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2016年8月21日 (日)

小説「楫取素彦物語」第155回

「素晴らしいことですね。目の前が開けた思いです。では更にお聞きいたしますが、穢多(えた)非人などの差別も廃止すべきものでしょうか」

「おお、君たちは、の建白で、穢多・非人の賎称が廃止になったことを知らぬか。新しい世になったにもかかわらず、人間扱いされない非人たちがいかに多いこと実は娼妓より、こちらが深刻かもしれないと考えたほどだ。同じ血が流れているのに、なぜ、代々差別されるのか。は、関東の賎民の長老、弾左衛門と会って、策を練ったこともあった。は、穢多、非人という賎称を廃止することが第一と考え、その旨の建白書を提出した。幸い、政府はこれを受け入れた。文明国の仲間入りを世界に示すという大義にかなったからだ。明治四年八月二八日の太政官布告がそれです」

若者たちは、驚き、感激して瞳を輝かした。

諸君、人間平等の理解は、新しい世の人間の価値の尺度となる。特に若者のな。だから、この太政官布告をよく頭に刻みたまえ

 そう言って、大江は、改めて若者たちの顔を見詰めていった。

穢多、非人の称を廃され候故、これより身分職業とも全て平民同様たるべきこと、これです。これが明治四年のこと、その翌年奴隷船事件。私は同じ脈絡の問題ととらえ、清国人を解放した。外務省などは面倒を恐れて反対したが、副島司法卿はと同じ信念なので、一つ天下に日本の文明度を示す時だと奮発して、ベルーと戦ったのだ。世界の大勢と一致していたから、娼妓解放の太政官布告も出た。この太政官布告をまともに受け止めてくれたのが群馬の人々だ。諸君、この流れをよく心に刻んで進撃するがよい

 大江の瞳は炎え、頬は紅潮して若者のようであった。群馬の若者は、心に新鮮な力を与えられたように勇気付けられたのであった。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

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