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2016年7月30日 (土)

小説「楫取素彦物語」第147回

 美和子は、母の手紙をじっと見詰め、何度も読み返した。そして、数日が過ぎた。美和子は母に手紙を書いた。

「お母様、私は、お母様の心がやっと分かりました。楫取さまが受け入れて下さるなら、楫取様の下で、新しい人生を生きようと思います。それが玄瑞様、兄、そして寿姉さんの意にかなうことと思うようになりました。お母様、よしなにこの美和子を導いて下さりませ」

かくして美和子は一大決心して、楫取の妻となった。

 

 

 去り行く人

 

 

 明治十七年、遂に、楫取が群馬を去る日が来た。前橋の県庁周辺は数千人の県民で埋め尽くされていた。議員、県職員、農民、商人、老いも若きも、あらゆる人々が別れを惜しんだ。楫取と妻美和子は人々の別れの言葉の渦に巻き込まれていた。

 用意された演台に次々に登壇する人々の姿があった。

 湯浅次郎は言った。

「閣下は、廃娼の道を開かれた。新しい世にさきがけてこの群馬県を人間尊重の県にした。あなたの功績は不滅です。心から感謝申し上げます

 星野長太郎は語る。

「あなたは、群馬の伝統の生糸によってこの群馬の産業を支え、日本を支える新産業たらしめた。あなたは群馬の生糸の恩人、群馬の誇りです」

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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