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2016年8月11日 (木)

小説「楫取素彦物語」第151回

上毛青年連合会が出来たとき、会員の自覚を深め、会の方針をしっかりさせるために記念行事をやろうという事になった。

「しかるべき高名な講師の話を聞こう」

 誰かがこう発言した。では誰がよいかということであれこれと名を上げるがいずれも適切な人と思えなかった。

 その時、じっと考えこんでいた石島良三郎が意を決した表情で言った。

「いま、すごい人物を思いついた。今の僕らの状況にあって、これ以上の人物はいない」

「誰だ、それは。もったいぶってないで言ってくれ」

 こう言って、その場の若者は一斉に石島の言葉を待った。石島は言った。

「土佐出身の熱血漢大江卓先生だ。奴隷船マリア・ルーズ号事件で、裁判長として、この事件を仕切った人物です。廃娼県群馬の青年会といえば、承知してくれる可能性はある」

「よし、やって見よう、当たって砕けろではないか」

衆議はたちまち一決した。

 若者たちはあらゆる伝を頼って所在を調べ外務省の一室で会えることになった。代表して石島良三郎、竹越与三郎、高津仲次郎の三名が上京することになった。

 群馬の若者を待っていたのは二人の男あった。眼光鋭い、がっしりした男がいった。

「わしが大江です。群馬の青年会と聞き待っておりました」

 もう一人の男は驚くべきことを口にした。

「わしらは土佐者です。昔、長崎で情報を集める仕事をしておった。長崎では、吉田松陰にも、楫取素彦にも会った。楫取殿の武器買付を手伝ったことも、ジョン万次郎を紹介したこともあった。あの頃は幻馬と名乗っておった。楫取殿の活躍は常に遠くから見ておった。懐かしい限りだ

 三人の若者の驚く顔を見ながら幻馬は言った。石島が続いた

「楫取様が下した廃娼令が、楫取様が去ってからおかしなことになりました。そこで、僕らは青年連合会をつくって廃娼の戦いを進めようと決意しました。つきましては発会の大会に、大江様のお話をお願いしたということで参上いたしました。どうかよろしくお願い申し上げます」

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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