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2016年8月27日 (土)

小説「楫取素彦物語」第156回

 青年たちの活動振りは涙ぐましいものだった。旗を立てて行進し、各地で演説会を開いた。若者の純な行動はいつの時代も人々の胸を打つ。

 石島は演説会場で訴えた。

「娼妓をそのままにして淫風をふせぐことが出来ますか。私は目撃しております。貸座敷のあるところでは女の子が歌をうたえば、六つ、七つの男の子は太鼓をたたいて女郎屋の真似をして遊んでいる。これでは淫風を教える指南場ではありませんか。また、貸座敷のあるところでは勤労精神がなくなり市が立たないと言われます。

 教育の上からも産業を興す上からも貸し座敷は廃止しなければなりません。これは私たち上毛の青年の使命であります」

「そうだ、そうだ」

「頑張れ、応援するぞ」

 どの会場でもこのような声援が飛んだ。少し打ち込んで勉強を重ねていたある青年弁士は次のような格調あるを展開した。

「今、日本は世界に登場しました。日本の名誉が問われるにあたり、公娼があるため、多くの日本婦人が娼妓として海外に出て日本国が売淫国だと言われています。条約改正を目指して、いかに正正堂堂たる議論を唱えてもこれでは駄目です。娼妓のごとき者を廃して改革を一個人からめて一国に及ぼそうとする熱心なものが今日日本にいなくなった。だからその責任は青年が務めなければなりません。熱心と勇気をもって廃娼の大事業を成し遂げるのは青年の本分である。日本を愛する精神があるなら先ず娼妓を廃して日本国の徳義を高尚にして、その上で殖産興業を大きく進め一国の富を増加させなければ海外各国と対等な条約を結ぶことは出来ません。そのために私たち青年を助けて下さい」

 これを聞くや会場から喝采と共に声が上がった。

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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