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2016年7月24日 (日)

小説「楫取素彦物語」第146回

 玄瑞は語りかけた。

「美和子よ、いつまでも私を追っていてはならぬ。分かるか、それでは自分をいかすことが出来ないからだ。私は、世のため、国のために戦って死んだ。お前も世のために生きよ。わしの志を大切に思うなら、新しい生き方を考えよ」

「あなた様、私は、あなた様の志を大切にいたしたいと思います。新しく生きるということはどういうことでございますか」

「は、は、美和子と名を変えたように、新しい人生を開拓するのだ。さらばだ。元気で生きよ。さらばだ」

「あなた様、待ってください。教えて下さい」

美和子は必死で手をのばし玄瑞の姿をつかもうとした。そして、はっと目を醒ました。

(何だったのだろう。玄瑞様は何をいおうとしたのだろう)

美和子は、それから、夢のことがいつも気にかかった。玄瑞が何かを教えようとしていると思えた。考え続けていると、姉の最期の姿が目に浮かんだ。玄瑞の志を継ぐ、新しい人生を開拓する、姉の姿::辿る時、美和子は、はっとして愕然とするものがあった。

(楫取様と)

美和子の胸に楫取素彦の顔が浮かび、美和子は、あわててそれを打ち消した。

 あの夢以来、美和子の心に変化が生まれていた。新しく生きることは何かを常に意識するようになった。

 そんなある日、萩から母滝の手紙が届いた。その内容は次のようなものであった。

「お寿も亡くなり、私は、お前が一人でいることが心配です。前にも話したように、楫取殿の妻となって、楫取殿を助けることが、松陰や、玄瑞や寿の志を継ぐことではありませんか、そしてお前自身を生かす道ではありませんか」

 

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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