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2016年7月31日 (日)

小説「楫取素彦物語」第148回

下村善太郎が立った。

「楫取先生長い間御苦労様でした。あなたが群馬を離れるらしいと聞き、私たちは政府に留任を求める等、あらゆる努力を尽くしました。残念です。この利根の流れ、上毛の山々、皆、永遠にあなたのことは忘れません。あなたは、私たち県民の心に、自信と勇気と誇りの種を播いてくれた、これをしっかり育てることが私たちの使命。約束します、これらを大きく育てることを」

 一人の青年が群衆をかき分けて進み出て壇に立った。石島良三郎と名乗るこの若者は叫んだ。

「閣下は、荒れた上州の地を天下に誇る教育県にしました。この群馬に品格を打ち建てた。私たち若者はこれを受け継いでいきます」

 楫取はこみ上げるものを押えて民衆を見ていた。様々な人の顔が去来した。毛利敬親公、松陰、そして妻寿。

ああ、寿をこの場に立たせたかった

 楫取が感慨にひたっていると、一人の長身の紳士が目の前に立った。

「おお、あなたは、あの時の」

「新井領一郎です。仕事で日本に来ていました。胸がいっぱいです。県民の皆さんに是非伝えたいことがあります」

 領一郎はこう言って壇上に立った。

「皆さん、ニューヨークから戻った新井領一郎です。八年前、奥様の寿様から吉田松陰の短刀をいただき、閣下からは、至誠を尽くせば心は通じるという松陰の言葉を教えられました。お陰で私は今まで力を尽くすことができました。今や、群馬の生糸はニューヨークで大きな名声を得ています寿様がこの世にいないことが本当に残念でなりません

 領一郎が涙を拭ぐうと民衆にどよめきが起きた。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年7月30日 (土)

小説「楫取素彦物語」第147回

 美和子は、母の手紙をじっと見詰め、何度も読み返した。そして、数日が過ぎた。美和子は母に手紙を書いた。

「お母様、私は、お母様の心がやっと分かりました。楫取さまが受け入れて下さるなら、楫取様の下で、新しい人生を生きようと思います。それが玄瑞様、兄、そして寿姉さんの意にかなうことと思うようになりました。お母様、よしなにこの美和子を導いて下さりませ」

かくして美和子は一大決心して、楫取の妻となった。

 

 

 去り行く人

 

 

 明治十七年、遂に、楫取が群馬を去る日が来た。前橋の県庁周辺は数千人の県民で埋め尽くされていた。議員、県職員、農民、商人、老いも若きも、あらゆる人々が別れを惜しんだ。楫取と妻美和子は人々の別れの言葉の渦に巻き込まれていた。

 用意された演台に次々に登壇する人々の姿があった。

 湯浅次郎は言った。

「閣下は、廃娼の道を開かれた。新しい世にさきがけてこの群馬県を人間尊重の県にした。あなたの功績は不滅です。心から感謝申し上げます

 星野長太郎は語る。

「あなたは、群馬の伝統の生糸によってこの群馬の産業を支え、日本を支える新産業たらしめた。あなたは群馬の生糸の恩人、群馬の誇りです」

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年7月29日 (金)

人生意気に感ず「8月5日に前橋空襲の紙芝居を。五輪の危機。都知事選遂に」

 

◇8月が近づいた。毎年8月はあの終戦を振り返る月。敗戦から71年。こんなに長く平和が続いたことは、江戸時代を除いてない。しかし、そろそろ危ない。そんなことを感じさせるこの頃である。「第三次世界大戦が始まっている」と言われる状況が世界に広がっている。言うまでもなく、テロ。全く形を変えた戦争で、毎日どこかで血を流している自爆テロは、かつての「特攻隊」を思わせる面も。

 

◇八月は前橋大空襲である。それは昭和20年8月5日午後10時30分。92機の空の要塞B29が前橋を襲った。黒い巨大な怪鳥の群れが空を覆い、前橋は火の海と化した。死者は535人。富士見、宮城など周辺の高地からは燃える前橋の夜の市街が闇の中に明明と浮き上がって見えたという。私は4歳で、その炎の中にいた。

 

◇8月5日、ロイヤルホテルで私は紙芝居「前橋の一番熱い日」を実演する。紙芝居は楫取素彦に続く第二作目であるが、これから様々なテーマで作り、世界に発信することを計画している。

 

 今回の「前橋大空襲」は、ストーリーは私が作り、絵は前漫画協会長の秋葉二三一さんが左手で描いた。脳梗塞で倒れ、右手が使えなくなったからだ。芸術の人を動かす力は偉大である。荒涼と広がる焼野原を前に「国破れて山河あり 城春にして草木深し」と私は語りかける。

 

◇第三次世界大戦が始まっていると言われる中でリオ五輪が目前に迫った。平和の祭典は修羅の祭典と化す恐れがある。「IS」などからすれば、この上ない絶好のチャンスに違いない。通常であっても治安状況が最悪に近いブラジルである。軍隊まで出動させて対応する計画らしいが市民を装うテロを防ぎきれるものではない。無事に進むことを神に祈るばかりである。次の五輪は東京だけに余計気になる。4年間に世界情勢は更に悪化するだろう。

 

◇次の東京五輪に主催市の代表となる都知事が間もなく決まる。鳥越氏の女性スキャンダルが週刊文春に続いて週刊新潮にも出た。鳥越陣営は刑事告訴の構えであるが、争える状況ではない。全体の雰囲気も当選から遠のいている感じだ。小池と増田の対決となっている。カギを握る無党派層を小池に向かわせる要素が多くなっている。巨大な組織に立ち向かう女性候補という構図。海の向こうではクリントンが初のアメリカ大統領に近づいている。(読者に感謝)

 

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2016年7月28日 (木)

人生意気に感ず「19人殺害と生きるに値しない命。クリントン大統領は」

 

 意思疎通できない重度の精神障害者19人の殺害に、インターネットでは意外な反応が多く現われている。「被害者遺族はラッキーと思っているかも」、「多額の税金が使われているって主張は間違ってはないな」、「彼のやったことは正しい」、「国は安楽死を真剣に考えろよ」等々。植松容疑者が結果として大きな問題提起をしたことは間違いない。この問題提起の意味は重い。人間の存在意義、人間の尊重、国家の役割ということに繋がる問題である。かつてドイツの有名な刑法学者ビンディングと、やはり高名な精神科医ウィリアム・ホッヘが「生きるに値しない命」という論文を共同で発表した。ヒットラーが政権をとる前のことで、後にヒットラーの優生政策とユダヤ人虐殺に影響を与えたとされる思想だ。 

 

 当時ドイツは敗戦と過酷な制裁により経済は大不況となり、国家存亡の危機に立たされていた。そのような時代背景の下で、この恐るべき思想が生まれた。生まれつきの白痴、治る見込みのない精神障害者等のため毎年膨大な予算を使うべきではない。「生きるに値しない命」を殺すことは恩恵として死を与えることだから許されるという理論である。この思想に基づいて、実際多くの人命が処分された。

 

 当然のことながら、強い反論が起きた。生産性のない命を不要とするならそれは広がって、働けなくなった高齢者にまで及ぶことになる。しかし、もっと根本的な理由がある。人間の尊重だ。一人一人の人間が大切で、それを守るために国家の役割がある。

 

 今回の大量殺人を見て、病める日本社会の危険性を感じる。日本国憲法の柱である人権の尊重を理解しない人々が増えている。私は抑制廃止研究会のメンバーである。福祉施設で虐待がなくならないのは、先のない人たちの人権への配慮がないからだ。容疑者が福祉施設の元職員であったことは重要だ。

 

ヒラリー・クリントンが民主党の大統領候補に指名された。初の米女性大統領実現に向け前進したことに。振り子の動きの順からゆけば、今度は共和党だが、共和党の候補者はトランプなので、先行きは霧の中だ。民主党はケネディ、カーター、クリントン(夫)、オバマと続いてきた。トランプの支持率が高くなっている。「まさか」は起こるのか。女性進出が世界の大きな潮流になっている。都知事選の投票日が近づいた。鳥越にまた週刊誌の直撃が。(読者に感謝)

 

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2016年7月27日 (水)

人生意気に感ず「19人殺害の怪。容疑者の手紙。国を挙げてのドーピングを許すのか」

 

 ◇19人死亡と耳にした時、一瞬テロかと思った。相模原の傷害者施設の不可解な事件である。容疑者は施設の元職員で重度の精神障害者が死ねばいいと思ったと語っている。この若者を知る人は好青年だったと語っている。真面目だった若者がある日突然人を殺し「誰でもよかった」と述べる事件が増えている。今回の事件と合わせて、人の心の崩壊現象というべきか。社会の病理現象の現われと思うが、何が原因なのか。世界中で多発するテロ事件が、心の芯を失った不安定な若者に影響を与えないとは言えない。 

 

◇奇怪な事実が次々と伝わる。容疑者は衆院議長公邸に自ら手紙を持参。その中で、自らの住所使命携帯番号を記載し、大量殺害を予告していたとか、般若の入れ墨を背中に刻んでいるとか、大麻の尿反応があったとか。これらの事実は自己の人格を制御する能力を失ったことを物語るものだが、問題は何が原因でそうなったか。人が突然別人のように変わってしまう。テロの時代が重なって、心の不安定な人々が何を起こすか不安である。

 

◇植松容疑者の大島衆院議長あての手紙は一見、荒唐無稽なことが書かれている。言わんとすることは社会的活動が極めて困難な重複障害者を国のために殺してしまいたいということらしい。このような考えが出て来たことを驚くと共に、人権を理解しない人々に少しでも影響を与えることを恐れる。ナチスの大量虐殺の背景と遠因になった「生きるに値しない命」の思想を思い出すからだ。

 

◇リオが目前に近づく中、ロシアの国を挙げてのドーピング問題。世界が固唾を呑んで見守る中、IOCは、ロシア選手団の全面除外を見送った。この弱腰は、大国の力に屈した惨めな姿だ。極限の技に感動するのは、公平、公正、正義に支えられた極限の努力に心を打たれるからだ。かつて、サッカーのワールドカップにも大きな疑惑問題があった。スポーツも所詮こんなもの、正直者が馬鹿を見る、こんな風潮が世界を覆うことになるだろう。そんな中で正義を貫いている日本の姿は救いであり誇りである。

 

◇国を挙げてドーピングをやるのは、その国の政治体制と大いに関係がある。言論の自由が保障され、政府を批判することが当たり前の民主主義国では、今回のロシアのようなことは有り得ないからだ。ロシアの醜態は国家体制の遅れと欠陥を図らずも露呈することになった。(読者に感謝)

 

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2016年7月26日 (火)

人生意気に感ず「ふるさと塾の盛況ぶり。フンドシの少女。命をかけた知事」

◇7月の塾(7月23日)は大変盛況だった。参加者は約70名。「県会議員から紙芝居おじさんになりました」と言うと、どっと笑い声が湧いた。「絵の作者、秋葉二三一さんは脳梗塞で倒れ、右手が使えなくなりました。左手で描いた執念の作です」。こう説明すると、人々の視線が一斉に絵に注がれた。Tさんが打つ太鼓が「ドドンドン」と鳴り、私の語りが始まる。

 10枚の絵は、サイパンの全滅から始まり、昭和20年8月5日の前橋大空襲までを語る。死者は535名に達し、空襲の後、死の街が果てしなく広がる。私は「国破れて山河在り、城春にして草木深し」と杜甫の詩の一節を語った。最期の一枚は、リンゴの歌と共に再建に立ち上がる人々の姿。私が「赤いリンゴにくちびるよせて」と歌うと会場から唱和が起きた。

◇この日のメインのテーマは「沖縄戦」。地獄に落とされた住民の苦しみを一人の少女を通して考えること、及び多くの住民を救った勇気ある行政官の姿を伝えることに焦点をあてた。

 一人の少女とは、実在の松川富子さん。(後に比嘉富子となる)。逃避行の途中、ガマの中で不思議な老夫婦に出会う。老爺は両手両足がなく、老婆は盲目。富子はおじいさんの傷口に群がるウジをとってやる。やがてガマから出る富子に老人は白旗を渡した。白い旗は老婆がお爺さんのふんどしを食いちぎって作ったもの。「白い旗を持った者を殺さないのが世界の約束じゃ」と老人は言った。

 富子は後に平和運動でニューヨークのデモに参加し、「この写真をとったカメラマンを捜しています」と書いたプラカードを掲げた。あの時、ガマから出た富子を27歳のアメリカのカメラマンが撮って「白旗の少女」として報じていた。

 ニュースを見て現れたアメリカ人は70歳になっていた。

◇住民を救った勇気の官僚とは島田叡知事と警察部長荒井退造。島田は沖縄戦開始の二ヶ月前に死を覚悟して赴任。政府はサイパン陥落の夜、沖縄住民の移住を閣議決定したが前知事の反対もあって中々進まなかった。荒井警察部長は、隣県宇都宮の人で明治大学の夜間部で学んだ人。島田は東大在学中野球部のスター選手だった。二人は沖縄県民から「二人の島守(しまもり)と称えられている。

◇次回は8月27日(土)。今回の紙芝居でも玉音放送の場面があったが、次回は「玉音」に至る鈴木貫太郎の活躍とエピソードを語る。(読者に感謝)

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2016年7月25日 (月)

人生意気に感ず「トランプは大統領になれるのか。迫るテロ。小池氏リード」

 

 ◇トランプが遂に共和党の大統領候補になった。共和党の歴史を振り返れば、南北戦争と奴隷解放で有名なリンカーン、第2次世界大戦の英雄アイゼンハワー、ロン・ヤスのレーガンなどがいる。トランプは果たして大統領になるのか。「米国第一主義」を訴える姿は、単純明快だから大衆の心理をくすぐっているようだ。どこかにヒトラーを思わせる雰囲気は、アメリカの民主主義の危うさを感じさせる。 

 

◇世界が沸き立っている。アメリカの大統領選、イギリスのEU離脱と女性首相の登場、中国の南シナ海での横暴ぶり、第3次世界大戦とも言われる世界的規模のテロ等々。この激浪の中に都知事選の動きがある。鳥越の影が薄くなってきた。増田はあくまで地味で堅実さとスキャンダルがない点は一番と見えるが、改革の時代の期待に応えられる男とは思えない。多くの無党派層は小池百合子に関心をもっているようだ。女性の時代といわれる潮流の中で、クリントンが女性初のアメリカ大統領の可能性ありで突き進んでいることは一つの追い風に違いない。東京都の熱い戦争はこの人に特別のスキャンダルがない限り女性知事に軍配があがる気がする。都民の多くは安定と共に変革を求めている。

 

◇安全と言われたドイツでもテロ事件が発生した。22日ミュンヘンで乱射事件が起き、9人が死亡した。このことは、もはや安全な国はないということを物語る。日本も標的になっているという覚悟をしなければならない。

 

 リオ五輪が危ない。ブラジル政府は大量の軍を出動させて対応している。選手を中心にしてリオ入りしている多くの日本人は身の危険を肌で感じているだろう。リオにおけるテロ問題は4年後の東京五輪を予想させる。その間、世界のテロが終息するとは思えない。もっと凄い状況下で東京五輪が行われることを私たちは覚悟しなければならない。

 

 テロと合わせて懸念されることは、地震、津波、火山などの自然災害である。日本国の平和と安全は本物かがいよいよ問われる時が来た。最近の地震の頻発状況は異常である。

 

◇都知事選終盤情勢の世論調査が出た。23日、24日の各社の調査では小池氏がリード、増田氏、鳥越氏が追うということらしい。小池百合子の勢いが広がっている感じ。鳥越はスキャンダルが利いて大きく下げている。小池がリードを広げる形で投票日を迎える気がする。(読者に感謝)

 

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2016年7月24日 (日)

小説「楫取素彦物語」第146回

 玄瑞は語りかけた。

「美和子よ、いつまでも私を追っていてはならぬ。分かるか、それでは自分をいかすことが出来ないからだ。私は、世のため、国のために戦って死んだ。お前も世のために生きよ。わしの志を大切に思うなら、新しい生き方を考えよ」

「あなた様、私は、あなた様の志を大切にいたしたいと思います。新しく生きるということはどういうことでございますか」

「は、は、美和子と名を変えたように、新しい人生を開拓するのだ。さらばだ。元気で生きよ。さらばだ」

「あなた様、待ってください。教えて下さい」

美和子は必死で手をのばし玄瑞の姿をつかもうとした。そして、はっと目を醒ました。

(何だったのだろう。玄瑞様は何をいおうとしたのだろう)

美和子は、それから、夢のことがいつも気にかかった。玄瑞が何かを教えようとしていると思えた。考え続けていると、姉の最期の姿が目に浮かんだ。玄瑞の志を継ぐ、新しい人生を開拓する、姉の姿::辿る時、美和子は、はっとして愕然とするものがあった。

(楫取様と)

美和子の胸に楫取素彦の顔が浮かび、美和子は、あわててそれを打ち消した。

 あの夢以来、美和子の心に変化が生まれていた。新しく生きることは何かを常に意識するようになった。

 そんなある日、萩から母滝の手紙が届いた。その内容は次のようなものであった。

「お寿も亡くなり、私は、お前が一人でいることが心配です。前にも話したように、楫取殿の妻となって、楫取殿を助けることが、松陰や、玄瑞や寿の志を継ぐことではありませんか、そしてお前自身を生かす道ではありませんか」

 

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年7月23日 (土)

小説「楫取素彦物語」第145回

 

ある日、行薫が言った。

「松陰先生があの世で喜んでおられることでしょう」

「松陰はあの世で、子どもたちのこころが欧化の嵐で流されてしまうことを憂えていたはずです。松陰の霊に報いることが出来ればこんな嬉しいことはありません

「あなた様、立派なお仕事をなされ、本当に宜しゅうございました。寿はこんなに嬉しいことはございません」

 寿の笑顔に楫取は黙ってうなずいた。

「難治の県」の発展は人づくりにある。こう信じた楫取は多くの小学校を訪ねて優秀な生徒を表彰し全校生徒を励ました。修身説約は子どもたちを励ます旗であり、子どもたちがよって立つ心の基盤であった。

 

 

美和子の再婚

 

 

 明治十六年、五月三日、美和子は楫取と再婚したが、ここに至る道は平坦ではなかった。寿の死後、楫取が何かと不自由していることを知った杉家の母滝は美和子が楫取と再婚することを勧めた。

「美和子さん、母は、お前がいつまでも一人でいることが心配です。楫取のところへ嫁いではくれまいか、考えておくれ」

「まあ、お母様、何を申されますか。美和は再婚など考えておりません。私の心には::」

そう言いかけて美和子は口をつぐんだ。美和子は初め母の勧めを強く拒んだ。二夫にまみえずという婦徳の重みはもち論感じていたが、美和子にとって何よりの重大事は胸の奥にある玄瑞の存在であった。若き日の玄瑞、若い日の燃える心で受け止めた夫の姿は長い歳月を経ても心の底で生きていた。時々取り出しては見る玄瑞の文は美和子の心を時空を超えて過去へ引き戻し懐かしい玄瑞との再会を果たさせるのであった。ある時、美和子は玄瑞の手紙を枕元において眠ると、夢を見た。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年7月22日 (金)

人生意気に感ず「前橋地裁の死刑判決。都知事選の不気味。ロシアは恐い国」

 

 ◇前橋地裁は20日、高齢者2人を殺した被告に対して、裁判員裁判で死刑判決を下した。被告の生い立ちも考えると、死刑制度というものを改めて考えさせる判決である。前橋では平成15年に暴力団の抗争にからむ殺人事件があり3人に死刑判決が下され確定した。一般人も巻き込んだこの三俣町のスナックで起きた事件については、死刑判決につきほとんど異論はなかったと思う。それに比べ、今回の判決については死刑制度のもつ問題点が大いに議論されるべきではないか。 

 

◇裁判長は、「更生の可能性がわずかに残されている点を考慮しても死刑をもって臨むことがやむを得ない」と述べた。死刑は究極の刑である。通常、更生の可能性はないと表現して死刑を判示するのに、更生の可能性を認めながら死刑を結論づけた

 

 一般民間人の裁判員が死刑判決に関わることの難しさを感じる。私は、死刑か否か微妙なケースに裁判員が関わることには無理があると思う。裁判長自ら「悩みに悩んだ」と告白しているケースである。裁判員制度は定着したかに見えるが、死刑に関しては限りなく深い問題点を抱えていると思えてならない。

 

◇都知事選は中盤戦に入ったが、週刊文春と週刊新潮が鳥越氏のスキャンダルを報じた。特に文春の記事はかなり衝撃的である。真偽は分からぬ点があるが選挙情勢に影響を与えることは間違いない。時を同じくして、小池氏を脅迫するツイッターのことが大きく報じられた。これらのことは、小池氏有利に働く要素だろう。様々なことを巻き込んで大きな流れが出来ていく。中盤が終わる頃、もう一度世論調査が出るだろう。実に興味深いことだ。

 

◇ロシアの国を挙げてのドーピングは、スポーツ仲裁裁判所の裁定で動かぬものになった。これでロシアの陸上選手の五輪出場が不可能になる。昔から、ロシアを含む東欧諸国の国を挙げての熱の入れ方は異常だった。東西冷戦の頃は、政治体制の不利を挽回する手段として五輪を利用しているという感があった、ロシアは恐ろしい国というイメージを強める。目的のためには手段を問わない。正義も個人の自由も踏みにじる。仲裁裁判は辛うじてスポーツの正義を守った。強い姿勢で貫かねばスポーツに限らず世界の正義がしぼむ。中国の南シナ海に関する仲裁裁判とて同じことだ。(読者に感謝)

 

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2016年7月21日 (木)

人生意気に感ず「小池が一歩リードのわけ。大地震、マジで近い。世界はテロの戦場に」

 

 ◇序盤戦の世論調査になるほどと思った。小池百合子が一歩リード。鳥越がこれと競い、増田が追うといった感じ。自民党が公認以外の応援に対して厳しく締め付けをしているというが戦略的に下手なやり方だ。自民党都議のボスのいじめで若手の都議が自殺したという猪瀬氏の暴露情報も有権者の一般感情を刺激しているに違いない。 

 

 大体の感じでは、自民・公明は知事と都議が力を合わせて協力体制を組めることを第一と考えているようだ。しかし、ここに問題がある。今、地方議会の形骸化が指摘されているが、その一因は議会が首長(知事)の提案を何でも認めるという一体化にある。二元代表制であるのに、首長の力が大きすぎ、議会は何でもOKで存在意義がないということなのだ。「冒頭解散」も深く考えれば、おかしなことではない。中盤戦の情勢がいよいよ面白くなる。

 

◇頻発する最近の地震の状況は異常である。19日には、千葉県で震度4、茨城県で震度3、その前の17日には茨城、栃木、さいたま、神奈川等関東5県の広域で震度4であった。もう毎日の地震情報に慣れっこになった感じだが、私にはいよいよ来るものが来たと思える。専門家も大地震が近いと指摘して久しい。地下のプレートのせめぎ合いは壮大なドラマとなっているのではないか。5年前の「3.11」は日本列島沸騰の序曲。息を止めて見詰める瞬間が過ぎていく。大きなサイクルが重なって、それに人間界の営みが連動して、運命の時が近づいている。都知事選は「福祉」が最も注目されている。「首都直下」は慣れっこになってしまった。群馬は「安全神話」胡坐をかくことがすっかり習慣となった。

 

◇世界中がきな臭くなってきた。ダッカ、ニース、トルコとテロの頻発は止まらない。イスラム国(IS)は、「イスラム国と闘う有志連合の一員である日本の国民を狙った」とあるテロ事件で声明を出した。日本はもはや標的にされていることを覚悟しなければならない。遅すぎる感がある。警視庁は東京の花火大会に際し、テロに備える特殊部隊を設置した。平和ぼけと言われる日本は隙だらけだからISにすれば絶好のターゲット。日本にも格差が広がり、社会に不満を抱く若者は増え、生きる望みを失い、誰でも殺したいと考える若者さえ出て来た。公平な社会こそ最大の防衛だ。(読者に感謝)

 

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2016年7月20日 (水)

人生意気に感ず「象徴天皇制の素晴らしさ。楫取素彦の紙芝居をやった。次は日本国憲法だ」

 

◇世界のいろいろな国を見て来て、日本は良い国だと思う。良さを支えるのは安定した文化と秩序である。その中心に絶えず天皇がいた。毎日が地獄のような戦国時代であっても、京都は日本民族の心の支えであった。70年前の敗戦の時も天皇の存在が日本人の精神の瓦解を救った。天皇は神話の時代から、「日本国の象徴」であり、「日本国民統合の象徴」であった。日本国憲法第一条のこの文言は、歴史的事実を表現したものである。

 

 時の政権が誤った国策のために天皇を利用したことがあったとしても、日本の歴史の上で果たす天皇の役割は不変である。軍国主義が去って、平和と文化と人間が日本を支える柱となり、象徴天皇は一層輝きを増した。

 

 憲法は歴史的な価値を基本に据えたものである。日本国憲法第一条に天皇を位置づけた為に、憲法はしっかりした日本の礎石となった。「3分の2」が実現し、天皇の生前退位がにわかに表面化し、憲法改正が急に国民の目前に現れた。今こそ、第一条をしっかりと見詰めるべきだ。

 

 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は主権の存する日本国民の総意に基づく(憲法第一条)。ちなみに、自民党の改正草案は、この一条の中に、天皇は「元首であり」が加わる。天皇を元首とする考えは現在の学説でも珍しいことではなく象徴性と矛盾するものではない。

 

◇16日、中国大使館の書記官等を迎え、私は歓迎の一環として紙芝居を披露した。題は「吉田松陰と楫取素彦」。中国人の客は紙芝居の文化を知らない。一方、明治維新には大いに関心がある。私の「芝居」を大変面白いといって喜んでくれた。彼らは、紙芝居が訴える日中の歴史と文化の結びつきにも心を動かされていたようだ。シルクの歴史、黒船来航に見る西洋の巨大な外圧などに触れたからだ。

 

◇もう一つの紙芝居「前橋の一番熱い日」が完成した。昭和20年8月5日の前橋大空襲がテーマ。原作は私で、絵の構想も私が提供した。来る8月5日に私が実演する。防火訓練の場面でこんなセリフがある。「おかあちゃん、戦争負けるの」、「しっ、そんなこと言ってはいけません。必死で戦い抜くのよ」。前橋の空襲の時、4歳であった私の姿と重なる。今、構想中の紙芝居に「日本国憲法」がある。憲法軽視の人々と世想にぐさりと訴えたい。(読者に感謝)

 

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2016年7月19日 (火)

人生意気に感ず「脳梗塞で倒れた二人の芸術家。右手が駄目なら左手でと。がん死の時代」

 

 ◇金沢子卿先生の遺墨展を見た。脳の病気で倒れ右手が使えなくなった。奈落に落とされた心であったに違いない。右手がなければ左手があると、言うは易い。先生は左手に全てを賭けた。書は人、書は人の心を現す。先生の執念は遂に左手の作品の個展を開くまでの成果を示した。先生は亡くなられたが、遺墨の作品展は高崎信用金庫で行われている。左右のコーナーに分かれ、右は右手作品、左は左手作品となっていた。左手で目を引いたのは杜甫の詩「国破れて山河在り 城 春にして草木深し」。枯れた筆致は幽玄で深みがあり、心で書いたことを物語っていた。 

 

◇もう一人、脳幹までやられながら、脳梗塞の渕から這い上がった芸術家を紹介したい。前県漫画協会長の秋葉二三一さん。唯描きたい一心で絶望の渕から生還を果たした人。私の「楫取素彦」の挿絵を描いてくれた。一本の線の描写に心が現われていると感じられる。人間は素晴らしい。人間は心の生き物。つくづくとこう思う。

 

 今、私は紙芝居を作っている。ストーリーを書き、絵の構想を作って秋葉さんに渡した。2作品を進めており、一つは「前橋の一番熱い日」、もう一つは「8・05、未来への警鐘」。どちらも昭和20年8月5日の前橋大空襲を描いている。前者は間もなく仕上がる予定で、来る8月5日に私が実演することになっている。セリフの中に「国破れて山河あり、城春にして草木深し」がある。

 

◇今月の「ふるさと塾」は23日土曜日午後6時半。市の総合福祉会館で。私は「沖縄戦」を話す。沖縄担当大臣をされた山本一太氏が参加される予定である。ここで、「紙芝居」も実演することになるだろう。なお、私の事務所には「ふるさと未来塾」と書かれた柳の古木の板がある。金沢子卿先生が右手で書かれたものである。

 

◇がんの時代が拡大する。国立がんセンターは今年のがん患者が100万人を超え、がんで死亡する人は37万人超と予測した。がんが身近になった。今や2人に1人ががんという時代である。私の前妻は40歳でがんで死んだが、当時は恐怖の病で本人に告知するか否かは深刻な課題だった。知らせると死期を早めるといって隠すのが常識だった。今や即告知が常識。病を知らねば病と闘えぬ。日本人の死生観もがんと共に変わる。(読者に感謝)

 

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2016年7月18日 (月)

小説「楫取素彦物語」第144回

 夏のある日、楫取県令は木戸を呼んで告げた。

「九月に明治天皇が来県される。私はそのとき、この修身説約の大体の姿を御覧に入れる考えである。そのことを念頭においてよい草稿に仕上げて欲し。恥ずかしくないものを作ってくれ。恐れ多いことだが天皇が草稿を御覧になられたという効果は計り知れない程大きいだろう。子どもたちもそれをこの本の価値のひとつとして受け止めるだろう。日本人の心を守るための教科書を天皇も認めてくれるに違いない

 木戸はえらいことになったと思った。

行薫はこれを聞いて言った。

「県令にとって最大の事業となろう。おそらく県令は、松陰先生の悲願を果たす時と考えておられるに違いない」

 明治天皇は、北陸、東海地方巡幸の折り群馬県に立ち寄られ、明治十一年九月二日、群馬県庁と群馬師範学校を訪ねられた。修身説約は群馬師範学校でご覧に入れることになった。

 師範学校の一室、純白の衣が敷かれたに修身節約草稿十冊が並べられている。

その傍らに楫取は直立不動で立つ。

 天皇が近づき下問された。

「そなたが、吉田松陰の義弟であるか。県令が自ら意を注いだ道徳教科書と聞いたぞ」

「恐れ入ります。文明開化の行き過ぎを防ぎつつ子どもたちの豊かな心を育むことが出来ればと工夫いたしました」

 楫取が答えると、天皇は頷かれ、一冊を手にとってページをめくって見入っている。

「孝行、正義、愛などの徳目を人物の物語で伝えます」

「絵もよい。子どもたちに夢を与えることであろう。良い成果を期待します」

ありがたいお言葉、恐れ入ります」

 天皇は去り、楫取は感激にひたった。

楫取が自ら序文を書いたこの教科書は全国的に多くの学校で使われた。教育者楫取の面目躍如たるものがあった。

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年7月17日 (日)

小説「楫取素彦物語」第143回

 楫取の言葉には珍しく感動と喜びが現れていた。楫取の行動ははやかった。ここぞという時に断固として動くのは、長州時代に培われた習性であった。

 楫取は県庁の学課員木戸麟を呼んだ。道徳教育の必要性とそのための教科書を作る決意を話した。木戸は土佐の豪商の家に生まれ大阪に出て学問を修め、その後軍医となって陸軍病院を経て熊本鎮台に勤務した人である。

 楫取は道徳教科書を早急に作ること、その内容につきてきぱきと指示した。

「よいか、きみが中心となって委員会を作れ。委員には小野島行薫を加えよ。議会からは湯浅次郎氏、星野長太郎氏、宮崎有敬氏等三名程に委嘱するがよい。教師も一名加えよ。中味については大筋のことを申しておくから君の腹において会議を進めればよい。それは中国、日本などの東洋と西洋の話をおよそ半々にするのがよかろう。徳目は、孝行、正直、博愛、信義などを中心に取り上げる。これらについて熱き心で生きた人々の話とせよ」

 木戸は楫取県令の並々ならぬ決意を感じた。課内の優れた若者を二、三名選び、資料を集めさせ県令が挙げた徳目に当てはる人物と例話を委員に配布した。

 木戸は会議の流れに配慮してこれを方向うずけ、他の修身教科書にない特色を打ち出した。

 それは、道徳といえば儒教とがちな弊に陥ることなく、現実の生活と結びついて考えられる例話を並べた。木戸も幕末の混乱を熱く生きた男であったから楫取の情熱と志をしっかりと受け止めることが出来た。彼は自ら筆をとり部下を督励して全力を尽くした。本の顕名は、委員の提案で「終身説約」

ときまった。子どもたちが興味をもって読めるようにという意見から挿絵をつかうことになり。河鍋暁斎に頼むことになった。

 かくして明治十年十月に編纂に着手し、翌十一年の夏ごろにはかなりの進渉を示した。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年7月16日 (土)

小説「楫取素彦物語」第142回

 

「道徳教育に力を入れよう。気付くのが遅かった。西洋の進んだ知識や科学は万能ではない。日本人の心を守らねばならない。日本人の心までが西洋文明に屈することは、日本が外国に服従するのに等しい。松陰殿が死の直前、身たとい武蔵の野辺に朽ちるとも留めおかまし大和魂と言ったことが思い出される」

「あなた様、道徳教育のために感動させる人物の物語を易しく書いた教科書を作ったらいかがでございましょうか。私は熊谷県の時、獄舎で法話をしました。あの時、兄松陰の話をしたら人々は真剣に聞いてくれました。獄の人々の心も子どもたちの心も同じだと思います」

「あの時の寿様のお話、本当に感動いたしました。私は、英雄、偉人の人物の紹介なら、西洋の偉人を取り上げても構わないと思います。弊害は表面的に西洋優先を受け入れることなのです。日本の偉人を心に植える。その上で西洋の偉人も心に植える。日本を誇ると同時に西洋も尊敬する。こういう広い心を子どもたちに育てるのです。今、心配なのは西洋一辺倒の文明開化なのです」

行薫の言葉には熱がこもっていた。法話を続ける中で文明開化の行き過ぎを肌で感じていたからだ。

「見えてきたぞ。道徳教育の教科書の姿が。最速、とりかかることにいたそう。私には群馬の道徳教育の頂きが見える。そこに至る道筋が見える。教育県群馬の姿が見えてきた」

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年7月15日 (金)

人生意気に感ず「巨大劇場と化した都知事選。リオはテロの戦場に。政治不信の行方」

 

 ◇都知事選は熱狂で始まった感がする。20人を超える立候補者というのも前代未聞。自民党は総力を挙げて増田寛也の当選を目指す。公認以外を支援したら処罰の対象にするとまで言って締め付けようとする。こういう構造が目指すものが打倒小池百合子であることは明らかだから、自民の戦略は結果として、小池百合子を押し上げている。従って、自民の描く組織選が勝利に結びつくのか大いに興味が湧く。 

 

◇世界の巨大都市東京は既に巨大劇場と化している。リオ五輪、東京五輪、首都直下巨大地震、高齢少子問題、更には憲法改正問題に至るまで、実に多くの課題が劇場を飾る。日本列島の縮図でもある。数日おきに世論調査が明らかにされるだろう。

 

 私は都知事候補の政策として第一に知りたいのは治安・防災である。首都直下は切迫していると見なくてはならない。テロも同様である。確実に迫る二つの危機に対して行政には緊迫感がない。群馬は近いだけに他人事ではない。

 

◇フランスからリオ五輪のテロに関する情報が伝えられている。過激派組織「IS」のブラジルメンバーがフランス選手団を狙ったテロを計画しているというもの。フランス治安当局のトップの口から出たもの。誤って機密の一部が開示されたという。狙われているのはフランス選手団だけではあるまい。ISが最も憎むのはアメリカで、アメリカと同盟を結ぶ日本も狙われると見なくてはならない。ブラジル政府は万全と強調するが、治安維持能力が疑わしいのは普段のブラジルの犯罪状況から明らかだ。現在追い詰められているISのこと、起死回生を狙っていることは確実だと思う。リオで大規模なテロが起きれば、第三次世界大戦の様相は一層深まる。

 

 そのことは、4年後の東京五輪に直結する。その間、巨大地震は一層近づく。中国、北朝鮮の問題も増々緊迫し、日本は臨戦体制に追い込まれていく。平和ぼけの日本民族に試練の時が迫った。

 

◇日本丸という船が抱える最大の課題は船長の資質。政治不信の問題である。乗り切る勇気と見識と決断が伝わってこない。地方議会の形骸が言われて久しい。前知事が袋叩きになったが、実は都議会も大同小異だったに違いない。更には国会も。それらが大同団結で都知事選に突入した。今回の興味はここにもある。(読者に感謝)

 

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2016年7月14日 (木)

人生意気に感ず「天皇の生前退位。象徴は日本の文化。都知事選スタート。中国の醜態」

 

 

◇すごいニュースだ。「天皇が生前退位の意向を示された」と報道され、宮内庁は13日深夜、「そうした事実はない」と否定。14日の各紙は一面で「生前退位」を報じている。天皇は政治的発言をされない建前だから、宮内庁の深夜の記者会見と慌て振りが分かる。

 

 天皇は82歳になられ「行事の時に間違えることもありました」と自ら語っておられた。人間天皇の自由意志を尊重すべきだ。日本国憲法は「象徴天皇と国民主権」で始まり、その地位は皇室典範によると続く。

 

 天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は主権の存する日本国民の総意に基づく(第一条)。皇位は世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところによりこれを継承する(第二条)。皇室典範第四条は天皇が崩じた時は皇嗣が直ちに即位すると定める。つまり法律は生前退位を認めないのである。天皇の御意志は尊重すべきだから、国会は皇室典範を改正すべきだ。恐らく反対はないはずだ。

 

 天皇が「日本国」及び「日本国民統合」の象徴であることは長い歴史が示す事実であり、それは、敗戦時の混乱をよく乗り切ったことに現われている。天皇の制度は日本文化の象徴なのである。

 

◇今日、都知事選がスタートする。昨日、宇都宮、小池、鳥越、増田4氏の共同記者会見があった。宇都宮健児氏は、その後出馬を断念したから、結局3名で選挙戦は行われる。参院選の余韻が漂う中の戦いである。手堅い感じは増田寛也氏、サプライズの要素は小池百合子氏と鳥越俊太郎氏にある。イギリスで女性党首が新首相に就任し、米国ではクリントンが米国初の女性大統領になりそうだ。女性の時代ということもあり、このような状況は小池百合子にとっても追い風になるのだろうか。

 

◇仲裁裁判に関する中国の態度は、国際的信用を大きく損なうものだ。負けることを予想して仲裁裁判所長に個別的接触を図っていたという。中国は安保理常任理事国なのに、国連海洋法に違反するとした裁定を無視するというのだから、法治国を口にする資格はない。裁定は、中国の主張に歴史的根拠はないと判示した。中国は過去二千年の歴史を主張しようとした。そんなに遡ることが認められるなら、沖縄さえ俺のものという理屈が通るかも知れない。フィリピンに「チェグジット」、南シナ海から出て行けの新造語が広がっている。(読者に感謝)

 

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2016年7月13日 (水)

人生意気に感ず「南シナ海の判決。一気に盛り上がる憲法論。朝礼で憲法を」

 

 ◇南シナ海での中国の主張は仲裁裁判で退けられた。中国の主張は、かつて満州で横車を押した日本を思わせる。中国の主張は、南シナ海のほぼ全域に中国の主権や権益が及ぶとするもので、対立するフィリピンが仲裁裁判所に申し立てていた。ハーグの仲裁裁判所は「中国が歴史的権利を主張する法的根拠はない」と判決を下した。海洋国家を目指して強引に実効支配を進めてきた中国は国際法上の「ノー」を突きつけられた。中国は国際裁判に対して従わないことを強調している。 

 

◇中国の横暴ぶりは国際世論を敵にすることになった。埋め立て行為で人口島を増やし続けている中国。超大国の既成事実を振り出しに戻すことは難しい。しかし、やり得を許してはならない。海の憲法と言われる国連海洋法条約に基づく仲裁裁判の結論はどう生かされるのか。

 

 中国はロシアと連携して、力の支配を進めている。ロシアはかつての米ソ対立時代の栄光を取り戻したいと願っている。プーチンの民族主義を国民は強く支持している。そんなプーチンと習近平はタッグを組んでアメリカに対決しようとしている。彼らの前に立ちはだかるのが日米同盟だ。中国の実効支配の作戦は日本を脅かし、領空、領海の侵犯状態は一触即発。今回の仲裁裁判は日本にとっては大きな援軍になる。強かな中国とどう対峙するか。それは、憲法改正に関わっている。

 

◇11日の各紙の一面は申し合わせたように「改憲勢力3分の2超」の文字が躍る。これから政局の中心は憲法改正となる。日本国民は誰もが憲法の議論の渦に巻き込まれる。これまで、憲法を軽視したり無視したりしてきたがそれは許されなくなった。

 

 憲法の「いろは」から学ぶ時が来た。私は「ふるさと塾」で憲法を何回も取り上げてきた。アメリカに押し付けられたとされる中味を吟味しなければならない。日本国憲法の中味の素晴らしさは否定できない。しかし、現実にそぐわない所があるのも事実だ。特に、70年も経て社会の現実は大変化した。改正は不可避である。問題はどこをどう変えるかだ。

 

◇昨日、顧問を務めるある企業の朝礼で、憲法の話をと頼まれた。選挙権は主権者としての重要な権利だということ、及び憲法改正の手続きについて話した。「憲法の理解は私たちにとって、最も大切な教養です」ということで始めた私の話に社員は熱心に耳を傾けた。(読者に感謝)

 

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2016年7月12日 (火)

人生意気に感ず「憲法改正と参院の役割。注目の選挙区三重と岡山」

 

 ◇参院選の結果は予想通り自民党の圧勝となった。自民の獲得議席は、追加公認1を加えると56.憲法改正勢力が参院でも3分の2を超えた。安倍政権は憲法改正に向けて本格的に動き出すだろう。自民党及び安倍政権の一貫した悲願ということになっている。 

 

 最近の安全保障に関する国際情勢は緊迫の度を加えている。憲法改正は、勿論このことと大いに関係するが、日本という国家の方向を決める問題である点がより重大である。日本国憲法をよく知ることから議論を深めていかねばならない。

 

◇憲法改正が表舞台に登場することになって、私は参議院の役割がより重要になったと痛切に感じる。参議院は必要か。衆議院のコピーではないか。無用の長物ではないか。こんな議論が長いこと行われてきた。

 

 参議院は、解散がなく、任期は6年である。参院は理性の府と言われ、衆院の「数」に対して「理」を重視するところである。国家百年の計をじっくり腰を落ち着かせて論ずるところである。憲法こそ、政争に任せるのでなく、じっくり論ずるべき問題の典型であり、参院で議論するにふさわしい。

 

 従来、数合わせを狙って、参院にふさわしくない人物を登場させてきた歴史がある。振り返れば、テレビの知名度を利用して、落語家、スポーツ選手などを担ぎ出したのは、国民を馬鹿にした、参院の自殺行為とも言える愚行であった。落語家、歌手、スポーツ選手を初めから軽視するわけではない。勿論、資質が問題なのだが、テレビの知名度を利用して議席数を稼ぐということが見え見えの例を否定することは出来なかった。そういう傾向が減ってきたことは民主主義が少しずつ進歩している証拠なのかも知れない。

 

◇注目の選挙区はまず三重だった。岡田代表はここで負ければ代表選には出ないと決意を表明していた。安倍首相は大変な熱の入れ様で小泉進次郎までが押しかけた。ここでは他の選挙区と違って憲法改正が議論の中心に据えられていた。自民は山本佐知子、民進は芝博一を立てて一騎打ち。結果は民進の芝氏が征した。

 

◇岡山も注目の選挙区。江田五月は引退を表明し、自らの後継として若い黒石健太郎を立て、必死に戦った。江田は私と同じ年、裁判官からの転身で注目してきた人物。結果は及ばなかった。江田五月の無念の表情が印象的だ。(読者に感謝)

 

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2016年7月11日 (月)

人生意気に感ず「参院選の改憲勢力。都知事選。リオ五輪の心配」

 

 ◇歴史的な参院選の投開票が行われた。昨夜、全国の状況が刻々と明らかになった。一人区群馬は中曽根弘文さんが早々と圧勝。第二次安倍政権発足から3年半。アベノミクスの是非が最大の争点だが、日本の前途という点からは参院の改憲勢力が3分の2を達成出来るか否かがより重大である。 

 

 憲法改正には、衆院参院それぞれの議院で3分の2以上が必要だ。参院の定数は242だから、その3分の2は162となる。今回の参院選は定数の半分が改選。改憲勢力は、非改選と合わせてこの数をクリアした。いよいよ今日から、憲法改正が新たに国民的議論の渦を巻き起こすことになる。

 

◇参院選の結果が明らかになることと合わせて都知事選の動きが決定的となった。前岩手県知事の増田氏が正式に出馬表明し、小池百合子氏は「推薦」を取り下げた。参院選の結果が都知事選に影響を及ぼすのは必至。夏の陣が始まる。

 

◇リオ五輪が刻々と近づき、難題が山積の状況である。ブラジルを2回訪問した経験から、私は治安を一番心配する。議長として訪問したのは平成17年だから、今から11年も前であるが治安は極めて悪かった。現在の治安状況はあの頃と比べて一変し、更に悪化した。イスラミックステイト(IS)が世界中でテロを起こし、第三次世界大戦と言われる情勢が続いているからだ。

 

 テロ組織にとってオリンピックは絶好の機会ではないか。給料をもらえない警察官が、「地獄へようこそ」とプラカードを掲げて、給料を求めるデモをしている国である。 

 

 治安の悪さを最もよく知るのは現地の人。私が議長として訪問した時、群馬県人会は私のために二人のボディーガードをつけた。二人の大男は暑いのに黒いコートを着ていたが、それは銃を身に付けるためであった。私がレストランで食事をしている時、入口当たりで目を光らせていたし、街を歩く時は左右に立って気を配っていた。私は暗黒街のボスはこういうものかとふと思った。

 

 治安の基礎はその国の歴史や国柄によるところが多い。ラテンアメリカには民族の対立や侵略による圧政暴政の歴史があった。コロンブスの新大陸発見に続くスペインポルトガルの侵略である。そんな南米大陸は「IS」のテロの狂乱の中で、初のオリンピックを迎える。4年後の東京五輪の序曲ともいうべきリオ五輪が無事に進むことを祈る。(読者に感謝)

 

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2016年7月10日 (日)

小説「楫取素彦物語」第141回

教育県群馬 

 

 

 

 

 教育県群馬の基礎づくりにつき、特筆すべきことは、楫取の「修身節約」編さん事業である。それには生前の寿の強い勧めがあった。

 

明治十年のある日、本願寺出張説教所の長である小野島行薫が楫取邸を訪ねた。同郷人の気安さ、また、前橋の真宗説教所を預る者として、楫取夫妻とは別格の間柄である。寿夫人も同席して話が弾んだ。

 

 ところでと、行薫が真顔になって言った。「最近の法話の時、一人の町民が妙なことを申すので驚きました」

 

「あなたが驚くとは一体何事ですか」

 

「西欧文明は素晴らしいというのです。阿弥陀仏だとか、ナアミダブツは時代遅れではないか。科学の時代に果たして役に立つのですかと真剣に尋ねるのです。はっとして回りをを見るとハイカラばかりです。街の子どもたちの様子、さげ髪、あげ髪、衣服から、履物に至るまで、文明開化が及んでいるのです。これは由由しき大事と思いました」

 

「それは大変なこと。根が深い問題です。最近の欧化主義の行き過ぎには私も心配しておりますが、そんなにも日常のことに及んでおるとは」

 

 楫取がこのように言うとそれまで黙っていた寿が口を開いた。

 

「外見がそのように文明開化に染まっているということは、心も変わっているということですね。そのことが重大事でございましょう

 

「私は法話をしながら日本が崩れていく不安を感じました」

 

「これは教育の一大事です。群馬県民の特色は軽いと言われる。文明開化の波に洗われて、心の根まで流されてしまっては、群馬県の教育が成り立たなくなる。私は、教育と新産業で群馬を興そうと決意した。文明開化の行き過ぎは群馬の教育の危機だといっても言いすぎではありますまい。何か手を打たねばならない時期にきているな

 

 楫取はこう言って、暫く考えた末に言った。

 

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

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2016年7月 9日 (土)

小説「楫取素彦物語」第140回

 伊香保の町が健全な繁栄を取り戻し、浄化達成の祝賀の式を行うことになった。宴たけなわの時、主賓の楫取の前に一人の女性が手を突いた。美しい表情には憂いの影があった。酌に来たのかと思っていると、女はいかにも恐縮した様子で何かを言い出しかねている。

「大変、盛り上がっていますね。伊香保の町もすっかり甦って目出たいことです」

「私は閣下に謝らなければならないのです」

「ほほう、何か悪いことをされましたか」

「・・・」

 女は黙って楫取の顔を見ている。楫取の表情には誠実さと温和さがにじんでいた。それを確かめ女は重い口を開いた。

「昔、私は閣下に大変御無礼を働きました

「何のことであろうか。申してください」

「昔、閣下は、ベルツ博士とこの街を歩いておられました」

「おう、あのときのことか

「二階から汚水を投げた女がおりました」

「は、は、は、ありましたぞそのような事が」

「その女は、私でございます。本当に悪うございました」

 女は楫取の前に両手をつき頭を畳にすりつける程に下げた。

「何とあの時の女性はあなたでしたか。どうか手をお上げ下さい。謝ることは何もありません。今はもう懐かしい思い出になっています。あの時、天から降った水も、今日の伊香保の繁栄のもとになっております。ベルツ氏と、そのように話したことがあった」

「そのお言葉、本当にありがとうございます。ずっと悩んでおりました。いまは、堅気仕事についておりますがそのお言葉を聞いてやっと、お天道様を見られる心地がいたします

「あなたのその言葉、今日のどの祝辞よりこの楫取の胸を打ちました。あなたに厚く礼を申しますぞ」

 女は細い肩を震わせて泣いていた。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年7月 8日 (金)

人生意気に感ず「中曽根総決起で。都知事選は巨大劇場。ヒロインの運命は。ゆかりちゃん」

 

 ◇昨日、中曽根弘文候補の総決起大会に出た。私は選対顧問として壇上。それぞれの弁士の演説を比較し点数をつけながら聴いた。民進と共産が組んでいるのは、岡田と志位の結合でオカシイと笑わせる弁士、イギリスのEU離脱のようにまさかということがあるから油断禁物と説く人、多くの票を得て次は参院議長だと訴える人など様々であったが、核心をつく弁士は少ない。 

 弘文さんは、大変な時局にあって、政治の安定こそ第一と訴え、その上で経済の発展と安全保障の充実を進めると強調した。特に、外相の経験から、中国との関係は一触即発と語っていた。

 

 群馬の選挙区で見る限り、自民は圧倒的で緊張感はないが、全国的には改憲勢力の3分2という数字が、日本の未来を決める程重要である。

 

◇都知事選という巨大劇場が既に幕開けだ。テレビ局は終日、ヒロインの小池百合子にスポットを当てている。これだけ一方的に巨額をかけ無料で応援してもらえる選挙はない。

 

 小池百合子の選挙は強かで巧みである。小泉元首相は「愛嬌だけでなく度胸がある」、「細川元首相は「勝負勘がある」とそれぞれ語っていた。その上に絵になる美貌である。

 

 都連は、石原伸晃会長も都議たちも一丸となって、更には区長会や市長会までもが、か弱い女性をいじめている構図なのだからこんなに面白いドラマはない。都議は、「だから小池さんは嫌われるんですね」と、石原氏は「結局自由人なんですね」といまいましそうに語る。こういう人たちは、一般都民からは政治不信の元凶のように見られている。

 

 一方増田氏は堅実性に於いて優るが役者としては千両役者と大根役者の差がある。そして何よりも、小池百合子にとっての強みは初の女性都知事への期待である。女性の時代と言われて久しい。アメリカではクリントンが初のアメリカ大統領になろうとしている。太平洋をはさんで女性が頑張る図柄は絶好の仕掛けとなっている。弘文さんの会場でも小池百合子に強い興味を示す声が聞かれた。心配なのは政治資金規正法がらみの落とし穴だけ。

 

◇ゆかりちゃんがパチンコ店から行方不明になってから20年。テレビが報じていた。私は県議の時、何度か取り上げた。栃木との県境にまたがる連続未解決事件。2011年の文藝春秋2月号は群馬県議会で取り上げた事を報じた。私のことである。(読者に感謝)

 

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2016年7月 7日 (木)

人生意気に感ず「テロ、日本人の犠牲。元警官と診療報酬詐欺。沖縄ハンセン病」

 

◇国際協力の舞台で活躍する7人の日本人がテロの犠牲になった。強い怒りと深い悲しみがこみ上げる。スカイツリーが白一色になって追悼の意を現している。6日午前0時まで毎晩続けるという。日本人の心に刻む追悼の色は永遠に消えない。

 

 私は、日本人は利己的で内向きで海外に出ないと批判してきた。そういう風潮の中で途上国のために情熱を注ぐ人たちが、こともあろうにテロの犠牲になった。ラマダンの期間は要注意と言われていたが現実になった。

 

 ラマダンは断食月である。イスラム教徒は1か月夜明けから日没まで空腹に耐える。その真の意味は、空腹の苦しみを共有し貧しい人々に思いを馳せることだ。「IS」はこれを悪用しテロへの協力を呼び掛けている。テロの発生地は、ほぼ地球的規模である。この勢いは、イスラム教徒の心の中に広がっている。「IS」は、十字軍と表現している。

 

 十字軍とは11世紀末から13世紀にかけローマ法王の呼びかけで西欧キリスト教徒が起こした異教徒討伐軍である。時代錯誤も甚だしいが、西欧文明とイスラム文明との間には十字軍以来の価値観の対立があるのは確かだ。この価値観の対立に加え、現代社会では堪え難い諸矛盾が世界を覆っている。世界の歴史上、例のない型の第三次世界大戦といえる。日本で大規模テロが発生する危機は迫っていると見なければならない。それは巨大地震に劣らぬ恐怖で近づいている。

 

◇元警察官のやり切れない事件が起きた。やり切れないというのは、診療報酬詐欺と「警察官」という二つの要素が結びついているから。

 

 大阪市の歯科医院が診療報酬詐欺事件を起こした。これに付け込んだ元大阪府警巡査部長が医院の乗っ取りを計った。詐取した診療報酬を取り合う騒ぎから110番され、府警の捜査がスタートしたというから呆れたものだ。捜査幹部は、示しをつけるためOBが関与した事件の実態を徹底的に解明すると決意を語っている。警察、医療界両方に対する鉄槌になるだろう。

 

◇先日、白根開善学校で、ハンセン病元患者の藤田三四郎さんに会った。5日のニュースは沖縄のハンセン病元患者の姿を伝えた。沖縄戦でハンセンはうつるというので強制収容された。定員の倍を超す人々が押し込められ人々は必死で穴を掘ったという。無知が偏見を生む。偏見は今も残る。今月のふるさと塾は沖縄戦である。(読者に感謝)

 

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2016年7月 6日 (水)

人生意気に感ず「参院選の動向と改憲勢力。バクダッドのテロ。一神と八百万の神」

 

◇参院選が終盤に入り、世論調査が出始めた。予想では自民は伸び、民進は大きく減り、共産党が躍進する。共産党の躍進は、自民党を強くし過ぎないようにという感情と他の野党に魅力がないことの結果だろう。

 

 参院選の大きな争点になっていないが、憲法改正は日本の未来がかかる大問題である。憲法96条は、改憲の要件として、各議院の総議員の3分の2を要求する。だから、参院の3分の2を獲得できるか否かは極めて重大事なのだ。世論調査では、改憲勢力が非改選と合わせ、この3分の2に達する勢いだという。

 

◇極めて静かな選挙戦だが、たまに「戦争法案反対」という声が聞こえる。法律の名は、安保法案だから、戦争法案とレッテルを貼るのは間違いである。中味のことを言おうとしているのだろうが、看板の効果は大きいから、中味と結びつけて戦争法だと信じる人が出ている。

 

 共産党の政策委員長は、「人を殺すための予算」と公の場で発言した。実態を無視した浅慮であり短慮であった。このことに関し、宮城県知事は「全くの筋違い、強い憤りを感じる。自衛隊は人を殺すための訓練はしていない」と批判した。村井知事は自衛官出身であるから、村井知事の怒りは、全自衛隊員及び自衛隊を支持する人々の心を代表すると見ることが出来る。

 

◇緊迫した世界情勢は、国の守りの強化を求めている。国を守ることは国民一人一人の使命であるが、その先頭に立つ自衛官の役割は極めて大きい。彼らは国民の強い支援があってこそ危険に命を晒すことが出来る。

 

 3日、バクダッドでは、死者200人を超すテロが発生した。ラマダンが終わりに近づいている。ラマダンの最期の期間は、預言者ムハンマドが神の啓示をうけた時で、イスラム教にとって最も神聖で重要。この時の功徳はより高い価値を持つ。その功徳としてテロを奨励しているのだから、正に狂気の沙汰。功徳として多くの人を殺す。それを喜ぶ神などあるものか。

 

◇一神教は恐い。いくら神の下で平等と言っても自分の神の下での平等となりがちだ。だから神と神の戦いになってしまう。その点、日本は八百万(やおよろず)の神である。あらゆるものに神が宿る。平和の国の原点はここにある。その中で心の芯を養うことが急務なのだ。(読者に感謝)

 

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2016年7月 5日 (火)

人生意気に感ず「ダッカのテロの衝撃。白根開善学校で。長英の隠れ家」

 

◇バングラデシュのテロの衝撃が世界を走り、日本を直撃している。第三次世界大戦が起きているという見方すらある。「IS」は十字軍を殺したと声明した。時代錯誤の価値観は世界にどのように広がっていくのだろうか。

 

 バングラデシュ人の割合が最も高いのが本県である。宗教に無関心の日本人であるが、宗教が深刻な問題として迫ってきた。国際化の社会は異なる価値が共存する社会である。おとぎの国のような日本は有り得ない。第三次世界大戦は、宣戦の布告もなく、爆撃機の影もなく、気付くと巻き込まれていたという形で襲いかかる。その備えをしなければならない時が来た。

 

◇2日、白根開善学校の38周年記念式典で挨拶。演壇に立つと胸に迫るものがあった。私は創立時の歴史を語った。あんな山の中で教育が出来るのかという批判的見方があった。

 

 本来なら不可能なところを可能にしたのは、本吉氏の教育への不退転の決意であった。認可がなかなか下りず行き詰っていた事態を動かしたものは、当時の清水知事等の理解であった。寄付金返還、及び 入学金返還を求める訴訟も起きた。学校側に大変有利に和解が成立した時、東京地裁の伊達裁判長は、本吉氏に「良い学校なのだから頑張って下さい」と励ました。

 

 私はこのようなことを語り、「教育の目的は生きる力を育むこと。孤独に耐え、厳しい自然環境の中で挑戦するこの学校の存在意義は今こそ大きいもの」と訴えた。

 

◇この学校で9月24日(土)、「映画・楫取素彦物語―生害の至誠」を上映することになった。私は記念式典の挨拶の中で、このことも語った。そして、この下りで、若い女性教師を紹介した。この学校に奉職するこの女性の実家は藤岡市の浄土真宗の寺、西蓮寺である。この寺は吉田松陰の妹で県令楫取の妻・寿子と縁の深い寺なのだ。

 

 私は、この学校で、楫取の映画を上映する意義は大きいと信じる。

 

◇開善学校の帰途、赤岩の湯本家を訪ねた。厚い土壁の三階建ての家。高野長英が隠れたと言われる古い家の中を隈無く見せてもらった。代々医師の家であるが故に医師長英を匿った。奥の一室には長英の子孫から贈られたという額があった。湯本氏との話は、長英の師、シーボルトにも及んだ。庭にはシーボルトが学名をつけたアジサイが昔を語るように咲いていた。(読者に感謝)

 

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2016年7月 4日 (月)

人生意気に感ず「女子大で楫取の映画。テロの衝撃。今月のふるさと塾は沖縄戦」

 

 ◇2日、県立女子大で、「映画・楫取素彦物語」を上映した。放映後、私はこの映画がヒューストンの国際映画祭で最高賞を得た理由などを話した。それは、サブタイトル「生涯の至誠」が示すように、楫取素彦の至誠の生き方が民主主義を示すものとして、アメリカの建国の理念と通じるものがあり、それが評価された一つの理由だろうというもの。 

 

 私の話が終わった時、一人の女子学生が手を上げて言った。「私は群馬県がよく分からないし、あまり好きでありませんでしたが、この映画を観て、群馬にもこういう人物がいたのだと知り、群馬が好きになりました」

 

 若い一女性のこの発言こそ、プラチナアワードに劣らず私の胸をわくわくさせるものであった。

 

◇大変なテロのニュースに驚く。外国で多くの日本人が巻き込まれたのだ。バングラデシュの首都ダッカ。死亡した20人の大半が日本人とイタリア人だという。安倍首相は、遊説を打ち切って対策に取り組むことになった。イスラムの世界で日本は好意的に受け取られてきた歴史がある。今回の事件は、それが甘い幻想であることを示す。現実は、世界のどこにあっても、日本人がテロに曝されているということだ。

 

 日本国内テロがいよいよ心配になってきた。平和ぼけで隙だらけの日本。新幹線、地下鉄、大都市の雑踏、原発、そして近づくオリンピック。私たちは、国を守るという新たな自覚を持つ時に来ている。

 

◇女子大の話の中で、私の「ふるさと塾」に触れた。楫取のことも、この塾がスタートだったと振り返ったのである。その際今月のテーマを紹介した。

 

 今月のふるさと塾は、23日午後6時30分。「沖縄戦」だ。10万人を超える民間人が犠牲になった。死ななくともよかった民間人ではないか。硫黄島と比べて、もっと別な戦い方があったのではと、前回参加した塾生が頷いた。本土決戦の前哨戦だったのか。日本の戦争と平和を考える原点である。なお、今回は山本一太さんが参加する予定である。

 

◇今、前橋大空襲の紙芝居作りに取り組んでいる。10枚の文と、絵の原案を作って作家の秋葉二三一氏に渡した。前・県漫協会長で楫取の挿絵も描いた人。8月5日、私の熱演で披露する。題は「前橋の一番熱い日」だ。(読者に感謝)

 

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2016年7月 3日 (日)

小説「楫取素彦物語」第139回

二人が妓楼の立て込んだ下町を歩いた時、両側から弾歌、嬌声、異人さーんと叫ぶ女の姿が見えた。楫取の胸に不安が走った。

 その時、二階で、蒼白い女が立ち上がると、汚い水を二人に向かってぱっと撤いた。

「キャー」

声が天から降るかのように響いた。

ベルツ博士は、ここまで絶讃していたことを否定するかも知れないこの高名なドイツ医師は日本の温泉に高い関心を寄せとくに伊香保を評価している。今日の出来事が悪い影響を及ぼさねばよいが

楫取は心中ひそかに恐れた。

 楫取はそっとベルツを見た。顔色を変えず微笑みをたたえて歩いている。それを見て、また一段と高くなった頭上の嬌声を聞いて、楫取の胸には深く期するものがあった。

 それから間もなく「日本鉱泉論」は書かれた。博士は、ここで、伊香保温泉を例としてわが国温泉地開発のモデルプランを政府に進言した。博士は、その中で伊香保温泉の泉質を分析し、医療、健康に優れていることを記述し、特に環境の優れている点を挙げて次のように讃えた「日本全国中、此の地と清勝佳景を競地はないと信ずる、故にかりに温泉なしといえども、眺望の絶佳と空気の壮快によって、人身に益する所すこぶる偉大なり」この文章の効果は大変大きかった。楫取は大いに感謝した。

「一杯の汚水」が楫取の決心を早めたと古老は伝える。

 現状を変えて改革を行うことにはいつの時代も抵抗が伴う。武太夫は当時を振り返って言った。

村八分のようだった

 

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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2016年7月 2日 (土)

小説「楫取素彦物語」第138回

 

 武太夫の決断

 

 

 楫取が布達した期限を待たずに廃娼を実行したところがあった。天下の名湯、伊香保温泉を抱える伊香保町であった。その中心人物が伊香保温泉の名家、木暮旅館の木暮武太夫であった。福沢諭吉の家僕として住み込みながら慶応義塾に学んだ人である。

眺望絶佳、泉質最良で天下の文人墨客が集うところが遊郭のため目を覆う醜状になっていること許せません。温泉地は閑雅幽静であるべきなのに夜遅くまで唱歌弾弦止むことがない。開け広げて男女抱き合い、遊女裸で踊り、甚しきは襖を開け男女一つになって寝て恥じるところがないのです。最近は外人も多く、この醜状を冷笑しています。国辱の至りではありませんか。この地の盛を望むなら、皆さん、の醜状から脱却しなければなりません」

武太夫はこのように強く訴えた

 群馬県会で廃娼の動きは進んでいるが一刻も待てない。武太夫は、明治十五年二月七日、内務省衛生局長に廃娼の建議を出した。伊香保には政府の要人が多く訪れていたからその人脈も生かした。政府の名だたる要人も伊香保の醜状には眉をひそめていたからすぐに協力を得れた。

伊香保の建議は認められ、明治十六年六月を限って伊香保の公娼を廃止する旨が長官名で下された。

 政府は、楫取の布達を踏まえ、楫取と連携して、伊香保における早期実施を断行したのだ。

 前年、楫取はベルツ博士を伊香保に招いた。これにはベルツの優れた温泉政策の狙いがあった。ベルツの高い評価と証言によって伊香保温泉が一段と高い名声を博することを夢見ていた。

 ある日、ベルツ博士が県令と共に街を散歩していた。人々は、あれが有名な異人さんだと物珍しげに見た。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

 

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2016年7月 1日 (金)

人生意気に感ず「再審開始決定。暴力団トップへ特殊詐欺追求。トランプの世界評価」

◇再審の扉が開いた。6月30日、松本地裁。熊本県宇城(うしき)市、旧松橋(まつばせ)町で1985年(昭和60)に起きた殺人事件。宮田浩喜さん(83歳)は既に懲役13年を服役した。被害者とは当時将棋仲間だった。

 

 三審制で確定した裁判をやり直すことは余程のことがない限り有り得ない。かつて再審開始は針の穴に象を通す程難しいと言われた。司法の権威に関わるからだ。しかし、裁判にも誤りがある。冤罪は珍しくない。記憶に新しいのが足利事件。菅原利和さんは再審によって無期懲役の冤罪から解き放たれた。司法の権威よりも冤罪から救出する方が重要なのだ。最も怖いのは死刑判決の冤罪。執行後であれば取り返しがつかない。

 

◇事件は自白が争点だった。裁判所は「自白の重要部分に客観的事実との矛盾が存在する疑いがある。自白のみで確定裁判の有罪認定を維持できなくなった」と判示した。憲法38条は「何人も自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には有罪とされ又は刑罰を科せられない」と定める。本件では、証拠とされた「小刀」と被害者の傷の形状の不一致などから証拠がぐらついた。あとは本人の自白の信ぴょう性が問題となっていた。

 

◇指定暴力団住吉会のトップが訴訟の場に引き出されることになった。今、社会の基盤を食い荒らすシロアリ現象ともいうべき特殊詐欺で直接関与しないトップに「使用者責任」を問う民事訴訟。従来、この種の事件はトカゲの尻尾のみで上まで及ばない。特殊詐欺は暴力団の主要な資金源。2015年、特殊詐欺で検挙された容疑者の33%にあたる826人が暴力団関係者だった。

 

 改正暴対法は、「使用者責任」の追及を容易にした。今回の訴訟は、これを利用した全国初のもので、尻尾から頭を狙える画期的な作戦になりそう。原告は63~86歳の女性7人である。

 

◇トランプの末路が見えてきた。イギリスのEU離脱がトランプ現象と共通の底流をもつからトランプの援軍となるとの見方も裏切られた。かえってトランプにマイナスのようだ。

 

 米世論調査機関が、アメリカ以外の調査を発表。全てでトランプにつき、「信頼出来ない」が上回った。スエーデン(92%)、独(89%)、オランダ(88%)、オーストラリア(87%)、仏(85%)、英(84%)、日本(82%)、カナダ(80%)。クリントンは「信頼出来る」がほとんどで上回った。(読者に感謝)

 

 

 

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