狙っていると言われ、「10年後、北海道は中国の32番目の省になる」という見方すらある。このまま放任すれば深刻な問題になりかねない。政府は対応策の検討に着手した。群馬県も私の県議時代に問題になり、条例が出来、売り主の届出義務等が定められた。文化や環境に関わる問題でもある。

 

◇平成17年に議長として南米各地を回った時、中国が将来の食糧難に備えて、ブラジルとアルゼンチンで土地を買っていることを知った。そのために土地が大きく値上がりしていることを聞かされて驚いた。その時、私はこれらの国では、外国人の土地取得にどのように対応しているのか気になった。

 

◇今月の「ふるさと塾」(29日火曜)のテーマは北方領土である。来月15日、プーチン大統領がやって来て安倍首相と協議する。北方領土とは、歯舞(ハボマイ)、色丹(シコタン)、国後(クナシリ)、択捉(エトロフ)の4島である。第二次世界大戦の末期にソ連によって占領され、以来返還を求めながら未解決である。ソ連は、北海道の北半分の領有を主張した。アメリカが一蹴したので実現しなかったが、「もし」ということを考えるとぞっとする。

 

 ロシアとの間では、北方領土が未解決の為、戦後70年以上経って未だ平和条約が結ばれないという異常事態が続く。「ふるさと塾」では強制抑留のことも話す。昭和31年、当時の鳩山一郎首相は訪ソして、日ソ共同宣言を結び、このことによって瀬島龍三等長期抑留者の帰国が実現した。また、この宣言の中で平和条約締結後にハボマイ、シコタンを返還することが記載された。

 

◇28日、月一回の留学生対象の講義では、東日本大震災を話す。地震を知らずして日本を理解することは難しい。今も続く「3・11」を通して助け合う日本人と日本の文化を伝えたい。(読者に感謝)

 

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2016年11月24日 (木)

人生意気に感ず「福島沖M7・4の衝撃。次は首都直下。アルゼンチンの思い出」

 

◇22日午前6時頃、突然グラグラと来た。瞬間、かなり大きいぞと思った。テレビはすぐに福島県沖の地震発生を報じた。M7.4、津波の予測は何と6m。NHKは「すぐに逃げて下さい」と繰り返し訴え始めた。それは、控え目な普段のNHKらしくない、むしろヒステリックにさえ感じられた。現実の間もなく仙台港で140センチの津波が報じられた。

 

 気象庁によれば東日本大震災の余震であるという。5年以上経ってまだこれだけの余震とは。それにしてもNHKの「逃げろ、逃げろ」の効果は大きかった。東日本大震災のあの津波の惨状を恐れ、反省したからに違いない。あの時、これだけの緊迫感を示していたら犠牲者の数は減らせたかもしれない。

 

◇私たちの関心事は今後の大地震。武蔵野学院大学の島村特任教授は、「3・11のようなM9クラスの場合、余震は百年以上続く。岩手から茨城にかけM8級が起きても全く不思議ではない」と述べている。

 

 又、全国各地の起伏をミリ単位で測量し地殻変動の解析で地震を予測し、ピタリと当てることで有名な村井東大名誉教授は、その観測データを基に、近く首都直下の大地震を警告している。私たちは、連日の、そして長期にわたる刺激情報に麻痺している。この心理状態を突き破る時に来ている。

 

◇安倍首相がアルゼンチンを訪ね、日系人と会ったことが報じられた。このニュースを聞きながら、私は平成17年議長としてアルゼンチンを訪ねた時のことを思い出していた。安倍首相はアルゼンチンは特別な関係にあると述べていたが、その1・2を紹介したい。私はブエノスアイレスを走りながら、「あのバルコニーでエバが演説した」と説明を受けた。また、永井特命全権大使とは日露戦でアルゼンチンに助けられたことを語り合った。

 

 エバとは、私生児から身を起こした女優で、大統領夫人となった人。上流階級からは悪魔と恐れられ、下層からは天使と慕われた。この人は終戦直後、日本に小麦など大量に援助してくれた。33歳で癌で亡くなった。

 

 日露戦で助けられた話とは、チリとの戦争に備えて、イタリアに発注していた最新鋭の2隻の軍艦をロシアに売らず日本に提供したことだ。イタリアから横須賀まで運んだ軍人は我が鈴木貫太郎だった。2隻は日本海海戦で大活躍した。これらは「ふるさと塾」でも話した。(読者に感謝)

 

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2016年11月23日 (水)

小説「楫取素彦物語」第184回

 「そうです。武地殿が言うには、これからロシアに備えるためにイギリスとの関係が重要になる。彼はイギリスの人脈が豊富でいろいろな人とつながりがあるらしい。

 ところで、モルフィさんはイギリスに救世軍なるものがあって、日本にも一部上陸しておることはご存知だと思いますが

「ああ、あの貧民救世運動の。よく知ってますとも」

「あの救世軍がモルフィさんの廃娼運動を見習って、自分たちも参加したいと考えているそうです。武地殿は日本の救世軍幹部とも実懇なのです。私に間に入ってくれというのです。救世軍は廃娼のことに取り組むについて、モルフィさんに学びたいそうです」

モルフィは驚いた顔をして頷いた。

武地殿の推測では、救世軍は、同じキリスト教でも必ずしも一致しないところもあって、モルフィさんが快く承知してくれるか心配しているらしい。とにかく、大切なことはモルフィさんを無視しないと言っている

モルフィはフム、フム、というように何度も頷いた。

私も、廃娼の輪が外国人も加わって広がることには大賛成なので、救世軍に会っていろいろ聞いた上で差しつかえないようなら協力してやってくれませんか」

 楫取の話にじっと注意深く耳を傾けていたモルフィは聞き終えて大きく頷いて口を開いた。

「楫取様のお話承知しました。廃娼のことは楫取様が種を播、私は水をやって少し育てただけです。そのあとは、皆さんで力を合わせ大きな木に育てることが神様の意志です。救世軍への協力は私の信念とプライドを傷つけることはありません。楫取様に頼まれたことは重く受け止めます」

 二人はにっこり笑って握手した。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年11月22日 (火)

人生意気に感ず「韓国の強権政治。憲法改正と戒厳令。安倍首相と個人的信頼。猫に噛まれる」

 

 朴槿恵大統領が窮地に落ちている中、「大統領を守れ」というデモが報じられた。5%の支持率に変化をきたす兆候なのか。一説によれば、大統領が握る最後の切り札ともいうべき戒厳令の発令を恐れている動きとか。 

 

 戒厳令は国家の非常時に立法、司法行政の各権を軍事司令官が掌握する命令である。明治憲法下では天皇が宣告した。民主主義の全否定であり、民衆のデモは武力で踏みにじられることも。日本国憲法の下では有り得ない。韓国にはこの制度が存在し、朴槿恵氏の父で、かつての大統領朴正煕は非常時の強権をしばしば発揮した。朴槿恵は娘であり、父の影響を強く受けて育った人だけに、強権発動がイメージされるのかも知れない。

 

◇非常時の国家秩序はどの国でも問題になり得る。日本とて例外ではない。大規模なテロや災害の時など、通常の自由や権利の主張を許したのではかえって多くの生命を守れないことが有り得る。

 

 今、憲法改正が議論されているが、改正項目に戒厳令を設けることは可能かとある人に聞かれた。私は、それは不可能だと思う。日本国憲法に於いて、基本的人権の尊重は憲法の基本であり改正することは出来ないというべきであるから、明治憲法のような戒厳の規定を設けることは出来ないと考えるべきだ。しかし、基本的人権も無制限ではなく公共の福祉のために制限を受けるから、非常時、まさかの事態に対応する措置は考えておかねばならない。現在、そういう時期にさしかかっている。

 

◇激動の国際関係で安倍首相の存在が光っている。指導者間の個人的信頼関係がいかに重要かをまざまざと見せつけられている。トランプ、プーチン等との関係で「馬が合う」かどうかが盛んに論じられている。個人的信頼関係を築くにはある程度長期政権でなければならない。1年余でくるくるトップが変わるのでは人柄を見定めることも出来ない。この点、総裁の任期が長くなり安倍政権が長期の可能性を持つに至ったことは日本の発展にとってよいことだと私は信じる。

 

◇昨日朝、門のところに段ボールに入れられ捨てられた猫が置かれていた。怯えて声も出さない。死んでいるのかとわずかに箱を開けたら、さっと飛び出した。一匹を掴んだら、その手に噛み付いて離さない。血がボタボタと落ちた。生きようとする小さな命。窮猫人を噛に窮した。(読者に感謝)

 

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2016年11月21日 (月)

人生意気に感ず「ペルーへの思い。フジモリとマチュピチュの少年」

 

 ◇今、地球の反対側のペルーに世界の目が集まっている。安倍、プーチン、周近平、オバマなど世界の指導者が集まっている。私は、テレビでリマ市の姿を見ながら、20年前ペルーを訪れた時の心に残る光景を思い出した。大統領官邸と日本大使公邸の訪問、サヨウナラと叫んだマチュピチュの少年、そしてこれらの背景であるペルーの血塗られた歴史などだ。 

 

 私が行政視察でペルーを訪れたのは平成8年4月で、フジモリ大統領の出現はその6年前のことであった。私は「100%日本人の血」を誇るフジモリの大統領出馬とその戦いぶりに強く心を打たれた。虐げられたアンデスの人々はサムライの国日本に期待してフジモリを当選させた。フジモリ以前のペルーはテロとハイパーインフレで末期的な状態であった。経済の建直しも、テロ撲滅、治安の回復を大前提としていた。そこで、フジモリは行政を握るとテロの撲滅に全力を注ぎ、その成果には目を見張るものがあった。

 

 私たちが日本大使公邸を訪ねた時、青木大使はフジモリを高く評価し、テロもなくなり経済の再建も成ったと誇らしげに語った。まさか、その数か月後にこの公邸がテロに占拠され、長期間世界の目を釘付けにするとは夢にも思わなかった。思えば、テロはその後世界に広がった。そして、フジモリは天国から地獄に落ちて現在なお収監されている。

 

◇私たちは、ナスカの地上絵の上を飛び、クスコの北100キロの地にある空中都市マチュピチュに向かった。スペインに滅ぼされた悲劇の跡を見るのが目的であったが、ここで私は終生忘れられない経験をした。「サヨウナラー」を叫ぶ現地の少年の姿である。私たちを乗せたバスは、急角度の斜面を幾恵にも蛇行しながら下っていた。一つの曲り角を過ぎた時、道路前方に突然一人の少年が現われた。上の道から森の中を横切ったのだ。驚いたことに「サヨウナラ―」と手を振って叫んでいる。次のカーブを曲がるとまた前方に現われる。何度か繰り返し少年は見えなくなった。バスの中では一斉に手を振って応えたのだ。日本に憧れている少年かと私は胸を熱くした。あの時10歳としても現在30歳以上になる。どんな大人になっているだろうか。(読者に感謝)

 

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2016年11月20日 (日)

小説「楫取素彦物語」第183回

 救世軍の上陸

 

 

明治三十三年のある日、突然モルフィのもとに、楫取から手紙が来た。モルフィが驚いて開くと相談したいことがあるから会いたいという内容であった。

 モルフィは指定された帝国議会の一室で、楫取素彦と会っていた。

「先ず、訴訟はどうなりましたか」

楫取が切り出した。

モルフィは、穂積陳重博士の示唆で遊女ふで救出の裁判を行い、第一審で勝訴した経緯を話した。

「楫取様に博士を紹介していただき訴訟で勝てる道が開けました。東大法学部の研究室では博士の弟子から、その後も貴重な助言をもらいました。みな、楫取様のお陰です。本当にありがとうございました」

「おお、それは何よりでした。群馬で播いた廃娼の種が、あたなによって、そのように広がることは何よりも嬉しいことです

 楫取はモルフィの手を握って言った。

「実は、楫取様、遊女ふでの救出は、楫取様を知るある二人の方の依頼でした。幻馬とお綱と言えば楫取様はよく分かると申されました」

 モルフィがこう話すと、楫取は驚く風もなく、愉快そうな笑顔をつくって語り出すのであった。

「実は、そのことを私知っておりました

その幻馬から連絡があったのです。昔の懐かしい思い出が結びついておって、夢のようです。今は幻馬ではない。武地半蔵と名乗っておる。岩崎弥太郎が始めた大事業の一角を担っておるそうです。貿易関係とのことだ。相変わらず世界の情報に通じていましてな、私に相談があるというのです」

「楫取様が私に話したいというのはそのことですか」

 モルフィは怪訝そうな表情で言った。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年11月19日 (土)

小説「楫取素彦物語」第182回

「おお、あなたがふでさん、大変大変おめでとう。ワンダフルです。どうですか自由の味は」

 モルフィはふでの手を握って叫んだ。

その時、もう一人の女が言った。

「お綱でございます。私からも心からお礼を申し上げます。モルフィ様の御努力を生かさねばと、幻馬様の力を借りて、ふでさんを支えておりました。幻馬様、モルフィ様にくれぐれもよろしくと申しておりました」

「私からも皆さんにお礼を言いたいです。第一審だけの勝利ですが、裁判所の判断を勝ち取ったことは大変なことなのです。日本の公娼制度に楔を打ち込んだのです。これから、次々にこういう裁判が起こされ、良い結果が生まれるに違いありません。神に感謝です。ところで、ふでさんの今の生活はどうしていますか」

 これにふでが答えた。

「ハイ、幻馬様のお力で、横浜の貿易関係の会社で、お掃除の仕事をさせてもらっています堅気の仕事で稼ぐことがどんなに素晴らしいか身にしみております。自由ということの意味を初めて知りました」

 ふでの頬に涙が伝っていた。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年11月18日 (金)

人生意気に感ず「虐待死と社会的孤立。堺市男児死亡事件。憲法改正論の本質」

 

 ◇虐待死が増える中で、問題家庭の地域での孤立が深刻となっている。孤立していることは、相談相手も支援もないことを物語る。そういう家庭は生活苦のケースが多いことだろう。経済の問題は、現代社会で様々な生きることを難しくする事情に結びついている。精神がガサガサに干からびて夫婦親子の情も生気を失っていくのではないか。

 

 今回の厚労省の調査はこのことを示すと思われる。2014年度、虐待で死亡した子どもの家庭の7割以上が地域から孤立していたことが判明した。こうした社会状況下で、行政の役割は極めて大きい。

 

◇堺市の男児が行方不明となり、この児童と見られる遺体が見つかり、両親が傷害致死(父)、保護責任者遺棄致死(母)の容疑で逮捕された。

 

 両親は、再三男児の健康診断の延期を市に求めていた。市は、未受診に対して適切な対応を怠った。5月に改正された児童虐待防止法及び児童福祉法では、児童相談所の権限が強化された。家庭に強制的に立ち入る手続きが簡略化されたのだ。これは、孤立する家庭へ救いの手を伸ばす法の手段ともいえる。これを有効に使えなかった行政の責任は大きい。児童相談所は、自治体、警察と連携を密にして悲劇を防ぐための社会的使命を果たさねばならない。

 

◇憲法改正の具体的な議論が再開された。衆参、それぞれで改憲発議に必要な「3分の2」は既に7月の参院選で実現され、土俵は出来ていたといえるのだ。参院憲法審査会は、16日、約9か月ぶりに実質的議論を再開した。今後の課題は、改憲項目絞り込みである。

 

 自民党は「占領下で制定され、国民の自由な意思が反映されたとは言い難い」と明言しているが、この点を強調するのはどうかと思う。現憲法の本質を理解しない多くの人々を戸惑わせ、議論を表面的なものにする恐れがある。この点は、平和主義、基本的人権の尊重、国際協調主義など、現憲法の優れている点をきちんと評価した上で、改正を考えるべきだ。

 

 日本国憲法は制定以来70年以上が経過した。この間の現実社会の変化には目を見張るものがある。憲法の役割と使命は、国家、社会の規範であるから、現実との乖離(かいり)が余りに大きくなればその役割と使命を果たせない。改正の本質的理由はここにある筈だ。国民の多くが改正を支持する理由もここにあるに違いない。(読者に感謝)

 

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2016年11月17日 (木)

人生意気に感ず「中国大使館訪問の意義と成果。天安門事件を」

 

 ◇16日午後、我々群馬県日中友好協会のバスは、中国大使館に入った。新規交流事業として企画したもの。何度も入っているが、大使公邸、中庭、大使館の主要部などは初めて見た。 

 

 公邸内の美術品は素晴らしく、清朝乾隆帝時代の絵は「この建物以上に高価です」と大使夫人が言う逸品だった。中庭には、各県の木が植えられている一角があって、まだ群馬のものがない。前橋の石榴(ザクロ)を植えることになった。先年、萩市の図書館に植えたが子孫繁栄のシンボルで、今回は日中友好発展の願いを込めて提案した。

 

 映画「楫取素彦物語」の20分に縮小したものを大スクリーンで観た。大使夫人の汪婉さんは日本と群馬の近代の原点たる物語に大きな興味を示された。字幕に中国大使館推薦の文字を入れることを検討することになった。

 

 ロの字に囲んだ懇談は意義あるものになった。中国側は、群馬の日中友好協会が尖閣で火がついた最悪の時にスタートしたことを高く評価した。私は、「最近の沸き立つような世界情勢の中で、日中の関係は増々重要になりました。そのために今回の訪問は誠に意義あるものになりました」と挨拶した。

 

◇懇談の中、現代の名工針生清司氏が「有座の器」を大使館に納めたいと提案し、公邸内に置くことが決まった。孔子の中庸の徳を教える教材で、針生氏が13年の歳月をかけて再現したもの。大使館訪問は予想以上の成果が感じられるものになった。

 

◇大使館訪問の途中、中国人の友人K氏が天安門事件を語っていた。私は当時の衝撃的状況を思い出した。平成元年(1989)6月のことだった。民主化を求める学生たちを中心とした人々は広い天安門広場を埋め尽くした。百万人を超えたとする報道。建国以来初めての戒厳令公布。突入する数十台の戦車。鄧小平は武力鎮圧を決断したのだ。戦車の前に立ちはだかる若者の姿が報じられた。K氏は言う。「鄧小平が武力鎮圧しなければ、中国は現在の中東のようになっていたでしょう」。あるいはそうかもしれない。

 

大使館で「春節」と題した映像を観た。内陸の農村に各地から年に一度集まって新年を祝う人々。中国の広さと懐の深さを実感した。中国を治めることの難しさは始皇帝以来である。中国はどこへ向かうのか。

 

◇子どもの虐待死を出した家庭の7割以上が地域で孤立した家庭とは。子どもは社会で育てるもの。(読者に感謝)

 

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2016年11月16日 (水)

人生意気に感ず「百万人のデモとは。TPPが掲げる価値とは。中国大使館で楫取の映画」

 

 ◇百万人を超える大集会とは想像を超える。韓国の大統領辞任デモ。誇張ではなさそうだ。地下鉄の利用状況、バス利用数などから、130万人超との情報もある。多くの中高生まで参加しているというから驚きである。 

 友人の女性実業家崔容疑者の国政介入疑惑に関し、朴大統領は近く検察の直接聴取を受ける。百万人を超えるデモは韓国の民主主義の特色を際立たせるもの。死者を出さず、平和的に終わり、自発的にゴミを拾う若者の姿が目に付いたと報じられた。国境を接する中国では、かつて百万人を超える天安門の集会が戦車に踏みにじられた。北朝鮮の民衆は日頃の恐怖体制によって抑えこまれている。しかし、金正恩は、同じ民族のこのエネルギーを秘かに恐れているに違いない。

 

 日韓両国の存在は、世界情勢の中で重要な役割を担う。特に日本の役割は大きい。北朝鮮、ロシア、中国、これら全体主義の国々と対峙する日韓は民主主義の最前線である。トランプ氏の出現により、アメリカの民主主義が揺れ動いている現実を考えれば、健全な日本の民主主義はアジアの要、そして世界の要と言っても過言ではない。

 

◇参議院のTPPの論戦を見た。野党のある議員が、真正面の相手は中国だという認識が必要ではないかと主張した。この議員は、TPPは、自由・民主・人権・法の支配という高い理念を掲げて公正で自由な貿易のルールを築こうとしているからだと訴える。中国への批判が込められている。安倍首相は答弁の中で「新しい技術が模倣される、ルールが変わる、法の支配を強化しなければならない」と述べた。首相はTPPの交渉の中で、積み上げてきたものは生かさねばならないと主張する。その通りだと思う。このTPPの理念はアメリカにとっても国益に適うのだから、トランプ氏に訴えると語っていた。首相は「君子は豹変す」という諺を引用して、これをトランプ氏に期待すると述べた。この諺は本来は良い意味のもので、君子は過ちを悟ってすぐ良いほうに変わることだ。東洋の哲学がトランプ氏に直ちに通ずるとは思えないが、底にあるものは普遍的な価値である。

 

◇今日、日中友好協会は中国大使館を訪ねる。テキサス国際映画祭でプラチナ賞を得た、私が企画原作の「楫取素彦物語」の中国語版を20分に縮めて上映することになった。(読者に感謝)

 

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2016年11月15日 (火)

人生意気に感ず「高齢ドライバーの深刻さ。TPPと中国。イノシシの被害」

 

◇また高齢ドライバーの暴徒とは。東京の病院敷地内で2人が死亡した。高齢社会最大の課題の一つである。このところ80歳代の交通事故が著しく増加している。人間の寿命は伸びるが脳の能力は低下する。そして忍び寄る認知症社会。

 

 高齢者にとって、車は足として不可欠である。人命尊重と高齢者の車運転。これをどう調和させるか。私の知人には90歳代後半で車を運転する人がある。決して違反しない、事故を起こさない。強烈な生命力と共に、その生命力の一環としての運転能力も確かなのだ。免許証返納は、社会からの退場と直結する。社会からの退場は人生の終幕とつながる。

 

 対策として、高齢者の能力検査の強化とクルマの安全機能を高めることは不可能だろう。来年3月から導入される認知症検査では、「認知症の恐れ」と判定された75歳以上の運転者は医師の診断を受けねばならない。そこで認知症と診断されれば、免許停止か取消となる。近づく認知症数百万社会は、車社会に最大の課題を突き付ける。

 

◇トランプ大統領実現の衝撃波は今後様々な変化を生むことになるが、早くも姿を現したのが、TPPの絶望である。トランプ氏は孤立主義、保護主義、反グローバル主義等々と評される主張を選挙戦で訴えてきたがその象徴ともいえる発言がTPP反対だった。

 

 私が県議会にいる頃は、県の農業政策は、群馬県の農業が壊滅的打撃を受けると分析していた。新しい農業の方向が模索され、そのような危機の声が薄れかけていた。TPPが駄目になっても農業改革は進めなければならない。もとよりTPPは農業だけの問題ではない。貿易立国日本は、TPPに替わる変化に対応する為の改革を緩めてはならない。

 

◇環太平洋連携協定(TPP)挫折は、太平洋進出を狙う中国を喜ばせているに違いない。中国はTPPを中国封じ込めの一環と見てきたのだから。世界の経済大国となった中国は、その中味を充実させていくのが課題だ。世界は米中の時代に向かうと考える人は多い。その中で日本の役割と生き残る途は何か。

 

◇イノシシ被害で死者が出た。桐生市の農家の人。わなが外れて飛び出したイノシシに襲われたらしい。猟師の話では足をひきちぎって逃げるイノシシもあるという。命懸けの突進力は凄い。前橋も出没地が南下している。森の住人との共存には、森林政策の改革が必要だ。(読者に感謝)

 

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2016年11月14日 (月)

人生意気に感ず「1月解散は半分位。絶望のTPP。北方領土と強制抑留」

 

◇12日、自民党県連で「尾身朝子支援の集い」緊急準備会があり、1区の役員が多く参加した。私は顧問の立場で前の席に座った。山本一太氏が県連会長となって、変化したことを言えば、第一に会議に緊張感が生まれたこと。

 

 この席で県連会長は、時勢を睨んで重要な発言をした。「1月解散の可能性は半分位残っています。世論の動向、12月15日のプーチン訪日の結果等を総合的に判断して決断することになるでしょう」。

 

 私は安倍首相とトランプ氏との、17日の会談の結果も材料の一つになるに違いないと思った。トランプの勝利を予想した手を打てなかったことは安倍政権の失態である。TPPは衆院を通過したが、その前途はトランプ大統領の出現で絶望に近い。しかし「災い転じて福となす」だ。急きょ決断したトランプ氏との会談は、その一石となる可能性がある。

 

◇馬が合いそうな安倍・プーチン会談は何を生むのか。水面下で、高官の訪ロなど慌ただしい動きがある。昭和31年の日ソ共同宣言で、ソ連は歯舞、色丹の2島返還を約束したが、その後の世界情勢の中で、ロシアはそれを守ろうとしない姿勢を示してきた。日本が、北方領土として返還を求め続けるのは、あくまで4島。今月号の文藝春秋で、鈴木宗男は「2島返還だって大成功だよ」と言っている。2島返還先行論がしきりに囁かれているのだ。

 

◇今月の「ふるさと塾」は11月29日で、テーマは北方領土である。タイムリーな問題であるが、私たちは北方4島の歴史と実態、そしてソ連に奪われた経緯を知らない。それを語ることが目的である。

 

 凍土シベリアに大きな変化が生じている。ロシアは経済の打解、国の今後の発展をシベリア開発に賭けている。私はハバロフスクを訪ねた時、凄い親日の空気に驚いた。市民は皆、日本に憧れ、街には日本車があふれていた。シベリアは、かつて強制抑留で多くの日本人が死んだ時と比べそれ程寒くない。地球の温暖化は人類の滅亡に結び付きかねない重大事であるが、シベリアにとっては活動しやすい環境に変化しつつある。このような中で、日ソの関係はどうなっていくのか。

 

◇12日尾身さんを各地に案内した。時間の変更で人々を待たせることになり、私は紙芝居「前橋の一番熱い日」を演じた。かつての空襲以上の灼熱の温暖化到来を警告した。(読者に感謝)

 

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2016年11月13日 (日)

小説「楫取素彦物語」第181回

モルフィが選んだ弁護士はモルフィと打ち合わせたところに従って主張した。

「もし法廷が私たちの請求を認めないなら、国が奴隷制度を認めることになるだろう」

 十一月十九日、判決は下った。モルフィたちの全面勝利だった。予想したことではあったがモルフィは狂喜した。一方敗れた楼主たちの衝撃は大変なものだった。

 楼主はただちに控訴した。この段階で、追い詰められた楼主とその仲間は、最後の手段に訴えた、訴えを取り下げる旨の申請書に、ふでは強制的に印を押させられていた。

 ふでを証拠物として差し押さえ楼主の下から離すことに失敗したことの結果であった。

 訴の取り下げが法廷に受理され、控訴審は負けとなった。しかし、一審判決の効果は決定的であった。楼主が廃業届に印を押さない場合、裁判所に訴えれば負けるということが明らかになったからだ。

 ふではどうなったのか。楼主とすれば、ふでを自分の郭で働かせることは世間の目もあり本意ではなかった。そこで、ふでの負債を減らして転売した。売られた先からふでは、逃亡して身を隠した。警察も探そうとはしなかった。三月身を隠し娼妓免許の取り消しとなりふでは自由の身となった。

 ある日、二人の女がモルフィを訪ねた。

「佐野ふででございます。大変お世話になりながらお会いするのは初めてでございます。本当にありがとうございました」

 ふでは、両手を着き深々と頭を下げた。

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

 

 

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2016年11月12日 (土)

小説「楫取素彦物語」第180回

 

「妙案とは何ですか。早く教えてください」

「裁判所も驚くはずですよ、遊女さんを証拠物件として差し押さえるのです」

 遊女さんという表現に学生の初々しさがにじんでいる。

「何ですか。人間を差し押さえるなんて、そんなことが可能ですか」

「遊女さんは、証拠物件ではないですか。証拠物件が人間であってはならないという理屈はありません。そして、証拠の保全のため、遊女を楼主から離し、裁判所の管理下におくことは、同時に、遊女の保護にもなる。裁判所は認めるはずです」

「なるほど、それはグッドアイデアです」

 モルフィは手を打って感心した。

 東大法学部の助手が予想した通り裁判所は遊女の差し押さえを命じた。しかし、楼主は命令に頑として従わなかった。そのような命令に服することは彼の営業にとっても同業者にとっても大打撃だから絶対に娼妓を手放すことは出来ないと言い張った。警察も、娼婦が娼婦である間は楼主に従うべしとする県令を重視して楼主に味方した。

 裁判所とのトラブルの間、ふでは楼主によって酷い仕打ちを受けていた。楼主側はあらゆる手段を使った。名古屋のある地方紙は、ふでが自由をかちとった暁には、彼女をモルフィが妾にするとの、彼女の父親とモルフィが交わした契約書の写しと称するものを掲載した。楼主たちはこの新聞を戸に配布した。

 しかし、いかなる策を奔しても裁判に向かう大きな流れは阻止出来なかった。

 一八九九年(明治三二年)十一月十三日、ついに口頭弁論の日が来た。

 モルフィは、後に、穂積博士に出した報告書の中で次のように語った。

「穂積先生、口頭弁論の日は、私たちにとって興奮の一日でした。法廷は楼主やその仲間たちで超満員でした。ごろつき共の殺気った空気が流れていました。しかし、法の権威、裁判所の権威は巌としていて、彼らもこれには逆らえないことが歴然としていました。私は日本の社会の理不尽に法の鉄槌が下ることを想像しわくわくいたしました」

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

 

 

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2016年11月11日 (金)

人生意気に感ず「トランプ出現の真の危険性。中国、北朝鮮、ISは。ハンセン病のこと」

 

 ◇世界が一変した。そんな感がしたトランプ大統領の登場である。株が千円余急落したと思ったら翌日は千円余急上昇。これはガンマンにピストルを突きつけられて真っ青になり、次の瞬間銃口を下げられほっとした姿に似ている。全紙が、第一面に横の横断幕で申し合わせたように「米大統領トランプ氏」と報じた。 

 

◇過激な異端児に核兵器のボタンを預けた。俺たちの大統領ではないと叫ぶ学生デモの姿は国内分断を象徴する。アメリカは一つになれるのか。格差への不満がこの異端児を大統領に押し出した。大衆迎合(ポピュリズム)は民主主義の劣化を招く。トランプは、偉大なアメリカの再生を叫んだが、アメリカの偉大さは民主主義という理念の偉大さにある。メキシコ国境に壁をつくるという主張に象徴される大衆迎合、自国優先はアメリカの偉大さを否定するものだ。

 

 アメリカは世界の指導者である。それは、軍事力だけでなく民主主義の理念を高く掲げたが故に世界の指導者として説得力があった。世界の人権問題にアメリカが絶えず口を挟んできたのは、人類普遍の理想たる民主主義を掲げるからだ。トランプは、中国・北朝鮮・フィリピン・ロシアなどの人権問題に強い主張をしなくなると思う。フィリピンのドゥテルテが早速すり寄る姿を示したのは、この点に意味がある。

 

 アメリカが孤立主義をとれば、世界は増々バラバラになる。偏狭なナショナリズムが世界を覆う。中国・北朝鮮を大義で抑えることが難しくなる。「イスラム国(IS)」が最も心配だ。世界をリードして、結束してテロに立ち向かうには、正義の旗印が必要なのに、孤立主義はこの旗を引っ込めることを意味する。トランプ大統領の影響は急激に現われるに違いない。たがが外れたように世界の危機が強まっている。

 

◇このような世界情勢の中で、東西の要の位置にあって、最も安定した国は、客観的にみて日本だと思う。その日本を支える大きな柱は日本国憲法である。アメリカから押し付けられたなどという表面の論点でなく、この憲法の本質をしっかり踏まえて、改正を議論する時が来た。

 

◇文藝春秋最新号で日本財団の笹川陽平氏がハンセン病に取り組む姿を書いている。私の小説の連載は12月からである。(読者に感謝)

 

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人生意気に感ず「トランプ出現の真の危険性。中国、北朝鮮、ISは。ハンセン病のこと」

 

 ◇世界が一変した。そんな感がしたトランプ大統領の登場である。株が千円余急落したと思ったら翌日は千円余急上昇。これはガンマンにピストルを突きつけられて真っ青になり、次の瞬間銃口を下げられほっとした姿に似ている。全紙が、第一面に横の横断幕で申し合わせたように「米大統領トランプ氏」と報じた。 

 

◇過激な異端児に核兵器のボタンを預けた。俺たちの大統領ではないと叫ぶ学生デモの姿は国内分断を象徴する。アメリカは一つになれるのか。格差への不満がこの異端児を大統領に押し出した。大衆迎合(ポピュリズム)は民主主義の劣化を招く。トランプは、偉大なアメリカの再生を叫んだが、アメリカの偉大さは民主主義という理念の偉大さにある。メキシコ国境に壁をつくるという主張に象徴される大衆迎合、自国優先はアメリカの偉大さを否定するものだ。

 

 アメリカは世界の指導者である。それは、軍事力だけでなく民主主義の理念を高く掲げたが故に世界の指導者として説得力があった。世界の人権問題にアメリカが絶えず口を挟んできたのは、人類普遍の理想たる民主主義を掲げるからだ。トランプは、中国・北朝鮮・フィリピン・ロシアなどの人権問題に強い主張をしなくなると思う。フィリピンのドゥテルテが早速すり寄る姿を示したのは、この点に意味がある。

 

 アメリカが孤立主義をとれば、世界は増々バラバラになる。偏狭なナショナリズムが世界を覆う。中国・北朝鮮を大義で抑えることが難しくなる。「イスラム国(IS)」が最も心配だ。世界をリードして、結束してテロに立ち向かうには、正義の旗印が必要なのに、孤立主義はこの旗を引っ込めることを意味する。トランプ大統領の影響は急激に現われるに違いない。たがが外れたように世界の危機が強まっている。

 

◇このような世界情勢の中で、東西の要の位置にあって、最も安定した国は、客観的にみて日本だと思う。その日本を支える大きな柱は日本国憲法である。アメリカから押し付けられたなどという表面の論点でなく、この憲法の本質をしっかり踏まえて、改正を議論する時が来た。

 

◇文藝春秋最新号で日本財団の笹川陽平氏がハンセン病に取り組む姿を書いている。私の小説の連載は12月からである。(読者に感謝)

 

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2016年11月10日 (木)

人生意気に感ず「まさかのトランプ大統領。世界の形成は。対中国は。解散は」

 

 ◇大統領選はまさかの結果となった。投票日の直前予測はクリントン氏優位一色だった。株式市場も安心感を示して株価は上昇していた。このような中で、トランプ氏の変わらぬ鼻息の強さに私は驚いていた。70歳という年齢を考えると、このスタミナと精神力は不思議に思えた。 

 

 日本時間9日午前、東部から開票結果が伝えられ始める。初めのトランプ勝利に対しては、「予想通り」という解説がつけられた。この予想通りが続くことに、私は不安を感じ始めた。「それにしてもトランプ氏の滑り出しは順調です」と解説は変わっていく。私は、国内の重要選挙、何度も繰り返してきた自分の選挙の時のように一喜一憂した。9日の午後3時頃、会議中、隣りのS氏が囁いた。「大変ですよ。ニューヨークタイムズは、90%以上トランプが勝つと言っていますよ」。S氏は膝の上のスマートフォンを慌てて引っ込めた。

 

 私は、もはや驚かなかった。表に出なかったアメリカ社会の不気味な変動を感じた。朝、トランプ氏は発言していた。「どこでも驚く程の盛り上がりだ」と。新人が初勝利を果たす時の決まったパターンなのである。報じられる二つの選挙事務所は対照的で、トランプ陣営は割れ返る雰囲気である。早鐘を打つように株価が急落した。

 

 夕方、勝利宣言が行われた。堂々たる大統領の姿である。上下両院の選挙結果も共和党が大勝利。冷静に考えてみれば、8年の民主党に代わって共和党政権が誕生した姿なのである。トランプ以外の候補者であったら、アメリカの二大政党の自然の成り行きと受け取られたことだろう。

 

 クリントンが姿を現して敗戦を語らないのが不思議に感じられた。フィリピンのドゥテルテが早速、「うまくやってゆける」と祝意を寄せた。二人のイメージは合うようにも思われる。トランプは、何度も倒産しながら不動産王の地位を築いた男。強かな人物であることは間違いない。政治の力量は全く未知数であるが案外、こちらも強かにやっていく気がする。

 

 69歳で当時歴代最高齢の大統領レーガンの登場を思い出す。映画俳優としては三流だったが、歴史に名を残す大統領となった。トランプは強い米国を目指すが中国とどう対決するのか。日本では解散風が弱まるのでは。(読者に感謝)

 

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2016年11月 9日 (水)

人生意気に感ず「北と南同じ民族なのに。大陥没は何を。大統領とは」

 

 ◇北朝鮮テレビが韓国大統領のスキャンダルを鬼の首をとったように報じている。同じ民族なのにと朝鮮半島の悲劇の深さを感じる。 

 

 北と南は、それぞれが自分の方こそと正統性を主張している。宣伝攻撃で常に不利な立場に立たされているのが北である。国民を飢えさせる経済の破綻、国際秩序を乱し世界の平和を脅かす等、挙げればきりがない。犯罪国家として、南の非難攻撃に晒されてきたのが北の実態であった。

 

 今回の朴槿恵大統領を中心とした醜態は形成を逆転させた感がある。国のトップが反道徳、反倫理の権化と罵倒されても仕方ない状況なのだ。北のテレビでは、ニュースの解説者は、いつもの浪花節語りの姿とは打って変わったスーツ姿で登場していた。南の言っている民主主義や経済の繁栄は欺瞞なのだと言わんばかりに。韓国は正に国家の危機に直面している。これは、民主主義が危機に瀕する姿である。

 

◇博多駅前に大陥没が発生した。繁華街の道路のど真ん中に縦横30m、深さ20mもの大穴が突如出現したのだから驚きである、高層の建物が足下ぎりぎりまで崩れている。

 

 大都会の地下はアリの巣のように縦横無尽に穴が掘られている。今回の陥没事故は大都会のインフラが極めて脆弱であることを雄弁に物語っている。これでは、大きな自然災害に見舞われなくとも弱いに違いない。今日は大災害の時代に入っているといえる。ゲリラ豪雨、大地震などに対してインフラはどの程度耐えられるのか。都市の住民は累卵の危うきにあることを覚悟しなければならない。

 

◇アメリカの大統領選の投票が始まった。私たちは長い選挙戦を自分たちの選挙のような感覚で見てきた。アメリカの大統領の影響力の大きさ故である。しかし、それ以上に大衆迎合主義に陥ちた選挙のやり方が、テレビのお笑い番組のような様相を呈したからである。

 

 これはアメリカの民主主義の危機に他ならない。世界の至る所で民主主義は危機に直面している。民主主義は、人類普遍の高い理想を求めるものなのに、自分の国だけよければよいという偏狭な民族主義につかまっている。そして、ポピュリズム(大衆迎合主義)が世界を覆いつつある。

 

 民主主義をあざ笑う勢力が頭をもたげる絶好の機会になりつつある。中国、北朝鮮、ロシア、そして「イスラム国」までも。(読者に感謝)

 

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2016年11月 8日 (火)

人生意気に感ず「断末魔の朴槿恵氏。父・朴正煕を振り返る。TPPと農相」

 ◇支持率5%とは、断末魔の状態というべきだ。韓国の女性大統領朴槿恵氏。このような支持率は世界広しといえど前代未聞である。朴氏は、職権乱用の大罪疑惑で窮地に落ちている。「全ての責任をとる覚悟が出来ている」と語った。安首席秘書官は、財団設立の不正に関し、朴大統領が直接支持を出したと供述しているといわれる。韓国の抗議集会はいつも激しい。日本の若者は元気を失ったが韓国の学生集会は、過去に於いて政権を倒す力を発揮し続けてきた。朴氏の退陣を求める人々は、主催者発表で約20万人と言われる。多くの学生が役割を果たしているに違いない。

 

◇隣国の女性大統領が悲劇の結末を迎えようとしている。韓国の大統領は劇的な運命を辿る人が多い。これは、韓国の民主主義の特色を物語るものだ。朴槿恵氏の父朴正煕の生涯は正にドラマであった。父が築いたものを女性大統領はどう発展させるのか、私ははらはらしながら見てきた。朴正煕は軍事クーデターで、政権を奪取し、その後の選挙で大統領に当選した。

 

 朴正煕は現代韓国を形成する上で最大の影響を及ぼした人物である。この人物の経歴は驚くべきものだ。日本の植民地時代、大日本帝国が創設した満州国軍官学校を卒業した満州軍将校であった。

 

 脅威の近代化を成し遂げたがその強圧的政治は民主主義を叫ぶ学生などの大規模な民衆の反対運動に晒され、朴正煕大統領は暗殺され生涯を閉じた。朴槿恵大統領はどうなるのか。

 

TPP承認案が衆院を通過した。貿易を中心として、世界との交流で発展を期す日本にとって、巨大貿易圏の創設は必要である。日本にとって、国民にとって、国家100年の計に関わる大事。参院で十分に議論を尽くすべきは当然で、正にそれは、理の政治を求める参院の役割であるが、衆院優越の原則から、法案が国会を通過するのは時間の問題である。

 

 こんな大切な時に山本農水相の軽率な発言が国会を混乱させている。自らの発言を「冗談」だったと語った点である。それは、「強行採決が選択肢になる」という発言であった。言葉の重さ、その責任の重大さを「冗談」で否定したのだから、農相の資質に欠けると野党が息まくのは当然である。

 

◇私の上毛新聞の連載小説は、紙面の都合等で一ケ月延びて12月からとなった。予告記事が出る。(読者に感謝)

 

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2016年11月 7日 (月)

人生意気に感ず「目前の大統領選。世界劇場の終幕は。津波の日に」

 

 ◇大統領選が目前に迫った。アメリカの大統領選は日本にとって重大事であるが、かつてこれ程日本人が注目する選挙は皆無であった。初の女性大統領実現という期待もさることながら、トランプ現象に巻き込まれている証拠である。私のまわりには、西部劇やかつてのプロレスの世界の延長のような見方をしている人たちもいる。幅広い日本の層が注目するのは、そういう漫画的、劇画的要素ばかりでなく、中国の台頭、ISのテロ、プーチンとウクライナ、TPP等、トランプ大統領実現によって大きな影響を受けることが余りに多いからだ。 

 

 それにしても、長い選挙戦はドラマチックで、世界劇場の観客を飽きさせることがない。終幕を迎えてドンデン返しの期待が用意されていた。クリントンのメール再調査により、無法の悪漢は息を吹き返した感がある。

 

 世論調査も錯綜している。ただ、前回の大統領選で、全米50州全ての勝敗を的中させたことで有名な統計専門家ネイト・シルバー氏の分析による勝利の確率はクリントンが約64%、トランプが約35%なのだという。

 

 アメリカの歴史は、多くの矛盾を孕みながらも自由、平等など、人類の理想を求める道程であった。大統領のポストは、そういうアメリカの理想を象徴するものである。共和党の中枢までが、トランプに危惧を抱くのは、この人物にそういう資質がないと感じるからだ。私は、クリントンの勝利を祈らずにはいられない。

 

◇5日は世界津波の日である。昨年12月の国連総会で、日本が中心になって制定が決まった。1854年、安政元年の安政南海地震の際、多くの人命を津波から救った逸話「稲村の火」に由来する。「稲村の火」のモデルは実在した濱口儀兵衛(梧稜)である。梧稜は、逃げるべき方向を失った村人たちのために裏山(神社)への道を示すために稲束に火をつけた。人々が火の手を目指して駆け上がった直後に大波が村を呑み込んだ。

 

 裏山に逃れて全校の小学生が助かったのが岩手県の船越小。裏山に逃げずに74名の犠牲者を出したのが宮城県の大川小であった。船越小では校務員の必死の勧めが人々を動かした。「これしかない。後で笑われてもいい」と。文科省は、現代版「稲村の火」を作るべきだ。船越小の校務員の話は絶好の教材になる。(読者に感謝)

 

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2016年11月 4日 (金)

人生意気に感ず「10キロを余裕で完走。人生の放物線を思う」

 

◇第26回、ぐんまマラソンは、3日朝10時一斉にスタートした。快晴に恵まれ、肌寒い気温も程よい状況になった。昨年より体重を約5キロ減らしたせいか滑り出しは快調である。人の波は17号を北上した。 

 

 4日前、私は76歳を迎えた。この年で10キロを走れることを天に感謝しなければならない。スッス、ハッハ。呼吸を整えながら、触れ合うような混雑の中を身をくねらせすり抜けるようにして前へ出る。

 

 周りを見ると皆若く、さすがに高齢者は少ない。2・3年前泳ぐように走っていた背中の曲がった人はどうしたろうと、ふと思った。1年間は多くの人に、特に高齢者に様々な変化とドラマを生んでいるに違いない。関根町で上武国道に沿って左折し、17号に別れを告げる。国体道路に出て利根川沿いを南下する。「中村さん頑張って!」と沿道から声援。ふるさと塾のMさんだった。知人の声援は栄養剤以上の効果がある。残り8キロ。やや下り坂ということも気持ちを楽にして、「ホイホイサッサ、ホイサッサ」と私はリズムに乗って走った。敷島公園わきを通過する時、前方に手を振る女性とカメラを構える男性の姿。近くでフリッツ・アートセンターを経営する娘夫婦である。「パパ、一時間以内で走らなきゃ罰金!」と励ました言葉を思い出す。速度を上げようとすると足が痛い。数年前は56分で走れたが、脚力が落ちている。昨年の記録は1時間16分53秒だった。それを超えたいと決意して走る。ゴールは目前にあった。今年も楽に完走できた。完走証は、プライベートタイム1時間21分28秒。

 

 完走の記録を振り返った。1時間3分(第22回)、1時間11分29秒(23回)、1時間11分36秒(24回)、1時間16分53秒(25回)、1時間21分28秒(今回)。この数字は私の体力の放物線を示す。物理学の落下の法則を否定することは出来ない。しかし、努力によって放物線のカーブを僅かでも変えることが出来るに違いない。今回、最後という気なら死力を尽くしたろう。楽に走れたことを新たなスタートとしたい。今朝から来年に向けて走る。

 

◇上毛新聞の幹部にマラソンの役員室で会った。連載小説のことで「12月からお世話になります」と言うと、社長は「誰でも書ける話ではない」と言われた。ハンセンの扉を開きたい。秘かな決意を10キロ完走の足に誓った。(読者に感謝)

 

 

 

 

 

 

 

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2016年11月 3日 (木)

小説「楫取素彦物語」第179回

 ふでは廃業届けを出そうとしたが楼主の捺印がないというので受理を拒否された。そこでモルフィは捺印を求める訴を提起した。裁判所に捺印命令を出してもらうことが目的である。契約の期間が経過しなくも、娼妓契約は民法90条の公序良俗に反する行為だから無効である。だから、遊女が廃業すると言い出した時、楼主は契約期間を主張して廃業を止めることは出来ない道理なのだ。

 それにもかかわらず、楼主はかたくなに拒否する。民法90条よりも、娼妓取締規則が事実上、上にあることと同様なことが罷り通っているのだ。

この理不尽な壁を破ることが出来ずに長い年月が過ぎていた。この壁を崩す装置が裁判制度であった。楼主たちは事の重大性に気付いた。そしてあらゆる手段を使って抵抗を試みた。驚くべきことは、警察はもちろん、世論の少なからぬ部分が楼主に味方したのだ。貧しい家庭を助けるために金を貸した、女郎恩知らずで、金を返さずに郭を出るとは倫理に反することではないかという逆立ちの論理が通用していた。

 訴訟を有効に進める上で、最大の障害は女郎が楼主の支配下にあることであった。楼主の脅迫または甘言によって訴えを取り下げると言い出す恐れもあった。この恐れは後に現実となる。

 思案にくれたモルフィは、再び東京大学の穂積博士を訪ねた。博士の意を受けた若い助手が丁寧に対応してくれた。研究室の助手は飛びきりの秀才である。

 モルフィの話を聞いた助手は、にっこり笑顔を作って言った。

「モルフィさん、妙案がありますよ」

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年11月 2日 (水)

人生意気に感ず「クリントンの危機。朴氏の軽率。スーチー女子。10キロマラソン」

 

 ◇クリントン候補が勝利を目前にして危機に直面した。投票日は8日。12ポイントは一気に小さくなり僅か1ポイント差となった。 

 

 FBIがクリントン氏の私用メール問題に関して捜査を再開したためだ。大統領選まで一週間という時期に信じられないような事態だ。FBIは、捜査令状をとって、メールに機密情報が含まれないか捜査を本格化させるという。事実は小説より奇なりである。死に体と見られていたトランプはにわかに息を吹き返した感がある。初の女性大統領の誕生には、まだまだ、はらはらの難関を超えなければならないのか。クリントン、トランプの泥仕合は、アメリカの大統領選の歴史に一大汚点として刻まれることになる。

 

◇韓国では女性大統領朴氏が窮地に落ちている。親友の女性に南北軍事接触に関する極秘情報を漏らした疑いがある。朴大統領は国家の機密を漏らすという大罪を犯した容疑。信じ難い軽率さ。お友達の崔氏は国政介入疑惑であるが、他に大統領府が設立に関与した財団の私物化、娘を名門大学に不正入学させた等の疑惑で身柄を拘束され、逮捕状が出るところまでいっている。

 

 朴大統領は初の来日が予定されているが、実現は難しいのではないか。隣国のスキャンダルは、日韓という特殊事情、そして女性大統領の秘事ということで、我が国でも最大の関心事になりつつある。

 

 大統領府は麻痺状態に近いのではないか。政治的中枢の混乱を北朝鮮がどう利用するかも気にかかる。発火性の高い韓国民衆が動き出したようだ。

 

◇スーチー氏が新政権発足後初来日した。長い軍政の下で軟禁状態におかれていた。父親の故アウンサン将軍は日本とも関わりをもった人だ。長く続いた軍政は世界から孤立し、経済は疲弊した。安価な労働力と豊富な天然資源を抱え「アジア最後のフロンティア」と言われる。日本への期待は大きい。再生した平和と技術の国日本の役割は世界の中でより大きいに違いない。

 

◇明日、3日、ぐんまマラソンで10キロを走る。10年以上も続けている、私にとって人生の一大行事である。数年前は56分位で走ったが、脚力が落ちて最近は1時間をオーバーするようになった。今回は、体重を約5キロ減らした。この数字は私の思いを現すもの。(読者に感謝)

 

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2016年11月 1日 (火)

人生意気に感ず「太陽は請求書を出さない。ドイツと日本の絆。小池知事の塾」

 

 

◇「太陽や風は決して請求書をよこさない」。こう訴える独外相の寄稿を読んだ。福島第一原発は今、限りなく膨らむ請求書を私たちに突きつけている。

 

 シュタインマイヤー外相によれば、ドイツのエネルギー政策の大転換は、30年前のチェルノブイリ事故だという。当時の恐怖は日本人が福島第一原発事故の時経験した恐怖の比では決してないだろうと振り返る。ドイツは、この時脱原発の方向を決めたが、これに決定的な影響を与えたのが東日本大震災だという。

 

 ドイツは2020年までに全ての原子力発電所を停止し、2050年までに温室効果ガスの排出を95%削減する目標を立てている。

 

 また、再生可能エネルギーの研究開発により、ドイツでは37万人以上の雇用を生み出し、エネルギーシフトに伴う研究投資の結果、この部門で世界をリードする企業が多数存在しているという。外相は、この新しい流れを進める上で、日本は重要なパートナーだとし、「日独は、150年以上にわたる友好関係で結ばれており、強い絆や心の友といった言葉でよく表現されています」と語っている。

 

◇かつて、両国は世界戦争を戦い敗れた歴史をもつ。第二次世界大戦で見せたドイツの科学力は凄かった。今、その力を世界の平和と環境のために役立てようとしている。日本は、原爆を見舞われ、平和国家として再建を果たした。この両国の歴史を振り返れば、真のパートナーとして世界史的役割を果たせるに違いない。シリアの少女ハナンさんが日本は、二つの原爆で壊滅しながら、立ち上がって別の戦で素晴らしい国となったと語ったことが思い出される。

 

◇小池知事の政治塾は、かつての橋下氏の維新塾を思わせる。4,800人が応募して2,900人が参加した。来年の都議選の関係が取りざたされている。もっとも規約では選挙はしないとなっているらしい。来年3月まで、計6回の受講料は一般男性が一人5万円というから膨大な金額となる。政治、社会、経済の抜本的改革に向けて、これだけ大きな力が動き出そうとしている。日本の危機が叫ばれている折、このパワーが何かの突破口を作るきっかけになるのか注目したい。

 

◇11月7日連載開始予定だった私の小説は12月からとなった。

 

◇76歳の10キロマラソンが近づく。(読者に感謝)

 

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