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2016年8月20日 (土)

小説「楫取素彦物語」第154回

「群馬は特別だった。楫取県令が偉かった。議会に見識をもった人物がいた。それなのに、楫取殿が去ったら、またおかしな動きが出てきたという。諸君、御布告の罪人を許すな。これは、日本の文明開化が試されていること。われら、幕末の若者は元気がよかった。根性があった。新しい世になり、平和の社会になった途端、若者に元気がなくなった。困ったものと思っていたら、諸君の存在を知った

「上州の若者の根性を示す時だ」

「楫取県令がのこした松陰の精神が生きているぞ」

会場から次々に声が上がった。

正義のに燃えて一途に走るのは若者の特権である。楫取殿が始めたことを諸君が守り抜けば諸君の名は不滅となる。廃娼とはそれ程大きな意味がある。歴史的意味とはこのこと。諸君頑張りを大いに期待しますぞ

 愛宕座は廊下にまで人があふれ、拍手はいつまでも鳴り止まなかった。

 大江の気迫に接した上毛青年会の若者たちは大江という男の尋常でない中味を感じとった。会の終了後、青年会役員と大江が別室で懇談したとき、一人の若者が尋ねた。

「人生において先生の行動を貫く信念はいかなるものでありますか」

「一口で言えば、人間の平等、人権というもの。徳川の封建制を倒した目的は平等の実現であった。四民平等がそれだ。平等にすることで押さえ込まれていた力が発揮される。それは、個人の幸せとなり、国家にとっては無限の力となる。奴隷の解放はその象徴なのです。だからこそ、マリア・ルース号から中国人を解放した。女郎の解放もまたしかりなのだ」

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

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