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2016年8月 7日 (日)

小説「楫取素彦物語」第150回

佐藤知事に対する攻撃の火の手が上がった。

 もとより議員の間には廃娼に反対の議員も少くなかったから論戦は激しかった。しかし、前回と違う点は議論の質が人権論の点で高度になっていることである。ま、議会の外では上毛の青年たちの理想に燃える激しい動きが起きた

 天野宗忠は人民の権利自由を高らかに主張した。

「売淫は野蛮時代の旧慣で婦女子を奴隷にするものです。人民の権利自由を保護すべき政治の上で公許することは姑息であって政治の改良を目指すものが取るべきではありません

一方、新時代の空気を受け止めて新しい社会を築こうとする青年たちは楫取の廃娼決定策に強い期待を抱いた。そして、この社会改良の気運を大いに盛り上げていこうということで、若者たちは前橋の住吉屋という旅館の一室で上毛青年会を発足させた。幹事は石島良三郎、竹越与三郎、高津仲次郎の三名だった。

 この青年会に刺激されて県下各地に青年会が結成された。佐藤知事が出した明治二十一年五月の「廃娼当分延期」は予期せぬ出来事として青年たちに衝撃を与えた。

「こんなことを許してよいのか。楫取県令の精神を踏みにじるものだ」

 石島が憤激していった。

「これを放置したら群馬の青年は意気地なしと天下の物笑いになる。戦おう」

「力を合わせて立ち上がろう

 かくして、各地の青年会が集まって明治二十二年七月上毛青年連合会が結成された。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

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